ありがたいことに言葉関連のネタのタレコミをいただきましたので今回はそれについてを。

中国オタク用語の中には日本語漢字表記のまま入ってそのまま使われているものがそれなりにあります。またそういった中には「異世界」や「二次元」のように何気なく使っているものの、よく考えたら中国語には無さそうな言葉もあり、中国オタク界隈では時折外来語系オタク用語(?)の定義や使われ方に関して話題になったりすることもあるのだとか。

中国のソッチ系のサイトではそんな話題の一つとして
「『魔神』という言葉はどこから来たのか?」
などといったことに関するやり取りを、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


「魔神」という言葉って外来語なんだろうか?
日本語の「魔神」の使われ方と近いようだし「二次元」みたいに日本語から入ってきた言葉なんだろうか?

どうだろう……?
二次元系作品ではよく使われる言葉ではあるし、日本語の意味で使われがちな言葉ではあるが

私も気になってちょっと調べたが現代漢語詞典や古代漢語字典には無い言葉なのだけは確かだ

日本語の辞書にはあるけど、用例を見ると日本語でもそんなに古いものではないように見える。うーむ……

俺も幾つか辞書を調べてみたが「魔神」という言葉は無いね
「魔」と「神」の解釈は一般的なものだしそのそれが重なった「魔神」は容易に意味を想像できる言葉ではあるのだが

コンテンツ関係で出てくる言葉の中には日本語の漢字単語を便利だからそのまま持ってきて使って定着したものも少なくないからね
「魔神」は中国語で言うなら「邪神」や「悪神」とかだろうか?

英語を見ても国産ゲームの「魔神」の訳は一定しないし、日本語の「魔神」の方は更に不安定で「Majin」で訳しているケースを見たこともある
意味も使い方もなんとなく分かるけど背景がハッキリしなくてモヤモヤする言葉だ……

「神」という能力や概念になる言葉に「魔」という属性や凄さを表す言葉をくっつけるのはどこから来たんだろうね
実際に見たら納得できる組合せだけど、最初にこの組み合わせが出てくるきっかけや使われ方は気になる

「魔王」という言葉があるなら「魔神」という言葉があっても構わないとか考えてしまうが、これは現代の感覚によるものだしなあ

「魔王」は仏教用語にあるから由来は分かる
あと「魔王」と同格或いは上位なのは「天魔」で「魔神」ではないはず

昔からありそう、でも具体的にいつから何からというのは分からない
善神や邪神などの言葉と比べて引っかかる

コトバンクを調べると例文に松尾芭蕉の和歌が出てきたが、日本だと江戸時代から使われてはいたのかね

中国語だと神と魔は並べるもので一緒にするものではないし、「魔神」という言葉は不思議な使い方に思える

中国語だと「邪神」や「悪神」というハッキリとした言葉があるから「魔神」のようなあやふやな言葉は出てこなかったんじゃないの?

「魔神」はあえて言うなら「邪神」に近い意味だと思うけど、いわゆる邪悪な存在、邪悪な生物ではなく「神」に近い存在という印象になるかな
それが現代の創作の中では使いやすく魅力的な言葉になると

「とある魔術の禁書目録」だと魔法の神が魔神というシンプルな意味だったので逆に印象に残っている

確かゲームの「サガスカーレットグレイス」も魔法の神だったね
日本語でもわりと好き勝手に使われている言葉なんだろう

しかし考えてみれば「魔神」というのは雑な使われ方をする言葉だ
魔界の神や悪魔的な神などの悪役、敵対的な超越存在などの字面の印象通りのもあれば「魔神Z」(マジンガーZ)からのロボットネタまで範囲が広い

ロボット関係だと「レイアース」の魔神もある
ファンタジー系ロボの呼び方としても便利

ロボを「魔神」と呼ぶのは日本語環境だと更に違和感ないと聞く
「ましん」「まじん」が「machine」を連想させる音になるとかで

「魔神」は漢字の組合せ的には分かりやすいし使いやすい言葉だけど、いつから使われるようになった言葉なのかはよく分からない
日本語の方も自分の調べられる範囲ではよく分からなかった

俺が見つけた中で一番古い日本の作品は「大魔神」だったけど、これは1960年代の特撮映画なのでそんなに昔ではない
上で出ている松尾芭蕉の和歌が日本の古典文学では最古の出典のようだけどその他に使われていたのかはハッキリしないし……

手塚治虫の初期の作品に「魔神ガロン」というのがあるから、その時点で日本では一般的な言葉になっていたのでは
今調べたら1959年連載開始の作品だった

「アラビアンナイト」の「ランプの魔神」のように訳語として使われているから、明治維新以降に出てきた新しい意味の言葉という可能性も考えられる

ヤヤコシイのは日本語だと「魔人」も「魔神」も同じ発音だから表記が一定しないことだよ
「アラビアンナイト」の訳に関しても「ランプの魔神」「ランプの魔人」の両方の表記がある

逆に言えば、日本の作品にありがちな同音異義語や発音の近い言葉の意味を強引に載せて複数の解釈ができるようしやすい言葉でもある
二次元では定番の「魔神=machine」のようにね

私も日本語を学んでから意識するようになったけど、「魔神=machine」を思い付いたのは本当に凄いと思う
このアイデアによってロボ系作品のイメージ、力の象徴やファンタジー要素との組み合わせなどの範囲が格段に広がった

とても理解できる話だ
そういう面でも永井豪は天才だと感じられるよね

それにしても「魔神」という言葉は適用できる範囲が本当に広いというか、範囲を決めるのが難しいというか……
神であるけど悪でも良いし、魔鬼や魔法の神でも良い、正義や善と対立する存在でも良い
共通するのは神レベルの強大な存在というだけだ

神にも悪魔にもなれるのが魔神
これはまさにマジンガーZ



とまぁ、こんな感じで。
魔神という言葉の使い方やイメージなど、イロイロな話が出ていました。

ちなみに今回のネタを教えてくれた方からは
「『魔神』という言葉は『異世界』のように意味は分かるけれど、よく考えたら中国語の語感ではなんとなく引っかかる言葉かもしれません。オタクをやっていると慣れてしまい違和感も消失してしまいますが!」
などといった話もありました。

とりあえず、こんな所で。
今回のネタに関しては私もよく分からない所があるので、いつも以上にツッコミ&情報提供お待ちしております。


中国オタク「二次元特有の中国語的に意味不明な日本語由来の漢字単語やズレた使い方の言葉について語ろう」