自称「リベラル」を名乗る日本の「反日左翼」

悪意ある国に囲まれて、危機迫る日本。元通信社編集委員のジャーナリストの読書感想、国際関係・憲法・マスメディアなどについての草莽のコラムです。

2016年04月

◎China2049=秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」=マイケル・ピルズベリー【書評】

マイケル・ピルズベリー著
日経BP社刊
2015年9月発売

【推薦度】★★★★★

  昨年2月に米国で出版され、話題を読んだ本。1970年代のニクソン政権から現オバマ政権まで一貫して国防総省の中国軍事動向を調べる要職にあった著者が、米国に代わってグローバルな超大国になろうとする中国の秘密戦略を暴くとともに、これまでの対中政策を「錯誤」だと断じ、政策転換を求めた本。


 米国の中国軍事戦略研究で第一級の権威者が米国の対中外交に関して認識の誤りを明らかにしたものだけに、その内容は衝撃的。かってソ連との冷戦を警告し、米国民に対ソ冷戦への覚悟を訴えたジョージ・ケナンの「X論文」の中国版と評価する専門家もいるという。


 中国は、戦国時代の戦略思想に基づき、100年の歳月をかけてマラソンのような長期的な戦略に取り組んでいるというのだから、穏やかな話ではない。建国から100周年の2049年を目標に経済、政治、軍事の各面で米国を完全に追い抜く超大国となり、自国の価値観や思想に基づく国際秩序と覇権を確立しようとしていると指摘する。


 米国の年来の「対中関与は協力をもたらす」「中国は民主主義へと向かっている」「中国は米国のようになりたいと願っている」という勝手な思い込みから、歴代政府が中国に密かに行ってきたアッと驚くような数々の対中支援の事例も挙げている。

 
  中国はその世界覇権への野望の主要手段として、アジア諸国と日本国内を対象に反日工作を継続中で、日米間の同盟関係と経済協力を突き崩すことを目的に「日本との戦いは米国に対する密かな代理戦争なのかもしれない」とした上で「中国のマラソン戦略が実行可能かどうかを測る試金石」だというのだから、日本としても相当な覚悟を持って対応すべきだということだ。


 歴史を振り返れば、米国の外交は大きな失敗を繰り返している。戦前はドイツや日本を倒すためにソ連と手を結んで、ソ連の強国化を招来し、戦後まもなくから米ソ冷戦に突入した。その宿敵・ソ連を倒すために中国を利用して支援してやっと勝利を得たと思ったら、今度はその中国がかってのソ連のように強国化して世界覇権を狙う姿勢を見せ、その対応に追われる始末だ。中国は、ソ連とは違って思考回路が大きく異なるアジアの国だ。米国が果たして勝利者となりえるかどうか、すんなりとはいかないだろう。

◎アメリカはいかにして日本を追い詰めたか=「米国陸軍戦略研究所レポート」から読み解く日米開戦―ジェフリー・レコード、渡辺惣樹訳・解説[書評]

ジェフリー・レコード著、渡辺惣樹訳・解説
草思社刊行
2013年11月発売

[推薦度]★★★★★

   前半部分は2009年に、アメリカ陸軍大学の付属機関である米国陸軍戦略研究所の教官である著者がまとめた日米戦争開戦に関するレポートの訳文。後半部分は渡辺氏の同レポート解説で、同レポートの立ち位置および戦後に日米開戦に関してルーズベルト大統領を徹底批判したハミルトン・フィッシュ米下院議員に関する記述だ。

  レポートは「経済制裁は実際の戦争に匹敵しうる」とルーズベルト外交の失敗を指摘、結論として、「(日米の)政治的な対立を現実の戦争にまでエスカレートさせた責任はひとり日本だけではなくアメリカも負わざるを得ない」というもの。つまりは、日本悪玉史観を退け、開戦責任の一半を通商条約の廃棄、石油禁輸、資産凍結という経済制裁で日本を追い込んだルーズベルト政権にも帰す“けんか両成敗”だ。

  レポートは、もちろん歴史修正主義の立場ではなく、正統派の立場に立つ。しかし、正統派の著者が導き出した結論は、修正主義派が主張する考察とほぼ合致すると渡辺氏は指摘する。限りなく、ルーズベルトの行動は怪しいということだろう。

 それにしても、日本国内では戦争の原因を当時の国際情勢を無視してもっぱら日本の国内事情だけで説明する歴史研究家が存在するが、そんな視野狭窄では歴史の真実はつかめまい。

◎昭和史講義=最新研究で見る戦争への道―筒井清忠編集[書評]

筒井清忠編集
筑摩書房刊
2015年7月発売

[推薦度]★★★★

 歴史ものには、著者の名前から判断して、読む前からその内容が推測できるものが多いが、本書は第一線の「実証的」歴史研究家がそれぞれの専門分野を分担して執筆し、最新の研究成果が反映されているというので購読した。解説も平易な言葉で丁寧で、昭和史に関心のある人には容易に理解できる内容だ。加えて各講の末尾に参考文献を挙げているので、さらなる勉強にも役立つだろう。

 なぜ昭和の日本が戦争へと向かったのか。その失敗の原因はどこにあったのか。その解明に向け、15章構成。昭和初期の「ワシントン条約体制と幣原外交」から、終戦後の占領政策の背景を描く「日本占領」まで、主要トピックを15人の研究者が執筆している。ツボを押さえ、昭和史の全体像を大筋で把握でき、内容的にも私の歴史観とはさほどのギャップは感じられずほぼ満足した。

  細かいことでは、昭和11年の2.26事件で、戒厳司令部の中枢人物だった陸軍参謀本部作戦課長の石原莞爾が「事件勃発と同時に反乱軍鎮圧に乗り出した」ということが、専門家間では数10年前に否定された説だというのには驚き。満州事変の背景についても、ソ連の傀儡国家・モンゴルの建国と中ソ戦争が関東軍を刺激したという指摘もこれまでチラッと聞いた程度だったが、再認識した。

       ◎満州事変はなぜ起きたのか=筒井清忠著[書評]
               http://blog.livedoor.jp/kawa1948-syohyou/archives/47997361.html

◎赤い中国の黒い権力者たち=陳破空著[書評]

陳破空著
幻冬舎刊(新書)
2014年6月発売

[推薦度]★★★

  「厚黒学」という清の末期に書かれた英雄になるための研究書があり、その原則は「面の皮は城壁より厚く、腹は石炭よりも黒く生きよ」だとか。今も中国で読み継がれる「成功哲学」だという。

 元広州・中山大学助教授、その後民主化運動のリーダーとして2度投獄され、米国に亡命して現在米国で政治評論家として活躍中という経歴の著者。この「厚黒学」を視座に据えて革命以後の毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦涛、習近平ら権力者の行動の軌跡を追求し、それぞれがいかに権力基盤を築きあげたかを物語風に綴っている。残虐であればあるほど、党内で生き残ることができるとあり、そう言えば残虐度NO1の毛沢東が長期間にわたり絶大な権力を持ち得た理由も納得できる。逆に、胡耀邦や趙紫陽、華国鋒らは「厚黒」に徹することができなかったから失脚したのも道理だ。

 「反腐敗運動」で権力闘争を継続中の習近平までを取り上げているので、近現代の中国入門書として、お薦めだ。

◎原爆を落とした男たち=マッド・サイエンティストとトルーマン大統領―本多巍耀著[書評]

本多巍耀著
芙蓉書房出版刊
2015年10月発売

[推薦度]★★★

 書名通り広島、長崎への原爆開発・投下の経過を克明に追ったノンフィクション。かなりぶ厚い本だが、物語り風な記述なので読みやすいのが特徴だ。

 「原爆投下は戦争終結を早め、米兵だけでなく多くの日本人の命を救った」という戦後の原爆神話のウソをあばき、「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマー博士ら科学者や原爆使用を力説したバーンズ国務長官ら米国高官の「狂気」、投下地点をめぐる駆け引きなどが分かる。スターリンの心臓病は知られているが、チャーチルが躁鬱病、マッカーサーがパーキンソン病の兆候が現れひどい健忘症で難聴だったとは初めて知った。

 些細なことだが、ラジオによるトルーマンの原爆投下声明やソ連の日本への宣戦布告を最初に受信したのは同盟通信の川越分室であったことを改めて確認した。同盟通信は私が長年働いた通信社の前身、さらに今住んでいるところが川越なので、これも何かの縁なのか…。
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