まだまだ先の話だと思っていたが、マイナンバー法の施行が来年の10月に付番開始、再来年1月からの制度開始と、迫ってきている。
財務省は7月9日付で,所得税法,法人税法,相続税法,消費税法,租税特別措置法や国税通則法など国税関係計21本の一部改正省令を公布し、この中で、マイナンバー法に関しても法定調書や源泉徴収票に個人番号や法人番号を記載する旨の改正が行われたことを明らかにしている。
(別表第五(八) 別表第六(一)参照)
平成28年分の所得税の確定申告からは、申告書や支払調書、源泉徴収票へのマイナンバーの記載が必要になるため、会社としては、従業員、外注先などの個人番号又は法人番号の把握が必要となり、我々税理士もクライアントの番号の把握が事前に必要になってくる。
そもそも、マイナンバーとは、住民登録している国民や永住外国人に対し、国が1人に1つの個人番号を付与するもので、法人も同様に法人番号が付与される。
行政はこの番号を使って、国民一人一人の年金、労働、福祉、医療、税金、防災といった様々な分野の情報を、いわゆる紐付きの形で結合させる。
従来だと住民は、各種手当の申請時に関係各機関を回って書類をそろえる必要があるし、行政の方も確認作業に多大な労力がかかったり、業務間の連携が希薄なことから、作業が重複したりして、無駄な経費がかかっていた。
税金面でも、国税と地方税がばらばらに管理されていて、所得を一連につなげるような体制になっていないので、正確な所得が把握できず、課税に不公平が起こっていた。
これが共通番号を介して個人の所得を結びつけることで、給付と負担の公平化が図られる。また、低所得者の家計に過重な負担をかけない観点から、制度単位ではなく家計全体をトータルに捉えて、医療・介護・保育・障害に関する自己負担の合計額に上限を設定する「総合合算制度」や、低所得者に消費税増税分による生活費の増加分を還付する「給付付き税額控除」が可能になる。
もちろん、これは理論的な話で、情報が芋づる式につながるだけにプライバシーの問題もあるし、全ての取引や所得を把握することは不可能なので、不正申告や不正受給が完全になくなるとは考えにくいという問題点は残る。
平成29年1月からは、それぞれの個人用のポータルサイトである「マイポータル」が始まる。これにより、自分の年金や税金の払いの記録をチェックしたり、自分の個人情報がいつ何のために誰から誰に提供されたかなどがインターネットで確認できたりするようになる。現在、マイナンバーは民間利用ができないので、生命保険料控除やローン残高等の情報は、引き続き民間の保険会社や金融機関からエビデンスを取らなければならないが、マイポータルとe-Tax、それに民間業者用の電子私書箱を含む「マイガバメント」という構想がIT総合戦略本部のマイナンバー等分科会で検討され、総合的なIT化がすすむとみられる。現に、銀行口座や法人カードを登録すると自動的に仕訳ができる会計ソフトも出てきており、申告業務の形態もどんどん進化していくと考えられる。将来的には、現在の年末調整レベルの確定申告に必要な情報はマイガバメントでほとんど済んでしまうということも想定される。
まだ時間がかかるかもしれないが、そう遠くない将来に、年末調整がなくなって全員確定申告をし、納税者意識も高まるという日が来るかもしれない。