ありがたいことにネタのタレコミをいただきましたので今回はそれについてを。

昔まだ中国のテレビで日本のアニメが放映できた時期に放映された作品の中には中国オタク的に「子供の頃の思い出の作品」になっていたり、過去の大人気アニメとして一般常識的な扱いになっている作品もあります。
またそういった作品は中国オタク界隈で時折妙に盛り上がる話題になることもあるのだとか。

そんな訳で以下に中国のソッチ系のサイトで行われていた
「一休さんに出てくる将軍足利義満」
といったことなどに関するやり取りを、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


「一休さん」に出てくる将軍って足利義満だったのか。最近知って驚いたよ。

最初に「将軍足利義満」の名前が出ているけど、子供の時に「一休さん」を第一話からきちんと見て最初のナレーションまで覚えている人は少ないだろうからな……
それに足利義満って二次元的にはあまり馴染みの無い時代の人物だしね

え?あれ徳川の将軍じゃなかったの?

「一休さん」は室町幕府の時代が舞台の作品だからな
もちろん鎌倉幕府の時代でもない

ちなみに物語の場所は京都ですぐに将軍からの話が飛んでくる展開からも、唯一京都に幕府を置いた室町幕府の将軍だというのが分かる

「一休さん」は日本の戦国時代の知識というかイメージで見ると武士も大名もなんか違うと感じる
子供の頃に見た思い出のアニメだけど、現在の二次元系作品から獲得される日本の歴史ネタ知識とはあまり連動しない作品になっているのかも

あの作品の武士は「武士道」とかが構築される以前の武士だし、髪形も服装も日本刀も二次元によく出てくる江戸時代、幕末とは違うんだよね

今見てみると「一休さん」の将軍は戦国時代だと今川義元がやられ役キャラで出てくる時のような公家系大名の格好に見える
確かに江戸時代の将軍ではないな

足利義満は足利家最強の将軍なのに一休さんの中ではバカ将軍のキャラにされているのはちょっと引っかかる……

足利義満は日本の南北朝を終結させた将軍だし普通なら老獪なキャラになるのでは?と個人的に考えなくもない
子供向け作品にそんなキャラ出してどうするんだという話なのは分かっているつもりだけど

足利義満ってもう少しで天皇になれた将軍という評価もあったし、本人の権力が及ばない時代になったら良い扱いにはならないのも当然か

日本の室町時代とその前の南北朝時代は日本社会における「敏感」で「特殊」な時期なんだよ
南北朝は天皇の正当性の問題もあるから室町幕府関係者は時代によって政治的な評価も一定しないとか

私も室町時代は政治的に敏感なのと出てくる人物の行動が不安定なので二次元作品の題材にされないという話は聞いたことがある

足利義満の頃の室町幕府は全盛期で安定しているんだけどね……だから「一休さん」の舞台としても活用されたのだろう
一休の元ネタである一休宗純が子供だった頃と足利義満の統治期間が重なっているのもあるだろうけど

日本だと一休さんと足利将軍はセット扱いされるらしい
「戦国ランス」で足利家になぜか一休がいる理由がコレだ

確か一休さんの母親は天皇の側室で南朝方の名臣楠木家出身だから追い出された設定だったはず
この辺は一応史実寄りの伝承ベースの設定だったような?

日本の一般社会では「日本国王」足利義満とやっちゃったからイメージ悪いとも聞く
実利優先で明の下についたのは日本人から嫌われるだろうし、史実では能力はある人物なのに創作では一休の引き立て役キャラにされる間接的な原因くらいにはなってそうだ

足利義満もだが二次元どころか実写でも南北朝〜室町時代はなかなか映像化されない。
天皇がそのまま勢力のトップとして出てくるし、そこで戦争の勝った負けたをやるのはかなり「敏感」な問題なので戦国時代や幕末、鎌倉時代など日本の歴史で他の人気の時代がある中ではあえてやる所は出てこないんだよ。

政治的な問題もだけど、あの時代は勢力が入り乱れて勝った負けたもハッキリしないのであまりネタとして面白くないというのもあるかと。
多勢力による群雄割拠でも日本の戦国時代と比べてかなり分かり難いし創作のネタとしても扱い難い。だから「一休さん」って日本の歴史ネタ的にはかなり珍しい存在という見方もできるかな?

足利義満に関しては足利将軍のイメージの集合体という側面もあると思う
室町幕府の将軍って足利義満より後は無能ばかりだ
逆に混ざってなさそうなのが父親や祖父の代の足利家の人物

日本の鎌倉末期〜南北朝辺りは参考になる資料も混乱していてね……よく出てくる「太平記」とか史書というより演義っぽいし……

私は「太平記」が日本でどこまでマトモな資料扱いされているのかが分からないよ
千早城の戦いとか幕府軍200万対楠木正成軍1000とか中国でもそんなに数字盛らないと驚くわ

今度アニメ化される「逃げ上手の若君」が太平記ベースだと言われている作品だな
主人公の北条時行は太平記では実質敵側扱いの武将でラスボス扱いの足利尊氏は足利義満の祖父になる

足利尊氏も史実追いかけるとよく分からない武将だしそもそもこの時代の武士と幕府と天皇の関係もよく分からないし二次元のネタにし難いというのは何となく分かる気がする

私も把握できている自信がないけど、足利尊氏ってなんとなく裏切られて何となく危機に陥って何だかよく分からないけど大事な場面では勝つ武将という感じだよな……行動に一貫性がないし創作の主人公にするのは難しそう
それにこの時代は対立して戦っていると思ったら敵側に寝返る、反乱を鎮めた後も殺さずにそのままにするとかぬるい戦いが多いし、どこまでの争いなのか、何を着地点として動いたのか分からない……

「一休さん」経由で日本の室町時代や南北朝時代を調べて混乱するのは俺も理解できる。
それはさておき、一休は1394年生まれで足利義満は1408年に死んでいるから「一休さん」が概ね創作なのは分かるが、キャラ設定や時代背景の元ネタはきちんと存在しているのが面白い。

一休以外のキャラに関してもきちんと時代に合わせた設定されている
新右衛門は話の都合でコメディ的なキャラになっているけど、設定的には皇子でもある一休の監視役なんだよね

そうそう。アニメだと一休は天皇の落胤だったという説を採用した設定があるので足利義満としては単純に放置も出来ない。だから室町幕府のエリート武士である蜷川新右衛門が監視役として派遣されていた。

上の方で言われている通り、アニメの第一話で「一休を監視するために足利義満によって派遣されたのが新右衛門」だというナレーションの説明はあるよ
まぁ子供向けアニメだからすぐに一休を評価するキャラ、将軍をはじめとする周囲から無理難題を持ち込まれて一休さんに相談する苦労人的なポジションになっていったが

一休さんの母親が足利義満とは対立する派閥で、表立って皇子として活動されると厄介。もしそういうことになったらバッサリやるのが新右衛門の役割。
これは一休さん本人がどう考えるかではなく、周囲がそういう扱いをしたら発動するわけだし実は「一休さん」にはわりとシビアな背景がある。

新右衛門は京都所司代の寺社奉行で、当時の日本の首都である京都の治安管理と宗教管理の幹部だ。現代中国で言うなら首都公安の高級幹部って所かな?だから一休の所に通っていても仕事上の問題は無い。
もっとも、実は寺社奉行という役職は室町時代には存在しない。これはアニメが分かりやすさを重視したのか設定ミスなのかは不明。
(寺奉行や社家奉行、山門奉行などで分かれていた)

なるほど良い知識を学べた。
それにしても改めて見ていくと「一休さん」って重くて深い背景のある話でもあったんだな……



とまぁ、こんな感じで。
現在の中国オタク界隈における認識や知識などイロイロな話が出ていました。

ちなみにこのネタを教えてくれた方からは
「中国のオタクの日本の歴史に関する知識は戦国時代と幕末に偏っているので日本の南北朝や室町の人物に関して詳しい人は少ないでしょう。ただ足利義満に関しては日本国王として明に冊封されていることもあり、中国では評価が高く知名度も高いと思います。考えてみれば『一休さん』が中国のテレビで放映できた理由の一つに足利義満が出てくるというのがあったのかもしれませんね。もちろん当時の中国のメディアが入手できるアニメ作品の中で東洋系の世界観の子供向けアニメで内容も安全な作品なのが最大の理由だったとは思いますが」

「『一休さん』は昔中国のテレビで繰り返し放映されていましたが、作品の設定に関する説明がある第1話をしっかり見て記憶している人は多くないと思います。私も子供の頃に見ていた作品ですが、設定については大人になってからネットで調べてようやく把握しました」

などといった話もありました。

昔中国のテレビで放映されていた日本のアニメ作品は当時かなり広い範囲で視聴されていたこともあってか、思わぬ所で思わぬ作品に関する話が出てくることもありますね。

とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。


中国オタク「日本の二次元作品では皇族キャラは出したらダメという話を聞いたことがあるんだが、実際どうなんだろう?」