先日、中国の中央政法委の公式アカウントにマリオのパクリ宣伝動画が掲載されてしまうという事件が起こりましたが、ありがたいことにこの件に関する質問やネタのタレコミをいただいておりますので今回はそれについてを。

任天堂の「マリオ」が中国共産党の宣伝キャラクターに? ネットで「無断使用では」と指摘相次ぐ (ねとらぼ)

とは言え、私はちょうど仕事のゴタゴタと重なっていたのでこの件を追いかけるのが遅れてしまいまして……現在中国のネットではこの件に関して本当にキレイサッパリ消えてしまっているので現地の反応を紹介するというのは難しいです。

どうやら日本で報道されたタイミングから2,3日程度でそんなニュースが存在したのかというレベルになっていたようで、中国語の報道を探すといつもの怪しげなニュースメディアしか引っかからないので真偽確認や話の広まりを調べるような段階でつまずきました。
中国のネットでは「これはフェイクニュースだ」みたいな発言が残ってそれが信じられていたりと、この手のネタを後発で追いかけた際の真偽や元ネタを確かめることの難しさともどかしさを感じてしまったりも。

正直な所、現在の中国のネットにおける検閲削除の手際の良さを改めて実感できたので、コレはコレで個人的には面白かったのですが、ネタの扱い的には困るので結局この手の話題がOKな中国オタクの方にイロイロと教えていただきました。

教えていただいた話と合わせて考えると、この件恐らくは
「関係者のやらかし」
「知的財産保護など法律関係意識の地方格差」
「中抜きと丸投げとノルマ」
「マリオの中国本土における微妙な知名度と認識のされ方」

などによる絶妙なコラボの結果ではないかということに。

この事件の大まかな流れは
「湖南の裁判所がアップした動画を、中央政法委の公式アカウントがピックアップして全国に広まりツッコミを受けて削除」
といった所かと思われます。
発端になった湖南の方でなぜこういうものが作られてアップされてしまったかというと、まず
「中国では知財保護意識に関する地方格差がまだまだ大きい」
という問題が存在します。

この件について教えてくれた方も
「こういうのは田舎に行けば行くほどイイカゲンなものになってしまいます。恐らく上海や深センなどの地域であれば制作の段階でボツをくらったのではないかと」
「ピックアップしてしまった中央のアカウントの中の人もアレですが、湖南の方では中央にピックアップされるまで関係者が気付いていなかったのでは」
ということでした。

そしてそれに加えて、現在の中国本土においては
「マリオが比較的古い存在で、中国における人気や知名度がとても高いわけではない」
というのも影響したかと思われます。
実は中国本土でTVゲーム機が流行ったり、ハードが入れ替わったりした時期やタイミングが日本とは異なっていたことから恐らく「スーパーマリオ」などが
「幅広い範囲で大人気になってみんな誰もが名前を知っているキャラ」
になっていた時期は無いかと追われます。

80年代末頃に出て90年代前半に大人気となった「小覇王」などの海賊版FC機でマリオに触れている人は非常に多いようですが、名前と人気が一致しているかとなると怪しい所もあるのだとか。
また近年の中国本土における日系コンテンツの展開においてもマリオが中心となっているケースはあまり無いそうなので、近年の中国で大人気になっている日本のコンテンツと比べて、作品関連情報の伝達やアップデートのようなものがマリオに対してはあまりなかったと言えるかもしれません。

そんな訳でマリオに関しては、一般社会レベルの知名度はあり、この件がネットに流れるとすぐに「これは日本のマリオだ」とツッコミが入るレベルではあるのですが、そういった方面に詳しくない層や、コンテンツ関係の動きの鈍い地方となるとピンとこない……といったことになる模様です。

教えていただいた話によると、レトロゲームのキャラ、そこから転じてモダンアート的な文脈での認識などもあったりするようですが、地方や環境によっては固有名詞やどこから来たのかといった情報、キャラクターの版権的価値とは結び付いていないといったことになっているとかなんとか。

それから
「なぜこんな作品が作られてしまったか」
という問題についてですが、これは中国のこの手の宣伝活動の制作物がイイカゲンなものになりやすいという事情が影響しているのではないかということです。
この手の宣伝に使われる制作物は丸投げになりがちですし、中抜きも横行していることから現場に落ちるお金が僅かとなったり、どこかの学生を安く或いは職歴などを餌にして使ったりというのも珍しくないことから、大したものが作れない、やっつけ仕事になることも少なくないのだとか。

こういった環境で作られることから品質に期待するのは無理な話ですし、それに加えて上の方は制作物の品質ではなく「形にした」ことにより
「ノルマをこなす」
というのをまず重視するので、時折トンデモナイ物が表に出てしまうこととなります。
(商業的な方でも似たようなことは発生するものの、政治的な方だとノルマ重視の傾向がさらに強くなるのでタイヘンなことになりがちという話も)

今回は知財関係の方にいってしまったわけですが、単純にクオリティが低い作品、動画だけでなく絵や像といったものが出てくるケースもよくありますし、この手の話で表に出なかった或いは注目されなかったものがいったいどれだけあるのでしょうかね。

以上、この件に関して私が教えてもらった話などをイイカゲンにまとめてみました。
最初はやらかしネタだろうと気楽に見ていたのですが、調べたり、背景事情を教えてもらったりした後は、何だか色んな意味で頭を抱えたくなるような事件にも思えてきました。


とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。