【iRONNA寄稿】知らなきゃ危ない、どこまでも膨らむ原発コストの「現実」

知らなきゃ危ない、どこまでも膨らむ原発コストの「現実」

 2022年までに「脱原子力」を目指しているドイツでは2016年10月、原子力発電所から出る使用済燃料の中間貯蔵と最終処分に要する経費として計236億ユーロ(約2.9兆円;1ユーロ=122円で換算。以下同じ)を四大電力会社に支払わせる法案が政府決定された。議会での審議を経て、年内での成立が目指されている。

 具体的には、中間貯蔵施設と処分場の建設・操業事業については政府に移管するが、それに要する費用については電力会社に負担させようという内容。四大電力会社は、①使用済燃料の専用格納容器である「キャニスター」とその中間貯蔵施設の製造、最終処分場の建設・操業に必要な174億ユーロ(約2.1兆円)を政府が設ける新たな基金に直ちに拠出する、②2022年末までに62億ユーロ(約0.7兆円)を追加で拠出する、③これらの支払完了後には、更なる支払義務を負わせない、というもの。

 そして、将来的な中間貯蔵と最終処分に係る経費の調達については、政府が責任を負うことになる。放射性廃棄物の管理事業に係る官民の責任分担を明確にすることが目的であるこの法案の内容は、廃棄物管理コストを電力会社に全額負担させるとの従来からの政府方針を覆すものでもある。(以上、原子力産業新聞その他専門紙より一部引用)

 では、日本はどうなっているのだろうか? 
 
 端的に言えば、ドイツのような明確な官民の費用負担区分はない。日本では、使用済燃料の管理事業は電力会社に全面的に委ねられており、管理コストも電力会社の拠出によることが原則となっている。最終処分に関しても同様だ。

 日本では、原子力発電所敷地内の使用済燃料貯蔵設備の増容量化や、中間貯蔵施設の建設・活用などの対策を実施することで、青森県六ヶ所村の日本原燃・六ヶ所再処理工場への搬出に加えて、電力業界全体で2020年頃までに約4000トン、2030年頃までに約2000トンで、合計約6000トン(2016年9月末時点の各発電所貯蔵量合計の約4割相当)の貯蔵対策を目指すことになっている。

 東京電力と日本原子力発電が使用済燃料を搬出することとしている中間貯蔵施設(青森県むつ市)は、2018年後半の事業開始を予定。関西電力は、2020年頃に中間貯蔵施設の建設計画地点を確定し、2030年頃には2000トン規模で操業開始する計画。原子力発電所の敷地内のプールで5年ほど冷やした使用済燃料を金属製の容器(キャスク)に密封して空気で冷却する「乾式貯蔵」による中間貯蔵施設については、中部電力で2018年の使用開始を目指して建設計画が進められている。

一見、民間企業である電力会社だけが進めているように見えるが、それは無理筋というもの。中間貯蔵施設や最終処分場の選定に当たっては、政府・経済産業省が主導的に決めていかなければならないし、現にそういう方針になっている。

 選定場所が清々しい気持ちで決まることがあるとはとても思えない。選定場所がどこになろうとしても、猛反対運動が起こり、それが続いていくことは容易に予想される。国が前面に出て進めていく必要があるのには、こうした理由もある。

 原子力発電事業のうち、核燃料の製造や原子力発電所の運転は「フロントエンド事業」と呼ばれ、使用済燃料の再処理や放射性廃棄物の処分、原子炉の廃炉事業は「バックエンド事業」と呼ばれる。使用済燃料の中間貯蔵や放射性廃棄物の最終処分は、「バックエンド事業」である。

 原子力発電に使用されるのは核燃料(ウラン)であるが、発電により使用されるのは全体の3~5%で、残り95~97%は再利用できる核燃料(ウラン、プルトニウム)を含んだもの。この残ったものが使用済燃料で、それを「再処理」してウランとプルトニウムを採取する。この採取されたウランとプルトニウムを用いて「MOX燃料」という燃料に加工し、これを再び原子力発電所で使用する一連の工程が「核燃料サイクル」である。国内に現存する1万7000トンの使用済燃料は有用な国産資源なのだ。

 再処理の過程では、ウランとプルトニウムが採取された後に液状の廃棄物が生じるが、この廃棄物は放射能レベルが高いことから「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる。日本では、高レベル放射性廃棄物については、ガラスと混ぜて固化処理することになっている。使用済燃料を再処理せずにそのまま処分することを「直接処分」と呼ぶが、その場合には、使用済燃料そのものを高レベル放射性廃棄物の扱いで処理する必要がある。

 高レベル放射性廃棄物は最終的にどこかの場所に処分されなければならないが、日本では、ガラスと混ぜて固化処理されたもの(ガラス固化体)を地下300メートル以深に埋めることが有力視されている。これが「最終処分」であるが、ガラス固化体は当初高温なので、それを冷却するために地上に「中間貯蔵」しておく必要がある。ガラス固化体の中間貯蔵の期間は30~50年とされており、その後に最終処分される。その場所こそ、「最終処分場」である。

 原子力発電事業は、開始から終了まで相当に永い期間を要する。全体で何年を要するのか、人類の誰も経験していないので正確なところはわからない。特にバックエンド事業に関しては、高レベル放射性廃棄物の最終処分の場所の選定だけでなく、国内における使用済燃料の再処理が円滑に進んでいないことなどの理由から、原子力事業全体が「破綻」しているのではないかとの懸念が流布されている。

 そこで、バックエンド事業の主な工程のうち、使用済燃料の再処理の前後について、予定通りに事が進まないことを見据えて柔軟な政策運営を企図することが必要となる。

 そのため、①再処理前の中間貯蔵(使用済燃料を再処理する前の中間貯蔵)と、②再処理後の中間貯蔵(使用済燃料を再処理した後のガラス固化体を最終処分するまでの中間貯蔵)について、それぞれ1年延長するための費用を試算しておく。

①再処理前の中間貯蔵
<a> プール貯蔵(湿式貯蔵)を1年間行うことに要する費用:年間35億円
…概算値として、使用済燃料5000トンに係るプール貯蔵の運転費1395億円を40年で均等で支出するものと仮定すれば、年間35億円(=1395億円÷40年)となる。
数値の出所:総合エネルギー調査会原子力部会中間報告(H10.6.11)中の「参考10 貯蔵施設の経済性試算について」)
 
<b> キャスク貯蔵(乾式貯蔵)を1年間行うことに要する費用:年間6億円
…概算値として、使用済燃料5000トンに係るキャスク貯蔵の運転費1200億円を5施設、保守的に40年で均等で支出するものと仮定すれば、年間6億円(=1200億円÷5施設÷40年)となる。
数値の出所:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書(H16.1.23)中の資料2〔使用済燃料の中間貯蔵(キャスク貯蔵)費用の内訳〕)
 
②再処理後の中間貯蔵
<c> ガラス固化体の貯蔵を1年間行うことに要する費用:年間96億円
…上記<a>、<b>の試算の前提とした使用済燃料5000トンと同等のガラス固化体は約6300本と試算されるので、ガラス固化体2880本と同規模の施設は2.5ヶ所必要になると仮定。管理費用のうち「貯蔵費 運転保守費」と「貯蔵費 その他諸経費」の合計1540億円が対象となるので、ガラス固化体約6300本を1年間貯蔵する費用は、年間96億円(=1540億円×2.5施設÷40年)となる。
数値の出所:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書(H16.1.23)中の資料3〔返還高レベル放射性廃棄物管理費用の内訳〕)

 以上は、政府資料に基づいて行った一つの試算でしかない。政治や行政はうかうかしていてはいけないが、最終的に必要となる費用を確保するための手段を臨機応変に用意しておくべきである。こうした超長期的視野に立った幅のある政策運営を行うことが、もっとも現実的な『原発ゴミの正しい処し方』となろう。

 日本の原子力発電の稼働率は、諸外国に比べて相当に低いと言わざるを得ない。特に震災以降はほぼゼロで推移してきている。ここ10年程度での概ねの推移を見ると、欧米や韓国での稼働率は80~90%台だが、日本は震災前の2003~2010年までを見ても、70%未満でしかない。日本の原子力発電の稼働率を欧米並みに引き上げることで、これまで遅れに遅れてきた再処理や最終処分に係る費用に充てるための原資を捻り出すことを検討していくべきだ。

 こうした追加費用の総額は、使用済燃料を再処理するまでの期間や、ガラス固化体の中間貯蔵の期間を、最終的にどの程度にまで見込んでおくかにもよる。原子力発電からの収益をあらかじめ引き当てておくことで凌いでいける水準だと思われる。

 いわゆる「トイレなきマンション」説は、政府を急かす材料にはなるだろうが、本質的な危機を招くものにはならない。使用済燃料を再処理する前と後で、それらの貯蔵に係る時間軸をどのように設定するかが鍵となる。

月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2017年1月号:38歳の“誕生日”迎えた東海第二原発 その正しい「生かし方とやめさせ方」

 先月28日発売の月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2017年1月号での連載「石川和男のエネルギー&環境スピークアウト」。

<38歳の“誕生日”迎えた東海第二原発 その正しい「生かし方とやめさせ方」>52

01

13
 

☆石川和男のエネルギーCh(チャンネル) vol.2

2017年1月19日17:00〜17:45

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv287823111

YouTube : https://youtu.be/RdxtyG7gBzQ

2016年のドイツ電源構成 〜 再エネ29.5%、石炭40.1%、原子力13.1%、天然ガス12.1%・・・

 今月6日にドイツ Agora Energiewende が発表した報告書(ドイツ語版英語版)よると、ドイツの2016年における電源別発電電力量は、再エネ29.5%、石炭40.1%、原子力13.1%、天然ガス12.1%、その他5.1%だった(資料1)。

 このうち再エネの割合が最大となったが、その内訳について再エネ29.5%を全体とすれば、風力12.3%(陸上風力10.3%、洋上風力2.0%)、バイオマス8.0%、太陽光5.9%、水力3.3%であった(資料1)。

<資料1>
22


 ドイツでは、エネルギー環境政策上の要請から脱原子力・脱石炭が進められている。実際、2010年から2016年までの電源構成の推移を見ると、再エネと天然ガスは増加傾向で、原子力と石炭は減少傾向となっている(資料2、資料3)。

<資料2>
32
The energy transition in the power sector : State of affairs 2016

<資料3>
42
The energy transition in the power sector : State of affairs 2016


 ドイツ国内の電力総需要は前年比0.4%減(5927億kWh(592.7TWh))であったが、電力輸出量が前年比8.6%増(555億kWh(55.5TWh))となったことから、総発電電力量は0.2%増で過去最高の6482億kWh(648.2TWh)となった(資料4)。

<資料4>
04
The energy transition in the power sector : State of affairs 2016


 “再エネ大国”でもあるドイツでは、総エネルギー消費に占める再エネの割合は年々増加してきており、2016年では32.3%と過去最高を更新した(資料5)。

 再エネ発電電力量の内訳に関しては、水力の推移は長期的にもほぼ横這いだが、風力・バイオマス・太陽光の伸びは顕著となっている(資料6)。

 特筆すベきこととして、2016年5月8日13時に電力需要に占める再エネ割合が過去最高の86.3%を記録した。因みに、その割合が最低だったのは同年1月21日17時の11%であった(資料7)。


<資料5>
27
The energy transition in the power sector : State of affairs 2016

<資料6>
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The energy transition in the power sector : State of affairs 2016

<資料7>
51
The energy transition in the power sector : State of affairs 2016

電力会社の切り替え:12/31集計で257万件(全世帯の4.1%程度)

 電力広域的運営推進機関が、12月31日24時までの情報照会、スイッチング(切り替え)の申込み状況を集計したところ、それぞれ全国計で1985.12万件、257.45万件であった(資料1)。
 
<資料1> 
32
 全国の世帯数に関する直近のデータとして経済産業省が用いているのは約6,253万で、これは2015年度の一般家庭等の通常の契約口数(資料2)。これをベースにすると、今のところ、切り替え件数は全体4.12、情報照会から切り替えに至るのは12.97%となる。

 経産省が2015年11月18日に発表した資料では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。

 しかし上述のように、現実はまだまだその域には達していない。予想通りではあるのだが、桁違いに低いのはかなり痛い。図らずも、こうしたアンケート調査には、調査主体の期待感が込もり過ぎる傾向があることを示した格好になってしまった。

<資料2>
41

 因みに、電力自由化から一定程度時間の経過した欧州では、年間切替え率について、スペインやイギリスなど9カ国で10%を超える一方で、フランスやデンマークなど5%未満の国も同程度存在しているようだ(資料3)。

 この年間切替え率は、電力自由化の進捗状況を表す指標の一つではある。

 だが、電力自由化が『低廉かつ安定な電力供給システムの水準』を維持・向上させるものかどうかは、実は甚だ覚束ない。少なくとも欧米の先行例から見ると、むしろ失策であったと言わざるを得ない。

 それは、このブログで何度も掲載したことだが、欧米諸国の電気料金水準の動向を見れば一目瞭然である。

<資料3>

2016年の世界全体の再エネ投資は前年比18%減 〜 中国・日本は大幅減、欧州は微増・・・

 昨日のTwitterでも書いたが、同日の Bloomberg の記事で、Bloomberg New Energy Finance の調査によると、2016の再生可能エネルギー向け投資額は、中国と日本の投資減の影響で前年比18%減の2875億ドル(1ドル115円換算で約33兆円)だったと報じられている。

<調査結果概要>
・中国で26%減
・日本で43%減
・アジア太平洋全体で26%減
・欧州で3%増
・米国で7%減
・洋上風力は40%増
・洋上&陸上風力は11%減
・太陽光は32%減

 以上、世界の再エネ投資は一時的に減ったようだが、特に心配はいらないだろう。もうじきまた増える。

04
2017.1.12 Bloomberg

風力発電 〜 珍しい“逆風”報道2つ

 今日は、風力発電に対する“逆風”報道が2つもあったので以下に紹介しておく。

 再生可能エネルギーに対する真っ当な批判が報じられることは珍しいことであるが、盲目的な賛辞の雨霰だけではなく、適切な批判が起こることは、再エネ市場の健全な発展にとってはとても重要なことだ。


山口新聞:下関洋上風力発電、市民と業者協議へ 反対署名10万人超
53

<記事概要>
・下関市安岡沖で前田建設工業が計画している洋上風力発電事業を巡り、建設に反対する自治会連合会や市民団体が事業反対の要望書と10万765人分の署名を中尾友昭市長に提出。
・市長は、同社の環境影響評価準備書に関する市環境審議会の答申を受けた後、市長立ち会いで同社と市民が話し合う場を設ける考えを示した。
・安岡自治会連合会長「従来の計画は(風車が)住宅地からわずか1.5キロの近さで国内や海外でも例を見ない非常識なもの。ぜひ反対を表明してほしい」
・市長「市長として審議会に審議をお願いしている以上、答申前に反対や賛成を言える立場にない」、「たくさんの署名が集まったことを重く受け止めている。皆さんの不安を解消し、快適で住みよいまちをつくるのが市長の仕事で、最大限努力したい」


 伊勢新聞:「土砂災害の危険性高い」 松阪市の風力発電施設計画 環境影響評価委が答申
03

<記事概要>
・松阪市環境影響評価委員会の朴恵淑会長は、竹上真人市長に、白猪山周辺で計画している風力発電施設「松阪飯南ウィンドファーム発電所」について答申。
・答申「急俊な地形であることに加え風化した岩石が堆積し、過去より土砂崩れなどによる甚大な被害が発生している」。「土砂災害発生のリスクは高い」として、地域特性を考慮した予測や設置後の調査の継続、住民の合意を求めた。
・市長「特に心配なのが工事中に雨が降ったらどうなるか。市長意見に土砂災害をどこまで入れるか難しい」 

☆石川和男のエネルギーCh(チャンネル) vol.2

2017年1月5日17:00〜17:53

☆ニュース配信☆ 2017年のドイツでの電気料金 〜 税・再エネ賦課金の割合が54%で過去最高

2017年のドイツでの電気料金 〜 税・再エネ賦課金の割合が54%で過去最高

Gadgetwear
http://www.gadgetwear.net/2017/01/2017-54.html

日刊アメーバニュース
http://news.ameba.jp/20170105-105/

BIGLOBEニュース
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0105/gdw_170105_0963864289.html

livedoorニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/12498778/


2017年のドイツの家庭向け電気料金に係る再生可能エネルギー賦課金単価は 6.88ct/kWh で、前年比8.5%増の約7.8円/kWh(1ユーロ=115円で換算)になる見込み。

これは、先月24日のBDEW(ドイツ連邦エネルギー・水道事業連合会)の発表
にも掲載されている(資料1、資料2)。 

<資料1> 
2016.11.24 BDEW

<資料2> 
2016.11.24 BDEW

ここでは更に、2017年のドイツにおける標準家庭(年間消費量3500kWh)の電気料金に占める税・再エネ賦課金の割合が54%で過去最高を更新すると見通されている。(資料3、資料4)。 

<資料3> 
2016.11.24 BDEW

<資料4> 
2016.11.24 BDEW

ドイツは1998年に電力市場を自由化し、電気料金を市場原理により決まる仕組みに変更した。但し、再エネについては例外で、固定価格買取制度(FIT)により投資回収を保証し、かつ、優先的に買い取る仕組みを敷いた。再エネは、いわば“規制化”によって普及が促進されてきた。 

1998年から2016年までのドイツの電気料金の推移を見ると、発送電・小売に係るコストは緩やかな上昇傾向であるが、税金・再エネ賦課金その他の義務的経費は顕著な伸びを示している。 

2011年以降では特に再エネ賦課金の伸びが著しく、2013年以降では義務的経費が電気料金に占める割合は5割を超えて伸びつつあることがわかる。特に、再エネ賦課金の割合が相当大きいことが見て取れる。 

日本の再エネ政策はドイツを雛形としている部分が非常に多く、まさにドイツの“全面自由化+再エネFIT”と同じ路線を歩もうとしているように見える。 

2017年を含めた先行国ドイツのここ20年間の経過を見ると、今のままの予定では、日本もドイツと同じ軌跡を辿っていく可能性が極めて高い。これは非常に危険である。

太陽光関連事業者 〜 2016年の倒産件数は過去最多

 今朝の毎日新聞ネット記事では、2016年の太陽光関連事業者の倒産件数が東京商工リサーチの調査で過去最多となったとのこと。

<記事概要>
・16年1~11月で55件に達し、15年の54件を既に上回った。
・負債総額223億1600円で、15年の213億5500万円を上回った。
・倒産原因は「販売不振」が全体の50%、「事業上の失敗」が19%、「運転資金の欠乏」が14%。

 この話題は、先月30日付け愛媛新聞などで既報(資料1、資料2)。

 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による買取価格が段階的に引き下げられたため市場拡大のペースが鈍った他に、事業者乱立で競争激化したことが背景と分析されている。

 これも“太陽光バブル”の一側面であり、いわゆる『既認定未稼働』に係る問題の解決もまだまだ時間がかかると見込まれる。2015年末時点で、FITに基づく2012
~13年度の認定
案件のうち34万件が未稼働のまま。

 太陽光発電についても、市場の育成は永い眼で考えていくべきもの。太陽光関連事業者が電力市場やエネルギー市場の主役に躍り出られるほどの技術力や資本力を得るには、相当長期を要するであろう。

 尚、それに関しては、同日付けTwitterでも書いたところ。



<資料1>
27
2016.12.30 愛媛新聞


<資料2>
37
2016.12.30 愛媛新聞 

☆石川和男のエネルギーCh(チャンネル) vol.1

2017年1月5日17:00〜17:52

ニコ生 http://live.nicovideo.jp/watch/lv286391113?platform=hootsuite

YouTube https://youtu.be/zLtrK7s8_Qo


C1Y7dBZUAAAT517

 

太陽光発電コスト 〜 今後10年以内に石炭を下回るとの予測は出ているが・・・

 先月15日付け Bloomberg “World Energy Hits a Turning Point: Solar That's Cheaper Than Wind” では、中国・インド・ブラジルを含む新興国58ヶ国での太陽光発電コストは、もうじき風力発電コストを下回るだろうと報じている(資料1)。

<資料1>
26
2016.12.15 Bloomberg


 今月3日付け Bloomberg “
Solar Could Beat Coal to Be the Cheapest Power on Earth” では、今後10年以内に世界の平均的な太陽光発電コストは石炭火力発電コストを下回るだろうと報じている(資料2)

<資料2>
49
2017.1.3 Bloomberg


 上記の記事中、太陽光発電コストの低下に関する指摘としては、次のようなものがある。

◎New Energy Finance「現在の1.14ドルと比して、2025年までに73セントになる」
◎GTM Research「2021年には75セント下がる」
◎NREL「2020年までに1.20ドルが1ドルに低下する」
◎IEA「発電コストは今後5年間で平均25%低下する」 
◎IREA「2025年までに43〜65%の更なるコスト低下、対2009年比で84%のコスト低下」

《原文より抜粋》 
The average 1 megawatt-plus ground mounted solar system will cost 73 cents a watt by 2025 compared with $1.14 now, a 36 percent drop, said Jenny Chase, head of solar analysis for New Energy Finance.
GTM Research expects some parts of the U.S. Southwest approaching $1 a watt today, and may drop as low as 75 cents in 2021, according to its analyst MJ Shiao.
The U.S. Energy Department’s National Renewable Energy Lab expects costs of about $1.20 a watt now declining to $1 by 2020. By 2030, current technology will squeeze out most potential savings, said Donald Chung, a senior project leader.
The International Energy Agency expects utility-scale generation costs to fall by another 25 percent on average in the next five years. 
The International Renewable Energy Agency anticipates a further drop of 43 percent to 65 percent for solar costs by 2025. That would bring to 84 percent the cumulative decline since 2009.(資料3)
 
<資料3>
06
2017.1.3 Bloomberg


 太陽光発電コストが競争的に低下していくことは、世界の太陽光発電市場の健全な発展にとっても望ましいこと。

 だが、固定価格買取制度(FIT)に代表される規制的手法による投資回収システムから、完全な自由化市場での投資回収システムに移行したとしても、太陽光発電ビジネスが持続可能になるかどうか、また、もしそういう日が来るかとしたらそれはいつか、現時点では予測できない。

 太陽光や風力のような天候に左右される不安定電源を、広く一般的な電力系統に組み込んでいくには、商用可能な蓄電システムないしそれに比肩し得る仕組みが実用化されるまでは、FITやRPS(電力会社に対する一定量以上の再エネ電気利用の義務付け)のような規制的手法が必須となるはずだ。

 尚、外国での太陽光発電に関する報道では、下記のような広大な平地に敷き詰められた太陽光パネル群がしばしば掲載されるが、これはあくまでも外国での話。日本では、こうした広大な平地であって日照条件の好い場所を見つけることは、非常に難しい。

07
2017.1.3 Bloomberg

2017年のドイツの家庭向け電気料金:税・再エネ賦課金の割合が54%で過去最高を更新・・・

 先のブログ記事で既報のように、2017年の
ドイツの家庭向け電気料金に係る再生可能エネルギー賦課金単価は 
6.88ct/kWh で、前年比8.5%増の
約7.8円/kWh(1ユーロ=115円で換算)になる見込み。

 これは、先月24日のBDEW(ドイツ連邦エネルギー・水道事業連合会)の発表にも掲載されている(資料1、資料2)。


<資料1>
00
2016.11.24 BDEW

<資料2>
40
2016.11.24 BDEW

 ここでは更に、2017年のドイツにおける標準家庭(年間消費量3500kWh)の電気料金に占める税・再エネ賦課金の割合が54%で過去最高を更新すると見通されている。(資料3、資料4)。


<資料3>
30
2016.11.24 BDEW

<資料4>
56
2016.11.24 BDEW

 ドイツは1998年に電力市場を自由化し、電気料金を市場原理により決まる仕組みに変更した。但し、再エネについては例外で、固定価格買取制度(FIT)により投資回収を保証し、かつ、優先的に買い取る仕組みを敷いた。再エネは、いわば“規制化”によって普及が促進されてきた。

 先のブログ記事など見るとわかるように、1998年から2016年までの電気料金の推移を見ると、発送電・小売に係るコストは緩やかな上昇傾向であるが、税金・再エネ賦課金その他の義務的経費は顕著な伸びを示している。

 2011年以降では特に再エネ賦課金の伸びが著しく、2013年以降では義務的経費が電気料金に占める割合は5割を超えて伸びつつあることがわかる。特に、再エネ賦課金の割合が相当大きいことが見て取れる。
 
 日本の再エネ政策はドイツを雛形としている部分が非常に多く、まさにドイツの“全面自由化+再エネFIT”と同じ路線を歩もうとしているように見える。

 2017年を含めた先行国ドイツのここ20年間の経過を見ると、今のままの予定では、日本もドイツと同じ軌跡を辿っていく可能性が極めて高い。これは非常に危険である。

米国:2016年上半期のエネルギー由来CO2排出量は1991年以来最低・・・

 昨日の米国EIA(Energy Information Administration;エネルギー情報局)の発表によると、米国における2016年上半期のエネルギー由来CO2は、穏やかな天候や発電分野での燃料構成の変化により、1991年以来最低であったとのこと。

《原文より抜粋》
U.S. energy-related carbon dioxide (CO2) emissions totaled 2,530 million metric tons in the first six months of 2016. This was the lowest emissions level for the first six months of the year since 1991, as mild weather and changes in the fuels used to generate electricity contributed to the decline in energy-related emissions. 


 具体的には、次の通り。

 ① 1949年以降で冬場の暖房需要が最低だったことで、天然ガス・石油・電力の消費が減り、一次エネルギー総消費量が前年同期比▲2%(住宅部門で同▲9%、電力部門で同▲3%)であった。

 ② ガソリン価格の低下によって石油の消費量が+1%だったにもかかわらず、CO2排出量が最多である石炭の消費量が前年同期比▲18%であり、天然ガスの消費量は▲1%であった(資料1)。


<資料1>
48
2016.12.29 EIA

 ③ 再生可能エネルギーの消費量は、対前年同期比+9%であった(資料2)。西海岸の旱魃が緩和され、水力発電電力量の増加量が再エネ発電電力量の増加量の35%を占めた。また、風力発電設備の増加量が全電源設備の増加量の約半分に至ったことや、太陽光発電設備の増加量が全電源設備の増加量の13%であったことも挙げられる。

<資料2>
03

2016.12.29 EIA 

ドイツ:2015年の再エネ電気の割合は3割超だが・・・

 今月14日にドイツ連邦経済エネルギー省が発表した『エネルギー転換に関するモニタリング・レポート』の概要版によると、ドイツにおける2015年までの再生可能エネルギーへの転換に関する主な動向は、概ね次のようなもの。

(1)総エネルギー消費に占める再エネ比率は上昇傾向にあり、2015年実績は14.9%であった。2020年目標は18%とされている。
48


(2)総電力消費に占める再エネ比率は上昇傾向にあり、2015年実績は31.6%であった。2020年目標は35%とされている。

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(3)一次エネルギー消費量は若干減少傾向にあり、2015年実績は対2008年比で▲7.6%であった。2020年目標は▲20%とされている。


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(4)建物での熱需要に係る最終エネルギー消費量は増減を繰り返しており、2015年は対2008年比で▲11.1%であった。2020年目標は▲20%とされている。

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(5)運輸部門での最終エネルギー消費量は微増傾向にあり、2015年実績は対2008年比で+1.3%であった。2020年目標は▲20%とされている。

33


(6)温室効果ガス排出量は減少傾向にあり、2015年実績は対1990年比で▲27.2%であった。2020年目標は▲40%とされている。

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(7)再エネ導入拡大にとって必要となる送電網の整備状況については、2016年時点で達成率は35%だが、これは依然として低い。

《原文より抜粋》
Der beschlossene Netzausbau muss zügig umgesetzt werden. Der Anteil der bis Ende des dritten Quartals 2016 realisierten EnLAG-Vorhaben ist mit rund 35 Prozent noch immer zu gering.
41


 以上のことから、総じて次のようなことが言えるだろう。

①化石燃料・原子力から再エネへのエネルギー転換は進んでいる。

②エネルギー消費量とCO2排出量の減少量が目標から乖離しているので、音質効果ガス削減目標(2020 年までに1990年比▲40%)については実現が困難。

③再エネ導入拡大のための送電網の整備も、目標を達成することは極めて難しい。


 因みに、上記のレポートには、ドイツのエネルギー転換費用が2025年までで60兆円も要するなど、先のブログ記事で載せたような再エネ導入費用に関する諸問題についての評価は全くない。

 政府担当セクションが自分たちの政策推進にとって不都合なことを言いたがらないのはよくある話だが、そういう姿勢が当該政策の総合的な功罪判定を誤らせてしまう。

 再エネ政策では、再エネ賦課金の在り方も含めたコストパフォーマンス論と真正面から向き合っていかないと、適格な再エネ推進は望めない。現にそうなっている。

2016.12.24 山陰中央新報 〜 核燃料サイクルの行方

 日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉が決まった。プルトニウムとウランを燃料に、発電しながら燃やした以上の燃料を生み出すとして、資源が乏しい日本で「夢の原子炉」と期待されたが、1995年のナトリウム漏れ事故以降、安全上のトラブルが続出した。もんじゅを柱に据えてきた国の核燃料サイクル政策は今後どうすべきか。推進派のNPO法人社会保障経済研究所の石川和男代表理事と、慎重派の九州大大学院の吉岡斉教授に聞いた。
 
 核燃料サイクル 原発の使用済み燃料を再処理し、抽出したプルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)燃料にして再利用するエネルギー政策。将来は燃やした以上のプルトニウムを生成する高速増殖炉を本格導入する予定だったが、頓挫した。もう一つの中核となる日本原燃の再処理工場は2018年度の完成を目指しているが、トラブルが相次ぎ、さらなる延長も検討されている。
 
NPO法人社会保障経済研究所代表理事/石川和男氏/安全保障上必要な政策
 -高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が決まった。要因は何か。
 「1995年に発生したナトリウム漏れ事故が針小棒大に伝えられたのが大きい。壁を焦がしたり煙が出たりしたが、すぐにクールダウンし、放射能漏れはなかった。その事実をしっかり伝えていれば、その後の展開は違った」
 -高速増殖炉は技術的に成り立っているのか。
 「事故を的確に処理して運転を続けていれば、今頃は高速増殖炉の是非の結論が出ているはず。それがないまま廃炉を決めるのは、おかしな話だ。昨年、もんじゅを訪ねた際、所長は(推進に向け)自信に満ちあふれていた。もんじゅは国家プロジェクト。20年間も寝かせておいた責任は、政治と行政にある」
 -政府は、もんじゅなしでも核燃料サイクルを維持する方針で、より実用化に近い実証炉を国内に建設する開発方針の骨子を公表した。なぜ、そこまで高速炉開発にこだわるのか。
 「日本はエネルギー資源が乏しく、エネルギーの安全保障の面で考えると、高速炉が必要という発想が出てくるのは当然だ。ロシアやフランス、中国、インドでも取り組んでおり、その技術を持ってないのは安全保障上、不利になる。国が責任を持ってきちんと道筋を示せば、あとは現場が行う。長期的に見れば実証炉は実現するだろう」
 -現段階で核燃料サイクルを維持するには、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを一般の原発で燃やすプルサーマルに頼るしかない。中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)での導入も想定されるが、問題はないのか。
 「東京電力福島第1原発事故を受け、原子力規制委員会が新規制基準を公布する以前から行われていたし、現在も四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で実施されており、問題はない」
 -核燃料サイクルのもう一つの柱である、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場(青森県六ケ所村)も稼働延期が続いている。青森県は、核燃料サイクルが中止されれば、再処理工場に保管中の使用済み核燃料を全国の原発に送り返す意向を示している。
 「正論だ。だからこそ、核燃料サイクルは維持しなければならない。原子力事業は100年かかることは分かっているのに、ここで方針を変える必要はない。確かに福島第1原発事故は不幸な出来事だったが、津波による停止中の原子炉の全電源喪失が原因。まず必要な対策は多重防護と防潮堤で、再処理には何の関係もない」
 -核燃料サイクルが維持されなければ、核兵器に転用可能なプルトニウムがたまり続け、日本が核保有国になるのではないかという国際社会の懸念が高まる可能性がある。
 「日米原子力協定でプルトニウムの保有が認められているのは、日本が非核武装国の象徴とされているからだ。ただ、米国でも懸念の声があるのは確か。日本は、エネルギー資源確保のため、安全保障のために核燃料サイクルを維持していることを、もっとアピールすべきだ。それが国際的な安全や信頼感につながる。また、原発を動かして核燃料サイクルを回すことは、原子力関係の人材を育成する意味でも大切だ」

 
九州大大学院教授/吉岡斉氏/コスト上昇維持は困難/
 -もんじゅの廃炉が決定した。
 「高速増殖炉は非常に難しい技術だ。核燃料の熱を取り出す冷却材に使うナトリウムは腐食性が高く、漏れると発火する。この問題点に対応するため、コストがかかり、競争力のない技術になってしまった。1980~90年代に米国や欧州諸国が開発から撤退した経緯がある」
 -日本はなぜ撤退しなかったのか。
 「高速増殖炉は(原発の燃料となる)ウラン資源が不足するという前提で取り組みが始まった。だが、その後、ウラン資源が逼迫(ひっぱく)していないことや、石油や石炭などの化石燃料も豊富にあることが分かった。本来なら、こうした社会的、技術的条件を考慮して政策の進め方を決めるべきだが、高速増殖炉については、始めたからには進めるという選択肢しかなかったのだろう」
 -政府はもんじゅの後継として「高速実証炉」を開発する方針を示している。
 「高速増殖炉は、実験炉▽原型炉▽実証炉-という段階を踏んで開発が進められる。原型炉のもんじゅが失敗したのに、実証炉をつくるというのは、とても理解できない。実証炉をつくると言っても、場所や設計も決まっていない。フランスの高速炉技術実証炉『ASTRID(アストリッド)』で共同研究するという方法はあるが、これも設計段階にすぎない」
 -政府は当面、プルサーマルを柱に据え、核燃料サイクルを維持しようとしている。島根原発2号機での導入も想定されるが、安全性はどうか。
 「一般の原発に比べ、出力の制御がしにくくなるという特性がある。ただ、安全性に大差はないと考えている。その差は、世界最新の設計と古い原発を比べた際より、小さいかもしれない」
 -プルサーマルは既に九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)などで運転実績があり、現在も伊方原発3号機で行われている。ただ、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を燃やした後に出る使用済みMOX燃料が発生するが、処理方法が定まっていない。
 「福島第1原発事故の発生前、燃焼度の高い使用済みMOX燃料も再処理できる第2再処理工場を建設する計画があったが、事故で実現は非常に厳しくなった。既に生み出された使用済みMOX燃料は、現場の原発で保管するしかないだろう」
 -これまでの話を聞くと、核燃料サイクルの維持は非常に難しい気がする。
 「核燃料サイクルを続けようとすれば、原子力発電にかかるコストが大幅に上昇するだけでなく、処分が困難なプルトニウムを大量に生みだすことになる。続ける理由はない。廃止すべきだ」
 -プルトニウムがたまり続けると、日本が核保有国になるのではないかという国際世論が広がる可能性もある。
 「トランプ次期米大統領がどういう対応をとるかが鍵だ。(大統領選後に否認をしたが)トランプ氏は日本の核保有を容認する発言をした経緯がある。もし、本当に核保有に寛容な政策をとれば、プルトニウムに対し、そこまで厳しくならないことも考えられるが、核軍縮の観点から再処理は即刻やめるべきだろう」

2016.12.22 フジサンケイビジネスアイ寄稿 〜 【シリーズ エネルギーを考える】電力自由化は少子高齢化に逆行する

 今日付けのフジサンケイビジネスアイ(SankeiBiz)に、「電力自由化は少子高齢化に逆行する」と題する拙稿が掲載されています。

■欧米諸国の電気料金は上昇
 --石川さんは少子高齢化が進展する日本で、電力システム改革を進める問題点を指摘しています。何が問題ですか
 「日本の人口ピラミッド(年代別人口構成)を見ますと、総人口が1億2361万人だった1990年は、65歳以上の高齢者1人を20~64歳の5.1人で支えていました。それが20年後の2010年には総人口はほとんど変わらないものの、高齢者を支える人数は2.6人に半減しました。さらに25年には1.8人に、60年には総人口も8674万人に減少し、1.2人になってしまうと予想されています。こうした少子高齢化が進み、年金生活者や高齢世帯、低所得世帯が増えていく中では、毎日“日銭”として出ていく電気、ガス、水道の公共料金などの生活コストを極力増加させないことが重要です。ところが、電気料金は今年4月から始まった小売り全面自由化によって、一部の中高所得層は安い料金メニューを選択しやすくなりましたが、低所得層などにはまったくメリットはありません。小売り自由化とは、消費者が電力会社を選ぶのではなく、電力小売り会社が消費者を選ぶことにほかなりません」
 
 --国民の多くは、自由化で電気料金は下がると思っています
 「今度の電力システム改革では、20年をめどに料金規制を撤廃することになっています。これは私に言わせると、“値上げの自由化”です。今の電気料金はガスや水道と同様に、供給までのすべての費用を反映させた『総括原価方式』によって決められています。全国津々浦々にまで電気を届ける安定供給義務が課されているためのもので、善しあしはありますけれども、国の認可制で簡単には値上げができないように規制されているのですが、今度はこの規制がなくなってしまいます。実際に、2000年頃から電力自由化を開始した欧米諸国の家庭用電気料金は、自由化直後こそ一瞬安くなったものの、その後は上がっており、中でもドイツは実に3倍近くに跳ね上がっています。政策的に電気料金を抑制している韓国が横ばいで推移し、自由化していなかった日本は震災前の10年までは下がってきたのに対し、自由化して規制がなくなった欧米諸国では逆に電気料金が高くなっています。自由化後の日本も同じようになると受け止めるべきです」
 
 「少子高齢化社会では、消費する人間が減り、全体の消費パワーが衰えます。高齢者はお金を持っていても、消費意欲は減退します。すなわち、需要が増えない電力市場に多くのプレーヤーを入れれば、過当競争になるだけです。『電力業界でも競争原理が働く』といえば聞こえは良いのですが、競争が行き過ぎれば、本来電力会社がやるべき発電や送電インフラの維持・強化への投資がおろそかになる恐れもあります。全国の電力会社では、東日本大震災後に原子力発電所が停止したため、代わりに火力発電所を動かすLNG(液化天然ガス)や石油などの追加燃料費が相当かかっています。これは発電コストの8%程度でしかない人件費削減などの電力会社のリストラではまかないきれません。需要が減少する国で競争を起こさせても、電気料金の低廉化や電力の安定供給にプラスに働くことはないと思います」
                   
■低所得層の負担は確実に増す
 --電力小売りの全面自由化が始まって約9カ月。どう評価していますか
 「自由化の評価基準は、電力会社の切り替え率です。登録しても実際に事業を行っていない事業者もいますので、新規参入事業者の多寡では評価できません。これまでの切り替え率は16年11月末現在で3.7%程度で伸び率は鈍化傾向にあり、ほとんど自由化の成果は出ていません」
 
 --料金が安くなると期待して切り替えた家庭もあるわけですが、今後の料金推移はどう見ていますか
 「契約電流30アンペア以上の家庭で料金メニューを変更した消費者は、料金単価が下がっています。しかし、経産省の調査では、そうした家庭の電力使用量は増えていて、省エネとは逆行する現象も見られます。自由化に移行した直後に料金が下がるのは欧米諸国と同じで、今後については料金を下げるインセンティブはありません。20年の料金規制撤廃が実施されればなおさらで、これまで規制で料金を抑えていたのを止めるのですから、上昇しかないと思います。既存の電力会社には、低所得者や高齢者、単身者などが利用しやすい料金区分がありますが、これはコスト不足分を内部補填する“福祉料金”ともいえるものです。しかし、料金規制を撤廃したら、競争市場ですから、どこの電力会社もこの料金は止めると思います。低所得層の電気料金負担は確実に増し、さらに格差を広げる要因になります。社会保障の充実にはまったく逆行するようなことが起こる可能性があります」
 
 --自由化して電気料金の負担が増すのでは、国民は納得できません
 「20年の制度変更では、発送電分離と料金規制の撤廃が予定されていますが、その前に見直しをするルールになっています。電気料金値上げとなれば、国民の反発が大きいため、実際には発送電分離だけになる可能性もあります。しかし、この発送電分離にしても、本当に日本にとって良いこととは思えません。われわれは東日本大震災を経験しました。あの時の停電復旧は奇跡的に早いものでしたが、会社が分割されてもあのときのような素早い対応ができるのか不安です。電気料金については、震災後になぜ値上げが相次いだのかといいますと、原子力を止めて燃料費の高い火力の依存度を高め、コストの高い再生可能エネルギーを入れたからです。本当は大震災で被災し、未曽有(みぞうう)の危機に直面した日本が最初にやらなければいけなかった止血処置は原子力を使うことだったのです。電力システム改革は大手術です。今救急車で運んでいる患者に、止血処置を施さないで執刀する医者はいません。再エネを増やすのは必要なことです。そのための送電設備の増強や、コストを下げたり、効率を高める技術開発を行う資金を捻出するためにも、原子力を今すぐ再び活用することが必須だと思います」
 
 --人口減少、少子高齢化が進む日本の10年先、20年先を見据えたエネルギー政策はどうあるべきでしょうか
 「とにかくエネルギー政策の基本は、自給率を上げることです。これは戦争に入り、敗戦した第2次世界大戦の教訓として日本人の記憶にすり込まれているはずです。そのためには、ウランは石油の7万分の1の体積で同等のエネルギーを発することから国際的に準国産エネルギーとして扱われている原子力に、60年間使って安全に止めるという本来の役割を演じてもらうことが大事だと思います。そうすれば、原発の安い電力が生む収益を適正に配分し、低所得層に大きな負担を強いている高い電気料金を下げ、お金のかかる再エネ普及のための投資もできます。震災前も震災後も、安い電力を安定的に大量供給するという原子力の機能・役割は変わっていません。また、原発を世界標準で運用していくことも大事です。チェルノブイリの旧ソ連も、スリーマイルの米国も、事故の後も他の原発は動かしていました。福島後に30年の原発全廃を決めたドイツも一部を除いて今も原発を運用しています。それが世界の実情です。将来は再エネを含めた新たな技術開発に期待できると思いますが、今後50年間、日本の電力を低廉な料金で安定的に供給できるのは、原子力しかありません。官邸には強いリーダーシップを発揮していただき、『原発全基即正常化』への政治決断を期待したいと思っています」

 03

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.127】

2016年12月21日17:00~17:45【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.127】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv285162456

Youtube : https://youtu.be/pnVZQHj3Ges

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.126】

2016年12月14日12:30~13:18【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.126】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv284522599

Youtube : https://youtu.be/RLA7M86vxYU

2016年度の再エネ買取総額:2016年8月までの累計は9400億円(対前年比2600億円)

 資源エネルギー庁が定期的に更新している再生可能エネルギーに関する『固定買取価格制度 情報公表用ウェブサイト』によると、今年8月末時点における再エネ発電設備に係る買取電力量・買取金額は、それぞれ資料1・資料2の通り。

<資料1:買取電力量(万kWh)>
16
(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

<資料2:買取金額(億円)>
31
(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

 エネ庁が今年3月に公表した「再生可能エネルギーの平成28年度の買取価格・賦課金単価」の概要は資料3の通り。

 これによると、2016年度では、再エネ買取額は年間2兆3000億円、再エネ賦課金は年間1兆8057億円と見込んでおり、再エネ賦課金単価は1kWh当たり2.25円(標準家庭(1ヶ月の電力使用量300kWh)で月額675円、年額8,100円)。

<資料3>
20

 今年8月まで5ヶ月間の買取額は9432億円(対前年同期比2634億円増)。今年度の残り7ヶ月(今年9月~来年3月)が同じ程度で推移すると仮定すれば、今年度の買取額は2兆2637億円となり、現時点のデータでは約363億円未達のペース。

 国民全体の電力コスト負担増を抑える観点からは、未達額が大きいことは決して悪いことではない。

 ただ、これはあくまでも単純計算に過ぎない。太陽光や風力は天候に左右されるので、実際にどうなるかはわからない。

 増えるかもしれないし、減るかもしれない。

 この買取額分は、再エネ導入のための電力消費者からの“補助金”のようなものであるが、その多寡に関する価値観は個々人で大きく異なるであろう。

ドイツ連邦憲法裁判所 〜 “脱原発”でドイツ政府に賠償命令・・・

 今月6〜7日に各メディア(✳︎)で既報の通り、ドイツ連邦憲法裁判所は、要するに『2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、同国内の原子炉8基の閉鎖が命じられたことについて、ドイツ連邦政府は原告(電力会社3社)に対して相応の補償を行うべき』との判決を下した。


<✳︎:各メディア報道概要>
2016.12.6 東京新聞(ベルリン共同)ネット記事
・稼働していた原発の運転停止を命じられて多大な損害を被ったとして、電力3社が政府に損害賠償を求めた訴訟。
・憲法裁は、政府は「相応の賠償か補償をしなければならない」と判断。
・具体的な賠償額などは示していない。
 
2016.12.7 日本経済新聞ネット記事
・憲法裁は、政府に2018年6月末までに関連法を整備するよう命じた。
・メルケル政権は福島原発事故を受け、旧式8基の稼働を停止。
・その後、22年までの脱原発方針を決め、残り9基は段階的に停止することを決めている。
・これに対し独国内に原発を持つ独エーオンと独RWE、バッテンファル(スウェーデン)の電力3社が政府を訴えていた。
 
2016.12.7 NHKニュースネット版
・裁判所は、ドイツ政府が段階的原発廃止を決めたこと自体は合憲としたものの、企業側が原発に続けてきた投資などに対して政府は適切に賠償しなければならないという判断を示し、賠償を命じた。
・裁判所は、具体的賠償額は示しておらず、今回の判断を受けてドイツ政府は、電力会社にどのような賠償を行うのか検討を始める。
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 上記のドイツ司法判断は、日本でも大いに参酌すべき話。

 原子力事業は国策なのだから、強制停止による収益毀損分を国が賠償することはとても合理的。

 国家賠償を回避する唯一無二の施策は、早期の『原子力正常化』。

 これは、政治判断で即実現可能である。

電力会社の切り替え:11/30集計で234万件(全世帯の3.7%程度)

 電力広域的運営推進機関が、11月30日24時までの情報照会、スイッチング(切り替え)の申込み状況を集計したところ、それぞれ全国計で1775.49万件、234.46万件であった(資料1)。
 
<資料1> 
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 全国の世帯数に関する直近のデータとして経済産業省が用いているのは約6,253万で、これは2015年度の一般家庭等の通常の契約口数(資料2)。これをベースにすると、今のところ、切り替え件数は全体の3.7%、情報照会から切り替えに至るのは13.2%となる。

 経産省が2015年11月18日に発表した資料では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。

 しかし上述のように、現実はまだまだその域には達していない。予想通りではあるのだが、桁違いに低いのはかなり痛い。図らずも、こうしたアンケート調査には、調査主体の期待感が込もり過ぎる傾向があることを示した格好になってしまった。

<資料2>
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 因みに、電力自由化から一定程度時間の経過した欧州では、年間切替え率について、スペインやイギリスなど9カ国で10%を超える一方で、フランスやデンマークなど5%未満の国も同程度存在しているようだ(資料3)。

 この年間切替え率は、電力自由化の進捗状況を表す指標の一つではある。

 だが、電力自由化が『低廉かつ安定な電力供給システムの水準』を維持・向上させるものかどうかは、実は甚だ覚束ない。少なくとも欧米の先行例から見ると、むしろ失策であったと言わざるを得ない。

 それは、このブログで何度も掲載したことだが、欧米諸国の電気料金水準の動向を見れば一目瞭然である。

<資料3>

【Voice 2017年1月号】『原発は 利用すれば 安上がり 利用しなけりゃ 高止まり』

 Voice2017年1月号(PHP研究所)に拙稿『原発は 利用すれば 安上がり 利用しなけりゃ 高止まり』が掲載されています。

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【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.125】

2016年12月7日12:30~13:18【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.125】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv283870702

Youtube : https://youtu.be/2495_diLcUw

月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年12月号:ガス全面自由化は… 電力全面自由化よりもさらに進まない

 先月29日発売の月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年12月号での連載「石川和男のエネルギー&環境スピークアウト」。

<ガス全面自由化は… 電力全面自由化よりもさらに進まない>

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【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.124】

2016年12月2日12:00~12:59【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.124】

経済産業省へのパブコメ提出:「ガスの小売営業に関する指針」(案)に関する意見の募集について

 今し方、経済産業省のガス小売全面自由化に関して、パブリックコメントを提出したので、その旨を以下の通り公開します。



案件名:『「ガスの小売営業に関する指針」(案)に関する意見の募集について』

 「ガスの小売営業に関する指針」(案)に関する意見の募集に対して、(1)一括受ガス(マンション等の一括供給)、(2)二重導管規制、(3)託送の圧力規定問題(逆流託送)の3点につき、下記の通り意見を提出します。

(1)一括受ガス(マンション等の一括供給)
 2016年4月に“電力小売全面自由化”が施行されたが、それ以前から認められている『電気のマンション一括供給』は、平成26年度に44万戸で、平成32年度には105万戸を超えるとの予測(※1)がある。
※1:平成26年度電源立地推進調整等事業(マンショ高圧一括受電サービスに係る実態調査)
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/001056.pdf

 2017年4月に予定されている“ガス小売全面自由化”においても、電気と同様の制度に変更されることで、「電気+ガスの一括供給サービス」にHEMS(ホーム エネルギー マネージメント システム)を組み合わせた「マンション全体の総合エネマネシステム」の構築など、革新的なエネルギービジネスの創出を期待しても決して大袈裟なことではない。

 ところが、今回のガス自由化では、『ガスのマンション一括供給』は一切認められようとしていない(※2)。これは、需要家ニーズを全く無視している。
※2:ガスの小売営業に関する指針(案)
 
 経済産業省当局は、その理由について、「法令上、保安の確保が不十分になるから」としている。だが、これは全くもって奇妙な話だ。ガス自由化の環境を整備するため法令見直しをしているにもかかわらず、法令を見直す必要があるからダメだと言っているようなもの。

 これは完全に本末転倒であり、『ガスのマンション一括供給』を認めるための保安規制改正をすべきである。そうすれば、ガス小売全面自由化後の「切り替え」(スイッチング)率は、そうしない場合よりも確実に上がる。

 今回のガス自由化では、電力小売全面自由化よりも更に「切り替え」は進まない。だから、遠からず『マンション一括受ガス』に係る自由化も必ず実行せざるを得なくなる。

 それは今からわかり切っていることなのだから、もったいつけずに、今回のガス自由化の施行と同時に、『ガスのマンション一括供給』も認めるべきだ。どうせ遠からず、認めることになるのだから・・・。

(2)二重導管規制
 今回のガス自由化に係る審議の過程では、いわゆる『二重導管規制』の改革が主要テーマの一つだった。結果的には、「託送供給不可能ガス(未熱調ガス)によって『H29.4からH32.3までの3年間で当該エリア全体の既存都市ガス需要の4.5%まで』を、ガス会社から奪っても良い」と結着した(※3)。
※3:小売自由化の詳細制度設計について
 
 しかし、都市ガスとは性状が異なるためにガス会社の既存導管で託送できないにもかかわらず、未熱調ガスを同類と見なし、供給に必要な導管の敷設を引き続き制限していることに変わりはない。残してはいけない規制の筆頭格だ。
 
 この規制も、今後速やかに全面解除すべきである。そうすれば、上記(1)と同じように、ガス小売全面自由化後の「切り替え」(スイッチング)率は、そうしない場合よりも確実に上がる。

(3)託送の圧力規定問題(逆流託送)
 いわゆる「パンケーキ問題」の解消が認められたこと(※1)は、ガス導管ネットワークが送電線のように津々浦々整備されていないとはいえ、200社を超えるガス事業者間にある垣根の一部を取り払うものとして高く評価されるものだ。
※1:小売自由化の詳細制度設計について

 だが、ガス事業者が7月29日に申請した託送約款には、「払出地点の圧力が受入地点の圧力よりも低いか又は同等であること」を引受条件とするという趣旨の条項(※2)が盛り込まれている。
※2:東京ガス託送供給約款認可申請書

 これは、今回のガス自由化に盛り込まれた内容に対してガス事業者が骨抜きを図ったものだろう。全くもっておかしな話であり、一般社会の視点から見ても許容されない条項だ。

 この条項は、ガス事業者が自発的に撤回するわけはないので、経産省当局が是正を命令すべきだ。こういう『細部に宿る岩盤規制』が所々に残存しているので、ガスシステム改革は電力システム改革よりも更に進まないことが確実視されている。それを一番わかっているのは、経産省当局自身であろう。

【Yahoo!ニュース配信】<福島事故処理費用「20兆円」>『柏崎刈羽原発正常化』を政治決断しなければ国民全員負担!

<福島事故処理費用「20兆円」>『柏崎刈羽原発正常化』を政治決断しなければ国民全員負担!

 11月27日付の毎日新聞によれば、

(1)2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償や廃炉に要する費用が総額20兆円超に上り、
(2)従来の政府想定のほぼ2倍に膨らむと経済産業省が試算、
(3)同省は拡大する費用の一部を東電を含めた大手電力と新電力(電力自由化で新規参入した業者)の電気料金に上乗せする方針

・・・とのこと。

 経産省はこれまで、福島第一原発事故の処理費用を総額11兆円と見込んでいた。これらの費用に要する資金については、国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構が一時的に立て替え、東電を通じて対象者に支払われている。後日、東京電力と他の大手電力会社が電気代などから返す仕組み。

 だが冒頭の記事によると、その処理費用が従来試算のほぼ2倍になると経産省で新たに試算しているようで、それにかかる追加費用を誰がどう負担するのかが焦点となっている。

 経産省がこんな案を提示するのは、政府の行政責任もあるが、政権与党の世論読み過ぎ、一部マスコミの異常な煽動と“報道ネタのデフレ”に因るところも大きいと私は思っている。いつまでも叩き続けることのできる報道ネタとしては、原発問題を凌駕するものがないのだろう。

 東京電力、2012年9月の電気料金値上げ時の原価算定で、柏崎刈羽原発(KK)1・5・6・7号機が2013年4月から、同3・4号機が2014年4月から順次再稼働するとの想定で政府から認可を受けた。

 だが、現在までのところ、柏崎刈羽原発は再稼働していない。この場合、再稼働していないことによる現在のコスト負担の苦しみは、誰の責任なのか? 認可を受けた東京電力の責任か? 認可をした政府の責任か?

 筆者は、政府の責任であると考えている。柏崎刈羽原発の再稼働のために必死になって立地町村民など地元関係者や原子力規制委に説明・説得をしなければならないのは、東京電力以上に政府であるはずだ。それが行政責任というものであろう。

 筆者の試算では、柏崎刈羽原発が再稼働する場合としない場合での追加燃料費の負担に係る差額は、前提とする原発の稼働率で異なるが、年間約5900億~9600億円となる。この負担額のごくごく一部については東京電力の自助努力で吸収することができなくもないが、大部分に関しては東京電力管内の需要家が賄うなど、誰かが負担するしかない。

 柏崎刈羽原発が再稼働するかしないかで、これほどまでに費用負担額に大差が生じる。換言すれば、原発再稼働による収益を活用することで、新たな国民負担は不要となる可能性があるのだ。

 原発事故の処理費用は、原発事業の全ての工程を考えれば、原発事業収益で賄うことが本筋であり、それこそが国民的追加負担を発生させない唯一の手法である。原子力正常化への政治決断で、国民的追加負担はゼロにできる。

 そういう視点からすると、東京電力以外の大手電力や新電力の電気代値上げによって賄うことは、本来は筋違いな話ではある。しかし、『柏崎刈羽原発の正常化』を国会・政府自身が躊躇している中では、東京電力以外の大手電力や新電力に負担を求めることは、「次善の策」としては仕方ないことだ。

 この次善策に対しては、東京電力以外の大手電力にも、新電力にも、それぞれ反対の言い分がある。それらは重々理解できる。だが、大手電力の需要家も、新電力の需要家も、それぞれ相応に負担しないといけない。

 特に、新電力の負担増には反対論が強い。沖縄電力を除く大手電力は原発を保有しているが、原発を保有している新電力はない。新電力側からすれば、原発を保有する大手電力側だけで負担するのが筋だ、ということだろう。

 それも一理ある。ところが、新電力の需要家は大手電力の需要家に比べ、全体的に、電気の消費量は多く、所得水準も高い。もし、新電力には負担を求めないとなると、「高所得層への優遇」となってしまう。これは、日本の政治・行政の姿としては決して容認されない。

 『柏崎刈羽原発の正常化』を政治決断しない限り、国民的負担は必ず増え続けてしまうのだ。

[時評・ウェーブ]石川和男/右肩上がりの国民医療費

[時評・ウェーブ]石川和男/右肩上がりの国民医療費

 厚生労働省が去る9日28日に発表した「平成26年度(2014年度)国民医療費の概況」によると、前年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額は40.8兆円で、8年連続して過去最高を更新した。
 国民医療費とは、医療保険などの支払いだけでなく、公費負担や患者負担で支払われた医療費も合算された金額である。医科診療、歯科診療、薬局調剤、入院時食事・生活、訪問看護、柔道整復・はり・きゅう、移送費、補装具が含まれる一方で、保険診療とならない先進医療や差額ベッド代、正常な妊娠・分娩、健康診断・予防接種など傷病の治療を除く費用は含まれない。
 近年の国民医療費が増加している理由は、高齢化や医療技術の高度化であると考えられている。その概要は次のようなものだ。
 1、平成26年度の国民医療費
 (1)総額40.8兆円(前年度比1.9%増)(2)人口1人当たり32.1万円(同2.0%増)
 2、制度区分別国民医療費
 (1)公費負担医療給付分3.0兆円(構成比7.4%)(2)医療保険等給付分19.1兆円(同46.9%)(3)後期高齢者医療給付分13.4兆円(32.8%)(4)患者等負担分5.1兆円(同12.4%)
 3、財源別国民医療費
 (1)公費のうち「国庫」10.5兆円(構成比25.8%)(2)公費のうち「地方」5.3兆円(同13.0%)(3)保険料のうち「事業主」8.3兆円(同20.4%)(4)保険料のうち「被保険者」11.5兆円(同28.3%)(4)その他のうち「患者負担」4.8兆円(同11.7%)
 4、年齢階級別国民医療費
 (1)「0~14歳」2.5兆円(構成比6.1%)(2)「15~44歳」5.2兆円(同12.8%)(3)「45~64歳」9.1兆円(同22.5%)(4)「65歳以上」23.9兆円(同58.6%)
 以上のうち、最後の年齢階級別国民医療費について、高齢者かどうかで区分すると「65歳未満」は国民1人当たり約18万円、「65歳以上」は約72万円となる。
 国民医療費の推計が始まった昭和29年度(1954年度)の国民医療費は2152億円だったが、昭和40年度には1兆円を突破した。昭和53年度に10兆円台、平成2年度に20兆円台、平成11年度に30兆円台、平成25年度には40兆円台にまで達した。
 国民1人当たりの国民医療費は、昭和40年度に1万円を超え、昭和55年度に10万円台、平成6年度に20万円台、平成23年度に30万円台にまで達した。
 平成26年度の国民医療費は総額40.8兆円。この途方もなく巨大な金額を分かりやすく表現するために最もよく使われるのが、国内総生産(GDP)とNI(国民所得)に対する比率だ。対GDP比8.33%、対NI比は11.20%。これまでの推移は、昭和から平成に入ってから急増基調となった。
 国民医療費について様々な要素別に見ると、医療財政構造を改革するのに必要なマクロ視点がおのずと明確になる。例えば、後期高齢者をはじめ高齢者の自己負担をどの程度引き上げられるか、年齢階層ごとに医療費総額をどの程度抑えられるか、財源として公費と保険料の比率をどのように配分するか、入院・通院など医科診療をどの程度抑えられるか、といったことに絞られよう。
 こうした改革の狙いは、医療保険システムに持続性を持たせること、すなわち費用負担の在り方を適格なものにすることである。
 医療制度に対する危機感の原点は、将来の人口見通しが起点であり終点である。医療サービスには費用がかかる。
 その費用を負担する人が相対的に少ない時代が続く限り、医療サービスは規制的に抑制していかざるを得ない。 

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【ハフィントンポスト寄稿】東海第二原子力発電所の正しい「生かし方とやめさせ方」

東海第二原子力発電所の正しい「生かし方とやめさせ方」

 今年11月11日、日本原子力発電東海第二原子力発電所の「基準地震動(=耐震設計の基準になる地震動)」が決まったという報道が流れた。東日本大震災による事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ「沸騰水型」に係る基準地震動が決まったのは、東京電力柏崎刈羽原発6・7号機に次いで2例目とある。

 東海第二原発は、11月28日に38歳の誕生日を迎える。出力は110万kWで、これは大型発電所だ。当然の事ながら、"40年運転"の期限を延長するための申請を行うだろう。「基準地震動」の審査に置いて、次の課題となるのは「電気ケーブル」の防火対策である。

 この問題は、東海第二原発が新規制基準の適合性申請を行った当初から話題になっており、10月27日の原子力規制員会の審査会合において、原子力規制委から『「全て難燃性へ交換するのが原則。基本的な考え方が共有できないと先へ進めない」と突っぱねられ、門前払いされる形となった』との一部報道がある。

 本当に「全て難燃性へ交換するのが原則」なのかどうか?

 原子力規制委のホームページには、「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」という原子力規制委の内規がある。

 そこには、次のように書かれている。

---- 2.1.2 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、以下の各号に掲げるとおり、不燃性材料又は難燃性材料を使用した設計であること。ただし、当該構築物、系統及び機器の材料が、不燃性材料又は難燃性材料と同等以上の性能を有するものである場合、もしくは、当該構築物、系統及び機器の機能を確保するために必要な代替材料の使用が技術上困難な場合であって、当該構築物、系統及び機器における火災に起因して他の安全機能を有する構築物、系統及び機器において火災が発生することを防止するための措置が講じられている場合は、この限りではない。

 このうち、電気ケーブルについては次のように書かれている。

---- (3) ケーブルは難燃ケーブルを使用すること。

 つまり、「難燃ケーブルを使うのが前提であるが、不可能な場合は、それと同等以上の性能があれば良い」と言っているのだ。

 実際、東海第二原発よりも運転開始時期が早い関西電力高浜原発1・2号機と同美浜原発3号機では、「非難燃ケーブル」が使われている箇所であって取替え困難な部分については、難燃性の防火シートで覆うことなどにより、「難燃ケーブルと同等以上の難燃性能を確保する」として既に原子力規制委の審査に合格している。

 11月9日の原子力規制委において、九州電力玄海原発3・4号機が新規制基準に適合するとした「審査書」をまとめた時、緊急時対策所の設計を「免震」から「耐震構造」に見直したことに議論が集中した。

 その際、田中委員長は、当日の委員会で「そもそも規制というのは性能要求ですので(中略)、性能的に見た場合に、本当にそれが満足しているかどうかということがポイント」と述べ、免震構造と同等以上の性能が確保できれば足りる旨を強調している。

 「性能要求(性能規定)」とは、具体的な手順や方法を規定せず、本来果たすべき安全上重要な要求のみを規定化するものである。これは、最新技術が迅速に導入され、技術開発の促進、品質向上やコスト削減にも期待できる手法であり、国際的な標準にも沿っている。

 こうした基本姿勢を無視し、自ら定めた内規も蔑ろにするような発言を審査の場でするのは不適切だ。原子力規制委(その事務局である原子力規制庁)は以前から恣意的な規制運用を重ね、『法律に基づく行政』を体現していないことが多い。

 2013年7月に新規制基準が施行され、以来3年が経過したが、現在までに新規制基準の審査合格は玄海3・4号機を加えてもたった10基だけ。これらの原子炉はいずれも「加圧水型」と呼ばれるタイプ。

 今年10月、柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を示す米山隆一氏が新潟県知事に就任したが、「沸騰水型」で再稼働が最も早く実現するのは東海第二原発ではないかとの見方もある。

 東海第二原発は、2011年3月の東日本大震災時に自動停止して以来、再稼働を阻まれている。110万kWの大型プラントが欧米並みの高い稼働率(約90%)で稼働すれば、年間1000億円を超える利益増効果が生まれる。

 これを早期に正常化させ、『60年運転』が終了した後の安全な廃炉プロセスのための費用に充てることが先決だ。同時に、福島第一原発の廃炉・賠償に係る諸対策に貢献すべく、日本原電の収支改善と、それによる経営基盤回復を急ぐべきだ。

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.123】

2016年11月22日17:00~17:45【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.123】

【月刊Will 2016年12月号】壮大な無駄を生み続ける原発ゼロ幻想

 先月26日発売の月刊Will 2016年12月号に拙稿『壮大な無駄を生み続ける原発ゼロ幻想』が掲載されています。

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福島訪問記(速報版):楢葉町〜南相馬市小高区〜大熊町〜富岡町

 今日は、以下のような順序で福島県を訪問。

①楢葉町
 ここでは、東京電力社員数十名が、町立楢葉小学校・中学校の再開に向けて、校内清掃の支援に従事。同校の再開は来月とのこと。

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②南相馬市
 ここでは、東京電力社員数十名が、市立おだか保育園の再開に向けた園庭の除草の支援に従事。
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③「浦島鮨」(南相馬市小高区)で昼食。
 
④東京電力福島復興本社小高事務所を訪問し、近況ヒアリングなどをさせて頂いた。

⑤小高区→大熊町→富岡町の順路でいわき市へ。


 以上、少々駆け足気味での福島訪問だったが、 2年前に訪れた時に比べて人流や物流が多くなってきており、復興が一層進んできていることが感じられた。

 東日本大震災による福島第一原子力発電所事故以降、多くの東京電力社員が復興支援業務のために来福しているようで、現時点で、社員1人当たり10回以上は被災地域での支援業務に参加しているとのこと。

 こうした地道な努力は、震災による事故の復興や、地域住民と東京電力の信頼関係の回復に資するはずである。 

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.122】

2016年11月16日12:30~13:18【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.122】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv281856267

Youtube : https://youtu.be/L8H52iBIe8A

 

FujiSankei Business i. 【論風】 〜 理不尽なガス全面自由化 競争不在で値上げ不可避に

 今月10日付け FujiSankei Business i. 【論風】に、『理不尽なガス全面自由化 競争不在で値上げ不可避に』と題する拙稿が掲載。

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2016.11.10 FujiSankei Business i.

 今年4月に始まった“電力全面自由化”に続き、来年4月には“都市ガス全面自由化”が始まる。昨年の今頃、電力小売市場への新規参入予定の登録は40社を超えていたが、都市ガス小売市場に係る登録は関西電力と東京電力だけで、中部電力など申請を含めても4社だけ。都市ガス全面自由化の話は盛り上がりに欠け、大手マスコミの報道も少ない。こうした“空気”のせいもあってか、都市ガス小売市場への大きな参入障壁は歴然と維持されそうなのだ。その筆頭格が、(1)新規参入者が支払うガス導管使用料(ガス託送料金)が高いことや、(2)マンション一括契約が許されないこと。

◆奇妙な経過措置
 今年4月に始まった電力自由化によって、大手電力10社から新電力へ切り替えた一般家庭は、9月末時点で全国の世帯の3%程度。これを多いと見るか少ないと見るかだが、昨年11月の経済産業省の発表によると、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」との調査結果。
 しかし、現実はそう甘くはない。新電力が少ないのには単純だが大きな理由がある。家庭向けの電力小売事業は、それだけを営んでもあまりもうからないのだ。もっとも、都市ガス会社や携帯電話会社が、電力小売りとの『抱き合わせ販売』をすることで、本業である都市ガスや携帯電話の顧客をつなぎ留めておくことには多少役立つかもしれない。
 家庭向けの都市ガス小売事業も同じ。それだけを営んでも、天然ガスの調達や安全確保の面でかなりのコストがかかる。電力会社や石油会社など大手資本でさえ、新規参入は難しい。冒頭で述べたように、都市ガス小売事業への新規参入を予定している事前登録者が少ないのには、そういう事情もある。そんな中、前述2つに代表される高過ぎる参入障壁は是正されない気配だ。
 せめて、ガス託送料金の大幅引き下げや、マンション一括契約に係る規制緩和といった主要論点だけでも突破しなければ、都市ガス全面自由化は、電力全面自由化よりもさらに期待外れの結果になってしまうだろう。
 そしてもう一つ、料金規制撤廃とそれに関する経過措置が何とも奇妙な話になっている。都市部の大手都市ガス事業者にのみ規制を残し、地方の中小都市ガス事業者から規制を撤廃していくというのだ。

◆都市部で先行実施を
 都市ガスの料金規制撤廃には大きな問題がある。それは、自由市場・自由料金のLPガス事業が従来からどんな状況にあるかを見れば明らかだ。競争はほとんど起こらず、価格は高止まり。1999年のガス事業法改正で、都市ガス料金については値下げを自由化したが、料金値上げについては従前の認可制を維持。値上げも自由化すれば、地方を中心に値上げが相次ぐことは必至だからだ。
 都市ガス料金を自由化すれば、強力な競争相手がいない限り、あえて値下げする理由はなく、高い方に収斂していくのは間違いない。だがそれは、普通の民間企業の経営者としては、むしろ当然の判断だ。値上げの自由化・・・それが今回の全面自由化、料金規制撤廃の本質だ。
 それでも都市ガス料金規制を撤廃するならば、まずは都市部の大手都市ガス事業者の料金規制から撤廃すべきだ。需要が密集する地域には電力会社などの新規参入が見込まれ、競争が起こる可能性もなくはない。これに対し、人口減少が進む地方ほど競争が起こる可能性は低い。いずれにせよ、都市ガス料金規制は撤廃されるべきでない。大手と中小を一緒くたにした今回の料金規制の経過措置は異常な話なのだ。
 

2016年度の再エネ買取総額:2016年7月までの累計は7400億円(対前年比2000億円)

 資源エネルギー庁が定期的に更新している再生可能エネルギーに関する『固定買取価格制度 情報公表用ウェブサイト』によると、今年7月末時点における再エネ発電設備に係る買取電力量・買取金額は、それぞれ資料1・資料2の通り。

<資料1:買取電力量(万kWh)>
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(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

<資料2:買取金額(億円)>
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(出所:資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」)

 エネ庁が今年3月に公表した「再生可能エネルギーの平成28年度の買取価格・賦課金単価」の概要は資料3の通り。

 これによると、2016年度では、再エネ買取額は年間2兆3000億円、再エネ賦課金は年間1兆8057億円と見込んでおり、再エネ賦課金単価は1kWh当たり2.25円(標準家庭(1ヶ月の電力使用量300kWh)で月額675円、年額8,100円)。

<資料3>
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 今年7月まで4ヶ月間の買取額は7377億円(対前年同期比2034億円増)。今年度の残り8ヶ月(今年8月~来年3月)が同じ程度で推移すると仮定すれば、今年度の買取額は2兆2131億円となり、現時点のデータでは約869億円未達のペース。

 国民全体の電力コスト負担増を抑える観点からは、未達額が大きいことは決して悪いことではない。

 ただ、これはあくまでも単純計算に過ぎない。太陽光や風力は天候に左右されるので、実際にどうなるかはわからない。

 増えるかもしれないし、減るかもしれない。

 この買取額分は、再エネ導入のための電力消費者からの“補助金”のようなものであるが、その多寡に関する価値観は個々人で大きく異なるであろう。

福島第一原発事故の廃炉・賠償費 〜 原子力正常化への政治決断で追加負担はゼロにできる

 Twitterに昨日投稿したことで、あまりにも理不尽なことなのでこのブログにも書いておくが、昨日付け朝日新聞ネット記事では、東京電力が福島第一原子力発電所事故の被害者に払っている賠償費について、経済産業省が、新たに発生した費用の一部をより多くの国民に負担させる制度案を示したとのこと。

<記事抜粋>
・大手電力に払う送電線使用料に上乗せする手法。来年の通常国会で法案提出。
・これまで、福島事故費用を総額11兆円(廃炉費など2兆円、賠償費など9兆円)と見積もり、うち賠償費に限ると5.4兆円と見込んでいた。
・原賠機構が一時的に立て替え、東電を通じて被害者に支払われている。
・あとで東電と大手電力が、利用者から集めた電気代などから返す仕組み。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161112-00000024-asahi-pol.view-000


 経産省がこんな愚案を提示するのは、政府の行政責任もあるが、与党の世論読み過ぎ、一部マスコミの異常な煽動とネタのデフレに因る。
原子力政策でも、社会保障政策と同様、国内で無駄に喰い合っている。

 原子力発電所事故の処理費用は、原子力発電事業の全行程を考えれば、原子力発電事業収益で賄うことが本筋であり、それこそが国民的追加負担を発生させない唯一の手法。これは、このブログでも何度も書いてきたことで、例えば
別の寄稿『"原発が安いというのは嘘だった"の嘘』を参照されたい。

 原子力正常化への政治決断で、国民的追加負担はゼロにできるのだ。
 
 米国ではトランプ政権が来年1月に誕生するが、そうした強烈な外圧でもないと、真っ当な費用負担論さえ表立って話題にしようとしないのが、今の日本の政治とマスコミ。

 いわゆる“原発停止コスト”に関する真実がマスコミできちんと報じられるのはいつのことだろうか・・・?

電力会社の切り替え:10/31集計で209万件(全世帯の3.3%程度)

 電力広域的運営推進機関が、10月31日24時までの情報照会、スイッチング(切り替え)の申込み状況を集計したところ、それぞれ全国計で1,591.0万件、209.01万件であった(資料1)。
 
<資料1> 
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 全国の世帯数に関する直近のデータとして経済産業省が用いているのは約6,253万で、これは2015年度の一般家庭等の通常の契約口数(資料2)。これをベースにすると、今のところ、切り替え件数は全体の3.34%、情報照会から切り替えに至るのは13.14%となる。

 経産省が2015年11月18日に発表した資料では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。

 しかし上述のように、現実はまだまだその域には達していない。予想通りではあるのだが、桁違いに低いのはかなり痛い。図らずも、こうしたアンケート調査には、調査主体の期待感が込もり過ぎる傾向があることを示した格好になってしまった。

<資料2>
41
(出所:2016.7.1 経済産業省「小売全面自由化に関する進捗状況」 


 因みに、電力自由化から一定程度時間の経過した欧州では、年間切替え率について、スペインやイギリスなど9カ国で10%を超える一方で、フランスやデンマークなど5%未満の国も同程度存在しているようだ(資料3)。

 この年間切替え率は、電力自由化の進捗状況を表す指標の一つではある。

 だが、電力自由化が『低廉かつ安定な電力供給システムの水準』を維持・向上させるものかどうかは、実は甚だ覚束ない。少なくとも欧米の先行例から見ると、むしろ失策であったと言わざるを得ない。

 それは、このブログで何度も掲載したことだが、欧米諸国の電気料金水準の動向を見れば一目瞭然である。

<資料3>
11
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_system_kaikaku/pdf/01_05_00.pdf

ドイツのエネルギー転換費用:2025年までで60兆円

 先月10日にドイツINSM(Initiative Neue Soziale Marktwirtschaft)が公表した“EEG & Co. treiben Energiewendekosten auf 520 Milliarden Euro”と題する記事によると、INSMがドイツDICE(Düsseldorfer Institut für Wettbewerbsökonomie)に委託した研究の結果として、ドイツの再生可能エネルギー関連費用に関する次のような内容の報告書が出されたとのこと。

 ① ドイツでは、2025年までに“Energiewende”(原子力・化石燃料から再エネへと“エネルギー転換”をする旨のドイツの国家政策)に要する費用は5200億ユーロ(60.3兆円;1ユーロ=116円換算)。

 ② “Energiewende”に要する費用の中では、再エネ賦課金が最多の4080億ユーロ(47.3兆円)。

 ③ 再エネ供給地であるドイツ北部からエネルギー大消費地であるドイツ南部への送配電線に係る建設費用は553億ユーロ(6.4兆億円)。

 ④ ドイツの4人家族世帯での追加費用負担額は、2025年までに25,000ユーロ(290万円)。

《原文より抜粋》
Die Gesamtkosten der Energiewende allein im Strombereich belaufen sich auf über 520 Milliarden Euro bis zum Jahr 2025. 

Mit Abstand größter Kostentreiber mit insgesamt rund 408 Milliarden ist die Umlage zur Finanzierung der Erneuerbaren Energien (EEG-Umlage).

Der Ausbau der Strom- und Verteilernetze schlägt mit 55,3 Milliarden Euro zu Buche.

Eine vierköpfige Familie bezahlt rechnerisch über 25.000 Euro bis 2025. 


 先のブログ記事でも書いたが、ドイツでは2017年の再エネ賦課金が6.88ct/kWhと、対前年比で8%増、対10前年比では567%増となる。

 他のエネルギー源と同様、再エネ導入にも功罪両面がある。CO2排出がないことや国産であることなど「功」の面もあれば、太陽光・風力は不安定であることや原子力・化石燃料に比して相当なコスト高であることなど「罪」の面もある。

 
ドイツの再エネ推進策を賞賛し、類似制度を導入しているのは日本だけではない。ドイツ
も、日本も、再エネ導入増に伴うコスト増による電気料金の上昇が止まらないという「罪」の面への克服策は、未だ実施されていない。

 日本におけるその克服策とは、このブログで何度も提起してきたが、既設の原子力発電所を高稼働率稼働させることによる化石燃料消費量の削減で捻出される巨額財源を活用することだ。先の国会での参考人質疑において私見を表明したので、下記のリンクを適宜参照されたい。
◎【国会での意見陳述】2016.5.19 参議院・経済産業委員会『再エネFIT特措法改正案』参考人質疑

 また、ドイツの再エネ政策に関して調査するとともに、今後の日本の再エネ政策に関する適確な方向性を見出すため、2015年3月にドイツの連邦政府や州政府など計10カ所を訪問しヒアリングを行った。その結果については、下記のリンクを適宜参照されたい。
再生可能エネルギー政策に関する
ドイツ調査報告」(報告書全文)

再生可能エネルギー政策に関するドイツ調査報告」(報告書要旨)


【ハフィントンポスト寄稿】原子力の現実 〜 今や商業化前夜の核燃料サイクルと、夢の海水ウラン研究開発

原子力の現実 〜 今や商業化前夜の核燃料サイクルと、夢の海水ウラン研究開発


 民進党は2016年3月27日、"原発に頼らない社会を目指す"と党綱領で定めた。10月26日には、党エネルギー環境調査会を開き、"2030年代原発稼働ゼロ"の実現に向けた行程表を作るための検討を始めた。その中で、核燃料サイクル事業の存廃について議論がなされることは必至だろう。

 前身の民主党・野田佳彦内閣は2012年9月14日、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定し、その中で"2030年代原発稼動ゼロ"を掲げていた。

 だが野田内閣は、①「日本は二流国になってもいいのか」という米国からの強い反論や、②核燃料サイクル関連施設の閉鎖を民主党政権が求めるならば、使用済核燃料や放射性廃棄物の全部を原子力発電所が立地する地域へ持ち帰れという青森県からの激しい反発などが起こったことに当惑。結局、上記の決定を「参考文書」扱いとするだけに留め、日本原燃・六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)の核燃料サイクル事業の継続を是認した。

 短絡的かつ非現実的な政策転換を、短期間で軌道修正したわけだ。冒頭で述べた民進党の動きは、かつての民主党の方針を受け継いだものと言える。だがそれは、民主党政権時の教訓を踏まえたものなのか、或いは民進党は当時の経緯をすっかり忘れてしまったのか、私には全く理解できない。

 2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の後に"事実上の原発ゼロ"が今も続いている。それにより、2011〜15年度での原子力代替としての化石燃料コストは14.4兆円にまで膨れ上がっている。巨額の国富が海外へ流出し、国民負担が高止まりしている事実を直視せず、かつての「革新的エネルギー・環境戦略」と同じ看板を掲げている民進党。核燃料サイクル事業をも蔑ろにする"ちゃぶ台返し"を狙っているのかもしれない。

 実際、核燃料サイクル事業は商業化前夜に至っているのだが、やはり反対論も少なくない。その一つに、海水ウランの活用によって核燃料サイクル事業は不要になる、との意見がある。

 海水ウランが活用できるようになれば、日本のエネルギー自給率は飛躍的に向上し、日本のエネルギー安全保障の水準も相当上昇する。私としても、是非ともこれを商業化できるよう、国家予算の投入も含めて、研究開発の早急な着手を切に望むところだ。

 国際原子力機関(IAEA)によると、ウランの確認可採埋蔵量は459万tで、現在の年間需要量6.5万tを勘案すると、残りは約70年分となる。既知の推定資源量や未発見の資源量を加えると1534万tになると予想されている。

 海水ウランは、以上の他に存在するもの。海水中のウラン溶存濃度は2~3mg/tなので、海水全量では約45億tと膨大な量になる。しかし、2〜3mgのウランを回収するために取り扱う海水量が1tというのは、直観的にもかなり非効率な話に思える。

 日本原子力研究開発機構(JAEA)が、研究開発段階として青森県むつ市沖合や沖縄海域で行った試験の結果、ウランの回収費用は5~10万円/kgだった。これでは、ウランの実勢価格(2015年9808円/kg)にはとても敵わない。

 今の回収技術では、「回収されるエネルギー量」と「回収に必要な投入エネルギー量」との比率であるエネルギー収支比は、極めて小さいままなのだ。商業化までの道のりは、まだまだ先だと言わざるを得ない。

 海水ウランの捕集材の耐久性が向上すれば回収コスト削減ができる、との見通しもある。しかし、研究開発段階でのコスト試算は、やはり研究開発段階のものでしかない。

 『研究開発→実証試験→商業化』という長い時間軸の中で、コストを継続的に把握していくことが必要となる。研究開発段階での前提条件付きのいわば"仮コスト"と、国民負担に直結する実際の商業化段階のコストを天秤にかけることは、厳に慎まなければならない。

 最近の一例を挙げる。国産技術の原子炉として期待を集めていた新型転換炉(ATR)は、研究開発段階で石炭火力並みの低コストという試算がなされていた。しかし、実証試験段階になった時点では、発電原価が30円/kWh以上という"電力自由化時代"ではとても許容できないコスト水準になることが判明し、1995年にプロジェクト自体が潰えてしまった。

 将来、海水ウランによる原子力発電を活用することは、日本近海に豊富に眠っているとされるメタンハイドレートなどよりもCO2排出がないなど環境負荷が小さいという点で、希望の持てる話である。だから、今世紀中に実現せずとも、来世紀に入ってから商業化できる見通しでもあれば、息の長いビジョンを持って研究開発を重ねていくべきだ。

 核燃料サイクル事業の次の大きな「原子力平和利用」施策として、海水ウラン活用はとても有望ではないだろうか。

 六ヶ所再処理工場は既に完成している。海水ウランの活用は、公式には研究開発段階にすら入っていない。実用化までの時間が極端に異なるこの両者を比較することは、政策論としても政治論としても説得力を持たない。

 「使用済核燃料の再処理」に係る商用運転の開始を目前に控えた六ヶ所再処理工場を「使用済核燃料の中間貯蔵施設」に転用すべき、との意見が以前から複数の方面から出ている。だがそれは、国内外の諸情勢を勘案すると、政策的にも政治的にも無理である。コスト面も、ぜんぜん割に合わない。計算すればすぐにわかる。

 最近、『青森追想記』という手記を読んだ。これは、首都圏で活動している作家が内々に記したもの。1989年に核燃料サイクル施設工事の凍結を公約に掲げて青森県六ヶ所村長に当選した土田浩氏は、公約に沿って工事を完全に停止させるだけでなく、核燃料サイクル事業関係者との面談を一切拒否した。

 その作家は、この深刻な状況に心を痛めた。国会議員でも官僚でもない、一私人であるその作家は、肺結核の前歴のある身も省みず、自らの血縁関係を頼って土田村長に接触。何度も六ヶ所村の現地へ足を運び、「日本には現在、三つの国難がある。一つは中近東問題(石油危機)、二つ目は成田空港問題、いまひとつは六ヶ所のサイクル施設の問題だ」、「石油の豊富な中近東には水がない。資源のない日本には水と緑があります。
 
 エネルギーの原子力化が求められている現代、その施設を作る土地を、石油のない日本・我々に、神は与え給えた。いわば天与の土地です。天より賜りしこの土地を今に生きる私たちの英知と努力で、後世の人により良く遣わしていく。それが私達の使命です」とあちこちで熱く語り、説得して回った。そして、工事再開に漕ぎ着けた。

 『ちゃぶ台』の上にある天与のもの、特にウラン資源の節約と有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容と安定化、化石燃料消費量削減とCO2排出量抑制に資する核燃料サイクル事業を、将来にわたってしっかり運用していくべきことの重要性を改めて痛感する話である。"ちゃぶ台返し"は絶対に慎まなければならない。

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.121】

2016年11月9日12:30~13:16【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.121】

世界全体の温室効果ガス 〜 化石燃料消費増でCO2排出量増は止まらず・・・

 化石燃料の消費を起源とするCO2など温室効果ガス(GHG)の排出量に係る直近の動向について、国際エネルギー機関(IEA;International Energy Agency)が先月発表した“ CO2 emissions from fuel combustion HIGHLIGHTS 2016 ”には、有用なデータが数多く掲載されている。ここでは、それらのうちの幾つかを見ていこう。

 世界全体で人為的に発生したGHGは「エネルギー」68%、「工業」7%、「農業」11%、「その他」14%で、「エネルギー」のうち90%はCO2となっている(資料1)。

 世界的な経済成長に伴うエネルギー需要量の増加もあって、1971年から2014年までの間、一次エネルギー総供給量(total primary energy supply (TPES))は約150%増え、その殆どが化石燃料の増加となっている(資料2)。

 そうしたエネルギー需要量の増加に伴い、化石燃料の消費を起源とするCO2排出量の増加も顕著なものとなってきている(資料3)。


<資料1>
27

<資料2>
36

<資料3>
08

 2014年において、TPESの約2割はCO2排出ゼロのエネルギー源。石炭はTPESでは29%だが、CO2排出源としては46%を占める(資料4)。
 CO2排出量の多い国は、「中国>米国>インド>ロシア>日本>ドイツ・・・」の順(資料5)。
 「電気・熱」と「運輸」の合計で、CO2排出源の2/3を占める(資料6)。

 1990年→2014年において、石炭起源のCO2排出量割合が66%→73%と顕著(資料7)。
 世界全体で1人当たりCO2排出量は16%の伸びとなっている。CO2排出5大国では、GDP当たりCO2排出量は、いずれの国でも減少している。1人当たりCO2排出量は、ロシア・米国では減少したが、中国・インド・日本では増加した(資料8)。

<資料4>
25

<資料5>
53

<資料6>
41

<資料7>
06

<資料8>
26

 1971年→2014年で見ると、化石燃料消費を起源とするCO2の排出量は増加してきている(資料9)。
 中でも、「電気・熱」での化石燃料消費を起源とするCO2排出量の増加が顕著(資料10)。
 電気について、石油火力は減少してきている一方で、石炭火力とガス火力は増加している(資料11)。

 
<資料9>
25

<資料10>
37

<資料11>
47 

月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年11月号:“原発が安いというのはウソだった”のウソ 福島第一の廃炉費用負担問題で図らずも露呈

 先月28日発売の月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー 2016年11月号での連載「石川和男のエネルギー&環境スピークアウト」。

<“原発が安いというのはウソだった”のウソ 福島第一の廃炉費用負担問題で図らずも露呈>
30

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47
 

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.120】

2016年11月2日12:30~13:19【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.120】

ニコ生 : http://live.nicovideo.jp/watch/lv280454432

Youtube : https://youtu.be/Srzp9NeumJQ


 

米国の2015年の原子力発電 〜 稼働率は過去最高92.2%、発電電力量は世界第1位・・・

 米国原子力エネルギー協会(NEI;Nuclear Energy Institute)は最近、2015年の米国の原子力発電について、次の旨を発表した。

 ① 稼働率は過去最高の92.2%(資料1)
 ② 他の電源に比べても稼働率は相当高水準(資料2)
 ③ 発電電力量は7980億kWhで世界第1位(資料3)
 ④ 米国の電源構成のうち、原子力発電比率は最近10年間20%を維持(資料4)

<資料1>
57
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/US-Nuclear-Power-Plants/US-Nuclear-Capacity-Factors

<資料2>
13
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/US-Nuclear-Power-Plants/US-Capacity-Factors-by-Fuel-Type

<資料3>
42
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/World-Statistics/Top-10-Nuclear-Generating-Countries

<資料4>
58
http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=26232

 また、米国EIA(Energy Information Administration;エネルギー情報局)が今月25日に発表したところでは、米国の3大電力系統ごとに見ても、原子力は、設備容量(capacity)の割合に比べて発電電力量(generarion)割合が高いことが見て取れる(資料5〜8)。


<資料5>
47

EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

<資料6>
14
EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

<資料7>
24
EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

<資料8> 
34
EIA “Energy source mix varies among the three U.S. electricity grids

 原子力発電は、化石燃料その他のエネルギーによる発電との比較でも、コスト低減効果やCO2・SOx・NOx排出抑制などの環境保全効果が大きい。もちろん、使用済燃料や放射性廃棄物に係る諸問題を解決する途を示すべきであるのは当然なのだが、いわゆる“最終処分問題”は適切な中間貯蔵により最終的にはそれほどの障害にはならない。

 原子力発電所の運営は、政治的に翻弄されやすいが、その面で適切な判断がなされれば、技術的に可能な範囲で稼働率を90%以上にまで引き上げることができる。

 主要国の原子力発電所の動向と比較すると、米国の平均稼働率は高水準である一方で、日本の平均稼動率は低水準で、しかも2011年以降はゼロ近傍。その理由は、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故後の政治・行政上の判断による。

 原子力発電所事故を経験した米国と旧ソ連は、事故炉以外の原子炉を強制停止状態にはしなかったが、日本はなぜか事故炉以外の原子炉まで、事実上、強制停止状態に置かれている。

 日本のエネルギー事情を冷静に見つめれば、原子力規制基準に係る猶予期間の設定など原子力規制行政上の運用を改善することで、事故炉以外の原子炉の早期正常化を政治的に決断する必要がある。

 天然ガスや石炭など化石燃料による発電(火力発電)は安定電源なので、供給安定性の観点からは、火力発電は他の火力発電や原子力発電の代替になり得る。但し、火力発電はCO2・SOx・NOx排出などの環境影響が相当ある。

 日本のような化石燃料をほぼ全面的に輸入依存している国では、コスト面でも大きな負荷がかかっている。エネルギー自給率を向上させる必要性は、安全保障面だけでなく、コスト面からの要請でもある。

 風力と太陽光の設備利用率は、日本(陸上風力20%、太陽光14%)との比較においては、相当高い。しかし、これらの再エネによる発電は、当面の技術では、不安定電源であること、不安定電源であるために火力発電によるバックアップが必須であること、設備容量が小さいことなどから、原子力発電や火力発電の代替にはなり得ない。水力・地熱・バイオマスと違って、風力・太陽光は天候に左右されるので、蓄電システムが浸透するまでは、不安定電源のデメリットを克服することはできない。

 原子力と風力・太陽光の関係を語るには、こうした基本的知識を大前提としていかないといけない。蓄電システムが普及はまだまだ遠い未来の話であろう。それまでの間は、原子力と化石燃料で凌いでいく必要がある。

 しかし、将来的に風力・太陽光など『再エネ100%化』を目指すべきであることは、言うまでもない。 

『原子力発電コストは廃炉費用を含めても安い』との試算について

 今月28日付け日本経済新聞ネット記事によると、経済産業省は27日、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉費用が原子力発電コストに与える影響を自民党に示したとのこと。

<記事抜粋>
・費用が1兆円膨らむと発電コストが1キロワット時あたり0.01円増と試算。
・数兆円とみられる廃炉費用を単純に織り込んでも発電コストは1キロワット時10円台にとどまり、12円台の石炭火力や30円台の石油火力を下回る。
・福島の除染費用が1兆円増えると発電コストが1キロワット時0.02円上がり、賠償費用が1兆円増えると0.03円高まると試算。

 上記の報道にある経産省試算に対しては、批判の声がすぐに出てくるだろう。

 この経産省試算であれ、どのような試算であれ、試算結果は試算前提でいかようにでも変わり得るもの。誰かが提示した試算を批判する人々は、自分たちで独自の試算をすべきだ。

 政策を進める上では、政府がその政策に関連する試算を提示することがよくある。それらの全てが誰の試算よりも優越する『正論』だとは決して思わない。

 しかし、政府が提示する試算の殆どは、国内外のあらゆる情報を総合的に判断した上での前提で以っての試算であるから、そうした政府試算が最も『適論』である場合が多いとも思う。

 因みに、原子力発電コストに関して言えば、上記の報道にある政府試算は『適論』であり、『正論』でもある。

米国の風力発電は急増傾向 〜 2015年では総発電電力量の4.7%に・・・

 今月26日の米国EIA(Energy Information Administration;エネルギー情報局)の発表では、米国の風力発電の動向に関して、次のようなデータ等が示されている。

(1)米国の風力発電は2001年から増加し始め、2015年には19万GWh(米国内の総発電電力量の4.7%)になった。これは、対2010年(同2.3%)比で2倍。2016年では同5.6%となる計算。


《原文より抜粋》
At the national level, wind's share of total U.S. electricity generation has risen every year since 2001. Wind facilities produced 190,927 gigawatthours (GWh) of electricity in 2015, accounting for 4.7% of net U.S. electric power generation. This level represents a doubling of wind's generation share since 2010, when the share was 2.3%. Based on monthly data through July, wind has provided 5.6% of U.S. generation in 2016.

50
2016.10.26 EIA


(2)2010年では総発電電力量の10%以上を風力発電で賄ったのは3州であったが、2015年では11州となった。この11州のうち、同20%以上となったのはアイオワ州31.3%、サウスダコタ州25.5%、カンザス州23.9%の順。

In 2015, 11 states generated at least 10% of their total electricity from wind. As recently as 2010, only three states had at least a 10% wind share. Iowa had the largest wind generation share, at 31.3%, and South Dakota (25.5%) and Kansas (23.9%) had wind generation shares higher than 20%. 

39
2016.10.26 EIA


(3)風力発電割合の高い州は、中央ハイプレーンズやロッキー山脈のように豊富な風力資源を持っている地域に位置している。

States with the highest wind generation shares are located in the Central High Plains and the Rocky Mountains, regions that have high wind resources.

02
2016.10.26 EIA


 風力発電を巡る米国の事情は以上のようなものだが、これらに加えて、連邦政府レベルや州レベルで様々な支援措置が講じられている。

 支援措置に関する日米比較は適当でないにしても、風力資源に関する状況で見ると、日米ではとても比較にならない。

 日本では、日本の事情に応じた、分相応な風力発電の振興策を進めていくべきだ。 

北陸電力:志賀原子力発電所2号機における雨水流入事象について

 北陸電力は今日、志賀原子力発電所2号機の原子炉建屋内への雨水流入事象に関する中間報告書を原子力規制庁に提出した。

 それによると、事象の概要や現時点での結論は、次の通り。

 ① 平成28年9月28日、志賀原子力発電所2号機の原子炉建屋内(非常用電気品室をはじめとした複数エリア[管理区域含む])に約 6.6m3の雨水が流入した。 

 ② 今回の雨水流入により、常・非常用照明分電盤で一時、漏電を示す警報が発生したものの、設備への影響及び外部への放射能の影響はない。

 上記
の中間報告は、原子力規制庁からの指示事項である直接原因及びその対策を中心に取りまとめたもの。
現在、根本原因分析(RCA:Root Cause Analysis)により更なる原因対策の深掘りを実施しており、その結果については改めて報告されるとの由。

 詳細は、北陸電力発表資料を参照されたい。 

☆ニュース配信☆ 世界の再エネ事情の意外な事実 〜 日本は水力発電で世界8位・石油火力発電で世界2位、ドイツは脱原子力を宣言しながら原子力発電で世界7位・・・

世界の再エネ事情の意外な事実 〜 日本は水力発電で世界8位・石油火力発電で世界2位、ドイツは脱原子力を宣言しながら原子力発電で世界7位・・・

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BIGLOBEニュース
http://news.biglobe.ne.jp/economy/1027/gdw_161027_6680861932.html


世界エネルギー機関(IEA)が先月発表した“ 
Key World Energy Statistics 2016 ”には、2014年における世界のエネルギー動向を示す有用なデータが数多く掲載されている。ここでは、それらのうちの幾つかを見てみよう。 

一次エネルギー供給の推移〔資料1〕と電力供給の推移〔資料2〕を見ると、世界全体ではエネルギー需要が拡大していることもあって、供給量ベースでは、石炭推進、石油推進、天然ガス推進、原子力推進、水力・再エネ推進である。 

<資料1:一次エネルギー供給の推移> 
 

<資料2:電力供給の推移> 
 

水力以外の再エネは、“ others ”と一括りになっている。水力以外の再生可能エネルギーである地熱・太陽光・風力などについては、それぞれ単体があまりにも小さいからであろうか、ここには個別の統計は掲載されてない。 

そこで、再エネ発電では単独で圧倒的シェアを占める水力について見てみると〔資料3〕、日本は発電量で世界8位(設備容量では世界6位)になっている。 

<資料3:水力発電量の国別順位> 
 

“脱原子力”の先進国として日本でもしばしば賞賛報道がなされるドイツは、原子力で世界7位の原子力発電量となっている〔資料4〕。日本が参考にすべきは、「“脱原子力”を宣言しているドイツ」ではなく、「“脱原子力”を宣言していながら実は“脱原子力”を未だ実現していないドイツ」の狡猾さである。

<資料4:原子力発電量の国別順位> 
 

最後に、化石燃料発電について見ておこう。原子力発電の正常化がまだまだ遠いと思われる日本は、石炭火力発電で世界4位、石油火力発電で世界2位、天然ガス発電で世界3位となっている〔資料5〕。即ち、日本は今や、化石燃料発電大国なのである。 

<資料5:化石燃料発電量の国別順位>
 

日本は、この状態から早急に脱却する必要がある。そのためには、商用可能な再エネ蓄電技術が開発されるまでの間は、一定程度は原子力発電に依存せざるを得ない。 

原子力発電の早期正常化のためには、原子力規制委員会による新規制基準に適切な猶予期間を設定し、新規制基準適合性の審査中であっても原子力発電再開を容認していくよう直ちに運用改善で対応すべきだ。

【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.119】

2016年10月26日11:30~12:02【石川和男のエネルギー世論を斬る!vol.119】

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