寺島しのぶさんの銀熊賞受賞で、注目を浴びた作品。
84分という観やすい時間の映画なんですが、めっちゃ疲れました。
いわゆる反戦の映画ですが、人間の欲っていうものを考えてしまいました。
寺島さんが、日本一もんぺの似合う女優というのは、ホントですね。
四肢をなくした夫役の大西信満さんも、顔の表情だけでというのはスゴいなぁと思いました。監督とこの主演二人は、「赤目四十八瀧心中未遂」(未見)でもコラボしてたんですねぇ。
江戸川乱歩の短編「芋虫」が、ベースにあるんだそうですが、未読です。
caterpillar1キャタピラー
製作・監督:若松孝二
脚本: 黒沢久子、出口出
ラインプロデ ューサー:尾宗子
撮影:辻智彦、戸田義久
撮影助手:高橋拓、脇坂美緒
音楽プロデューサー:高護
音楽:サリー久保田、岡田ユミ
演奏:中本文、MITUKO、田中麻衣
録音: 久保田幸雄
美術: 野沢博実
助監督:福士織絵、花木英里、小田総一郎、須田大介
上映時間:84分
出演:寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、粕谷佳五、増田恵美、河原さぶ、石川真希、飯島大介、地曵豪、ARATA、篠原勝之、他
一銭五厘の赤紙1枚で男たちが召集されていく中、黒川シゲ子(寺島しのぶ)の夫・久蔵(大西信満)も盛大に見送られ、勇ましく戦場へと出征していった。だが、シゲ子のもとに帰ってきた久蔵は、顔面が焼けただれ、四肢を失った無残な姿であった。村中から奇異の眼を向けられながらも、多くの勲章を胸に“生ける軍神”と祀り上げられる久蔵。四肢を失っても衰えることのない久蔵の旺盛な食欲と性欲に、シゲ子は戸惑いながらも軍神の妻として自らを奮い立たせ、久蔵に尽くすのだった。だが、自らを讃えた新聞記事や勲章を誇りにしている久蔵の姿に、シゲ子は空虚なものを感じ始める。やがて、久蔵の食欲と性欲を満たすことの繰り返しの日々の悲しみから逃れるかのように、シゲ子は“軍神の妻”としての自分を誇示する振る舞いをみせるようになっていく。そんな折、日本の輝かしい勝利ばかりを報道するニュースの裏で、東京大空襲、米軍沖縄上陸と敗戦の影は着実に迫ってきていた。久蔵の脳裏に、忘れかけていた戦場での風景が蘇る。燃え盛る炎に包まれる中国の大平原。逃げ惑う女たちを犯し、銃剣で突き刺し殺す日本兵たち。戦場で人間としての理性を失い、蛮行の数々を繰り返してきた自分の過ちに苦しめられる久蔵。混乱していく久蔵の姿に、シゲ子はお国のために命を捧げ尽くすことの意味を見失っていく。1945年8月6日広島、9日長崎原爆投下。そして15日正午、天皇の玉音放送が流れる中、久蔵、シゲ子、それぞれの敗戦を迎えるのだった……。
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「つくす」ことの裏には、自分の虚栄心や自己満足を充たしている事も多いと思う。
若い頃に、日本人は「恥」の文化という本を読んだことをちょっと思い出した。
今、それを多く語るのは、時機ではない。

caterpillar41940年に、日中戦争へ出兵した久蔵は、四肢を無くし、焼けただれた顔と聞こえない耳で、妻シゲ子の許に帰ってきた。
「シゲ子さん、里に帰してなくてよかったわ…」と、夫の世話を押しつけられる。
四肢の代わりに、三つの勲章を携え、新聞では軍神と崇める。村人たちも、久蔵を軍神さまと拝むようになっている。
その軍神様をお世話することー軍神の妻という肩書きで、シゲ子は精神の均衡を保つようになっていったんでしょう。
戦時中っていうのは、集団心理が一方に傾いてましたからねぇ。
当時の国民を鼓舞するかのような歌を全部知ってましたわ(笑)母親のおかげです。鼻歌うたってましたもん(替え歌だった方が多かったけど)。軍歌は、父親に聞かされたし。
映画の中で出てくるそれらの歌を、懐かしいなぁと思う私は、なんなんでしょうねぇ。もちろん、歌詞の意味なんて、気にもとめてないんですけど。
caterpillar5久蔵が、こんな体になっても、シゲ子を求めるというのは、面食らうんですが、ものすごく生物的な気もします。
食べること、寝ること、生殖ってね。本能だけでしょう。
嫌々ながら奉仕していたシゲ子も、自分のリードなしでは久蔵が何も出来ないことを悟ってくんですよね。
五体満足だった頃の久蔵は、妻に手を上げて支配していた節もあるし、今の人たちにはDVといわれるタイプかもしれません。
caterpillar2シゲ子さん、久蔵に軍服を着せてリヤカーで村を歩くようになります。シゲ子さんの欲が充たされる一面です。
ダンナは、軍神と拝まれたり敬礼されたりするし、加えて自分は褒められるんだもの。
甲斐があるっていうものでしょう。
久蔵は、この外出は好まないのは当然だ。
それにもまして、自分の戦地での記憶が蘇りだし、あれほど精力満タンだったのに、ダメになってしまう。
この男、戦地で中国女性を犯したうえで殺害なんていうひどい事をしてるわけで、名誉の負傷でもなんでもなかった。
この男の行為も、戦争のもたらす罪の一つでしょう。
自分の犯してしまった過ちに苛まされ、おかしくなってる久蔵と、それをうけるシゲ子の反応のあたりは、すごいです。
あの場面のシゲ子の笑い方が、リアル。
caterpillar3シンプルに傷痍軍人とその家族というだけでも、それは戦争のもたらす哀しみです。
そこに、その軍人の心の傷が戦闘でのものではないところが、他のものと違うようなものを感じました。
彼らの物語とは、直接関係はないけれど、時系列的背景に東京大空襲や原爆投下など、戦争による死亡者の数や当時のラジオ放送なども映画にでてきました。
ラストで戦争に勝った、負けたではなく、「戦争が終わったよ」という言葉が、残ったんです。
シゲ子の戦争も終わったのだ。
エンディングの元ちとせの歌「死んだ女の子」は、歌詞が悲しすぎる。違うところに、心を重ねてしまい泣けてしまった。