門田隆将著
産経新聞出版
2023年11月発売
【推薦度】★★★★
太平洋戦争末期の昭和20年7月、石垣島から台湾へ疎開中の小型船2隻が、米軍機の攻撃を受け、当時無人だった尖閣諸島の魚釣島に漂着。食料のない島で80人余りの餓死者が出たものの、難破船の廃材を使って手漕ぎの舟を造り、決死隊が救助を求めて荒波に漕ぎ出して約170キロ離れた石垣島に小舟を漕いでたどり着き、魚釣島の生存者全員が救助されたという「尖閣戦時遭難事件」。
著者は、世にほとんど知られていないというこの歴史的事実を丹念にたどり、「尖閣が日本の領土であることは揺るぎないものであるが、日本人はその理由を知らない。尖閣戦時遭難事件は先人たちの勇気と気迫、敢闘精神、優しさなど日本人のすばらしい点が凝縮している事件であり、多くの人に知ってほしい」と訴えている。
本書の後半では、魚釣島に埋葬された漂着者の遺骨を戦後になって回収しに行く人々の話も出て来るが、いまだにすべては回収できずに日本人の骨が今もあの島で帰還を待っているという。
太平洋の島々にも未だに回収されない遺骨が眠っているというが、戦後80年もしてそんな状態のままだという日本のあり方は異常ではないか。それなりの理由があるのかもしれないが、それにしてもおかしいという思うのは私だけだろうか……。