ありがたいことに
「中国オタク用語になった『純愛』に関してはまだやってませんよね?」
という質問とネタのタレコミをいただきましたので今回はそれについてを。

昔から中国オタク界隈に伝わった日本語単語が現地で「便利な外来語」的な言葉として使われる、使われているうちに中国独自の意味を持つようになる、ある種の流行語になってしまうような流れは度々発生しています。

そんな単語の一つに
「純愛」
がありますが、現在の中国のネットではいわゆる「NTRの反対語」の意味を持つ言葉として、中国オタク界隈の議論において何かと欠かせない言葉になっているのだとか。

そんな訳で以下に中国のソッチ系のサイトで行われていた
「中国に入って意味が変わった『純愛』という言葉」
などといったことに関するやり取りを、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


こっちで俺達が使っている「純愛」って日本語の「純愛」とは別の意味だったのか……

こっちだと「NTRではない」のが「純愛」だけど、日本語だと「NTR」の反対語ではないね

日本語の「純愛」は純粋な愛、見返りを求めない愛とかいわゆるピュアな愛情といった意味になるかと
こっちは心も身体も汚れない、他者が入り込まない恋愛関係、全部の初めてが主人公なヒロインの出てくるジャンルが「純愛」だから、まぁ……かなり違う

昔のドラマや映画で使われていた「純愛」は日本の言葉と似たような意味だったんだけど、今では明らかにネタ用語
昔の使われ方を知っていると、どうしてこうなったと言いたくなる時がある

日本語の「純愛」は少なくとも、こっちでNTRの反対語として使われているような意味ではないし、NTRが発生しても相手に対する愛は変わらない、自身の中にある愛を貫くような展開も「純愛」扱いされることがあるので表面的に似たような言葉に見えても適用範囲は結構違う

普段は意識されないが「純愛」って外来語みたいなもの、中国語では一般的ではなかった言葉だからな
日本の作品経由で入ってきた言葉で、それがウチの国のオタク界隈に定着して広まっていく中で現在の意味、反NTR的な意味へと変わっていった

「何か良い純愛作品は無いか?」と質問すると、日本のオタクからは文学的な恋愛モノが紹介され、中国のオタクからはNTRの無いヒロインが出てくる男性主人公作品が紹介されるというネタを見たことがある

俺も気が付いたら普通に使っていた言葉だけど、どこから広まったんだ?

「CLANNAD」とかそっちの方じゃなかったっけ?

最初にエロゲー界隈で流行ったからね……NTRと逆のジャンル、反NTRを表す言葉として便利だったから……

今の意味で広まったのはエロゲー界隈からだけど、「純愛」という言葉自体はその前から外来語として使われていた
「人気」とかと一緒にギャルゲー(18禁のエロではない)の中国語訳でも使われていたはず

昔の「ときめきメモリアル」の中国語タイトルの一つが「純愛手扎」だったかな

00年代までは上でも言われているような純粋な愛情、純粋な恋愛関係のあるストーリー、作品などに対して使われていた
「CLANNAD」も含むkey系作品なんかが当時の典型的な「純愛」ジャンルだったと思われる

こっちのオタク界隈の「純愛」って主に貞操の問題になるけど、日本語の「純愛」って精神的なものが強調されることも多いし、似ているようでもやはり違う
あと「純愛故事」のように中国国内でも日本語の意味の「純愛」が使われていないわけではない
「呪術廻戦0」の乙骨のセリフの中国語訳ようにそのまま「純愛」で通すこともある

ネットスラングの「純愛」と一般社会で使われる「純愛」は別の意味になるから公式翻訳だとそのまま「純愛」を使う判断になることもあるのだろう
しかしその結果、乙骨憂太は「純愛戦神」というネタを背負うことに……
(訳注:中国オタク用語の「純愛戦神」や「純愛戦士」には作品のNTR判定、NTR疑惑で騒ぐ人や、ヒロインの貞節さや処女にこだわる人に対する皮肉、或いはそういう好みに関する自嘲として使われるそうです)

乙骨憂太は例のセリフで完全に純愛戦士の象徴になってしまった
日本語の「失礼だな純愛だよ」も結構ネタ要素を含んだセリフなんだけど、中国語でもそのまま「純愛」で訳したからネタ要素が別方向に爆発したんだよなあ

それ以前も「純愛戦神」とかのネタはあったけどNTR関係のネタ用語、狭い界隈の言葉みたいなものだったけど、乙骨憂太と「呪術廻戦0」で国内のネットミームとして大きなものになり「純愛」「純愛戦神」が広い範囲でネタとして定着したよね

自分の記憶だと00年代だとまだNTRとの組合せは強調されていなかったはず
あの頃は非18禁のギャルゲーに対して「純愛」が使われることもあったね

私も既に記憶が曖昧だけど、全年齢向けの他にいわゆるエロ方面で使える「抜作」の反対の意味で使われることもあったかな?

昔の日本のドラマ関係でも「純愛」という言葉はそれなりに使われていた
それもあってか今でもメディア関係、広告などでは日本語の意味に近い「純愛」が使われているし、公式翻訳でもそっちの意味で出てくることがある

日本語の純愛って愛を貫いた末の悲劇や悲恋、せつない恋の作品に対して使われることが多く、いわゆる「泣ける恋愛モノ」のジャンル名でもある
だから上で言われているようにkey系作品などは分かりやすい日本の純愛作品でもあった
しかしこっちだとNTRではない、ヒロインが主人公以外と関係を持たない(肉体的にも精神的にも)という独占ルート保証のジャンルになっているから表面的な部分以外を見ていくと大きなズレがある

日本語の「純愛」は良くも悪くもポジティブに扱われる言葉だけど、今我々が使っている「純愛」は知っての通りネガティブな言葉、自嘲が混じりがちな言葉だな……NTR関連のネタ要素としての意味も強い

確かウチの国のオタク界隈に入った当初は日本の純愛系エロゲーから来た「純愛」だったような?
その後NTR系作品や「牛頭人」(訳注:「牛頭人」はピンイン表記で「Niu Tou Ren」なのでNTRを指すスラングとしても使われます)という概念がこっちに広まって、それに対するカウンター用語として「純愛」が使われるようになり、現在のような「NTRではない恋愛作品」という意味の「純愛」になっていったはず

あの当時は作品やキャラとNTR判定に関する議論が熱かった
「NTRではない」「NTRと対立するジャンル」を指す言葉が必要とされ、そこに「純愛」がぴったりハマり過ぎてしまったという事情がある

「School Days」や「WHITE ALBUM2」などが初期のNTRや純愛に関して何かと議論の的になっていたけど、今の感覚で振り返ってみると「純愛」だけでなく「NTR」という言葉の意味もかなり変化しているのに気付く

NTRネタ?がウチの国に広まった結果、「純愛」という言葉の意味は変質してしまったわけだが、
上手く言えないけどこの流れがなんとなくNTRっぽい展開に思えたりもする

ウチの国では文化的にNTR展開が非常に嫌われているわけだが、だからこそ話題になりやすい、食いつく人間の多いネタになる
NTR展開の需要は少なくても、NTR議論の需要はとても多いし、その過程で「純愛」という言葉も完全に定着してしまったのではないかと

言っては何だが現在使われている「純愛」という言葉には貞操、処女の保証という意味が混じるから否定や自嘲が混ざるのは避けられない
日本語の「純愛」のような綺麗な言葉に戻るのはもう無理だよ!

実はエロゲー的にも「純愛」の反対が「NTR」というのはちょっとおかしい
本来は「鬼畜」や「凌辱」みたいなジャンルが来る言葉だったはず

「純愛」ほどではないが「NTR」の方も日本のオタク用語とは違う使われ方もしているけどね
性的な関係が発生するケースもだけど、ヒロインが奪われる展開でもNTR判定になるなど、かなり範囲が広い
そしてその反対がそういう展開が一切ない「純愛」だ



とまぁ、こんな感じで。
現在の中国オタク界隈における「純愛」の使われ方や変化の過程などに関する話がイロイロと出ていました。

ちなみに今回のネタを教えてくれた方からは
「中国では緑帽という浮気された男をバカにする屈辱的な言葉がありますが、これと近年日本のオタク文化経由で入ってきたNTRの概念はとても相性が良く、中国人にとって理解しやすいものでした。今ではNTRという概念やそれに関するネタは中国に広まり、定着しています」

「現在の中国のネットでは緑帽、NTRは話題性のあるネタとして消費されている概念ですが、根底には中国の面子に関する感覚と連動している部分があります。緑帽は中国で名誉、男性としての面子に関わる極めて強烈な屈辱となります。だから中国のオタクがNTRされるキャラに感情移入した場合、日本のように個人が脳破壊されて終わるネタにするのは難しいかもしれません」

などという話もありました。

とりあえず、こんな所で。
「純愛」という言葉に関しては私の知り合いが多い世代よりも下の世代を中心に流行って定着した言葉なので、私は解釈や使われ方に関してイマイチ自信がありません。そんな訳でいつも以上にツッコミ&情報提供お待ちしております。

中国オタク「二次元特有の中国語的に意味不明な日本語由来の漢字単語やズレた使い方の言葉について語ろう」