かつらぎ俳句ブログ

俳句結社かつらぎ交流ブログ

独り居やせめて寒灯明るうす  遠藤甫人

          「かつらぎ」5月号より

伴侶が居るうちは託ってばかりいても
いざ居なくなってしまうと寂しいものだろうと想像する。
寒さもより一層身に沁みるものであろう。
せめて寒灯を明るくしたと言う
正直な切ない思いが読む人の胸に響く。
いつも明るく笑顔を絶やさない作者だからこそ尚更である。


    鑑賞・ 阪野雅晴 (かつらぎ特別同人)

やさしい俳句講座       

    かつらぎホームページ季節の代表句(令和四年夏季掲載)

 牡丹百二百三百門一つ

     阿波野青畝 昭和二十七年作 句集「紅葉の賀」より

 高野山金剛峯寺での作。歩を進めるにつれて牡丹が「百二百三百」と増えてゆく。この部分畳語により牡丹が絢爛と咲き誇るさまとその広がりがリズミカルに表現されています。「門一つ」と置いたことにより、引き締まった完璧な仕上がりとなっています。

 金魚飼ひ三百六十五日見る

      森田 峠 平成八年作 句集「葛の崖」より

 「三百六十五日見る」何とぶっきら棒な詠みっぷりなのでしょうか。口語的とも言える表現方法は、ふと口をついて出たのではないのかとも思われます。飼っていると可愛く、家族同様です。金魚を気に掛け、今日も元気かと常に目線は水槽の金魚にむいているのです。

 ジャズ流れ神戸の夏至の日の暮れず

      森田純一郎 平成二十七年作 句集「旅懐」より

 季語は「夏至」。ジャズの街神戸は、ジャズライブ、ジャズ喫茶、ジャズコンサート、ジャズクルーズ等盛沢山。フォービートの洩れくるおしゃれな店。旧居留地。ストリートジャズも。一年で一番昼の時間が長い日。時間のたつのを忘れてしまいます。

  鑑賞・竹内万希子 (かつらぎ特別同人)

 SEIHO and TOHGE HAIKU in English (295)

リクルート事件の袋掛けにけり
Rikuruto jiken no hukuro kakenikeri

bagging
with the newspapers
reported the Recruit Scandal


阿波野青畝
     (Seiho Awano)


島山の一目千本袋掛
simayama no hitome senbon hukuro gake

having a look
at the island hill
thousand trees bagged


   
森田 峠
         (Tohge Morita)

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青畝句: 果実を鳥や病虫害から守るため“新聞紙newspaper” などの紙袋を”掛けるbag“。この時の紙面を賑わしていたのは”リクルート事件Recruit Scandal(1985年から86年にかけての贈収賄事件)”のニュースだった。

峠 句: “島山island hill”を見渡すと、”一目have a look”で袋掛けされた千本の樹が見えた。両先生とも“袋掛けbag”を句にされているが、青畝先生はリクルート事件を、峠先生は観察された情景を句にされ、お二人の句の特徴が良く出ている。

                訳と鑑賞・篠原かつら (かつらぎ同人)
                 (tr. Katsura Shinohara)
                                     

それぞれの恙が囲む薬喰   安藤悠木

           「かつらぎ」4月号より

年を取るにしたがって病気の話が増えて来る
その病気の人の話を巧く省略して「恙が囲む」と言っている。
しかも場所が寒中の滋養になるものを食べる「薬喰」であると言う
何とも俳諧味のある場面となっている。
散文的になりがちな内容を、舞台仕立てのような言葉選びで読者を惹きつける
魅力のある俳句だ。

  鑑賞・ 阪野雅晴 (かつらぎ特別同人)

SEIHO and TOHGE HAIKU in English (294)


腰架の角並びたり受難節
     
koshikake no kado narabitari Junansetsu

corners of benches
are lined up –
Lent

                   阿波野青畝
                   (Seiho Awano)


舌打ちを混へながらも囀れる

shitauchi o majienagaramo saezureru

tutting
now and then
birds are singing
                    森田 峠
                  (Tohge Morita)

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青畝句:「受難節の聖堂内に固い木椅子の角が並んでいる。その平凡なことがいたいたしい存在とうつった。」“ 受難節 Lent“、整然と” 並ぶbe lined up “ 腰掛の角との取合せは敬虔なクリスチャンであられた青畝先生ならではの句。

峠句:鳴き声に混じるチッチッを“舌打ちtut” と表現された。”混へ“は”時々now and then” にさせて頂いた。胸をそらして得意そうに囀っている鳥の様子が目に浮かぶよう。明るく楽しい句。

                    訳と解説・篠原かつら (かつらぎ同人)
                      (tr. Katsura Shinohara)

    

動き出すやうにも見えて滝凍つる   大久保佐貴玖
           「かつらぎ」3月号より

人間の目は見ている様で見ていない。
目の錯覚で動いている物が止まっているように見える
と言うのはよく言われる。
この句は逆に止まっている物(凍っている物)が動き出すように見える
と言っている。日が差してきてそう見えたのかもしれないが、
早く春になってほしいと言う作者の心情も読み取れる。


 鑑賞・ 阪野雅晴 (かつらぎ特別同人)

SEIHO and TOHGE HAIKU in English (293)

痩身のデウスにうたひ卒業す

soushin no Deusu ni utai sotsugyo su

singing hymn
to the lean Deus  
graduation

阿波野青畝
          (Sieho Awano)




苗床やいろいろの仮名氾濫す

naedoko ya iroiro no kana hanransu

seed bed
is flooded with
various Kana names
森田 峠
          (Tohge Morita)

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 青畝句:「小林・聖心女子学院。一番上の孫娘の小学校卒業の時の句。」と『青畝俳句365日』に註。“痩身のデウス lean Deus ”の一語で情景が具象化され、デウスに見守られ、さぞ厳粛な式であったろうと想像できる。“ 卒業式 graduation”。

 峠句:” 苗床 seed bed “ に “ いろいろな仮名 various Kana “ が “ 氾濫す be flooded “。
この一文でたくさんの種類の洋花の苗が置かれている種物屋の、春の情景が目に浮かぶ。省略の効いた峠先生らしい句。

          訳と鑑賞・篠原かつら (かつらぎ同人)
          (tr. Katsura Shinohara)

                   
                                         

やさしい俳句講座       
    かつらぎホームページ季節の代表句(令和四年春季掲載)より

 一燭に春寧からむ伎芸天
   阿波野青畝 昭和四十七年作 句集「旅塵を払ふ」より
 奈良の秋篠寺の伎芸天立像は芸能を司る女神として知られています。薄暗い堂内に一燭に照らしだされる寺宝の女身仏。しなやかな中に凛とした立ち姿は誰をも魅了します。「春寧からむ」から、より艶やかさを醸し出し、やすらぎと温かみを感じ癒されます。

 茎立と水平線とありにけり
      森田 峠 昭和五十七年作 句集「逆瀬川」より
 「茎立」とは、三、四月頃になると、大根、蕪、菜類が蕾をつけた茎を高く伸びたたせることを言います。畑の中の小さな茎立の垂直と、遥か彼方に見える水平線という大景の対比。さらりと詠まれていますが、味わい深い一句です。

 打ち寄する波見て飽かぬ遅日かな
      森田純一郎 平成二十七年作 句集「旅懐」より
 季語は「遅日」春の日が暮れかねて、日没が遅いこと。午後六時頃、つい先ごろまでは、暗かったのにまだこんなに外は明るい。それだけでも嬉しいのですが、波打ち際に佇み、風も波音までも優しく心地よく、春到来の喜びが伝わってきます。

  鑑賞・竹内万希子(かつらぎ特別同人)

我去るを待つ鴉をり西瓜畑   朝雄紅青子
           「かつらぎ」2月号より

そんなことがあるのかなあと思って
ネットで調べてみたらすぐに出て来た。
鴉除けに苦労されているようだ。
この句の良い所は俳句を作者の側ではなく
鴉の側に立って作句されている事である。
写生をしていると物と一体化してしまうと言われるが
あの人がいなければ存分に西瓜をたべられるのに
と読者も鴉になってしまう。

鑑賞・阪野雅晴 (かつらぎ特別同人)

SEIHO and TOHGE HAIKU in English (292)


関過ぎて雪間の粗くなりきたる

Seki sugite yukima no araku narikitaru

after passing Sekigahara
bare patches in snow  
scatter around

         阿波野青畝
                   (Sieho Awano)




梅林の詩碑ふるさとを讃へけり

bairin no shihi hurusato o tataekeri

stone monument with poem
celebrates the native place
in ume garden
         森田 峠
                  (Tohge Morita)

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 青畝句:岐阜県関ヶ原は「天下分け目の決戦地」。西北に伊吹山が聳え、南に鈴鹿山脈。例年積雪が多く、冬はJR東海道線の難所。関ヶ原を過ぎると雪も少なくなり、”雪間 bare path” が大きく、散らばってくる。
 峠句:“故里 native place” を “ 讃へる celebrate “ “ 碑 stone monument”。その詩碑の立つ“梅林 ume garden ”。さぞ格式のある風雅な梅林なのだろう。何方の詩なのだろうか。峠先生にお伺いしてみたい。                   
                訳と解説・篠原かつら (かつらぎ同人)
                 (tr. Katsura Shinohara)                                       
                              

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