かてぃ個室。ドラクエの小説や詩を。

ドラクエ10の小説や詩、または冒険日誌に書けないような外側の雑談をちらほらと書きます。

社会人になれば、全て捨てるものだと思っていた。
よくよく考えれば、大学に入る際も全て捨てるものだと思っていた。
しかし、現実はどうだ。
今持っている物を抱えたまま、そのまま、大人になる。

「僕は選んだ……ですか」

シーアエは、引き出しに隠している日記帳を読んでいた。
冒険者としては生きられない。
かと言って、死んだわけではない。
今は、ただただ何でも屋としてお金を稼いでいる。
そんな努力は、近くで見ている。

「……」

日記帳を元に戻す。
意外と細かいということは知っている。
別にばれてもいいが、ただ、ただ気にしただけだ。
 
文学も音楽も捨てていない。
なんなら全て、拾おうとしている。
しかし、今度は群に群れた独りではなく、

「軍師……」

自分の力を遥かに超える他人を 率いて、
何度も信頼を得る努力をした。
全ては、また再起するため。 

≪文学少年≫を横目にやると、
布団がガサガサ動いている。
なんだかんだ眠れていないのだろう。

「私は……」

まだ夢の中で。 

なんだか、お腹が空いた。
何の変哲もない冬の昼近く、僕はご飯を求めて彷徨っていた。
見た目よりも大食らいなので驚かれることも多いが、そんじょそこらのご飯には負けたりしない。
折角のご飯。人生で食べられる機会など少ないのだ、だからこそ僕のお腹を満たす何かが欲しい。 
しかし、そんな拘りのせいで食いっぱぐれている。
そんなふらふらと歩いていると、いつのまにかパン屋に辿り着いていた。
「ここは……」
周りを見渡す。 どうやら適当に歩きすぎたらしく、ここが何処かは解らない。
しかし、迷子じゃない。 僕には、お腹を満たすという孤高の任務がある。
仕方があるまい。パン屋に入る。
「いらっしゃいませー♪」
木目調の部屋に、食パンと、珈琲と、惣菜パンと、何とも言えぬ、パンの空間が広がっていた。
大らかな女性がカウンターで笑顔で応える。
「は、はい」
こういった時にどう応えたらいいのか、挙動不審になりながらもパンに目を向ける。
パンだ。普段からあまりパンを食べないのだが、いざ相対すると緊張する。
僕は普段ご飯派で、お米の味が大好きで、そんな僕がパンと相対すると……。
「決められない……」
それは、大問題だった。
 お腹の減っている僕にとって、ベーコンが練り込まれた硬い生地のパンや、甘い存在感を震わすフレンチトーストは、僕の意識を揺らがせた。
いや、食パンも良いかもしれない。 小細工をしていない素材の味が添えてある珈琲と共に、嚥下する。
そうしている間にも、カウンターにいる女性に何人かパンを持ち込んで会計を済ませている。
何故そんなにも簡単に決められるのか?
僕はサンドウィッチのコーナーに気がついてしまう。
コンビニのサンドウィッチとは違う、パンの違いに素人でも気が付く事が出来た。
野菜も、ハムも、卵も全て、僕を攻撃した。
「えーっと……」
店員にさすがに気がつかれる。
なんだかにこやかに見守られている気がする。
僕の今の悩みがばれたのだろうか?
ともあれ、このまま見守られているのは空腹よりも恥ずかしさが勝りそうだった。
「これ下さい」
僕は、肉が挟まれた硬めのパンをカウンターに運んだ。
ついでに珈琲も。
「ありがとうございますー!」
会計を済ませ、そそくさと外に出る。
今日の昼は、いつもよりも少しだけ楽しい時間になりそうだ。 

僕はは最近になって漸く、彼女、シーアエの内なる弱さを知った。冒険者として戦った期間は短いものの、トラウマとして記憶に残ってしまったのは致命的だった。その弱さを隠すように振る舞う彼女を、僕は僧侶として、癒していった。

今日はコンシェルジュとしての仕事を休ませ、シーアエを連れて祭りを見に行った。若者が主として盛り上がり、年寄りはその横で祭りの模様を楽しんだ。僕達はその狭間で、ゆっくりと時間を過ごしていた。
僕は鶏肉の唐揚げをこと惜しげもなく頬張り、シーアエは小さく魚をかじる。ウェディという種族でありながら魚を食べるのは共食いを連想させるが、今やその考えは古臭い。美味しいものは、美味しい。
シーアエが呟く。
「冒険者が戦ってる横で、こんな平和な世界があるんですね」
まるで彼女の世界には戦いしか無かったかのような、羨むような、複雑な表情が混在していた。
「僕たちの気持ち次第、って思いたいな」
手元に持ち合わせた武器に目を向ける。
冒険者として世界を守る為に奮闘した僕は、何体敵を倒してきたのだろう。過剰に倒してしまったのではないか、と自責の念に駆られる時もある。
「美味しい?」
シーアエは口をハンカチで隠した。
「はい」
少しだけそっぽを向いて、けれど笑顔が、その器から溢れていた。
僕たちは喧騒の中食べ終えると、なんだか物足りないような表情をお互いに浮かべた。
それもそのはず、全てお祭りサイズなのだ。
お値段そこそこ、サイズは控えめ。お祭りだから我慢しているが、しかし納得はしていない。
無言で僕たちは頷く。
次の標的は、そこらで売られている手作りのカレーだった。
「おいしい」
トマトチキンカレーを口いっぱいに頬張る。
普段はトマトがあまり得意ではないが、野菜の味を深く理解し作られた味に、チキンが合わさり、いつの間にか完食していた。
「これが、平和だと思うよ」
綺麗に食べきったお皿をシーアエに見せて、笑う。
余計な言葉は必要無かった。
笑顔で、僕たちは祭りを過ごした。

シーアエが僧侶として認められ、聖なる祈りが天に届くようになった。僧侶の慈しむ心を証明するには、並大抵の努力では叶わない。
癒し、癒され、二度彼女は輝いた。
笑顔で癒す事が出来るシーアエの隣に立って、嬉しい気持ちで心をいっぱいにした。




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