ありがたいことにネタのタレコミをいただきましたので今回はそれについてを。

中国オタク界隈では日本の作品における定番描写についてかなり受け入れられているそうですが、やはり主にアニメやマンガ、ゲームなどの二次元コンテンツ経由なことによる難しさもあるそうです。
例えばアニメによく出てくるシーン、動作に関して定番の描写であるのは理解しつつも、その描写で誇張されている或いは省略されているのが何かといった部分に関しては理解に個人差があったり混乱していたりということもあるのだとか。

中国のソッチ系のサイトではそんな話題の一つとして
「武士キャラが攻撃した後にすぐ納刀するシーン」
などに関するやり取りが行われていましたので以下に例によって私のいイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


今更聞くのもなんだけどなんで武士キャラは攻撃するたびに刀しまっちゃうの?敵まだいるのに!!

ある種の誇張演出なんだろうけどツッコミを入れたくなるのは理解できる

居合系の場合は納刀状態からの攻撃が一番強いというか、それに特化しているという事情があると思われる
防御?当たらなければどうということはない!

しまう方が気になるか。
私はサイズに余裕の無さそうな鞘にしまう方が気になって仕方が無い。

鞘にしまう方は練習すれば普通にできるらしい。実写でも手元を見ないで滑らかにやってる。

あれは残心モードに入って体力回復するんだよ!

いや、たぶん抜刀パワーを貯めているんだ!
まぁずっと刀を持ったままで戦い続ける作品も多いし、居合系の流派や技の演出なんだろうね。

ドラマや映画の見過ぎ
映像作品は現実ではなく誇張するものだぞ?

たぶんドラマや映画よりもアニメそれから特にゲームからの印象じゃないかな。
これは剣道に限った話ではないが日本の武道は残心を重視するから攻撃後の動作や構えまできちんとやることを重視する
ただ残心の目的は相手に余力がある反撃されることを警戒するというのもあるから、刀を鞘に納めてしまうのは居合系の武士だけ……のはず

納刀した後にすぐ再度抜刀攻撃するんじゃないの?

自分も二次元だとそう解釈していた。抜刀動作をすることによってSTRとDEXにプラス補正。

鞘に納めないと九頭龍閃も天翔龍閃も撃てないんだよ!!

ゲーム以外では斬った後も刀を普通に構える武士も見かけるが、二次元だと抜刀じゃないと撃てない技がかなりあるしここで言われるような「刀をしまう」動作は居合パワーを再チャージする状態に入ったと見て良いのかね

あれは戦闘状態解除に見えるけど再チャージなのか?

基本的には戦闘状態解除で良いはず
現実だと居合って一撃必殺狙いだから
薩摩の示現流とかも一撃必殺狙いだけど、こっちは一撃が無理だったらATK全振りで攻撃し続ける流派

日本刀は切れ味重視なので相対的に脆いというか、威力減少が激しい武器なのできちんと鞘にしまって持ち歩くし、雑に抜き身で持ち歩くと持ってる人がケガする
あと江戸時代は抜き身で刀を持っていると捕まるのできちんとしまっておく

日本刀って抜刀する際に鯉口という固定装置を解除する動作が入る(それをやらないと刀が抜けない)から、鞘に納まった状態は凶器を使えないというか安全装置付きですというアピールになる
だから刀を鞘にしまったら基本的に戦闘終了という認識でいいよ
カットインのたびにやるのは演出だと割り切れ!

敵がまだいるのに刀をしまえるのは主人公や強キャラの証だ!
例えば敵がまだいるはずなのに刀をしまって背を向ける、敵が激怒するが実は斬られていたのに気付かなくてそこでようやく体が真っ二つになって死亡……みたいな展開はあるだろ?

こういうのは基本的にはカッコ良さ重視で現実では欠かせなくても地味な所やカッコ良く見えない所はどんどん省略されていく
そしてたまに現実ベースのリアリティ重視な描写をする作品が出ると、評価するマニアとなんかカッコ良く思えない一般視聴者に分かれたりするのでリアルであれば良いとは限らない……

剣道の試合だと残心(反撃の警戒)をきちんとやらないと点数にならないというから、鞘にすぐしまうのは創作のなかの演出だろう

あと人を斬った刀をすぐしまって良いのかという疑問が……刀本体もだけど鞘が汚れない?まぁこれに関しては他の国の刀剣系の鞘についても似たような疑問があるけど……

現実だと刀は鞘に納める前にしっかり汚れを拭く
ちなみに有名な妖刀村正は抜刀したら水が流れるから血で汚れにくい、汚れても自動洗浄できるから切れ味が落ちないという特殊効果付きなのだが、これは昔の武士が考えた「あったら良いな」的な特殊効果でもあったのだろう

その特殊効果を更に誇張して描写すると水の呼吸みたいになるのかね

水が出るのは「里見八犬伝」の村雨の方だな
村正は徳川キラーな特殊効果の伝説はあるけど実在した刀のブランド
ちなみに日本刀の名刀妖刀の伝説や評価の中には「人を斬ったのに血が付かないほどの切れ味」というのもある

現実の居合、抜刀術の動画を見ると本当に速いし「使える」剣術体系だったんだろうとは思うが、刀をしまう動作の強調に関してはやはり創作のカッコ良さ重視の演出だろう……

ゲームでは必殺技出してしまうとかカットインで斬ってしまうとかが繰り返されるから、現実と比べればかなり多いんだろうけど、それにしたって戦いの最中にしまうのはどうなのかと思ってしまうよね

あれは日本の伝統的な時代劇の演出の影響だと思う。テレビの連続ドラマの方の。
テレビドラマでは毎回最後に主人公のサムライが悪人と戦う「殺陣シーン」が入る構成になっているんだが、その際にテンション高いBGMと一緒に悪人全員斬り殺す→納刀して殺陣シーンとBGM終了になるんだよ。だから日本の作品でサムライキャラの技の一連の流れで多用されるようになった。

刀なんて斧にぶつかれば砕けるし矛に対しては短過ぎて一方的にやられるから戦場で使う武器じゃない
そもそも盾を使わない時点でカッコ良さ重視の誇張全振りなんだから、鞘がどうとかこだわる意味はないだろうに……

一応日本の戦場で刀が使われていないわけじゃないよ。ただ主な用途はサブウェポンであえて使うならとどめを刺す時くらい。そして当然血で汚れるからきちんと血を拭ってからじゃないと鞘どころか武器本体まで使えなくなる……

日本の武器だと実戦なら薙刀はわりと有用そうなんだが、なぜかアニメやゲームではあまり使われない……

日本の江戸時代の実戦は主に都市部での戦闘になるから刀がメインウェポンだぞ?
槍もあるけど持ち歩けないから使う場面は限定的になるかなり特殊な環境
戦場での実戦じゃないから防具も特殊な場面で装備するチェインメイルくらいなので刀が有効になっていた

刀を戦場で使わないから意味が無いというのは現代の環境で拳銃は戦場で使わないから意味が無いというのと同じだ
刀は都市部で武士が常に携帯できる武器だったというのが大きい
日本にも槍や盾や弓や銃はあったが日常的に持ち歩けない、例えるなら現代の普通の街中でアサルトライフル持ち歩けるかというようなものだった

刀と防具無しで戦うのも、連戦や移動しながらの長期戦に対応できるという意味合いがあったらしいな
幕末で戦っていた武士は当初は長めの刀が多かったのが、実戦で疲労や振り回せる場所の問題が判明して適度な長さに短くなっていったという話もある

斬って刀についた血に関してはしまう前に振って落としてから納刀という動作をすることもある
これが「血振り」と言われて、たまにゲームの武器や技の名前にも出てくる

作品によってはちゃんと血振りの動作をしてから納刀していることもあるね。更にしっかりしているのだと和服の胸にある収納部分から紙を取り出して刀を拭いてから納刀する描写になっていたりする。
あと使った刀は歪みや刀の固定器具が壊れてないか調べて洗って油を塗って鞘に納めているので、実際の手入れはやはりそれなりに手間がかかるとか。

なるほど「るろうに剣心」は逆刃刀だから斬っていないのですぐに納刀しても良いという合理的な設定もあったのか……峰打ちだから死なないので不殺というのはおかしいというツッコミ所ばかり意識していたよ



とまぁ、こんな感じで。
イロイロな話が出ていましたがイメージするシーンや解釈の仕方の個人差もそれなりにあるようでした。

ちなみにこのネタを教えてくれた方からは
「中国だと武士の戦闘に関してはアニメやゲーム、あとは日本映画で見たものによるイメージが強いです。テレビの時代劇を見ている人はほとんどいません」

「日本のテレビで放映されている時代劇のチャンバラシーンまで把握している人は恐らくいないので、チャンバラ戦闘のお約束的な演出が元ネタだと理解できる人もほとんどいないと思います」

などといった話もありました。

私も中国オタク界隈では日本の時代劇ネタに関しては通じないことが多いという印象ですし、サムライキャラの戦闘シーンについても中国独自の知識や感覚で解釈されている部分もかなりあるのかもしれませんね。

とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。