休みボケがまだ残っていますが、ぼちぼち通常運行に戻れるよう頑張ります。
アキバ総研様で書かせていただいている中国オタク事情記事の年末年始版で
今世紀の中国のオタク界隈、業界に大きな影響を与えてしまった十大作品【中国オタクのアニメ事情】
というのを古参の中国オタクな知り合いと相談しながらまとめてみたのですが、実はというかやはりというか10作品ではカバーしきれない所が出てしまいました。
そんな訳で分かりやすい影響のある作品の有無や正規ルート、ビジネス関係を中心にまとめた連載記事の「表」に対する「裏」的な物を更に10作品まとめてみました。
以下、大雑把な作品の影響に関する話題と合わせての紹介になります。
1/4追記:作品を選ぶ基準についてですが、基本的にはアキバ総研様の「表」版に書いているのと同じです。人気の大きさよりも影響力の大きさを重視して選んでいるのでその作品が当時の中国で一番人気があったとは限りません。
例えば人気の時期やファン層に重なる所もある「NARUTO」と「BLEACH」と「銀魂」であれば、当時の中国で圧倒的な人気だった「NARUTO」ではなく中国国産アニメに対しても大きな影響を与えた「銀魂」を選ぶといった形になっています。
(ちなみに「NARUTO」も中国のアニメーターの理想とする作画という形で中国国産アニメに影響を与えているそうなのですが、今回は明確な影響の形や範囲となるとやはり「銀魂」の方が……という判断に)
・犬夜叉
「犬夜叉」は現在の中国で根強い人気ジャンルとなっている和風伝奇世界観の入門作品となった作品です。また女性主人公というのも大きく、この要素によって当時はかなりファン層を広げたという話も聞きます。
また中国オタク界隈的には、中国で初めて開催されたファンによる声優イベントがこの作品の人気を背景にしたものだったということも大きい模様です。このイベント以降、中国では女性向けの声優イベントが活発に開催されるようになったそうでイベントのテンプレ、カップリング的な組み合わせでの招待という方向も定まっていったそうです。
・真・三國無双
「真・三國無双」や「三国志」といったコーエーのゲームは、直接間接様々なルートでキャラデザインやキャラ解釈などイロイロな面で中国の若者の三国志武将観に影響を与えているそうで、特に「真・三國無双」シリーズが当時の中国に与えた影響は大きかったという話です。その後しばらくしてから始まる中国国産作品において三国志武将をキャラクターコンテンツ的に扱う流れの遠因になったという説もあるのだとか。
また中国オタク事情的には、中国におけるオタク的な活動の中心となっているコスプレ活動が真・三国無双のコスプレを経由して「中国国産」「古風」なコスプレになっていき、中国国内の各種オタク系イベントや商業的な活動でも存在感を増していったというのも重要だそうです。
外国産文化というのが中国では何かと問題視される中で、「三国志武将のコスプレ」と言い張ることで「真・三國無双」関係は普通に扱えたことや、他のイベントや他の三国志系作品にも使いまわしが出来て重宝されたという話も聞いたことがあります。
・テニスの王子様
現在の中国では少年マンガ雑誌に掲載されている作品に対する女性ファンが目立つことから、少年マンガ雑誌掲載の作品に関して「女性向け」だと見做す人も出ているようですが、そういった少年マンガ原作系のアニメの女性ファン層を拡大したのが「テニスの王子様」なのだとか。
また当時のこの作品の人気は中国における日本のスポーツ系作品に対する女性ファンの拡大と定着、スポーツ系作品のコスプレジャンルが確立されることにもつながったそうです。
考えてみれば、私が中国で初めて行った動漫系イベントで初めて見た「中国で売られているコスプレ衣装」はこのテニプリの青学のジャージでしたね。
・ゼロの使い魔
中国のネット小説などをはじめとする国産コンテンツでは「穿越」と言われる、いわゆる「異世界転移」ネタが一大ジャンルとなっていますが、そのジャンルが形成されていく際に大きな影響を与えた作品の一つが「ゼロの使い魔」だそうです。
また中国オタク界隈にツンデレなどのオタク系作品の属性のテンプレを広めたり、ライトな方向の和製ファンタジーの世界観を広めた作品でもあることから、中国でこの手の属性ネタを遡っていくと「ゼロの使い魔」にたどり着くといったことも少なくないそうです。
・東方Project
「東方Project」は現在の中国にも根強いファンがいるジャンルですが、中国の二次創作の起点となったと言うこともできる作品です。「表」の中心となる作品が「涼宮ハルヒ」なら、「裏」の中心は「東方Project」でしょうか。
中国における古典作品の扱いを見ても分かる通り、中国社会では「原作を変えることはけしからん」という意識があり、中国オタク界隈でも昔は原作原理主義者(?)的な勢力が強かったそうですが、それを打ち壊したのが「東方」の盛り上がりとその二次創作の作品群なのだとか。
東方シリーズは中国のオタク界隈に二次創作の概念を打ち込んだ作品とも言えるそうですし、現在の中国系絵師の活動やクオリティも「東方」から発生した流れがなければ存在しなかったかもしれない……という話もあるそうです。
・千本桜
「表」の方で作品を中心にまとめたので初音ミクは外したと書きましたが、ボカロ作品というジャンルで見た際に中国における影響が極めて大きかったのが「千本桜」だそうです。
「千本桜」は中国で当時人気になったボカロ作品のなかでも屈指の大人気曲でしたが、曲の人気だけでなく世界観やキャラクターデザイン(関連創作物含む)もその後の中国国産コンテンツにおける中華ファンタジー的なデザインに大きな影響を及ぼしたのだとか。
そして「千本桜」から生まれた東洋系、中華ファンタジー的な感覚は中国に伝統的に存在した武侠系ファンタジーをベースにした「古風」というジャンルの発生を促すことになったという話です。また各種コンテンツ、例えば歌詞やビジュアル面のデザインも千本桜以降は古典的なノリではなく中二病的なノリが強くなっていったそうです。
・咲-Saki-
中国本土の若者達に日本式の麻雀を流行らせてしまったのが「咲-Saki-」です。
中国の伝統文化でもある麻雀に対する大きな影響というのが出ているわけですし、「アニメやマンガによる文化侵略という点で考えた場合、最も危険なのはこの作品なのではないか…・・!」という話もあるとかなんとか。
・WHITE ALBUM2
「WHITE ALBUM2」は爆発的な盛り上がりがあったわけではないようですが、今の中国オタク界隈において現在進行形で影響を受けている人が多く何かと名前が挙がる作品だそうです。
この作品はPCゲームの違法ダウンロードと翻訳パッチという非正規ルートで広まってしまったそうですが、そのルートとメディアの関係もあってかゆっくりと広まり、深くハマった人が多いらしくこの作品に自分のオタク観や恋愛観を変えられてしまったという人も多く「脱宅神作」(脱オタ神作)とも称されているのだとか。
この「脱宅神作」の解釈に関しては「とてもとても恋愛がしたくなるから」「これ以上の作品に出会えなくなるから」等々諸説あるとのことですが、この作品が中国オタク界隈における恋愛系作品に関する感性や評価基準を塗り替えた別格の作品という扱いになっているのは確かだそうです。
・ラブライブ!
中国の二次元文化にアイドル系要素を本格的に広めた作品が「ラブライブ!」なのだとか。この作品以前と以降ではアイドルをテーマにした作品や、メインが女性キャラだけで男性が出てこない作品に関する受け入れられ方が大きく変わったという話も聞きます。
またこの作品をきっかけに中国におけるオタク活動としてのライブ系イベント参加が拡大していくことになったそうですし、他にもAKB48系ファンの流れが二次元に合流する切っ掛けにもなるなど、中国オタク界隈の評価基準やオタクとして楽しむスタイルに関する影響も大きな作品なのだとか。
・千と千尋の神隠し
「表」の方ではジブリアニメは外しましたが、ジブリアニメの中から中国のオタク界隈や業界に与えた影響の大きさを考慮してあえて選ぶなら「千と千尋の神隠し」になるそうです。
「千と千尋」は中国では2D表現アニメの到達点の一つとして受け止められているそうで、良くも悪くも「千と千尋」の影響から抜けられない、意識せずにはいられない作品となってしまっているのだとか。
中国では「子供向けアニメにでも振り切らない限り、2Dアニメ作品で上を目指すとどこかで宮崎駿っぽくなってしまう」という話もあるそうで、この「千と千尋」はある意味では中国の国産2Dアニメの道を塞いだ作品、呪いのような作品でもあるとのことです。
以上です。
ここで挙げた作品が「裏」になった理由に関しては、分かりやすい影響の例を挙げるのが少々難しいということや、「表」で中国やオタク関連の事情を背景説明も含めてどこまで書けばいいか分からなかったということなどもあります。
また「表」と同じくここで挙げた作品に関しては私と今回のネタに付き合ってくれた古参の中国オタクの方による独断と偏見混じりで選んだものになっております。
異論もたくさんあるかと思いますが、中国オタク的昔話の一つ程度に受け取っていただければ幸いです。
とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。
アキバ総研様で書かせていただいている中国オタク事情記事の年末年始版で
今世紀の中国のオタク界隈、業界に大きな影響を与えてしまった十大作品【中国オタクのアニメ事情】
というのを古参の中国オタクな知り合いと相談しながらまとめてみたのですが、実はというかやはりというか10作品ではカバーしきれない所が出てしまいました。
そんな訳で分かりやすい影響のある作品の有無や正規ルート、ビジネス関係を中心にまとめた連載記事の「表」に対する「裏」的な物を更に10作品まとめてみました。
以下、大雑把な作品の影響に関する話題と合わせての紹介になります。
1/4追記:作品を選ぶ基準についてですが、基本的にはアキバ総研様の「表」版に書いているのと同じです。人気の大きさよりも影響力の大きさを重視して選んでいるのでその作品が当時の中国で一番人気があったとは限りません。
例えば人気の時期やファン層に重なる所もある「NARUTO」と「BLEACH」と「銀魂」であれば、当時の中国で圧倒的な人気だった「NARUTO」ではなく中国国産アニメに対しても大きな影響を与えた「銀魂」を選ぶといった形になっています。
(ちなみに「NARUTO」も中国のアニメーターの理想とする作画という形で中国国産アニメに影響を与えているそうなのですが、今回は明確な影響の形や範囲となるとやはり「銀魂」の方が……という判断に)
・犬夜叉
「犬夜叉」は現在の中国で根強い人気ジャンルとなっている和風伝奇世界観の入門作品となった作品です。また女性主人公というのも大きく、この要素によって当時はかなりファン層を広げたという話も聞きます。
また中国オタク界隈的には、中国で初めて開催されたファンによる声優イベントがこの作品の人気を背景にしたものだったということも大きい模様です。このイベント以降、中国では女性向けの声優イベントが活発に開催されるようになったそうでイベントのテンプレ、カップリング的な組み合わせでの招待という方向も定まっていったそうです。
・真・三國無双
「真・三國無双」や「三国志」といったコーエーのゲームは、直接間接様々なルートでキャラデザインやキャラ解釈などイロイロな面で中国の若者の三国志武将観に影響を与えているそうで、特に「真・三國無双」シリーズが当時の中国に与えた影響は大きかったという話です。その後しばらくしてから始まる中国国産作品において三国志武将をキャラクターコンテンツ的に扱う流れの遠因になったという説もあるのだとか。
また中国オタク事情的には、中国におけるオタク的な活動の中心となっているコスプレ活動が真・三国無双のコスプレを経由して「中国国産」「古風」なコスプレになっていき、中国国内の各種オタク系イベントや商業的な活動でも存在感を増していったというのも重要だそうです。
外国産文化というのが中国では何かと問題視される中で、「三国志武将のコスプレ」と言い張ることで「真・三國無双」関係は普通に扱えたことや、他のイベントや他の三国志系作品にも使いまわしが出来て重宝されたという話も聞いたことがあります。
・テニスの王子様
現在の中国では少年マンガ雑誌に掲載されている作品に対する女性ファンが目立つことから、少年マンガ雑誌掲載の作品に関して「女性向け」だと見做す人も出ているようですが、そういった少年マンガ原作系のアニメの女性ファン層を拡大したのが「テニスの王子様」なのだとか。
また当時のこの作品の人気は中国における日本のスポーツ系作品に対する女性ファンの拡大と定着、スポーツ系作品のコスプレジャンルが確立されることにもつながったそうです。
考えてみれば、私が中国で初めて行った動漫系イベントで初めて見た「中国で売られているコスプレ衣装」はこのテニプリの青学のジャージでしたね。
・ゼロの使い魔
中国のネット小説などをはじめとする国産コンテンツでは「穿越」と言われる、いわゆる「異世界転移」ネタが一大ジャンルとなっていますが、そのジャンルが形成されていく際に大きな影響を与えた作品の一つが「ゼロの使い魔」だそうです。
また中国オタク界隈にツンデレなどのオタク系作品の属性のテンプレを広めたり、ライトな方向の和製ファンタジーの世界観を広めた作品でもあることから、中国でこの手の属性ネタを遡っていくと「ゼロの使い魔」にたどり着くといったことも少なくないそうです。
・東方Project
「東方Project」は現在の中国にも根強いファンがいるジャンルですが、中国の二次創作の起点となったと言うこともできる作品です。「表」の中心となる作品が「涼宮ハルヒ」なら、「裏」の中心は「東方Project」でしょうか。
中国における古典作品の扱いを見ても分かる通り、中国社会では「原作を変えることはけしからん」という意識があり、中国オタク界隈でも昔は原作原理主義者(?)的な勢力が強かったそうですが、それを打ち壊したのが「東方」の盛り上がりとその二次創作の作品群なのだとか。
東方シリーズは中国のオタク界隈に二次創作の概念を打ち込んだ作品とも言えるそうですし、現在の中国系絵師の活動やクオリティも「東方」から発生した流れがなければ存在しなかったかもしれない……という話もあるそうです。
・千本桜
「表」の方で作品を中心にまとめたので初音ミクは外したと書きましたが、ボカロ作品というジャンルで見た際に中国における影響が極めて大きかったのが「千本桜」だそうです。
「千本桜」は中国で当時人気になったボカロ作品のなかでも屈指の大人気曲でしたが、曲の人気だけでなく世界観やキャラクターデザイン(関連創作物含む)もその後の中国国産コンテンツにおける中華ファンタジー的なデザインに大きな影響を及ぼしたのだとか。
そして「千本桜」から生まれた東洋系、中華ファンタジー的な感覚は中国に伝統的に存在した武侠系ファンタジーをベースにした「古風」というジャンルの発生を促すことになったという話です。また各種コンテンツ、例えば歌詞やビジュアル面のデザインも千本桜以降は古典的なノリではなく中二病的なノリが強くなっていったそうです。
・咲-Saki-
中国本土の若者達に日本式の麻雀を流行らせてしまったのが「咲-Saki-」です。
中国の伝統文化でもある麻雀に対する大きな影響というのが出ているわけですし、「アニメやマンガによる文化侵略という点で考えた場合、最も危険なのはこの作品なのではないか…・・!」という話もあるとかなんとか。
・WHITE ALBUM2
「WHITE ALBUM2」は爆発的な盛り上がりがあったわけではないようですが、今の中国オタク界隈において現在進行形で影響を受けている人が多く何かと名前が挙がる作品だそうです。
この作品はPCゲームの違法ダウンロードと翻訳パッチという非正規ルートで広まってしまったそうですが、そのルートとメディアの関係もあってかゆっくりと広まり、深くハマった人が多いらしくこの作品に自分のオタク観や恋愛観を変えられてしまったという人も多く「脱宅神作」(脱オタ神作)とも称されているのだとか。
この「脱宅神作」の解釈に関しては「とてもとても恋愛がしたくなるから」「これ以上の作品に出会えなくなるから」等々諸説あるとのことですが、この作品が中国オタク界隈における恋愛系作品に関する感性や評価基準を塗り替えた別格の作品という扱いになっているのは確かだそうです。
・ラブライブ!
中国の二次元文化にアイドル系要素を本格的に広めた作品が「ラブライブ!」なのだとか。この作品以前と以降ではアイドルをテーマにした作品や、メインが女性キャラだけで男性が出てこない作品に関する受け入れられ方が大きく変わったという話も聞きます。
またこの作品をきっかけに中国におけるオタク活動としてのライブ系イベント参加が拡大していくことになったそうですし、他にもAKB48系ファンの流れが二次元に合流する切っ掛けにもなるなど、中国オタク界隈の評価基準やオタクとして楽しむスタイルに関する影響も大きな作品なのだとか。
・千と千尋の神隠し
「表」の方ではジブリアニメは外しましたが、ジブリアニメの中から中国のオタク界隈や業界に与えた影響の大きさを考慮してあえて選ぶなら「千と千尋の神隠し」になるそうです。
「千と千尋」は中国では2D表現アニメの到達点の一つとして受け止められているそうで、良くも悪くも「千と千尋」の影響から抜けられない、意識せずにはいられない作品となってしまっているのだとか。
中国では「子供向けアニメにでも振り切らない限り、2Dアニメ作品で上を目指すとどこかで宮崎駿っぽくなってしまう」という話もあるそうで、この「千と千尋」はある意味では中国の国産2Dアニメの道を塞いだ作品、呪いのような作品でもあるとのことです。
以上です。
ここで挙げた作品が「裏」になった理由に関しては、分かりやすい影響の例を挙げるのが少々難しいということや、「表」で中国やオタク関連の事情を背景説明も含めてどこまで書けばいいか分からなかったということなどもあります。
また「表」と同じくここで挙げた作品に関しては私と今回のネタに付き合ってくれた古参の中国オタクの方による独断と偏見混じりで選んだものになっております。
異論もたくさんあるかと思いますが、中国オタク的昔話の一つ程度に受け取っていただければ幸いです。
とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。