ありがたいことにネタのタレコミをいただきましたので今回はそれについてを。

近年は伝統的な「武侠」よりも派生ジャンルの「仙侠」や「玄幻」の方が目立つようになっているものの、中国の娯楽分野において「武侠」は依然として強く意識されるジャンルとなっているそうですし、中国オタク界隈でも定期的に武侠関連の話題が出て盛り上がったりしているのだとか。

中国のそっち系サイトではそんな話題の一つとして
「日本の作品で武侠的な雰囲気のあるジャンルや作品を知りたい」
などといったことに関するやり取りが行われていましたので、以下に例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


日本の作品で武侠的な雰囲気のあるジャンルや作品を知りたい。狙って武侠モノとして作られたのではない作品を。

ふーむ、そうなると虚淵玄とかは対象外か
「鬼哭街」とか武侠を意識していてもちょっと違う作品になっているのも面白いんだが

武侠作品に関しては中国文化が混じってこそのものだと思っているが、ストーリーやキャラの行動原理などに武侠作品と共通する部分があるという指摘や考察を否定するつもりもない
個人的には時代劇にそれっぽい空気を感じたこともある

いわゆる「帮派」や「武功」ネタは日本の作品には無いからな
ただそういう部分を気にしなければ武侠的な空気の作品は見つかるだろう
とりあえず私は「無限の住人」を挙げておく

軽めの所だと「るろうに剣心」かな。典型的な日本の少年マンガではあるけど作中に出てくるあの作品の必殺技というか絶招のノリと勢いはともて武侠な感じだ。

「NARUTO」も武侠っぽさがウチの国での人気につながったし、修仙っぽい部分もあった。
今考えてみればそれが娯楽性と爽快感重視になっていく当時の国内の需要と相性が良かったようにも思う。

思いっきり広げれば「銀魂」も武侠的だと言えなくもない

個人的には「ニンジャスレイヤー」とかいい感じだと思うのだが……

あれは主にサイバーパンクの方では
マンガ版は武侠モノというか香港マンガっぽい描き方だからそういう見方になるのも理解できるけどな

こういう話題でよくあがるのは「吉川英治」の宮本武蔵かな
それを原作にした「バガボンド」もかなり武侠っぽい空気がある

真面目に語るなら「バジリスク 〜甲賀忍法帖〜」といった忍者系も結構武侠の空気があると感じたわ
柴田錬三郎や山田風太郎などの作家の作品を探せば結構ありそう

確かに。古龍の初期の作品が「眠狂四郎」の影響を受けているとはわりとよく聞くしな。

日本の武士って西洋の騎士に近い存在だし武侠と重なるとは思えないんだけど

日本の作品で武侠的な空気を求めるならサムライではあるが身分のある武士ではなく浪人が中心の作品の方が見つけやすいと思う
身分があるのは体制側だし制度、大名家重視な行動原理になりがちだ
あとこのテーマなら私は「サムライチャンプルー」や「ストレンヂア 無皇刃譚」とかも良いと思う

日本の武侠系作品は浪人主人公の作品というには同意する
しかしそういう作品はもう制作されなくなった
こっちで仙侠、玄幻が流行って純粋な武侠作品がほぼ消えているのと似たような流れなのかもね

今は武侠要素ならともかく、武侠作品となると中国国内でもダメだからな……

このテーマなら「七人の侍」は問題ないはず

黒澤明の「椿三十郎」や「用心棒」は武侠作品だと思う。日本の作品で武侠的なのを探すなら剣戟映画を探すと見つけやすいはず。黒澤明はこの分野でも有名だ。
ただこのジャンルは現代の日本ではもう作られなくなっていて、人材も特撮や時代劇の方に行ってしまった

以前日本の武侠=時代劇と聞いたことがあるのだが

それはさすがに雑過ぎる。
確かに日本の時代劇には武侠っぽい作品もあるし、武侠作品に影響を与えた作品もあるけどさ……

まぁ武侠作品は日本の剣戟作品やアメリカの西部劇からネタ持ってきていたりするしな!
ちなみに日本だと剣戟映画は時代劇の一ジャンルだね。歴史大河ドラマとは別扱いで日本語だと「チャンバラ」とも言われているジャンル。
映画は減っているけどテレビドラマでは剣戟要素は欠かせないので命脈自体は続いていると見ていいかと。

俺は日本の作品の武侠といえば雪が降る道を行く刀を持った無口な硬骨漢、それを見送る女……というのが定番イメージだと認識しているのだが、二次元だとあまり思いつかないな
「ブラックラグーン」でそれっぽいのはあったけど。

それヤクザ映画じゃないか?
いや確かにある種の武侠要素はあるし、日本のヤクザを任侠と称することもあるが……

実際、「龍が如く」はわりと典型的な武侠的要素がある作品だと思うぞ

剣戟作品は香港の功夫作品と近い所もあるし武侠っぽさを感じられることもあるな

しかし日本の武士に関しては核となる部分が武侠とは少々異なる気がする
その辺は香港映画の影響が見て取れる韓国の武侠系との違いかもね

日本の武士の作品の中に武侠的な空気の混じった作品が存在するのは間違いないけど割合としてはそんなに多くない
そもそも日本の武士は集団の利益を優先するので「侠」な考えや行動にはなかなかならない
上でも言われているように、身分のある武士ではなく浪人の作品を探すのがよさそうだ

武侠の定番要素は日本に広まらないまま今に至っているけどその理由の一つが日本の時代劇や時代小説だしね
功夫映画は昔から日本で大人気になっているけど武侠要素の強い映画では「少林サッカー」でようやく大人気作品が出た

武侠要素の強い作品の日本市場における人気に関しては女性向け作品が強いという状況を見ると何とも言えなくなる……

ネタ混じりで言われているけど、ここ数年の「魔道祖師」など女性向け作品の日本での人気は武侠文化の輸出という面ではかなり画期的なことではあるんだよな
武侠そのものではなく仙侠系作品ではあるけど、過去の日本市場攻略の難しさを考えればスゴイことだと思う

日本は剣術要素が入るとかなり厳しい目で見られるから武侠系の映像作品が入るのは厳しかったという話もあるね
国内でも剣術描写がひどい作品に関する批判は出るが、相対的に見ればあまり目立たない
ちなみに特殊効果方面にいくと今度はマニア向け、娯楽分野としての特撮作品と競合するからやはり厳しいものがあったとか



とまぁ、こんな感じで。
近頃の中国オタク界隈の認識も含めてイロイロな話が出ていました。

ちなみにこのネタを教えてくれた方からは
「中国で人気になる日本の作品には武侠的な解釈ができる作品、武侠的な空気が感じられる作品が多いような気もします。もちろん設定上は武侠ではないのですが、戦い方やキャラクターの行動原理が武侠的だと感じることはあります」
などといった話もありました。

そう言えば私も昔中国オタクの方々から「NARUTO」に関して
「武侠的な所があるので作品に入りやすい」
「戦い方や特殊能力が仙侠の妄想と相性がいい」

などといった話を聞いたことがありますね。

とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

中国オタク「なぜ国外に武侠や仙侠が広まらないのだろうか?なぜニンジャやサムライは文化的なイメージの輸出に成功したのだろうか?」