書評と時事評論の交差点

悪意ある国に囲まれて、危機迫る日本。通信社元編集委員の読書感想、国際関係や憲法、マスメディアなどについてのコラムです。

《時事評論》

◎なぜバイデンの痴呆症は「表面化」したのか=オバマのシナリオ通りにいけば「夫人」が出馬か

 今年11月予定の米大統領選挙での候補者選びで、民主党内でのバイデン下ろしが表面化してきました。


 バイデンの私邸などから機密文書が見つかった問題で、捜査を進めていた司法省の特別検察官が2月8日、バイデンが「故意に機密資料を保持し開示した」と結論する報告書を発表しましたが、起訴はしないとの判断を示しました。


 同様なことを行ったとして、トランプ前大統領については起訴しながら、バイデン大統領については起訴しないというのは、「民主党の司法の武器化」を象徴する不可解な話ですが、問題はその理由について、バイデン大統領が「記憶力に劣る高齢男性」であるため、有罪にするのは難しいと結論づけたことです。機密文書持ち出し当時のバイデンは副大統領などのポストにあり、痴呆症ではなく刑事責任を問える健康状態であったにもかかわらずであり、こじつけとしか言いようがありません。


 それよりも政治的に大きな問題は、これまでバイデン政権と民主党、それを支える主要メディアはバイデン氏の痴呆症による奇っ怪な行動について隠してきましたが、ここに来てこの「バイデン痴呆症」問題を唐突に表面化させたことの意味合いです。


 それは何故なのか。このままだと、大統領選がバイデン VS トランプとなると、各種世論調査の結果をみても、トランプ勝利は確実とみられています。そこで何としてもバイデンを引きずり下ろして他の候補者を擁立したいと画策する動きが民主党内にあり、候補者の一人として党内に大きな影響力を持つオバマ前大統領夫人のミシェル・オバマ夫人が有力視されています。つまりは、このためにバイデン引きずり下ろしの理由付けのために「痴呆症」を利用しようとしているわけです。党内候補者選びまで残された時間はあまりないので、このタイミングを選んだのでしょう。


 このオバマのシナリオに対して、バイデン支持派が無抵抗ということはあり得ないでしょうから、今後、民主党内での抗争がどうなるかが注目されます。バイデン不利は否めませんが、オバマ派が勝利すれば、民主党の左傾化がさらに進みそうです。


【関連】

  ◎「現実」を伝え始めた裏には何があるのか=米WP紙のウクライナ報道

◎2024年は波乱・激動の年の始まりか

 2024年が始まりました。辰年は、世の中がガラッと変わることが多い年とも言われますが、波乱・激動の年の始まりかも知れません。
20231214川越八幡③
 年初にこんな災害や事故があった記憶はありません。1日夕、石川県能登地方を震源とする震度7の地震があり、今のところ57人死亡、けが人多数が出た大惨事が発生。翌2日夕には東京・ 羽田空港の滑走路で、新千歳(北海道)発羽田行きの日本航空機が着陸時に海上保安庁の航空機と衝突、炎上し、日航機の乗員乗客計379人は全員機体から脱出したものの。海保機に乗っていた6人のうち、機長を除く隊員5人の死亡が確認されたといいます。


 社会部の記者時代に、1982年(昭和57年)2月8日未明に発生し死者33人を出した東京・永田町のホテルニュージャパン火災、翌9日午前に羽田空港沖で日航機機長が逆噴射装置を作動させて墜落して24人が死亡した羽田沖逆噴射墜落事故が相次いで発生し、現場取材に走り回ったことを思い出しました。2つの重大事故や災害が重なると、社会部はまさに修羅場と化し、今もそのような状況でしょう。まして正月休み期間中ですから。


 今後の国際情勢では、  3月のロシア大統領選挙もありますが、注目は1月の台湾の総統選挙、11月の米大統領選挙で、いろいろと予測されていますが、波乱含みで、それまでに何があるのか、その後のゴタゴタも含めスムーズにことが進むのか懸念されています。


 とりわけ米大統領選挙をめぐっては、バイデンの敗北必至のため何が何でもトランプ出馬を阻止しようと民主党が司法を使ってあの手この手で攻勢を強めており、選挙が始まるまでに何があるのか分かりません。バイデン自身も自身の出馬辞退や、民主党の陰の指導者オバマ元大統領の妻、ミシェル・オバマの出馬説、さらにはメキシコ国境などからの1200万人から2000万人にも上るとされる不法移民に投票権を与えることを策していたり、先行き不透明です。


 また、トランプ勝利の場合は、進行中のウクライナ戦争やハマスVSイスラエル戦争、気候変動・エネルギー政策などが変わり、世界情勢が激変するにちがいありません。


 ともあれグローバリスト・ネオコンVSナショナリストの戦いは、どう決着していくのでしょうか。欧州では、ナショナリストの反撃が始まり勢いがありますが、やはり米国の動向が勝敗を左右するにはちがいありませんので、最大の焦点は米大統領選挙です。

◎肝心なことは伏せたまま=共同の「リズ・チェイニーが大統領選出馬検討」原稿に見る

 メディアの歪んだ情報が多発し、記事を読む際には細心の注意が必要となっています。何気ない記事にも、よく見ると読者を一定の方向に誘導しょうとする底意が感じられるものがあります。ワシントン発の共同通信電「リズ・チェイニー氏が来年の大統領選挙に出馬検討」という記事を検証してみました。


 前回のワイオミング州で中間選挙に向けた共和党予備選挙で、現職でありながら大敗したにも関わらず、リズ・チェイニー氏が第三政党からら大統領選挙に出馬することを検討しているというのです。


 問題はこれを取り上げた共同の記事です。リズはブッシュ政権のチェイニー副大統領の娘であることは触れているのですが、それよりも重要な「ネオコン」政治家として知られ、共和党内では「ライノ(名ばかりの共和党員という意味)」と称されるごく少数派に属していたことに全く触れていません。


 父・娘共に「ネオコン」政治家ということは、米国の政治家の立ち位置を示す上で重要な意味を持ち触れるべき事柄です。ネオコンとは、アラブやウクライナでみられるように他国に介入し、戦争で儲ける介入主義者であり、背後には国際金融資本や軍産複合体がいます。

 彼女がトランプを嫌った理由は、ネオコンが支配する共和党で大統領になるつもりが、トランプによってアメリカファーストの党に転換したからであり、これで利権政治が終わるためだったとみられています。


 今や「ネオコン=戦争仕掛け人」という国民受けしない立場にあることに触れないのは、”欠陥原稿”ではないでしょうか。


 加えて、「トランプ=悪」という決めつけ報道からは、米国の本当の政治の流れは見えてこないのではないでしょうか。


▽6日付けの共同通信ニュースです。


◎リズ・チェイニー氏が出馬検討 反トランプ派、第三政党から


 【ワシントン共同】米共和党のリズ・チェイニー前下院議員(57)はワシントン・ポスト紙に対し、来年の大統領選に第三の政党から出馬を検討していると述べた。同紙電子版が5日、インタビューを掲載した。チェイニー氏はトランプ前大統領批判の急先鋒で、共和党候補指名争いで独走するトランプ氏を阻止するため「何でもやる」と語った。

 チェイニー氏が実際に出馬すれば、民主党候補に流れる可能性があった無党派層やトランプ氏を嫌う共和党穏健派の票が分散し、結果的にトランプ氏を利するとの見方が強い。チェイニー氏は数カ月以内に最終決断すると述べた。民主党は再選を狙うバイデン大統領の候補指名獲得が確実視されている。

 チェイニー氏は、ブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏を父に持つ。2021年の議会襲撃でトランプ氏の責任を厳しく追及。22年の前回下院選の共和党予備選で、トランプ氏が推薦した「刺客」候補に敗れた。その直後にも大統領選出馬を検討すると明らかにしていた。

◎「現実」を伝え始めた裏には何があるのか=米WP紙のウクライナ報道

 米国や日本の主要メディアの大半は、ロシアのウクライナ侵攻報道で、これまでウクライナ寄りの報道を続けてきました。軍事評論家が戦況について、ウクライナ軍の死傷者はロシア軍をはるかに上回る死者40万人を含む90万人、兵隊の平均年齢は40歳代で少年兵もいるなど動員も限界にきていると解説しているのに、紙面ではこれとは逆にウクライナの「反攻」とかをやたらと持ち上げて、まるで勝利しているかのような捏造記事があまりにも目につきます。とにかく、ウクライナ「不利」の情報はほとんど無視してきたのです。


 ところが最近になって、米国では報道姿勢が大きく変化する兆しが出始め、ロシア軍の優勢、ウクライナ軍の苦戦という「現実」を伝えるようになってきました。


 なぜこの時期になって、報道姿勢が変化してきたのか。一つには、ウクライナ軍の「敗戦」が現実化しつつある中で、いつまでもウソをつき読者をごまかすことは無理があるためでしょう。とはいつてもこれだけでは根拠が脆弱です。


 米国の主要メディアの大半はリベラル左翼で、民主党の強力な支持グループです。しかし、バイデン政権のとりわけ国内政策の失政や身内のスキャンダル、健康問題に愛想が尽き、来年の大統領選挙での擁立を断念して、立候補下ろしに動き始めたのではないでしょうか。


 つまりは、大統領選挙との関係です。このままだと、共和党のトランプに勝てそうにもないので、ウクライナ問題での失敗をテコにしてバイデンの責任を追及し、他の候補者を擁立しようと策しているのではないかという勘ぐりです。

             ◇民主党の候補者は、実はミシエル・オバマ?!

 こんなうわさ話があるそうです。オバマ元大統領の妻、ミシエル・オバマを土壇場で民主党候補者として擁立する動きです。バイデンが下りそうにもないので、一応、予備選挙を経てバイデンを民主党候補者として選んでおいて、その後にバイデンを何らかの理由(例えば公然化してきたバイデン・ファミリーの数々のスキャンダル話や大統領弾劾の話など)を突きつけて強引に引きずり下ろし、その後、民主党全国委員会が選挙を経ずにオバマ夫人を候補者に指名するというシナリオです。ポイントは、選挙を経ずに「大統領選挙まで時間が無いから」とか理由を付けて強引に事を運ぶというところです。


 このシナリオからすれば、米国のリベラル左翼メディアがバイデンを引きづり下ろすために、スキャンダルを取り上げ始めたというのは流れとしてよく分かります。


 政界は、一寸先は闇の世界です。ちょっとした兆しにも注意が必要です。


▽5日付けの共同通信ニュースです。


◎ウクライナ、反転攻勢「失敗」 米紙報道、想定外れ戦況が膠着


【キーウ共同】米有力紙ワシントン・ポスト電子版は4日、ウクライナがロシアに対して6月に始めた反転攻勢について、当初の想定が外れて戦況が膠着し、全体として失敗していると特集記事で報じた。作戦方針や開始時期を巡り、最大支援国の米国と摩擦が生じていたと伝えた。同紙はプーチン大統領が支配地域を完全に吸収できると確信していると分析した。

 同紙によると、ウクライナと米英両軍は反転攻勢のため、ドイツ・ウィースバーデンの米軍基地で8回の机上演習をした。米国は戦力を南部ザポロジエ州に集中させ、拠点都市メリトポリに南下してアゾフ海に到達し、ロシアの補給路を断つ作戦を主張。早ければ60~90日間で成功する可能性があるとみていた。

 だが、ウクライナはメリトポリに加え、メリトポリ東方のベルジャンスク、東部ドネツク州バフムトへの進軍を訴えた。東部に戦力を投じなければ、隣のハリコフ州を侵食されかねないと懸念した。ロシア軍の兵力を分散させる狙いもあり、結局、反転攻勢は3方面で進めることになった。

◎”ダサい”玉県の自民党県議団は、ヤッパリダサい=世論の猛批判浴び子ども放置禁止条例撤回

 何ともダサい、お粗末な地方議会の話しです。子ども「放置」は虐待―と言わんばかりに、誰が考えても守れそうにないことを県民に強いる条例を強行しょうとした埼玉県議会自民党が、世論の猛反発を受けて条例改正案の取り下げを発表する騒動がありました。関係者など外部の意見を全く聞かずに強行しようとしたのですから、あきれ果てます。


 自民党県議団が提出した条例改正案は、罰則はないが、「児童を住居、その他の場所に残したまま外出すること、その他の放置をしてはならない」とあり、小学校1~3年生の子どもだけでの登下校、子どもだけで公園で遊ぶこと、子どもだけでおつかいに出かけることも違反となるもの。条例案は、違反を見つけたら通報する義務も課しています。


 昨年は、これも全国初なのですが、エスカレーターの安全な利用を促進しようと、利用者に立ち止まって乗ることを求める条例案を自民党県議団が強引に主導して可決・成立させ、昨年10月から施行されています。その実態はどうか。県民の大半は知らず、それが守られて状況が変わったとは思えません。


    県民からの意見募集(パブコメ)の結果でも圧倒的に反対が多かったのに、LGBT条例を強行したのも同じ自民党県議団です。


 そもそも、罰則規定のない単なる条例は“精神訓話”レベルの話しにすぎず、実効性があるはずがありません。とりわけ、今回の子ども放置禁止条例にいたっては内容そのものが社会常識からしても逸脱し、実現不可能で異常すぎることが明らか。こんな社会からズレまくった自民党県議の頭の構造は一体どうなっているのか、その愚かさ、劣化ぶりには驚くしかありません。


 守れそうにない条例をあえてつくる必要は全くないのに、それをゴリ押しして成立させる動機は何なのか。LGDT騒動で指摘されたように、甘い”利権”が生じる儲け話があったのでしょうか。今はやりの”公金チューチュー”とか……。


 日頃、メディアも県議会の動きをほとんど伝えないので、議員選挙にも全く関心がありません。たまには投票に行かないとこんな碌でもない政治が行われるということが分かったことが、今回の騒動の教訓です。


▽以下は10日付けの時事通信ニュースです。


◎子ども放置禁止条例、取り下げへ 自民県議団が発表―埼玉


 埼玉県議会に提出されていた、子どもを自宅などに放置することを虐待と定める条例改正案について、同県議会の自民党県議団は10日、記者会見し、案を取り下げると発表した。改正案を巡っては「対応できない家庭が多い」など反対も多く、波紋を広げていた。
 県虐待禁止条例改正案は、小学3年生以下の子どもを自宅などに放置することを一律に禁止し、小学4~6年生は努力義務とする内容。罰則のない「理念条例」だが、子どもだけでの留守番、登下校、公園で遊ぶことなども放置と見なしている。
 改正案は6日の常任委員会で可決。自民は議会の過半数を占め、13日の本会議で可決、成立する見通しだったが、審議では他党派から「子どもを預ける先がない」などとの指摘が相次いでいた。
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