【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.124】

2016年12月2日12:00~12:59【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.124】

経済産業省へのパブコメ提出:「ガスの小売営業に関する指針」(案)に関する意見の募集について

 今し方、経済産業省のガス小売全面自由化に関して、パブリックコメントを提出したので、その旨を以下の通り公開します。



案件名:『「ガスの小売営業に関する指針」(案)に関する意見の募集について』

 「ガスの小売営業に関する指針」(案)に関する意見の募集に対して、(1)一括受ガス(マンション等の一括供給)、(2)二重導管規制、(3)託送の圧力規定問題(逆流託送)の3点につき、下記の通り意見を提出します。

(1)一括受ガス(マンション等の一括供給)
 2016年4月に“電力小売全面自由化”が施行されたが、それ以前から認められている『電気のマンション一括供給』は、平成26年度に44万戸で、平成32年度には105万戸を超えるとの予測(※1)がある。
※1:平成26年度電源立地推進調整等事業(マンショ高圧一括受電サービスに係る実態調査)
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/001056.pdf

 2017年4月に予定されている“ガス小売全面自由化”においても、電気と同様の制度に変更されることで、「電気+ガスの一括供給サービス」にHEMS(ホーム エネルギー マネージメント システム)を組み合わせた「マンション全体の総合エネマネシステム」の構築など、革新的なエネルギービジネスの創出を期待しても決して大袈裟なことではない。

 ところが、今回のガス自由化では、『ガスのマンション一括供給』は一切認められようとしていない(※2)。これは、需要家ニーズを全く無視している。
※2:ガスの小売営業に関する指針(案)
 
 経済産業省当局は、その理由について、「法令上、保安の確保が不十分になるから」としている。だが、これは全くもって奇妙な話だ。ガス自由化の環境を整備するため法令見直しをしているにもかかわらず、法令を見直す必要があるからダメだと言っているようなもの。

 これは完全に本末転倒であり、『ガスのマンション一括供給』を認めるための保安規制改正をすべきである。そうすれば、ガス小売全面自由化後の「切り替え」(スイッチング)率は、そうしない場合よりも確実に上がる。

 今回のガス自由化では、電力小売全面自由化よりも更に「切り替え」は進まない。だから、遠からず『マンション一括受ガス』に係る自由化も必ず実行せざるを得なくなる。

 それは今からわかり切っていることなのだから、もったいつけずに、今回のガス自由化の施行と同時に、『ガスのマンション一括供給』も認めるべきだ。どうせ遠からず、認めることになるのだから・・・。

(2)二重導管規制
 今回のガス自由化に係る審議の過程では、いわゆる『二重導管規制』の改革が主要テーマの一つだった。結果的には、「託送供給不可能ガス(未熱調ガス)によって『H29.4からH32.3までの3年間で当該エリア全体の既存都市ガス需要の4.5%まで』を、ガス会社から奪っても良い」と結着した(※3)。
※3:小売自由化の詳細制度設計について
 
 しかし、都市ガスとは性状が異なるためにガス会社の既存導管で託送できないにもかかわらず、未熱調ガスを同類と見なし、供給に必要な導管の敷設を引き続き制限していることに変わりはない。残してはいけない規制の筆頭格だ。
 
 この規制も、今後速やかに全面解除すべきである。そうすれば、上記(1)と同じように、ガス小売全面自由化後の「切り替え」(スイッチング)率は、そうしない場合よりも確実に上がる。

(3)託送の圧力規定問題(逆流託送)
 いわゆる「パンケーキ問題」の解消が認められたこと(※1)は、ガス導管ネットワークが送電線のように津々浦々整備されていないとはいえ、200社を超えるガス事業者間にある垣根の一部を取り払うものとして高く評価されるものだ。
※1:小売自由化の詳細制度設計について

 だが、ガス事業者が7月29日に申請した託送約款には、「払出地点の圧力が受入地点の圧力よりも低いか又は同等であること」を引受条件とするという趣旨の条項(※2)が盛り込まれている。
※2:東京ガス託送供給約款認可申請書

 これは、今回のガス自由化に盛り込まれた内容に対してガス事業者が骨抜きを図ったものだろう。全くもっておかしな話であり、一般社会の視点から見ても許容されない条項だ。

 この条項は、ガス事業者が自発的に撤回するわけはないので、経産省当局が是正を命令すべきだ。こういう『細部に宿る岩盤規制』が所々に残存しているので、ガスシステム改革は電力システム改革よりも更に進まないことが確実視されている。それを一番わかっているのは、経産省当局自身であろう。

【Yahoo!ニュース配信】<福島事故処理費用「20兆円」>『柏崎刈羽原発正常化』を政治決断しなければ国民全員負担!

<福島事故処理費用「20兆円」>『柏崎刈羽原発正常化』を政治決断しなければ国民全員負担!

 11月27日付の毎日新聞によれば、

(1)2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償や廃炉に要する費用が総額20兆円超に上り、
(2)従来の政府想定のほぼ2倍に膨らむと経済産業省が試算、
(3)同省は拡大する費用の一部を東電を含めた大手電力と新電力(電力自由化で新規参入した業者)の電気料金に上乗せする方針

・・・とのこと。

 経産省はこれまで、福島第一原発事故の処理費用を総額11兆円と見込んでいた。これらの費用に要する資金については、国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構が一時的に立て替え、東電を通じて対象者に支払われている。後日、東京電力と他の大手電力会社が電気代などから返す仕組み。

 だが冒頭の記事によると、その処理費用が従来試算のほぼ2倍になると経産省で新たに試算しているようで、それにかかる追加費用を誰がどう負担するのかが焦点となっている。

 経産省がこんな案を提示するのは、政府の行政責任もあるが、政権与党の世論読み過ぎ、一部マスコミの異常な煽動と“報道ネタのデフレ”に因るところも大きいと私は思っている。いつまでも叩き続けることのできる報道ネタとしては、原発問題を凌駕するものがないのだろう。

 東京電力、2012年9月の電気料金値上げ時の原価算定で、柏崎刈羽原発(KK)1・5・6・7号機が2013年4月から、同3・4号機が2014年4月から順次再稼働するとの想定で政府から認可を受けた。

 だが、現在までのところ、柏崎刈羽原発は再稼働していない。この場合、再稼働していないことによる現在のコスト負担の苦しみは、誰の責任なのか? 認可を受けた東京電力の責任か? 認可をした政府の責任か?

 筆者は、政府の責任であると考えている。柏崎刈羽原発の再稼働のために必死になって立地町村民など地元関係者や原子力規制委に説明・説得をしなければならないのは、東京電力以上に政府であるはずだ。それが行政責任というものであろう。

 筆者の試算では、柏崎刈羽原発が再稼働する場合としない場合での追加燃料費の負担に係る差額は、前提とする原発の稼働率で異なるが、年間約5900億~9600億円となる。この負担額のごくごく一部については東京電力の自助努力で吸収することができなくもないが、大部分に関しては東京電力管内の需要家が賄うなど、誰かが負担するしかない。

 柏崎刈羽原発が再稼働するかしないかで、これほどまでに費用負担額に大差が生じる。換言すれば、原発再稼働による収益を活用することで、新たな国民負担は不要となる可能性があるのだ。

 原発事故の処理費用は、原発事業の全ての工程を考えれば、原発事業収益で賄うことが本筋であり、それこそが国民的追加負担を発生させない唯一の手法である。原子力正常化への政治決断で、国民的追加負担はゼロにできる。

 そういう視点からすると、東京電力以外の大手電力や新電力の電気代値上げによって賄うことは、本来は筋違いな話ではある。しかし、『柏崎刈羽原発の正常化』を国会・政府自身が躊躇している中では、東京電力以外の大手電力や新電力に負担を求めることは、「次善の策」としては仕方ないことだ。

 この次善策に対しては、東京電力以外の大手電力にも、新電力にも、それぞれ反対の言い分がある。それらは重々理解できる。だが、大手電力の需要家も、新電力の需要家も、それぞれ相応に負担しないといけない。

 特に、新電力の負担増には反対論が強い。沖縄電力を除く大手電力は原発を保有しているが、原発を保有している新電力はない。新電力側からすれば、原発を保有する大手電力側だけで負担するのが筋だ、ということだろう。

 それも一理ある。ところが、新電力の需要家は大手電力の需要家に比べ、全体的に、電気の消費量は多く、所得水準も高い。もし、新電力には負担を求めないとなると、「高所得層への優遇」となってしまう。これは、日本の政治・行政の姿としては決して容認されない。

 『柏崎刈羽原発の正常化』を政治決断しない限り、国民的負担は必ず増え続けてしまうのだ。

[時評・ウェーブ]石川和男/右肩上がりの国民医療費

[時評・ウェーブ]石川和男/右肩上がりの国民医療費

 厚生労働省が去る9日28日に発表した「平成26年度(2014年度)国民医療費の概況」によると、前年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額は40.8兆円で、8年連続して過去最高を更新した。
 国民医療費とは、医療保険などの支払いだけでなく、公費負担や患者負担で支払われた医療費も合算された金額である。医科診療、歯科診療、薬局調剤、入院時食事・生活、訪問看護、柔道整復・はり・きゅう、移送費、補装具が含まれる一方で、保険診療とならない先進医療や差額ベッド代、正常な妊娠・分娩、健康診断・予防接種など傷病の治療を除く費用は含まれない。
 近年の国民医療費が増加している理由は、高齢化や医療技術の高度化であると考えられている。その概要は次のようなものだ。
 1、平成26年度の国民医療費
 (1)総額40.8兆円(前年度比1.9%増)(2)人口1人当たり32.1万円(同2.0%増)
 2、制度区分別国民医療費
 (1)公費負担医療給付分3.0兆円(構成比7.4%)(2)医療保険等給付分19.1兆円(同46.9%)(3)後期高齢者医療給付分13.4兆円(32.8%)(4)患者等負担分5.1兆円(同12.4%)
 3、財源別国民医療費
 (1)公費のうち「国庫」10.5兆円(構成比25.8%)(2)公費のうち「地方」5.3兆円(同13.0%)(3)保険料のうち「事業主」8.3兆円(同20.4%)(4)保険料のうち「被保険者」11.5兆円(同28.3%)(4)その他のうち「患者負担」4.8兆円(同11.7%)
 4、年齢階級別国民医療費
 (1)「0~14歳」2.5兆円(構成比6.1%)(2)「15~44歳」5.2兆円(同12.8%)(3)「45~64歳」9.1兆円(同22.5%)(4)「65歳以上」23.9兆円(同58.6%)
 以上のうち、最後の年齢階級別国民医療費について、高齢者かどうかで区分すると「65歳未満」は国民1人当たり約18万円、「65歳以上」は約72万円となる。
 国民医療費の推計が始まった昭和29年度(1954年度)の国民医療費は2152億円だったが、昭和40年度には1兆円を突破した。昭和53年度に10兆円台、平成2年度に20兆円台、平成11年度に30兆円台、平成25年度には40兆円台にまで達した。
 国民1人当たりの国民医療費は、昭和40年度に1万円を超え、昭和55年度に10万円台、平成6年度に20万円台、平成23年度に30万円台にまで達した。
 平成26年度の国民医療費は総額40.8兆円。この途方もなく巨大な金額を分かりやすく表現するために最もよく使われるのが、国内総生産(GDP)とNI(国民所得)に対する比率だ。対GDP比8.33%、対NI比は11.20%。これまでの推移は、昭和から平成に入ってから急増基調となった。
 国民医療費について様々な要素別に見ると、医療財政構造を改革するのに必要なマクロ視点がおのずと明確になる。例えば、後期高齢者をはじめ高齢者の自己負担をどの程度引き上げられるか、年齢階層ごとに医療費総額をどの程度抑えられるか、財源として公費と保険料の比率をどのように配分するか、入院・通院など医科診療をどの程度抑えられるか、といったことに絞られよう。
 こうした改革の狙いは、医療保険システムに持続性を持たせること、すなわち費用負担の在り方を適格なものにすることである。
 医療制度に対する危機感の原点は、将来の人口見通しが起点であり終点である。医療サービスには費用がかかる。
 その費用を負担する人が相対的に少ない時代が続く限り、医療サービスは規制的に抑制していかざるを得ない。 

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【ハフィントンポスト寄稿】東海第二原子力発電所の正しい「生かし方とやめさせ方」

東海第二原子力発電所の正しい「生かし方とやめさせ方」

 今年11月11日、日本原子力発電東海第二原子力発電所の「基準地震動(=耐震設計の基準になる地震動)」が決まったという報道が流れた。東日本大震災による事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ「沸騰水型」に係る基準地震動が決まったのは、東京電力柏崎刈羽原発6・7号機に次いで2例目とある。

 東海第二原発は、11月28日に38歳の誕生日を迎える。出力は110万kWで、これは大型発電所だ。当然の事ながら、"40年運転"の期限を延長するための申請を行うだろう。「基準地震動」の審査に置いて、次の課題となるのは「電気ケーブル」の防火対策である。

 この問題は、東海第二原発が新規制基準の適合性申請を行った当初から話題になっており、10月27日の原子力規制員会の審査会合において、原子力規制委から『「全て難燃性へ交換するのが原則。基本的な考え方が共有できないと先へ進めない」と突っぱねられ、門前払いされる形となった』との一部報道がある。

 本当に「全て難燃性へ交換するのが原則」なのかどうか?

 原子力規制委のホームページには、「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」という原子力規制委の内規がある。

 そこには、次のように書かれている。

---- 2.1.2 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、以下の各号に掲げるとおり、不燃性材料又は難燃性材料を使用した設計であること。ただし、当該構築物、系統及び機器の材料が、不燃性材料又は難燃性材料と同等以上の性能を有するものである場合、もしくは、当該構築物、系統及び機器の機能を確保するために必要な代替材料の使用が技術上困難な場合であって、当該構築物、系統及び機器における火災に起因して他の安全機能を有する構築物、系統及び機器において火災が発生することを防止するための措置が講じられている場合は、この限りではない。

 このうち、電気ケーブルについては次のように書かれている。

---- (3) ケーブルは難燃ケーブルを使用すること。

 つまり、「難燃ケーブルを使うのが前提であるが、不可能な場合は、それと同等以上の性能があれば良い」と言っているのだ。

 実際、東海第二原発よりも運転開始時期が早い関西電力高浜原発1・2号機と同美浜原発3号機では、「非難燃ケーブル」が使われている箇所であって取替え困難な部分については、難燃性の防火シートで覆うことなどにより、「難燃ケーブルと同等以上の難燃性能を確保する」として既に原子力規制委の審査に合格している。

 11月9日の原子力規制委において、九州電力玄海原発3・4号機が新規制基準に適合するとした「審査書」をまとめた時、緊急時対策所の設計を「免震」から「耐震構造」に見直したことに議論が集中した。

 その際、田中委員長は、当日の委員会で「そもそも規制というのは性能要求ですので(中略)、性能的に見た場合に、本当にそれが満足しているかどうかということがポイント」と述べ、免震構造と同等以上の性能が確保できれば足りる旨を強調している。

 「性能要求(性能規定)」とは、具体的な手順や方法を規定せず、本来果たすべき安全上重要な要求のみを規定化するものである。これは、最新技術が迅速に導入され、技術開発の促進、品質向上やコスト削減にも期待できる手法であり、国際的な標準にも沿っている。

 こうした基本姿勢を無視し、自ら定めた内規も蔑ろにするような発言を審査の場でするのは不適切だ。原子力規制委(その事務局である原子力規制庁)は以前から恣意的な規制運用を重ね、『法律に基づく行政』を体現していないことが多い。

 2013年7月に新規制基準が施行され、以来3年が経過したが、現在までに新規制基準の審査合格は玄海3・4号機を加えてもたった10基だけ。これらの原子炉はいずれも「加圧水型」と呼ばれるタイプ。

 今年10月、柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を示す米山隆一氏が新潟県知事に就任したが、「沸騰水型」で再稼働が最も早く実現するのは東海第二原発ではないかとの見方もある。

 東海第二原発は、2011年3月の東日本大震災時に自動停止して以来、再稼働を阻まれている。110万kWの大型プラントが欧米並みの高い稼働率(約90%)で稼働すれば、年間1000億円を超える利益増効果が生まれる。

 これを早期に正常化させ、『60年運転』が終了した後の安全な廃炉プロセスのための費用に充てることが先決だ。同時に、福島第一原発の廃炉・賠償に係る諸対策に貢献すべく、日本原電の収支改善と、それによる経営基盤回復を急ぐべきだ。

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.123】

2016年11月22日17:00~17:45【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.123】

【月刊Will 2016年12月号】壮大な無駄を生み続ける原発ゼロ幻想

 先月26日発売の月刊Will 2016年12月号に拙稿『壮大な無駄を生み続ける原発ゼロ幻想』が掲載されています。

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福島訪問記(速報版):楢葉町〜南相馬市小高区〜大熊町〜富岡町

 今日は、以下のような順序で福島県を訪問。

①楢葉町
 ここでは、東京電力社員数十名が、町立楢葉小学校・中学校の再開に向けて、校内清掃の支援に従事。同校の再開は来月とのこと。

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②南相馬市
 ここでは、東京電力社員数十名が、市立おだか保育園の再開に向けた園庭の除草の支援に従事。
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③「浦島鮨」(南相馬市小高区)で昼食。
 
④東京電力福島復興本社小高事務所を訪問し、近況ヒアリングなどをさせて頂いた。

⑤小高区→大熊町→富岡町の順路でいわき市へ。


 以上、少々駆け足気味での福島訪問だったが、 2年前に訪れた時に比べて人流や物流が多くなってきており、復興が一層進んできていることが感じられた。

 東日本大震災による福島第一原子力発電所事故以降、多くの東京電力社員が復興支援業務のために来福しているようで、現時点で、社員1人当たり10回以上は被災地域での支援業務に参加しているとのこと。

 こうした地道な努力は、震災による事故の復興や、地域住民と東京電力の信頼関係の回復に資するはずである。 

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.122】

2016年11月16日12:30~13:18【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.122】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv281856267

Youtube : https://youtu.be/L8H52iBIe8A

 

FujiSankei Business i. 【論風】 〜 理不尽なガス全面自由化 競争不在で値上げ不可避に

 今月10日付け FujiSankei Business i. 【論風】に、『理不尽なガス全面自由化 競争不在で値上げ不可避に』と題する拙稿が掲載。

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2016.11.10 FujiSankei Business i.

 今年4月に始まった“電力全面自由化”に続き、来年4月には“都市ガス全面自由化”が始まる。昨年の今頃、電力小売市場への新規参入予定の登録は40社を超えていたが、都市ガス小売市場に係る登録は関西電力と東京電力だけで、中部電力など申請を含めても4社だけ。都市ガス全面自由化の話は盛り上がりに欠け、大手マスコミの報道も少ない。こうした“空気”のせいもあってか、都市ガス小売市場への大きな参入障壁は歴然と維持されそうなのだ。その筆頭格が、(1)新規参入者が支払うガス導管使用料(ガス託送料金)が高いことや、(2)マンション一括契約が許されないこと。

◆奇妙な経過措置
 今年4月に始まった電力自由化によって、大手電力10社から新電力へ切り替えた一般家庭は、9月末時点で全国の世帯の3%程度。これを多いと見るか少ないと見るかだが、昨年11月の経済産業省の発表によると、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」との調査結果。
 しかし、現実はそう甘くはない。新電力が少ないのには単純だが大きな理由がある。家庭向けの電力小売事業は、それだけを営んでもあまりもうからないのだ。もっとも、都市ガス会社や携帯電話会社が、電力小売りとの『抱き合わせ販売』をすることで、本業である都市ガスや携帯電話の顧客をつなぎ留めておくことには多少役立つかもしれない。
 家庭向けの都市ガス小売事業も同じ。それだけを営んでも、天然ガスの調達や安全確保の面でかなりのコストがかかる。電力会社や石油会社など大手資本でさえ、新規参入は難しい。冒頭で述べたように、都市ガス小売事業への新規参入を予定している事前登録者が少ないのには、そういう事情もある。そんな中、前述2つに代表される高過ぎる参入障壁は是正されない気配だ。
 せめて、ガス託送料金の大幅引き下げや、マンション一括契約に係る規制緩和といった主要論点だけでも突破しなければ、都市ガス全面自由化は、電力全面自由化よりもさらに期待外れの結果になってしまうだろう。
 そしてもう一つ、料金規制撤廃とそれに関する経過措置が何とも奇妙な話になっている。都市部の大手都市ガス事業者にのみ規制を残し、地方の中小都市ガス事業者から規制を撤廃していくというのだ。

◆都市部で先行実施を
 都市ガスの料金規制撤廃には大きな問題がある。それは、自由市場・自由料金のLPガス事業が従来からどんな状況にあるかを見れば明らかだ。競争はほとんど起こらず、価格は高止まり。1999年のガス事業法改正で、都市ガス料金については値下げを自由化したが、料金値上げについては従前の認可制を維持。値上げも自由化すれば、地方を中心に値上げが相次ぐことは必至だからだ。
 都市ガス料金を自由化すれば、強力な競争相手がいない限り、あえて値下げする理由はなく、高い方に収斂していくのは間違いない。だがそれは、普通の民間企業の経営者としては、むしろ当然の判断だ。値上げの自由化・・・それが今回の全面自由化、料金規制撤廃の本質だ。
 それでも都市ガス料金規制を撤廃するならば、まずは都市部の大手都市ガス事業者の料金規制から撤廃すべきだ。需要が密集する地域には電力会社などの新規参入が見込まれ、競争が起こる可能性もなくはない。これに対し、人口減少が進む地方ほど競争が起こる可能性は低い。いずれにせよ、都市ガス料金規制は撤廃されるべきでない。大手と中小を一緒くたにした今回の料金規制の経過措置は異常な話なのだ。
 

2016年度の再エネ買取総額:2016年7月までの累計は7400億円(対前年比2000億円)

 資源エネルギー庁が定期的に更新している再生可能エネルギーに関する『固定買取価格制度 情報公表用ウェブサイト』によると、今年7月末時点における再エネ発電設備に係る買取電力量・買取金額は、それぞれ資料1・資料2の通り。

<資料1:買取電力量(万kWh)>
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(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

<資料2:買取金額(億円)>
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(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

 エネ庁が今年3月に公表した「再生可能エネルギーの平成28年度の買取価格・賦課金単価」の概要は資料3の通り。

 これによると、2016年度では、再エネ買取額は年間2兆3000億円、再エネ賦課金は年間1兆8057億円と見込んでおり、再エネ賦課金単価は1kWh当たり2.25円(標準家庭(1ヶ月の電力使用量300kWh)で月額675円、年額8,100円)。

<資料3>
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 今年7月まで4ヶ月間の買取額は7377億円(対前年同期比2034億円増)。今年度の残り8ヶ月(今年8月~来年3月)が同じ程度で推移すると仮定すれば、今年度の買取額は2兆2131億円となり、現時点のデータでは約869億円未達のペース。

 国民全体の電力コスト負担増を抑える観点からは、未達額が大きいことは決して悪いことではない。

 ただ、これはあくまでも単純計算に過ぎない。太陽光や風力は天候に左右されるので、実際にどうなるかはわからない。

 増えるかもしれないし、減るかもしれない。

 この買取額分は、再エネ導入のための電力消費者からの“補助金”のようなものであるが、その多寡に関する価値観は個々人で大きく異なるであろう。

福島第一原発事故の廃炉・賠償費 〜 原子力正常化への政治決断で追加負担はゼロにできる

 Twitterに昨日投稿したことで、あまりにも理不尽なことなのでこのブログにも書いておくが、昨日付け朝日新聞ネット記事では、東京電力が福島第一原子力発電所事故の被害者に払っている賠償費について、経済産業省が、新たに発生した費用の一部をより多くの国民に負担させる制度案を示したとのこと。

<記事抜粋>
・大手電力に払う送電線使用料に上乗せする手法。来年の通常国会で法案提出。
・これまで、福島事故費用を総額11兆円(廃炉費など2兆円、賠償費など9兆円)と見積もり、うち賠償費に限ると5.4兆円と見込んでいた。
・原賠機構が一時的に立て替え、東電を通じて被害者に支払われている。
・あとで東電と大手電力が、利用者から集めた電気代などから返す仕組み。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161112-00000024-asahi-pol.view-000


 経産省がこんな愚案を提示するのは、政府の行政責任もあるが、与党の世論読み過ぎ、一部マスコミの異常な煽動とネタのデフレに因る。
原子力政策でも、社会保障政策と同様、国内で無駄に喰い合っている。

 原子力発電所事故の処理費用は、原子力発電事業の全行程を考えれば、原子力発電事業収益で賄うことが本筋であり、それこそが国民的追加負担を発生させない唯一の手法。これは、このブログでも何度も書いてきたことで、例えば
別の寄稿『"原発が安いというのは嘘だった"の嘘』を参照されたい。

 原子力正常化への政治決断で、国民的追加負担はゼロにできるのだ。
 
 米国ではトランプ政権が来年1月に誕生するが、そうした強烈な外圧でもないと、真っ当な費用負担論さえ表立って話題にしようとしないのが、今の日本の政治とマスコミ。

 いわゆる“原発停止コスト”に関する真実がマスコミできちんと報じられるのはいつのことだろうか・・・?

電力会社の切り替え:10/31集計で209万件(全世帯の3.3%程度)

 電力広域的運営推進機関が、10月31日24時までの情報照会、スイッチング(切り替え)の申込み状況を集計したところ、それぞれ全国計で1,591.0万件、209.01万件であった(資料1)。
 
<資料1> 
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 全国の世帯数に関する直近のデータとして経済産業省が用いているのは約6,253万で、これは2015年度の一般家庭等の通常の契約口数(資料2)。これをベースにすると、今のところ、切り替え件数は全体の13.14%、情報照会から切り替えに至るのは3.34%となる。

 経産省が2015年11月18日に発表した資料では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。

 しかし上述のように、現実はまだまだその域には達していない。予想通りではあるのだが、桁違いに低いのはかなり痛い。図らずも、こうしたアンケート調査には、調査主体の期待感が込もり過ぎる傾向があることを示した格好になってしまった。

<資料2>
41
(出所:2016.7.1 経済産業省「小売全面自由化に関する進捗状況」 


 因みに、電力自由化から一定程度時間の経過した欧州では、年間切替え率について、スペインやイギリスなど9カ国で10%を超える一方で、フランスやデンマークなど5%未満の国も同程度存在しているようだ(資料3)。

 この年間切替え率は、電力自由化の進捗状況を表す指標の一つではある。

 だが、電力自由化が『低廉かつ安定な電力供給システムの水準』を維持・向上させるものかどうかは、実は甚だ覚束ない。少なくとも欧米の先行例から見ると、むしろ失策であったと言わざるを得ない。

 それは、このブログで何度も掲載したことだが、欧米諸国の電気料金水準の動向を見れば一目瞭然である。

<資料3>
11
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_system_kaikaku/pdf/01_05_00.pdf

ドイツのエネルギー転換費用:2025年までで60兆円

 先月10日にドイツINSM(Initiative Neue Soziale Marktwirtschaft)が公表した“EEG & Co. treiben Energiewendekosten auf 520 Milliarden Euro”と題する記事によると、INSMがドイツDICE(Düsseldorfer Institut für Wettbewerbsökonomie)に委託した研究の結果として、ドイツの再生可能エネルギー関連費用に関する次のような内容の報告書が出されたとのこと。

 ① ドイツでは、2025年までに“Energiewende”(原子力・化石燃料から再エネへと“エネルギー転換”をする旨のドイツの国家政策)に要する費用は5200億ユーロ(60.3兆円;1ユーロ=116円換算)。

 ② “Energiewende”に要する費用の中では、再エネ賦課金が最多の4080億ユーロ(47.3兆円)。

 ③ 再エネ供給地であるドイツ北部からエネルギー大消費地であるドイツ南部への送配電線に係る建設費用は553億ユーロ(6.4兆億円)。

 ④ ドイツの4人家族世帯での追加費用負担額は、2025年までに25,000ユーロ(290万円)。

《原文より抜粋》
Die Gesamtkosten der Energiewende allein im Strombereich belaufen sich auf über 520 Milliarden Euro bis zum Jahr 2025. 

Mit Abstand größter Kostentreiber mit insgesamt rund 408 Milliarden ist die Umlage zur Finanzierung der Erneuerbaren Energien (EEG-Umlage).

Der Ausbau der Strom- und Verteilernetze schlägt mit 55,3 Milliarden Euro zu Buche.

Eine vierköpfige Familie bezahlt rechnerisch über 25.000 Euro bis 2025. 


 先のブログ記事でも書いたが、ドイツでは2017年の再エネ賦課金が6.88ct/kWhと、対前年比で8%増、対10前年比では567%増となる。

 他のエネルギー源と同様、再エネ導入にも功罪両面がある。CO2排出がないことや国産であることなど「功」の面もあれば、太陽光・風力は不安定であることや原子力・化石燃料に比して相当なコスト高であることなど「罪」の面もある。

 
ドイツの再エネ推進策を賞賛し、類似制度を導入しているのは日本だけではない。ドイツ
も、日本も、再エネ導入増に伴うコスト増による電気料金の上昇が止まらないという「罪」の面への克服策は、未だ実施されていない。

 日本におけるその克服策とは、このブログで何度も提起してきたが、既設の原子力発電所を高稼働率稼働させることによる化石燃料消費量の削減で捻出される巨額財源を活用することだ。先の国会での参考人質疑において私見を表明したので、下記のリンクを適宜参照されたい。
◎【国会での意見陳述】2016.5.19 参議院・経済産業委員会『再エネFIT特措法改正案』参考人質疑

 また、ドイツの再エネ政策に関して調査するとともに、今後の日本の再エネ政策に関する適確な方向性を見出すため、2015年3月にドイツの連邦政府や州政府など計10カ所を訪問しヒアリングを行った。その結果については、下記のリンクを適宜参照されたい。
再生可能エネルギー政策に関する
ドイツ調査報告」(報告書全文)

再生可能エネルギー政策に関するドイツ調査報告」(報告書要旨)


【ハフィントンポスト寄稿】原子力の現実 〜 今や商業化前夜の核燃料サイクルと、夢の海水ウラン研究開発

原子力の現実 〜 今や商業化前夜の核燃料サイクルと、夢の海水ウラン研究開発


 民進党は2016年3月27日、"原発に頼らない社会を目指す"と党綱領で定めた。10月26日には、党エネルギー環境調査会を開き、"2030年代原発稼働ゼロ"の実現に向けた行程表を作るための検討を始めた。その中で、核燃料サイクル事業の存廃について議論がなされることは必至だろう。

 前身の民主党・野田佳彦内閣は2012年9月14日、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定し、その中で"2030年代原発稼動ゼロ"を掲げていた。

 だが野田内閣は、①「日本は二流国になってもいいのか」という米国からの強い反論や、②核燃料サイクル関連施設の閉鎖を民主党政権が求めるならば、使用済核燃料や放射性廃棄物の全部を原子力発電所が立地する地域へ持ち帰れという青森県からの激しい反発などが起こったことに当惑。結局、上記の決定を「参考文書」扱いとするだけに留め、日本原燃・六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)の核燃料サイクル事業の継続を是認した。

 短絡的かつ非現実的な政策転換を、短期間で軌道修正したわけだ。冒頭で述べた民進党の動きは、かつての民主党の方針を受け継いだものと言える。だがそれは、民主党政権時の教訓を踏まえたものなのか、或いは民進党は当時の経緯をすっかり忘れてしまったのか、私には全く理解できない。

 2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の後に"事実上の原発ゼロ"が今も続いている。それにより、2011〜15年度での原子力代替としての化石燃料コストは14.4兆円にまで膨れ上がっている。巨額の国富が海外へ流出し、国民負担が高止まりしている事実を直視せず、かつての「革新的エネルギー・環境戦略」と同じ看板を掲げている民進党。核燃料サイクル事業をも蔑ろにする"ちゃぶ台返し"を狙っているのかもしれない。

 実際、核燃料サイクル事業は商業化前夜に至っているのだが、やはり反対論も少なくない。その一つに、海水ウランの活用によって核燃料サイクル事業は不要になる、との意見がある。

 海水ウランが活用できるようになれば、日本のエネルギー自給率は飛躍的に向上し、日本のエネルギー安全保障の水準も相当上昇する。私としても、是非ともこれを商業化できるよう、国家予算の投入も含めて、研究開発の早急な着手を切に望むところだ。

 国際原子力機関(IAEA)によると、ウランの確認可採埋蔵量は459万tで、現在の年間需要量6.5万tを勘案すると、残りは約70年分となる。既知の推定資源量や未発見の資源量を加えると1534万tになると予想されている。

 海水ウランは、以上の他に存在するもの。海水中のウラン溶存濃度は2~3mg/tなので、海水全量では約45億tと膨大な量になる。しかし、2〜3mgのウランを回収するために取り扱う海水量が1tというのは、直観的にもかなり非効率な話に思える。

 日本原子力研究開発機構(JAEA)が、研究開発段階として青森県むつ市沖合や沖縄海域で行った試験の結果、ウランの回収費用は5~10万円/kgだった。これでは、ウランの実勢価格(2015年9808円/kg)にはとても敵わない。

 今の回収技術では、「回収されるエネルギー量」と「回収に必要な投入エネルギー量」との比率であるエネルギー収支比は、極めて小さいままなのだ。商業化までの道のりは、まだまだ先だと言わざるを得ない。

 海水ウランの捕集材の耐久性が向上すれば回収コスト削減ができる、との見通しもある。しかし、研究開発段階でのコスト試算は、やはり研究開発段階のものでしかない。

 『研究開発→実証試験→商業化』という長い時間軸の中で、コストを継続的に把握していくことが必要となる。研究開発段階での前提条件付きのいわば"仮コスト"と、国民負担に直結する実際の商業化段階のコストを天秤にかけることは、厳に慎まなければならない。

 最近の一例を挙げる。国産技術の原子炉として期待を集めていた新型転換炉(ATR)は、研究開発段階で石炭火力並みの低コストという試算がなされていた。しかし、実証試験段階になった時点では、発電原価が30円/kWh以上という"電力自由化時代"ではとても許容できないコスト水準になることが判明し、1995年にプロジェクト自体が潰えてしまった。

 将来、海水ウランによる原子力発電を活用することは、日本近海に豊富に眠っているとされるメタンハイドレートなどよりもCO2排出がないなど環境負荷が小さいという点で、希望の持てる話である。だから、今世紀中に実現せずとも、来世紀に入ってから商業化できる見通しでもあれば、息の長いビジョンを持って研究開発を重ねていくべきだ。

 核燃料サイクル事業の次の大きな「原子力平和利用」施策として、海水ウラン活用はとても有望ではないだろうか。

 六ヶ所再処理工場は既に完成している。海水ウランの活用は、公式には研究開発段階にすら入っていない。実用化までの時間が極端に異なるこの両者を比較することは、政策論としても政治論としても説得力を持たない。

 「使用済核燃料の再処理」に係る商用運転の開始を目前に控えた六ヶ所再処理工場を「使用済核燃料の中間貯蔵施設」に転用すべき、との意見が以前から複数の方面から出ている。だがそれは、国内外の諸情勢を勘案すると、政策的にも政治的にも無理である。コスト面も、ぜんぜん割に合わない。計算すればすぐにわかる。

 最近、『青森追想記』という手記を読んだ。これは、首都圏で活動している作家が内々に記したもの。1989年に核燃料サイクル施設工事の凍結を公約に掲げて青森県六ヶ所村長に当選した土田浩氏は、公約に沿って工事を完全に停止させるだけでなく、核燃料サイクル事業関係者との面談を一切拒否した。

 その作家は、この深刻な状況に心を痛めた。国会議員でも官僚でもない、一私人であるその作家は、肺結核の前歴のある身も省みず、自らの血縁関係を頼って土田村長に接触。何度も六ヶ所村の現地へ足を運び、「日本には現在、三つの国難がある。一つは中近東問題(石油危機)、二つ目は成田空港問題、いまひとつは六ヶ所のサイクル施設の問題だ」、「石油の豊富な中近東には水がない。資源のない日本には水と緑があります。
 
 エネルギーの原子力化が求められている現代、その施設を作る土地を、石油のない日本・我々に、神は与え給えた。いわば天与の土地です。天より賜りしこの土地を今に生きる私たちの英知と努力で、後世の人により良く遣わしていく。それが私達の使命です」とあちこちで熱く語り、説得して回った。そして、工事再開に漕ぎ着けた。

 『ちゃぶ台』の上にある天与のもの、特にウラン資源の節約と有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容と安定化、化石燃料消費量削減とCO2排出量抑制に資する核燃料サイクル事業を、将来にわたってしっかり運用していくべきことの重要性を改めて痛感する話である。"ちゃぶ台返し"は絶対に慎まなければならない。

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.121】

2016年11月9日12:30~13:16【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.121】

世界全体の温室効果ガス 〜 化石燃料消費増でCO2排出量増は止まらず・・・

 化石燃料の消費を起源とするCO2など温室効果ガス(GHG)の排出量に係る直近の動向について、国際エネルギー機関(IEA;International Energy Agency)が先月発表した“ CO2 emissions from fuel combustion HIGHLIGHTS 2016 ”には、有用なデータが数多く掲載されている。ここでは、それらのうちの幾つかを見ていこう。

 世界全体で人為的に発生したGHGは「エネルギー」68%、「工業」7%、「農業」11%、「その他」14%で、「エネルギー」のうち90%はCO2となっている(資料1)。

 世界的な経済成長に伴うエネルギー需要量の増加もあって、1971年から2014年までの間、一次エネルギー総供給量(total primary energy supply (TPES))は約150%増え、その殆どが化石燃料の増加となっている(資料2)。

 そうしたエネルギー需要量の増加に伴い、化石燃料の消費を起源とするCO2排出量の増加も顕著なものとなってきている(資料3)。


<資料1>
27

<資料2>
36

<資料3>
08

 2014年において、TPESの約2割はCO2排出ゼロのエネルギー源。石炭はTPESでは29%だが、CO2排出源としては46%を占める(資料4)。
 CO2排出量の多い国は、「中国>米国>インド>ロシア>日本>ドイツ・・・」の順(資料5)。
 「電気・熱」と「運輸」の合計で、CO2排出源の2/3を占める(資料6)。

 1990年→2014年において、石炭起源のCO2排出量割合が66%→73%と顕著(資料7)。
 世界全体で1人当たりCO2排出量は16%の伸びとなっている。CO2排出5大国では、GDP当たりCO2排出量は、いずれの国でも減少している。1人当たりCO2排出量は、ロシア・米国では減少したが、中国・インド・日本では増加した(資料8)。

<資料4>
25

<資料5>
53

<資料6>
41

<資料7>
06

<資料8>
26

 1971年→2014年で見ると、化石燃料消費を起源とするCO2の排出量は増加してきている(資料9)。
 中でも、「電気・熱」での化石燃料消費を起源とするCO2排出量の増加が顕著(資料10)。
 電気について、石油火力は減少してきている一方で、石炭火力とガス火力は増加している(資料11)。

 
<資料9>
25

<資料10>
37

<資料11>
47 

月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年11月号:“原発が安いというのはウソだった”のウソ 福島第一の廃炉費用負担問題で図らずも露呈

 先月28日発売の月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年11月号での連載「石川和男のエネルギー&環境スピークアウト」。

<“原発が安いというのはウソだった”のウソ 福島第一の廃炉費用負担問題で図らずも露呈>
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【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.120】

2016年11月2日12:30~13:19【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.120】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv280454432

Youtube : https://youtu.be/Srzp9NeumJQ


 

米国の2015年の原子力発電 〜 稼働率は過去最高92.2%、発電電力量は世界第1位・・・

 米国原子力エネルギー協会(NEI;Nuclear Energy Institute)は最近、2015年の米国の原子力発電について、次の旨を発表した。

 ① 稼働率は過去最高の92.2%(資料1)
 ② 他の電源に比べても稼働率は相当高水準(資料2)
 ③ 発電電力量は7980億kWhで世界第1位(資料3)
 ④ 米国の電源構成のうち、原子力発電比率は最近10年間20%を維持(資料4)

<資料1>
57
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/US-Nuclear-Power-Plants/US-Nuclear-Capacity-Factors

<資料2>
13
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/US-Nuclear-Power-Plants/US-Capacity-Factors-by-Fuel-Type

<資料3>
42
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/World-Statistics/Top-10-Nuclear-Generating-Countries

<資料4>
58
http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=26232

 また、米国EIA(Energy Information Administration;エネルギー情報局)が今月25日に発表したところでは、米国の3大電力系統ごとに見ても、原子力は、設備容量(capacity)の割合に比べて発電電力量(generarion)割合が高いことが見て取れる(資料5〜8)。


<資料5>
47

EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

<資料6>
14
EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

<資料7>
24
EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

<資料8> 
34
EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

 原子力発電は、化石燃料その他のエネルギーによる発電との比較でも、コスト低減効果やCO2・SOx・NOx排出抑制などの環境保全効果が大きい。もちろん、使用済燃料や放射性廃棄物に係る諸問題を解決する途を示すべきであるのは当然なのだが、いわゆる“最終処分問題”は適切な中間貯蔵により最終的にはそれほどの障害にはならない。

 原子力発電所の運営は、政治的に翻弄されやすいが、その面で適切な判断がなされれば、技術的に可能な範囲で稼働率を90%以上にまで引き上げることができる。

 主要国の原子力発電所の動向と比較すると、米国の平均稼働率は高水準である一方で、日本の平均稼動率は低水準で、しかも2011年以降はゼロ近傍。その理由は、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故後の政治・行政上の判断による。

 原子力発電所事故を経験した米国と旧ソ連は、事故炉以外の原子炉を強制停止状態にはしなかったが、日本はなぜか事故炉以外の原子炉まで、事実上、強制停止状態に置かれている。

 日本のエネルギー事情を冷静に見つめれば、原子力規制基準に係る猶予期間の設定など原子力規制行政上の運用を改善することで、事故炉以外の原子炉の早期正常化を政治的に決断する必要がある。

 天然ガスや石炭など化石燃料による発電(火力発電)は安定電源なので、供給安定性の観点からは、火力発電は他の火力発電や原子力発電の代替になり得る。但し、火力発電はCO2・SOx・NOx排出などの環境影響が相当ある。

 日本のような化石燃料をほぼ全面的に輸入依存している国では、コスト面でも大きな負荷がかかっている。エネルギー自給率を向上させる必要性は、安全保障面だけでなく、コスト面からの要請でもある。

 風力と太陽光の設備利用率は、日本(陸上風力20%、太陽光14%)との比較においては、相当高い。しかし、これらの再エネによる発電は、当面の技術では、不安定電源であること、不安定電源であるために火力発電によるバックアップが必須であること、設備容量が小さいことなどから、原子力発電や火力発電の代替にはなり得ない。水力・地熱・バイオマスと違って、風力・太陽光は天候に左右されるので、蓄電システムが浸透するまでは、不安定電源のデメリットを克服することはできない。

 原子力と風力・太陽光の関係を語るには、こうした基本的知識を大前提としていかないといけない。蓄電システムが普及はまだまだ遠い未来の話であろう。それまでの間は、原子力と化石燃料で凌いでいく必要がある。

 しかし、将来的に風力・太陽光など『再エネ100%化』を目指すべきであることは、言うまでもない。 

『原子力発電コストは廃炉費用を含めても安い』との試算について

 今月28日付け日本経済新聞ネット記事によると、経済産業省は27日、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉費用が原子力発電コストに与える影響を自民党に示したとのこと。

<記事抜粋>
・費用が1兆円膨らむと発電コストが1キロワット時あたり0.01円増と試算。
・数兆円とみられる廃炉費用を単純に織り込んでも発電コストは1キロワット時10円台にとどまり、12円台の石炭火力や30円台の石油火力を下回る。
・福島の除染費用が1兆円増えると発電コストが1キロワット時0.02円上がり、賠償費用が1兆円増えると0.03円高まると試算。

 上記の報道にある経産省試算に対しては、批判の声がすぐに出てくるだろう。

 この経産省試算であれ、どのような試算であれ、試算結果は試算前提でいかようにでも変わり得るもの。誰かが提示した試算を批判する人々は、自分たちで独自の試算をすべきだ。

 政策を進める上では、政府がその政策に関連する試算を提示することがよくある。それらの全てが誰の試算よりも優越する『正論』だとは決して思わない。

 しかし、政府が提示する試算の殆どは、国内外のあらゆる情報を総合的に判断した上での前提で以っての試算であるから、そうした政府試算が最も『適論』である場合が多いとも思う。

 因みに、原子力発電コストに関して言えば、上記の報道にある政府試算は『適論』であり、『正論』でもある。

米国の風力発電は急増傾向 〜 2015年では総発電電力量の4.7%に・・・

 今月26日の米国EIA(Energy Information Administration;エネルギー情報局)の発表では、米国の風力発電の動向に関して、次のようなデータ等が示されている。

(1)米国の風力発電は2001年から増加し始め、2015年には19万GWh(米国内の総発電電力量の4.7%)になった。これは、対2010年(同2.3%)比で2倍。2016年では同5.6%となる計算。


《原文より抜粋》
At the national level, wind's share of total U.S. electricity generation has risen every year since 2001. Wind facilities produced 190,927 gigawatthours (GWh) of electricity in 2015, accounting for 4.7% of net U.S. electric power generation. This level represents a doubling of wind's generation share since 2010, when the share was 2.3%. Based on monthly data through July, wind has provided 5.6% of U.S. generation in 2016.

50
2016.10.26 EIA


(2)2010年では総発電電力量の10%以上を風力発電で賄ったのは3州であったが、2015年では11州となった。この11州のうち、同20%以上となったのはアイオワ州31.3%、サウスダコタ州25.5%、カンザス州23.9%の順。

In 2015, 11 states generated at least 10% of their total electricity from wind. As recently as 2010, only three states had at least a 10% wind share. Iowa had the largest wind generation share, at 31.3%, and South Dakota (25.5%) and Kansas (23.9%) had wind generation shares higher than 20%. 

39
2016.10.26 EIA


(3)風力発電割合の高い州は、中央ハイプレーンズやロッキー山脈のように豊富な風力資源を持っている地域に位置している。

States with the highest wind generation shares are located in the Central High Plains and the Rocky Mountains, regions that have high wind resources.

02
2016.10.26 EIA


 風力発電を巡る米国の事情は以上のようなものだが、これらに加えて、連邦政府レベルや州レベルで様々な支援措置が講じられている。

 支援措置に関する日米比較は適当でないにしても、風力資源に関する状況で見ると、日米ではとても比較にならない。

 日本では、日本の事情に応じた、分相応な風力発電の振興策を進めていくべきだ。 

北陸電力:志賀原子力発電所2号機における雨水流入事象について

 北陸電力は今日、志賀原子力発電所2号機の原子炉建屋内への雨水流入事象に関する中間報告書を原子力規制庁に提出した。

 それによると、事象の概要や現時点での結論は、次の通り。

 ① 平成28年9月28日、志賀原子力発電所2号機の原子炉建屋内(非常用電気品室をはじめとした複数エリア[管理区域含む])に約 6.6m3の雨水が流入した。 

 ② 今回の雨水流入により、常・非常用照明分電盤で一時、漏電を示す警報が発生したものの、設備への影響及び外部への放射能の影響はない。

 上記
の中間報告は、原子力規制庁からの指示事項である直接原因及びその対策を中心に取りまとめたもの。
現在、根本原因分析(RCA:Root Cause Analysis)により更なる原因対策の深掘りを実施しており、その結果については改めて報告されるとの由。

 詳細は、北陸電力発表資料を参照されたい。 

☆ニュース配信☆ 世界の再エネ事情の意外な事実 〜 日本は水力発電で世界8位・石油火力発電で世界2位、ドイツは脱原子力を宣言しながら原子力発電で世界7位・・・

世界の再エネ事情の意外な事実 〜 日本は水力発電で世界8位・石油火力発電で世界2位、ドイツは脱原子力を宣言しながら原子力発電で世界7位・・・

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BIGLOBEニュース
http://news.biglobe.ne.jp/economy/1027/gdw_161027_6680861932.html


世界エネルギー機関(IEA)が先月発表した“ 
Key World Energy Statistics 2016 ”には、2014年における世界のエネルギー動向を示す有用なデータが数多く掲載されている。ここでは、それらのうちの幾つかを見てみよう。 

一次エネルギー供給の推移〔資料1〕と電力供給の推移〔資料2〕を見ると、世界全体ではエネルギー需要が拡大していることもあって、供給量ベースでは、石炭推進、石油推進、天然ガス推進、原子力推進、水力・再エネ推進である。 

<資料1:一次エネルギー供給の推移> 
 

<資料2:電力供給の推移> 
 

水力以外の再エネは、“ others ”と一括りになっている。水力以外の再生可能エネルギーである地熱・太陽光・風力などについては、それぞれ単体があまりにも小さいからであろうか、ここには個別の統計は掲載されてない。 

そこで、再エネ発電では単独で圧倒的シェアを占める水力について見てみると〔資料3〕、日本は発電量で世界8位(設備容量では世界6位)になっている。 

<資料3:水力発電量の国別順位> 
 

“脱原子力”の先進国として日本でもしばしば賞賛報道がなされるドイツは、原子力で世界7位の原子力発電量となっている〔資料4〕。日本が参考にすべきは、「“脱原子力”を宣言しているドイツ」ではなく、「“脱原子力”を宣言していながら実は“脱原子力”を未だ実現していないドイツ」の狡猾さである。

<資料4:原子力発電量の国別順位> 
 

最後に、化石燃料発電について見ておこう。原子力発電の正常化がまだまだ遠いと思われる日本は、石炭火力発電で世界4位、石油火力発電で世界2位、天然ガス発電で世界3位となっている〔資料5〕。即ち、日本は今や、化石燃料発電大国なのである。 

<資料5:化石燃料発電量の国別順位>
 

日本は、この状態から早急に脱却する必要がある。そのためには、商用可能な再エネ蓄電技術が開発されるまでの間は、一定程度は原子力発電に依存せざるを得ない。 

原子力発電の早期正常化のためには、原子力規制委員会による新規制基準に適切な猶予期間を設定し、新規制基準適合性の審査中であっても原子力発電再開を容認していくよう直ちに運用改善で対応すべきだ。

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.119】

2016年10月26日11:30~12:02【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.119】

2015年の温室効果ガス:CO2、CH4、N2Oの平均濃度が過去最高を更新

 世界気象機関(WMO;World Meteorological Organization)が今月24日に発表したところでは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)の3大温室効果ガスについて、2015年での世界平均濃度が過去最高を更新したとのこと。

 特に、CO2は世界平均濃度は、2015年に初めて400ppmに達した。



06
(出所:2016.10.24 WMO


 WMOは、再生可能エネルギーのための気象・気候関連サービスを改善し、グリーン経済と持続可能な開発を支援すべく取組んでいる。太陽光や風力、水力の利用を最適化するには、新しいタイプの気象サービスが必要となるからだ。
 
《原文より抜粋》
WMO is also striving to improve weather and climate services for the renewable energy sector and to support the Green Economy and sustainable development. To optimize the use of solar, wind and hydropower production, new types of weather services are needed.

ドイツの電気料金:2017年に標準家庭で年間2400円超の負担増(再エネ賦課金は前年比8%増)

 今月14日、ドイツの4大送電事業者Amprion、TeneTT、TransnetBW、50HZは、消費者が負担する再生可能エネルギー賦課金について、

  2016年6.35ct/kWh → 2017年6.88ct/kWh

と、約7.8円(1ユーロ=115円で換算)の値上げで前年比8%増になる旨を発表した。


《原文より抜粋》
08
Die vier deutschen Übertragungsnetzbetreiberhaben heute die Prognose der 2017 zu erwartenden Einspeisung aus regenerativen Stromerzeugungsanlagen nach dem Erneuerbare-EnergienGesetz (EEG) sowie die daraus resultierende EEG-Umlage für das Jahr 2017 veröffentlicht.

Die EEG-Umlage ist von allen Letztverbrauchern für jede bezogene Kilowattstunde zu entrichten. Dies bedeutet, dass die Verbraucher im Jahr 2017 mit 6,880 Cent pro Kilowattstunde zur Förderung der erneuerbaren Energien im Stromsektor beitragen. Damit steigt die EEG-Umlage im Jahr 2017 um 8,3 Prozent im Vergleich zum Vorjahr (EEG-Umlage 2016: 6,354 Cent pro Kilowattstunde). 


 今回の値上げに関しては、その理由の一つとして、2017年に陸上風力と洋上風力が増えること(2016年176TWh→2017年187TWh)が挙げられている。

Für das Jahr 2017 wird eine weiter ansteigende Erzeugung an elektrischer Energie aus regenerativen Anlagen prognostiziert. Der Anstieg von knapp 11 Terawattstunden (TWh) (von etwa 176 TWh 2016 auf etwa 187 TWh 2017) spiegelt vor allem den Ausbau der Windenergie an Land und auf See wider. 


 これにより、2017年におけるドイツの標準家庭(年間消費量4000kWh)向け電気料金の負担増は、下記の通り、年間2400円を超える計算。

  (6.88ct/ユーロ − 6.35ct/ユーロ) × 4000kWh/1家庭 × 115円/ユーロ ≒ 2416円

世界全体の太陽光・風力:発電設備容量は歴代予想を超える速度で推移しているが・・・

 今月15日付け Bloomberg では、近年の世界全体の太陽光・風力に係る発電設備容量の伸びは、国際エネルギー機関(IEA;The International Energy Agency)が定期的に公表する『世界エネルギー見通し』(WEO;World Energy Outlook)を超える速度で推移している旨を報じている。

 以下に貼付したのは、それぞれ太陽光、風力に係る発電設備容量の見通しと実績の推移を示すグラフ。これらを見ると、太陽光も風力も、電力供給面における役割は重要になってきていると思う人は多いだろう。


53

 39
2016.10.15 Bloomberg


 しかし、先のブログ記事でも書いたように、一次エネルギー供給量でも、電力供給量でも、水力以外の再生可能エネルギーは、“ others ”と一括りになっている。水力以外の再生可能エネルギーである地熱・太陽光・風力などの発電電力量については、それぞれ単体があまりにも小さいからであろうか、個別の統計は掲載されてない。

 もちろん、将来、太陽光や風力など再エネが主流になる日が来るかもしれないが、それまでは、化石燃料と原子力を合理的に活用していくしかない。それが実情なのだ。

 大事なのは、発電設備容量ではなく、実際の発電電力量である。

米国の2016年上半期:エネルギー由来CO2排出量は1991年以降で最低水準・・・

 今月12日の米国EIA(Energy Information Administration;エネルギー情報局)の発表によると、

 ① 米国における2016年上半期のエネルギー由来CO2排出量は25億7300万トンで、上半期でのCO2排出量としては1991年以降で最低水準だった、

 ② この理由としては、気候が穏やかであったことや、CO2を排出しない発電用燃料への転換が進んだことが挙げられる、

 ③ 米国における2016年のエネルギー由来CO2排出量は51億7900万トンで、1992年以来最低の水準であると予想される、


とのこと。

《原文より抜粋》
U.S. energy-related carbon dioxide (CO2) emissions totaled 2,530 million metric tons in the first six months of 2016. This was the lowest emissions level for the first six months of the year since 1991, as mild weather and changes in the fuels used to generate electricity contributed to the decline in energy-related emissions. EIA’s Short-Term Energy Outlook projects that energy-associated CO2 emissions will fall to 5,179 million metric tons in 2016, the lowest annual level since 1992.

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2016.10.12 EIA


 2016年上半期では、暖房を要する日数が1949年以降で最少であったため、天然ガスや暖房用石油、電気の需要が減った。特に住宅部門で9%減、電力部門で3%減で、一次エネルギー総消費量では前年同期比2%減となった。


Mild weather. In the first six months of 2016, the United States had the fewest heating degree days (an indicator of heating demand) since at least 1949, the earliest year for which EIA has monthly data for all 50 states. Warmer weather during winter months reduces demand for heating fuels such as natural gas, distillate heating oil, and electricity. Overall, total primary energy consumption was 2% lower compared with the first six months of 2015. The decrease was most notable in the residential and electric power sectors, where primary energy consumption decreased 9% and 3%, respectively.


 石炭と天然ガスの消費量はいずれも、前年同期比で減少した。このうち、天然ガスの消費量は1%減だったが、天然ガスよりもCO2排出量の多い石炭の消費量は18%減だった。これは、その期間中で価格下落に伴う石油の総消費量1%増加を相殺するものでもあった。

Changing fossil fuel consumption mix. Coal and natural gas consumption each decreased compared to the first six months of 2015. However, the decrease was greater for coal, which generates more carbon emissions when burned than natural gas. Coal consumption fell 18%, while natural gas consumption fell 1%. These declines more than offset a 1% increase in total petroleum consumption, which rose during that period as a result of low gasoline prices.


 CO2排出のない再生可能エネルギーの消費量は、前年同期比9%増であった。風力は、2015年に設備容量は最も増えた電源で、2016年上半期の再エネ消費量増分のほぼ半分を占めた。水力は、西海岸の旱魃が緩和したことで同増分の35%を占めた。太陽光は、同増分の13%を占めており、2016年に設備容量が最も増えるものと期待されている。

Increasing renewable energy consumption. Consumption of renewable fuels that do not produce carbon dioxide increased 9% during the first six months of 2016 compared with the same period in 2015. Wind energy, which saw the largest electricity generating capacity additions of any fuel in 2015, accounted for nearly half the increase. Hydroelectric power, which has increased with the easing of drought conditions on the West Coast, accounted for 35% of the increase in consumption of renewable energy. Solar energy accounted for 13% of the increase and is expected to see the largest capacity additions of any fuel in 2016.

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2016.10.12 EIA

原子力発電によるCO2削減効果:カナダ・ダーリントン原子力発電所での試算例

 オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG:Ontario Power Generation)が今月5日に発表したところでは、カナダの環境・健康コンサルタント Intrinsik Environmental Sciences により作成された報告書によれば、要するに、

 ① ダーリントン原子力発電所を、2024〜2055年の間、改修しつつ運転を継続することで、年平均960万トン、総計2億9700万トンのCO2排出量を削減する効果がある、

 ② これは、自動車200万台分のCO2排出を回避することに相当する、

との試算結果が得られたとのこと。

 これは大変興味深いものであり、日本でも原子力発電に関するこうした比較衡量がもっとなされると同時に、冷静に報道されていくことが切に望まれる。



《原文より抜粋》
Ontario Power Generation's (OPG) continued operation of the Darlington Nuclear Generating Station will take the equivalent of two million cars a year off Ontario’s roads by avoiding significant emissions of greenhouse gases (GHG), according to an independent report released today. 

The report, prepared by Intrinsik Environmental Sciences, compares the environmental impact of running the Darlington station to 2055 against other energy supply options, such as natural gas fired generation.

The study concluded, “The total reduction in GHG emissions from 2024 to 2055 associated with the continued operation of Darlington following refurbishment is estimated to be 297 megatonnes of carbon dioxide, with an average reduction of 9.6 megatonnes per year, or the equivalent of two million cars.”


 尚、上記で紹介した報告書に掲載されている資料の中で、特に興味深いものを以下に貼付しておくので、適宜活用されたい。

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(出所)http://www.opg.com/generating-power/nuclear/stations/darlington-nuclear/darlington-refurbishment/Documents/IntrinsikReport_GHG_OntarioPower.pdf 

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.118】

2016年10月20日12:30~13:15【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.118】


Youtube : https://youtu.be/w-bZnV6SUSw

 

ドイツの再エネ賦課金:今後10年間上昇し続ける可能性大・・・

 ドイツのケルン経済研究所(IW;Institut der deutschen Wirtschaft Köln)が今月5日に発表した調査結果によると、ドイツでは今後10年間、再生可能エネルギー関連費用が上昇し続ける可能性があるとのこと。

《原文より抜粋》
In den kommenden 10 Jahren dürften die Förderkosten weiter steigen, wie eine Studie des Instituts der deutschen Wirtschaft Köln (IW) zeigt.


 現在、再エネ補助金額は年間231億ユーロで、再エネ賦課金は6.35ct/kWhとなっている。しかし、2025年には、再エネ補助金額は年間248〜329億ユーロに、再エネ賦課金は7.5〜10ct/kWhにまで上がる可能性をIWは予測している。

23,1 Milliarden Euro kostet die Förderung für Erneuerbare Energien mittlerweile pro Jahr – das macht 6,35 Cent extra für jede Kilowattstunde (kWh). 

Der steigt oder sinkt – je nachdem, wie sich die Preise am Strommarkt entwickeln. Insgesamt dürften die Förderkosten bis 2025 auf 24,8 bis 32,9 Milliarden Euro jährlich anwachsen, rechnen die IW-Experten vor. Das bedeutet umgerechnet eine EEG-Umlage zwischen 7,5 und 10 Cent je kWh.


 こうしたコスト増の理由については、先のブログ記事でも触れたことだが、卸電力価格の下落効果を送電線使用料・再エネ賦課金の上昇が上回っていくとの予想に拠るのだろう。これは、ドイツの再エネ推進策である“Energiewende”によるものであることは、既に強く認識されるところだ。

2016年度の再エネ買取総額:2016年6月までの累計は5700億円(対前年比1500億円)

 資源エネルギー庁が定期的に更新している再生可能エネルギーに関する『固定買取価格制度 情報公表用ウェブサイト』によると、今年6月末時点における再エネ発電設備に係る買取電力量・買取金額は、それぞれ資料1・資料2の通り。

<資料1:買取電力量(万kWh)>
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(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

<資料2:買取金額(億円)>
44
(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

 エネ庁が今年3月に公表した「再生可能エネルギーの平成28年度の買取価格・賦課金単価」の概要は資料3の通り。

 これによると、2016年度では、再エネ買取額は年間2兆3000億円、再エネ賦課金は年間1兆8057億円と見込んでおり、再エネ賦課金単価は1kWh当たり2.25円(標準家庭(1ヶ月の電力使用量300kWh)で月額675円、年額8,100円)。

<資料3>
20

 今年6月まで3ヶ月間の買取額は5667億円(対前年同期比1533億円)。今年度の残り9ヶ月(今年7月~来年3月)が同じ程度で推移すると仮定すれば、今年度の買取額は2兆2667億円となり、現時点のデータでは約333億円未達のペース。

 これはあくまでも単純計算に過ぎない。太陽光や風力は天候に左右されるので、実際にどうなるかはわからない。

 増えるかもしれないし、減るかもしれない。

 この買取額分は、再エネ導入のための電力消費者からの“補助金”のようなものであるが、その多寡に関する価値観は個々人で大きく異なるであろう。

ドイツの家庭向け電気料金:2017年に4%上昇する見通し

 先月26日にドイツ Verivox が “Stromkunden müssen 2017 mit höheren Preisen rechnen” と題して報じたところでは、ドイツの標準家庭(年間消費量4000kWh)向け電気料金は、2017年に約4%上昇する見通しとのこと。

《原文より抜粋》
Eine Familie mit einem jährlichen Stromverbrauch von 4.000 Kilowattstunden (kWh) bezahlt laut Verivox-Verbraucherpreisindex aktuell 1.087 Euro. Zum Jahreswechsel wird sich die Stromrechnung prognostisch (inklusive Mehrwertsteuer) um 44 Euro auf 1.131 Euro verteuern. Das entspricht einer Preissteigerung von 4,1 Prozent.


 電気料金水準の見通しは、①送電線使用料、②再生可能エネルギー賦課金、③卸電力価格という3つの要素で決まる。

Die Preisprognose ergibt sich aus einer Hochrechnung von drei verschiedenen Faktoren, die den Strompreis beeinflussen – den Netzentgelten, der Umlage nach dem Erneuerbare-Energien-Gesetz (EEG) und den Großhandelspreisen.


 送電線使用料については、ドイツ送電4社の1つであるTennet社は、ドイツの“エネルギーヴェンデ”(原子力・化石燃料から再エネへのエネルギー転換を進める政策で、“Energiewende”と呼ばれる)による影響を理由として、2017年に80%値上げすることを発表。これにより、ドイツの半数以上の家庭で電気料金値上げが及び、特に3人世帯では年間約30ユーロ(約3450円;1ct=1.15円で換算。以下同じ)の追加負担が及ぶことになる。

Netzbetreiber will Preise massiv erhöhen: Der Übertragungsnetzbetreiber Tennet hat angekündigt, die Netzentgelte im kommenden Jahr um 80 Prozent zu erhöhen. Als Grund nannte das Unternehmen die Herausforderungen der Energiewende. Betroffen ist gut die Hälfte aller deutschen Haushalte. Für einen Dreipersonenhaushalt belaufen sich die Mehrkosten durch höhere Netzkosten auf rund 30 Euro pro Jahr.


 再エネ賦課金については、先のブログ記事(2017年のドイツの再エネ賦課金(試算) 〜 月額2400〜2500円・年額2.9〜3万円)で既報の通り、2016年に6.35ct/kWhであるところ、2017年には7.1〜7.3ct/kWh(約12〜15%増)になると試算されており、ドイツの標準家庭(年間消費量4000kWh)で年間約34ユーロ(約3910円)の追加負担となる。
 
EEG-Umlage steigt weiter: Auch die EEG-Umlage wird nach einer Prognose von Agora Energiewende zum Jahreswechsel von 6,35 Cent je Kilowattstunde auf 7,1 bis 7,3 Cent steigen. Für einen Musterhaushalt mit 4.000 kWh jährlichem Strombedarf ergibt sich eine mittlere Mehrbelastung von rund 34 Euro pro Jahr.


 卸電力価格については、年間約27ユーロ(約3105円)の下落効果が見込まれる。しかし、全体の価格見通しとしては、平均的には、約44ユーロ(約5060円)の負担増となるようだ。


Sinkende Einkaufspreise dämpfen: Versorger, die sich für die Belieferung von Endkunden in 2017 in den vergangenen Jahren eingedeckt haben, konnten von sinkenden Handelspreisen profitieren. Auf die Strompreise für Privatkunden kann sich diese Entwicklung dämpfend auswirken. Die Ersparnis auf die Jahresstromrechnung liegt nach einer Berechnung von Verivox bei rund 27 Euro.

Da auf den Nettopreis noch die Mehrwertsteuer aufgeschlagen wird, ergibt sich für einen Musterhaushalt unter dem Strich eine durchschnittliche Mehrbelastung von 44 Euro.

 
 要するに、卸電力価格の下落効果を、送電線使用料・再エネ賦課金の上昇が上回っているという話。これは、ドイツの再エネ推進策である“Energiewende”によるもの。

 ドイツの再エネ推進策を賞賛し、類似制度を導入しているのは日本だけではない。

 ドイツも、日本も、再エネ導入増に伴うコスト増による電気料金の上昇が止まらないという負の側面への対抗策は、未だ実施されていない。

 その対抗策とは、このブログで何度も提起してきたが、既設の原子力発電所を高稼働率稼働させることによる化石燃料消費量の削減で捻出される巨額財源を活用すること。先の国会での参考人質疑において私見を表明したので、下記のリンクを適宜参照されたい。


<<参考>>
【国会での意見陳述】2016.4.27 衆議院・経済産業委員会『再エネFIT特措法改正案』参考人質疑
【国会での意見陳述】2016.5.19 参議院・経済産業委員会『再エネFIT特措法改正案』参考人質疑


 

【週刊エコノミスト(2016.10.18号)寄稿】さまよう石油再編 時代錯誤 高度化法に見る産業政策の限界 国際競争には全面自由化が不可欠

さまよう石油再編 時代錯誤 高度化法に見る産業政策の限界 国際競争には全面自由化が不可欠

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 現在進められているJXホールディングスと東燃ゼネラル石油、出光興産と昭和シェル石油の2組を巡る石油元売り業界の再編は、2009年に施行された「エネルギー供給構造高度化法」によって進んだ側面もある。
 高度化法の正式名称は「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」。電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、太陽光、風力などの再生可能エネルギー、原子力などの非化石エネルギー源の利用や、化石エネルギー原料の有効な利用を促進するために必要な措置を講じることを求めるもので、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保を図ることを目的としている。
 経済産業省は10年7月、高度化法に基づき、石油元売り各社に対して、比較的廉価な重質油をガソリンなど付加価値の高い製品に精製する「重質油分解装置」の装備率について、14年3月末を期限とした目標値を設定した(1次告示)。この装備率は、原油を最初に処理する「常圧蒸留装置」の処理能力に対する「重質油分解装置」の処理能力の割合。つまり、製油所全体の原油処理能力を分母とし、高度な装置を分子とするものだ。目標の達成のためには、石油精製能力全体を下げるか、高度分解による精製能力を上げるかの二つの方法があるが、需要の減少で厳しい経営環境に置かれていた石油元売り各社にとっては事実上、設備の破棄を求められたと言える。
 1次告示を受け、各社は設備の破棄を進めた結果、原油処理能力は高度化法が施行された09年8月の日量約486万バレルから14年4月には約20%減の同約395万バレルにまで低下。製油所数も28カ所から23カ所に減少した。
 14年1月には税制優遇などで企業の事業再編を後押しする「産業競争力強化法」が施行された。経産省は同6月、同法に基づき初めて石油業界に関する市場調査を実施し、需要減少により今後「過剰供給に陥る恐れが大きい」と指摘。高度化法に基づき、原油処理設備の削減か高性能化をするよう求めた。
 さらに経産省は14年7月、17年3月末を期限とした新たな目標を設定(2次告示)。2次告示でも1次告示と同様に装置の装備率が基準となったが、分子は高度な「重油質分解装置」だけに限定せず、標準的な装置も含めた「残油処理装置」とした。分母は1次告示と同様に常圧蒸留装置としたが、実際に設備を破棄しない「公称能力の削減」も認めることになった。
 また、異なる企業グループが連携して装置を削減した場合は、任意の割合で案分することを認めた。この規定は1次告示にはなかったもので、明らかに製油所の統合や共同運営、さらには業界再編を促すものと言える。経産省は2次告示の期限が切れる来年4月以降、新たな目標を定めた3次告示を設定する可能性がある。
 ◇経産官僚を「悪用」
 官主導による業界再編には「功罪」の両面がある。
 まず「功」としては、業界だけでは各社の利害があって進まない再編を、中立の立場である官が後押しして進められることが挙げられる。業界内では言いにくいことも、官主導で行えば各社が納得することも多いだろう。
 一方「罪」は、結局仕事をするのは民間ということだ。官僚はビジネスの現場を知らず、ルールをつくるのが役割。理想を掲げて将来像を描くことはできるが、結局それを実行するのは民間だ。
 筆者は1989~07年に通商産業省・経産省でエネルギー政策や消費者政策、中小企業政策などに従事した。その経験からすると、経産省は他の省庁に比べても「自分たちが世の中を動かす」という意識が大変強い組織だと思う。それは、中央行政を担う官僚としては、一定程度は持つべき自負心である。だから「いつも仕事をしていたい」「何か仕事をしていないと存在意義が失われる」といった、半ば自己強迫観念に襲われる回数が、他の職場に比べてかなり多いであろう。
 一つの法律が施行されたら、その担当部署はその後しばらくはおとなしくしていてもいいはずだと思うが、実際には次の法律改正を考えてしまうことも少なくはない。
 規制業種だった石油元売り業界が、そういう性質を持つ経産官僚に頼っている面も大いにあるかもしれない。あえて別の言い方をすれば、石油元売り業界の一部が、そんな経産官僚を「悪用」して、自社に有利な制度をつくらせるということだ。
 高度化法は、表向きは、官が業界再編を後押しするものと言える。だが、石油の供給不足やリストラ問題など大きな社会的混乱を招いているわけではないので、現時点では一定の効果があったと評価できる。ただ、官主導の再編はもはや時代を見ていないものだ。
 ◇削減進まない2次告示
 国際競争にさらされて久しい日本の経済社会。水道や電力、都市ガスなどごく一部の例外を除き、大半の業種における淘汰(とうた)・再編は、国内にとどまらず、国際的なものになっている。内外の企業同士のまさに「リストラクチャリング」(事業の再構築)が日常茶飯事のようになって久しい。
 高度化法については、特定業種の国際競争力を高めるための業界再編を誘導するためのものであると、私は直観している。おそらくこの見方は正しいだろう。そうだとすると、国際競争にさらされている業種内の、しかも国内企業同士の淘汰・再編を、国内だけでしか通用しない高度化法のような半規制的措置によって進めることに、一体どれだけの市場ニーズがあるというのだろうか。
 高度化法が国内の石油元売り業界の延命装置として機能したとしても、各社の経営の意思決定の基準が「高度化法に掲げられた目標の達成」に置かれてしまい、意思決定の幅が狭まってしまうという懸念は拭えない。更に言うならば、そうした国内法に基づく高度化目標が、国際競争の渦中にいる事業者にとって、果たしてどれほどの企業価値向上に資するのか、甚だ疑問である。
 実際、2次告示によって、設備の削減はあまり進んでいない。16年7月現在の原油処理能力は、1次告示終了直後の14年4月から3%減の日量約382万バレル、製油所の閉鎖も1カ所にとどまった。
 高度化法の役割はもうとっくに終わったと思う。官による政策で企業の国際競争力を醸成し、高めていくには限界がある。事業の現場感覚をよほど身につけていなければ、競争現場にいる企業ニーズに即応する政策を打ち立てることはできないだろう。政府が毎年のように景気対策を行っているが、その割にはあまり感謝の声が出てこないのは、そうした現場ニーズを反映していないことが主因であろう。
 石油元売りのような業態は、今後は全面自由化を進めて、優勝劣敗で再編を進めていくべきである。それが健全な市場であり、経産省が描く「世界と競争できる企業」につながる。グローバル市場で高い競争力を持っている日本企業の多くは、国内及び国外市場での厳しい競争を勝ち抜いてきた会社であろう。今後の市場縮小に合わせた縮小均衡を図っていくだけでは、これまでの延長線上にはないイノベーションが各社から発揮されることは期待できない。
 国民生活に悪影響を与えるような特別な場合を除き、政府は産業界を過度に保護したり、過剰な規制を施したりするのではなく、各企業が国際競争の中で自由な事業活動を行いつつ、いかに勝ち抜くかを後押しできるかという観点から政策を立案し、実行していくべきである。
 石油元売り業界について、経産省の望む「世界と競争できる企業」を創出するには、経産省が所管する法的措置によることよりも、そうした法的措置のない「完全自由化」を進めることの方がはるかに実現性を高めるであろうことは、実は経産官僚自身がかなり昔から一番認識しているはずだ。なんとも皮肉な話である。

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【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.117】

2016年10月12日12:30~13:21【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.117】


[時評・ウェーブ]石川和男/ここ30年、子供いる世帯は半減

[時評・ウェーブ]石川和男/ここ30年、子供いる世帯は半減

 8月16日に掲載した前回の拙稿の続きであるが、厚生労働省が毎年行う「国民生活基礎調査」の直近の結果である2015年版は、日本社会の構造変遷に関する各種のデータを示している。前回は「高齢者」に焦点を当てたが、今回は「子供」だ。
 児童のいる世帯の状況に関するここ30年間(1986→2015年)の推移はおおむね次の通り。
 (1)児童のいる世帯=1736万世帯(全体世帯の46%)→1182万世帯(24%)。うち児童1人=611万世帯(16%)→549万世帯(11%)。児童2人=838万世帯(22%)→478万世帯(10%)。児童3人以上=288万世帯(8%)→155万世帯(3%)。
 (2)児童のいる世帯の平均児童数=1.83人↓1.69人。
 1世帯当たりの児童数の減少傾向がみて取れる。児童のいる世帯は今や全体の4分の1にも満たない。
 次に児童のいる世帯について、末子の年齢別にみた母の仕事の状況はおおむね以下の通りだ。
 (1)児童のいる世帯(1182万世帯)のうち「児童1人」46%、「児童2人」40%、「児童3人以上」13%
 (2)児童のいる世帯のうち「夫婦と未婚の子のみ」74%、「ひとり親と未婚の子のみ」7%、「三世代世帯」16%、「その他」3%。
 (3)児童のいる世帯のうち「母の仕事なし」32%、「母の仕事あり」68%(正規22%、非正規37%)。うち末子年齢0歳で「母の仕事なし」61%、「母の仕事あり」34%(正規23%、非正規11%)。また、末子年齢3歳で「母の仕事なし」40%、「母の仕事あり」53%(正規25%、非正規28%)。末子年齢6歳で「母の仕事なし」34%、「母の仕事あり」56%(正規18%、非正規38%)。うち末子年齢15~17歳で「母の仕事なし」21%、「母の仕事あり」70%(正規23%、非正規47%)。
 児童のいる世帯では、末子年齢が上がるにつれ、母の就業率は上がっているが、内訳として非正規比率も上がっている。「少子化」という状況を表す数字にはいろいろあるが、以上のようなデータも、それを端的に示す典型例だ。今後とも、この傾向はさらに進むものと見込まれる。
 最後に、15歳以上の者の就業状況などをみると、概略、以下の通りとなる。
 (1)男の15歳以上の者のうち「仕事あり」は69%。うち「正規」41.6%、「非正規」11%。「仕事あり」は「25~29歳」から「55~59歳」までが9割以上の台形型で、「正規」は「25~29歳」から「55~59歳」までが6割超。一方「仕事なし」は「60~64歳」が22%、「65歳以上」が65%。
 (2)女の15歳以上の者のうち「仕事あり」は50%で、うち「正規」は17.8%、「非正規」は23%。「仕事あり」は「30~34歳」を谷とするM字型で、「正規」は「20~24歳」から「30~34歳」までが「非正規」を上回っているが、それ以外の年齢階級では逆だ。「正規」は「20~24歳」と「25~29歳」で4割超。一方「仕事なし」は「60~64歳」が50%、「65歳以上」が82%だった。
 男女とも60歳以上になると「仕事なし」が増え始め、65歳以上では男女それぞれ65%、82%にまで跳ね上がる。これは、高齢化による体力の衰えもあって仕方ない。
 だがこうした実情は、財源を含む社会保障制度システムの維持にとって大きな脅威だ。高齢者層の労働市場を拡大する必要性は、人口構成によるところが大きい。日本は今後、当面はますますそれを痛感することになろう。
 克服策は、高齢者の需要を刺激するための市場の創出。それに向けた政策がもっと打たれるべきで、いわゆる健康産業政策の推進がその最たるものとなるはずだ。

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電力会社の切り替え:9/30集計で188万件(全世帯の3.0%程度)

 電力広域的運営推進機関が、9月30日24時までの情報照会、スイッチング(切り替え)の申込み状況を集計したところ、それぞれ全国計で1397.5万件、188.43万件であった。
 
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 全国の世帯数に関する直近のデータとして経済産業省が用いているのは、下に添付した経産省資料によると約6,253万(2015年度の一般家庭等の通常の契約口数)である。これをベースにすると、今のところ、切り替え件数は全体の3.013%、情報照会から切り替えに至るのは13.48%となる。

 因みに、経産省が2015年11月18日に発表した資料では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。

 しかし上述のように、現実はまだまだその域には達していない。予想通りではあるのだが、桁違いに低いのはかなり痛い。図らずも、こうしたアンケート調査には、調査主体の期待感が込もり過ぎる傾向があることを示した格好になってしまった。

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(出所:2016.7.1 経済産業省「小売全面自由化に関する進捗状況」) 

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.116】

2016年10月5日12:30~13:19【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.116】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv277606881

Youtube : https://youtu.be/XxRAU0fAfxI

意外な事実 〜 日本は水力発電で世界8位・石油火力発電で世界2位、ドイツは脱原子力を宣言しながら原子力発電で世界7位・・・

 世界エネルギー機関(IEA)が先月発表した“ Key World Energy Statistics 2016 ”には、2014年における世界のエネルギー動向を示す有用なデータが数多く掲載されている。ここでは、それらのうちの幾つかを見てみよう。

 一次エネルギー供給の推移〔資料1〕と電力供給の推移〔資料2〕を見ると、世界全体ではエネルギー需要が拡大していることもあって、供給量ベースでは、石炭推進、石油推進、天然ガス推進、原子力推進、水力・再エネ推進である。

<資料1:一次エネルギー供給の推移>
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<資料2:電力供給の推移>
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 水力以外の再エネは、“ others ”と一括りになっている。水力以外の再生可能エネルギーである地熱・太陽光・風力などについては、それぞれ単体があまりにも小さいからであろうか、ここには個別の統計は掲載されてない。

 そこで、再エネ発電では単独で圧倒的シェアを占める水力について見てみると〔資料3〕、日本は発電量で世界8位(設備容量では世界6位)になっている。

<資料3:水力発電量の国別順位>
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 “脱原子力”の先進国として日本でもしばしば賞賛報道がなされるドイツは、原子力で世界7位の原子力発電量となっている〔資料4〕。日本が参考にすべきは、「“脱原子力”を宣言しているドイツ」ではなく、「“脱原子力”を宣言していながら実は“脱原子力”を未だ実現していないドイツ」の狡猾さである。

<資料4:原子力発電量の国別順位>
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 最後に、化石燃料発電について見ておこう。原子力発電の正常化がまだまだ遠いと思われる日本は、石炭火力発電で世界4位、石油火力発電で世界2位、天然ガス発電で世界3位となっている〔資料5〕。即ち、日本は今や、化石燃料発電大国なのである。

<資料5:化石燃料発電量の国別順位>
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 日本は、この状態から早急に脱却する必要がある。そのためには、商用可能な再エネ蓄電技術が開発されるまでの間は、一定程度は原子力発電に依存せざるを得ない。

 原子力発電の早期正常化のためには、原子力規制委員会による新規制基準に適切な猶予期間を設定し、新規制基準適合性の審査中であっても原子力発電再開を容認していくよう直ちに運用改善で対応すべきだ

“貫徹小委” 〜 3ヶ月後の結論の数字が既にリークされている・・・

 先月27日に経済産業省・総合エネルギー調査会で、“電力システム改革貫徹のための政策小委員会”という名の審議会が始まった。通称、“貫徹小委”。
 
 年内に中間とりまとめと行い、年明けの次期通常国会での関連法改正案提出を目指すらしい。

 しかし、結論は既に見えている。特に奇妙なのは、この貫徹小委に関する各メディア報道の中で、翌28日付け朝日新聞が、経産省資料にはない具体的な数字を入れた形で報じていること。

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2016.9.28 朝日新聞 
 

 審議会とは、始まる時には結論が概ね決まっているものだ。

 だが、ここまで明らかに着地点を事前リークすることは非常に稀有。

 今回の場合は、12月までの約3か月は、あらかじめ決めていた着地点に着かせるための、いわば“検討したフリをする時間”でしかない。(でしょ???)

 だが、もしそうでないとしたら、それはそれで別の意味で深刻な問題ではある・・・。

☆ニュース配信☆ 「ガス自由化」は「電力自由化」よりも、もっと進みそうにない・・・

「ガス自由化」は「電力自由化」よりも、もっと進みそうにない・・・

Gadgetwear

http://www.gadgetwear.net/2016/09/blog-post_30.html


livedoorニュース

http://news.livedoor.com/article/detail/12086355/


日刊アメーバニュース

http://news.ameba.jp/20160930-929/


BIGLOBEニュース

http://news.biglobe.ne.jp/economy/0930/gdw_160930_2612837683.html



 皆さんは、「ガス小売全面自由化」というのをご存知だろうか? 

 今年4月に「電力小売全面自由化」が始まったことは記憶に新しい。家庭向けの電力小売事業が自由化された。「新電力」という言葉がしばしばマスコミやネット上に登場するが、これは電力自由化による新規参入者のこと。 

 電力自由化の次はガス自由化だ! というわけで、家庭向けの都市ガス小売事業が来年4月に全面自由化される。新規参入者は、さしずめ「新ガス」とでも呼ばれるかもしれない。 

 昨年の今頃は、電力小売事業の全面自由化に関する詳細な制度設計に向けた議論が沸騰していた。主な論点は、(1)送配電線使用料(電力託送料金)の大幅な引下げ、(2)マンション一括契約に係る規制緩和など、大手電力10社の既得権を打破する制度変更案をいかに実現させていくかであった。 

 それに向かって、政・官・学・民が一丸となっていた。そしてその結果、上記の点も含めた大きな制度変更が実現し、9月8日現在で新電力は341社にも上る。 

 来年4月まで残り半年となった今、都市ガス小売事業の全面自由化に関する詳細な制度設計に向けた議論は終盤戦に突入。ところが、この議論は盛り上がりに欠け、電力自由化の話に比べても、大手マスコミの報道も少ない。 

 その理由としては、(1)そもそもガス事業制度を熟知している人が少ないし、的確な改革案を提示できる人はもっと少ない、(2)当たり前のことだが、ガス業界では保守的な声の方が圧倒的に多い、(3)監督当局である経済産業省は、電力業界には非常に厳しいが、ガス業界にはそれほどでもない等々・・・。 

 こうした「空気」のせいもあってか、都市ガス小売市場への大きな参入障壁は歴然と維持されそうなのだ。その筆頭格が、(1)新規参入者が支払うガス導管使用料(ガス託送料金)が高いことや、(2)マンション一括契約が許されないこと。 

 特にガス託送料金については、最大の都市ガス小売市場を持つ東京ガスのガス託送料金が、現状よりも値上げされた水準で申請されている。これは、認可申請している東京ガスがいかなる弁明をしようとも、認可する経済産業省がどのような説明をしようとも、一般庶民には理解も納得もされようがない。 

 今年4月に始まった電力自由化によって、大手電力10社から新電力へ切り替えた一般家庭は、8月末時点で全国6253万世帯のうち168万世帯と、全世帯の2.7%弱。これを多いと見るか少ないと見るかだが、昨年11月の経済産業省の発表によると、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」との調査結果。 

 しかし、現実はそう甘くはない。「新電力」が少ないのには単純だが大きな理由がある。家庭向けの電力小売事業は、それだけを営んでもあまり儲からないのだ。もっとも、都市ガス会社や携帯電話会社が、電力小売との『抱き合わせ販売』をすることで、本業である都市ガスや携帯電話の顧客を繋ぎ止めておくことには多少役立つかもしれない。 

 家庭向けの都市ガス小売事業も同じ。それだけを営もうとしても、天然ガスの調達や安全確保の面でけっこうなコストがかかる。電力会社や石油会社など大手資本でさえ、新規参入はかなり難しいのが実状。 

 事実、都市ガス小売事業への新規参入を予定している事前登録者は、9月8日時点で関西電力と東京電力の2社だけ。昨年9月末時点で電力小売事業への新規参入を予定していた「新電力」の事前登録者が72社もあったことに比べても、「新ガス」の事前登録者数はあまりにも少ない。 

 そういう中で、(1)ガス託送料金が高い、(2)マンション一括契約が許されないなど、「新ガス」にとって都市ガス小売事業への障壁が高過ぎるのだ。 

 せめて、ガス託送料金の大幅引下げや、マンション一括契約に係る規制緩和といった主要論点だけでも突破しなければ、ガス小売全面自由化は、電力小売全面自由化よりも更に期待外れの結果になってしまうはずだ。 

 こんなにも障壁が高い市場には、誰も新規参入できやしない。

月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年10月号:原子力規制は「法治行政」になっていない 異常な状態を早期是正せよ!

 今月28日発売の月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年10月号での連載「石川和男のエネルギー&環境スピークアウト」。

<原子力規制は「法治行政」になっていない 異常な状態を早期是正せよ!>
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【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.115】

2016年9月28日12:30~13:15【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.115】


【ハフィントンポスト寄稿】"原発が安いというのは嘘だった"の嘘

"原発が安いというのは嘘だった"の嘘

 東京電力・福島第一原子力発電所のことは、2011年3月11日の東日本大震災における大津波被災での事故以降、何らか報道されなかった日はない。

 今年9月16日のテレビ朝日・ANNニュースでは、「"国民負担"8兆円超を検討 原発の廃炉・賠償で」と題する報道が放送された。趣旨は次のようなもの。

--- 政府は、原発の廃炉費用などのために新たに8兆円余りを利用者に負担させる
--- 福島第一原発の廃炉4兆円、賠償3兆円、今後の廃炉費用不足分として1.3兆円
--- 標準家庭では毎月60円から180円の値上げが想定
--- 今後費用が足りなくなれば上乗せができるよう法改正へ
--- 原発が安いというのは嘘だった、という批判は避けられそうにない

 この"8兆円"という数字は巨額。だが既に、それ以上の負担を我々国民は強いられてきた。

 震災による福島第一原発事故以来、日本国内の原発は、定期検査などで停止した後、殆ど再稼働していない。だから、原発停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより大方代替してきたのだが、その分の追加燃料費は2011年度から2015年度までで14.4兆円にも上っている(資料1、資料2)。

<資料1:原発停止による燃料費増加の見通し(試算)>
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(出所:資源エネルギー庁・電力需給検証小委員会報告書

<資料2:原発停止に伴う燃料費増加の要因分析>
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(出所:資源エネルギー庁・電力需給検証小委員会報告書

 あの事故による経済社会的な衝撃を考えれば、日本の政治や行政が福島第一原発以外の原発再稼働に関して過敏なくらいに慎重な姿勢になっている気持ちは理解できなくもない。

 今の政府方針は、『新規制基準に合格したと原子力規制委員会が認めたものに限って再稼働させる』というものだが、一応、国民全体に浸透した感じもある。

 しかし、これは実は異常な規制運用。 

 今の日本では、九州電力・川内原発1・2号機や四国電力・伊方原発3号機など一部を除き、いわば"原発全基停止"のまま。(更に、関西電力・高浜原発3・4号機は、いったん再稼働したのだが、地方裁判所の仮処分などにより再度停止。この司法判断に関する評価は別途の場でする。)

 因みに、川内原発を巡って最近、"珍事"が起こった。

 今年7月10日の鹿児島知事選で当選した現・三反園訓知事が九電に対して川内原発の即時停止などを求めたのだ。時系列的に追ってみると、
①8月26日、三反園知事は、九電・瓜生道明社長に川内原発を即時停止・再点検し、避難計画に支援することを要請、
②9月5日、瓜生社長は、即時停止の拒否、特別点検の実施、避難用福祉車両の十数台の追加配備などを盛り込んだ回答書を提出、
③9月7日、三反園知事は、瓜生社長に再要請、
④9月9日、瓜生社長は、即時停止の拒否、特別点検の実施、避難対策の強化(避難道路に繋がるアクセス道路の改善や、30キロメートル圏内の要支援者避難用の福祉車両を更に十数台追加配備することなど)を回答、
⑤三反園知事は、この対応を評価し、再々要請は行わない模様。

 三反園知事のこうした行動は、反原発勢力の人々に過剰な期待を抱かせた後、結局は落胆させただけではないのか。

 案の定、"即時停止"を強制することはできなかった。知事には原発を稼働させたり、停止させたりする権限はない。また、原発は安価安定な電気を大量に供給する電源であり、その停止は、電力会社の経営に痛手というよりは、地域や消費者に取って経済的にも社会的にも大きな痛手となることの方が深刻となる。

 いずれにせよ、今回の三反園知事の行動は、原発問題が、権限のない政治家の政治パフォーマンスとして利用されやすいものであることが改めて浮き彫りにしたものと言える。

 話を戻す。原発事故経験の先輩格である米国(1979年3月、TMI原発事故)や旧ソビエト(1986年4月、チェルノブイリ原発事故)では、事故炉の処理と並行しながら、事故炉以来の原発は通常稼働を継続してきた。

 日本の"原発全基停止"は、米ソ両国の原発事故後の安全対策に関する政策運営の経験からしても、異常極まりないことなのだ。

 火力発電所で事故が起こっても、他の火力発電所が停止に追い込まれることはないし、再稼働するのに直ちに大きな条件を課させることもない。航空機事故が起こっても、他の航空便が欠航することはない。

 交通事故が起こっても、車を運転するな!とはならない。もちろん、事故を踏まえた規制強化への対応は必須だが、それには何年かの猶予期間が必ず設定される。

 こうした国際的にも常識的な規制運用を採ろうとしない日本政府。不安を煽り続けるマスコミ報道に翻弄されながら、昨年度までで既に14.4兆円もの国富が流出してしまった。

 冒頭のテレビ朝日もそうだが、多くのマスコミには、こうした事実を積極的に報じようという姿勢は見られない。与野党の殆どの国会議員も同じ。日本全体が、"発電するのは危険、停止していれば安全"との根拠のない呪縛に囚われている。

 米ソ両国の前例と同じような政策運営をしていれば、14.4兆円の国富流出はなかった。冒頭の報道にある"国民負担8兆円超"があるとしても、2015年度末までだけでも6兆円以上の国富流出が防げていた。

 "原発が安いというのは嘘だった、という批判は避けられそうにない"などという言い方は、マスコミがしばしば使うフレーズの典型。だが、日本政府が国際的にも常識的規制運用さえしていれば、『原発が安いというのは嘘ではなく、真だった』となる。数字は嘘をつかない。

 ところで、福島第一原発事故は、発電中の事故ではなく、停止中の事故である。この事実を認識している人は、果たしてどれほどいるだろうか?

 あの震災の日、福島第一原発(全6基)では、1~3号機は運転中、4~6号機は定期検査のため停止中だったが、14時46分に発生した大地震を受けて運転中の3基は全て自動停止。その後、非常用ディーゼル発電機が起動し、原子炉の安全維持に必要な電源が確保されたが、更にその後に襲来した大津波によって1~4号機へ供給する冷却電源を喪失し、冷却機能が失われた。

 これにより原子炉の圧力容器内の水は蒸発し続け、水面から露出した燃料棒の表面温度が放射線エネルギーの熱変換で生じた崩壊熱により上昇したため、燃料棒の表面が圧力容器内の水蒸気と反応して大量の水素が発生。格納容器の損傷部から漏れ出た水素は、原子炉建屋上部にたまり、何らかの原因により引火して1号機、3号機、4号機がそれぞれ水素と酸素が急激に反応して爆発的な燃焼を起こす水素爆発を起こした。
 
 これが福島第一原発事故の一連の顛末。福島第一原発は被災プラントであり、致命的な破損をした1~4号機だけでなく、軽微な破損だけだった5号機と6号機も、発電を再開することなく廃炉が決まった。福島県の地元感情などを考えれば、仕方ないことかもしれない。

 安倍晋三・自民党現政権は、「いかなる事情よりも安全性を最優先し、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進める」とし、再稼働に当たっては「国も前面に立ち、立地自治体などの関係者の理解と協力を得るよう」取り組む方針を示している。

 問題は、再稼働について「原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合」に限っていること。これが、今の日本社会への多大な実害となって現れている。福島第一原発事故の教訓は、冷却電源喪失による核燃料の安全管理面での機能不全。稼働中だろうと停止中だろうと、核燃料の安全管理に万全な対策をとることが福島第一原発事故の最大の教訓であり、発電を停止させ続けることが安全維持に資するわけではない。

 私は過日、米国の原子力規制委の委員長経験者ら3人と個別に懇談する機会を得た。その際、彼らは日本が福島第一原発事故後に国内原発を全基停止したことや、新規制基準の全てに適合していなければ発電再開を許していないことに大きな疑念を示しながら、早期の発電再開を強く進言してきた。曰く、次の通り。

◎ 原発の安全とは、停止状態によって得られるものではなく、稼働しながらそのスキル、ノウハウを身に着けるものだ。
◎ 1979年にTMI原発事故を経験した米国も、86年にチェルノブイリ原発事故を経験した旧ソ連も、当時国内の他の原発は通常通りに稼働させていたのだが、日本はなぜ事故を起こしていない原発まで停止させているのか?

 原発は、自分の始末に要する資金を自分でためる長期事業なのだ。徒らに停止させ続けることで、原子力技術者の人材が育たなくなる方が、将来的な安全性の確保に支障を及ぼす。原子力安全は、廃炉が完了するまで確保されなければならない。

 そこで一つ提案をしておきたい。政治的にはそう簡単ではないかもしれないが、技術的には発電再開が十分に見込める福島第二原発や柏崎刈羽原発に係る今後の活用方法を考えたい。それは、福島第二原発や柏崎刈羽原発をフル活用することにより生じる収益を、福島を始めとして全国的に還元すること。

 端的に言えば、福島第二原発は廃炉までの間、全4基のフル稼働により年間最大5000億円程度の収益を生み出す。柏崎刈羽原発(1〜7号機の全7基)について、同様の試算をすると、年間最大1兆円程度の収益を生み出す。

 これらの収益分については、将来の廃炉費用に充てる分の他に、
(1)福島第一原発の廃炉や汚染水対策、
(2)福島県内の再エネ関連投資費用や再エネ賦課金の肩代わり費用、
(3)福島県内の電気料金値下げ原資
などに優先的に活用すれば、福島支援にも大きく貢献できるはず。

 原発を正しくやめるためには、円滑な廃炉や地域への貢献を進めていく上で必要なヒト・モノ・カネを周到に準備することが不可欠だ。

 万が一の事故に対する地域住民の避難計画の早期策定や、過酷事故時の的確な国家賠償制度の創設に関する検討と並行して、
(1)新規制基準の適用に5~10年程度の適切な猶予期間を設け、
(2)原子力規制委の審査前であっても審査中であっても、早期の発電再開を容認することにより、
(3)安全投資のための資金を原発事業でしっかりと確保させながら、
(4)将来必ず行うべき円滑な廃炉による安全な脱原発へと軌道を回復させていくこと

が緊要である。

 少子高齢化に伴う社会保障コスト増に対応するための消費増税(8%→10%)は、年間5.2兆円の国民負担増。これについては、増税延期を掲げた安倍政権・与党が先の参院選で大勝した。つまり、国民は年間5.2兆円の負担増を嫌い、あっさり否定した。

 ところが、原発停止で必要な追加燃料費の年間3兆円前後で、それに再エネ普及費を含めると、既に年間5兆円を超えるエネルギーコスト負担増となっている。

 だが、これについては、国会筋からも、政府筋からも、マスコミ筋からも、今も殆ど反対の声は聞こえてこない。震災以降の日本国内では、国民どうしが原発賛否を巡って"巨額な消耗戦"を繰り広げているようなものだ。

 そんな状況をいったいいつまで続けようというのか?

 原発に関しては、安全に使い切るまで利用し続けることが、結局は安価で安全に上がるのだ。

2016年度の再エネ買取総額:2016年5月までの累計は3800億円(対前年比1050億円)

 資源エネルギー庁が定期的に更新している再生可能エネルギーに関する『固定買取価格制度 情報公表用ウェブサイト』によると、今年5月末時点における再エネ発電設備に係る買取電力量・買取金額は、それぞれ資料1・資料2の通り。

<資料1:買取電力量(万kWh)>
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(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

<資料2:買取金額(億円)>
00
(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

 エネ庁が今年3月に公表した「再生可能エネルギーの平成28年度の買取価格・賦課金単価」の概要は資料3の通り。

 これによると、2016年度では、再エネ買取額は年間2兆3000億円、再エネ賦課金は年間1兆8057億円と見込んでおり、再エネ賦課金単価は1kWh当たり2.25円(標準家庭(1ヶ月の電力使用量300kWh)で月額675円、年額8,100円)。

<資料3>

 今年5月まで2ヶ月間の買取額は3799億円(対前年比1046億円)。今年度の残り10ヶ月(今年6月~来年3月)が同じ程度で推移すると仮定すれば、今年度の買取額は2兆2794億円となり、現時点のデータでは約206億円未達のペース。

 これはあくまでも単純計算に過ぎない。太陽光や風力は天候に左右されるので、実際にどうなるかはわからない。増えるかもしれないし、減るかもしれない。この買取額分は、再エネ導入のための電力消費者からの“補助金”のようなものであるが、その多寡に関する価値観は個々人で大きく異なるのだろう。

【iRONNA寄稿】もんじゅ廃炉で誰が一番得をしたか? 弱すぎる日本のエネルギー政治

もんじゅ廃炉で誰が一番得をしたか? 弱すぎる日本のエネルギー政治


・・・「原発がなくても大停電は起こっていない。電力供給の安定は保たれている。だから、原発は電力の安定供給には必要ない!」 ——— 脱原発・反原発を叫ぶ勢力には、こういう論調は歴然とある。だが、それが大きな誤解であることを証明する事態が最近起きた・・・



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【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.114】

2016年9月21日12:30~13:16【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.114】




<番組内アンケート結果>
Q:再エネ電気を積極的に買いたいか?
A:はい21.9%、いいえ61.0%、わからない17.0%

 

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.113】

2016年9月14日12:30~13:18【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.113】


ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv275585641

Youtube : https://youtu.be/GV4l6pes5_o

☆Yahoo!ニュース配信☆ 期待外れの「電力自由化」よりも期待外れになる「ガス自由化」

期待外れの「電力自由化」よりも期待外れになる「ガス自由化」

Yahoo!ニュース
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160913-00010000-mediagong-ent

エキサイトニュース
http://www.excite.co.jp/News/society_clm/20160913/Mediagong_19101.html

インフォシークニュース
http://news.infoseek.co.jp/article/mediagong_19101/

マイナビニュース
http://news.mynavi.jp/news/2016/09/13/086/



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 皆さんは、「ガス小売全面自由化」というのをご存知だろうか?

 今年4月に「電力小売全面自由化」が始まったことは記憶に新しい。家庭向けの電力小売事業が自由化された。「新電力」という言葉がしばしばマスコミやネット上に登場するが、これは電力自由化による新規参入者のこと。

 電力自由化の次はガス自由化だ! というわけで、家庭向けの都市ガス小売事業が来年4月に全面自由化される。新規参入者は、さしずめ「新ガス」とでも呼ばれるかもしれない。

 昨年の今頃は、電力小売事業の全面自由化に関する詳細な制度設計に向けた議論が沸騰していた。主な論点は、(1)送配電線使用料(電力託送料金)の大幅な引下げ、(2)マンション一括契約に係る規制緩和など、大手電力10社の既得権を打破する制度変更案をいかに実現させていくかであった。

 それに向かって、政・官・学・民が一丸となっていた。そしてその結果、上記の点も含めた大きな制度変更が実現し、9月8日現在で新電力は341社にも上る。

 来年4月まで残り半年となった今、都市ガス小売事業の全面自由化に関する詳細な制度設計に向けた議論は終盤戦に突入。ところが、この議論は盛り上がりに欠け、電力自由化の話に比べても、大手マスコミの報道も少ない。

 その理由としては、(1)そもそもガス事業制度を熟知している人が少ないし、的確な改革案を提示できる人はもっと少ない、(2)当たり前のことだが、ガス業界では保守的な声の方が圧倒的に多い、(3)監督当局である経済産業省は、電力業界には非常に厳しいが、ガス業界にはそれほどでもない等々・・・。

 こうした「空気」のせいもあってか、都市ガス小売市場への大きな参入障壁は歴然と維持されそうなのだ。その筆頭格が、(1)新規参入者が支払うガス導管使用料(ガス託送料金)が高いことや、(2)マンション一括契約が許されないこと。

 特にガス託送料金については、最大の都市ガス小売市場を持つ東京ガスのガス託送料金が、現状よりも値上げされた水準で申請されている。これは、認可申請している東京ガスがいかなる弁明をしようとも、認可する経済産業省がどのような説明をしようとも、一般庶民には理解も納得もされようがない。

 今年4月に始まった電力自由化によって、大手電力10社から新電力へ切り替えた一般家庭は、8月末時点で全国6253万世帯のうち168万世帯と、全世帯の2.7%弱。これを多いと見るか少ないと見るかだが、昨年11月の経済産業省の発表によると、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」との調査結果。

 しかし、現実はそう甘くはない。「新電力」が少ないのには単純だが大きな理由がある。家庭向けの電力小売事業は、それだけを営んでもあまり儲からないのだ。もっとも、都市ガス会社や携帯電話会社が、電力小売との『抱き合わせ販売』をすることで、本業である都市ガスや携帯電話の顧客を繋ぎ止めておくことには多少役立つかもしれない。

 家庭向けの都市ガス小売事業も同じ。それだけを営もうとしても、天然ガスの調達や安全確保の面でけっこうなコストがかかる。電力会社や石油会社など大手資本でさえ、新規参入はかなり難しいのが実状。

 事実、都市ガス小売事業への新規参入を予定している事前登録者は、9月8日時点で関西電力と東京電力の2社だけ。昨年9月末時点で電力小売事業への新規参入を予定していた「新電力」の事前登録者が72社もあったことに比べても、「新ガス」の事前登録者数はあまりにも少ない。

 そういう中で、(1)ガス託送料金が高い、(2)マンション一括契約が許されないなど、「新ガス」にとって都市ガス小売事業への障壁が高過ぎるのだ。

 せめて、ガス託送料金の大幅引下げや、マンション一括契約に係る規制緩和といった主要論点だけでも突破しなければ、ガス小売全面自由化は、電力小売全面自由化よりも更に期待外れの結果になってしまうはずだ。

 こんなにも障壁が高い市場には、誰も新規参入できやしない。
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