さて、先週の金曜日に、ツイッターやフェイスブックなどをはじめとするネット界で大変な話題になったのが、野村ホールディングスの今年の定時株主総会招集通知(株主総会参考書類)に記載された株主提案でした。

 ↓ 野村HDの今年の定時株主総会招集通知は、こちらで確認できます。
 
http://www.nomuraholdings.com/jp/investor/shm/

 会社提案の第1号議案に続けて、株主提案が、第2号議案~第19号議案まで列記されております。

 これらの株主提案は全て1人の同じ株主から提案されたそうで、同招集通知(参考書類)によれば、当該株主からは、100個の提案があったそうですが、「株主総会に付議するための要件を満たすもののみを第2号議案から第19号議案としております」とのことです。

 株主提案の内容についての具体的なコメントは控えさせて頂きますが、何とも凄い提案ですね・・・。

 招集通知のうち、株主提案が書かれたページ(12~19頁)には、その全てのページの上部に、丁寧に「株主提案は原文のまま掲載しております。」と書かれておりました。

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 さてここで、株主提案の場合の議案における株主総会参考書類への記載事項が、会社法・会社法施行規則上どのように定められているかについて、簡単にまとめさせて頂きます。

 株主提案の議案については、参考書類に以下の事項を記載する必要があります(典型的な場合を想定しており、全ての規定を網羅的に挙げている訳ではない点、あらかじめ御留意下さい)。
① 議案(会社法施行規則73条1項1号)
② 議案が株主の提出に係るものである旨(会社法施行規則93条1項1号)
③ 議案に対する取締役会(取締役会設置会社の場合)の意見があるときは、その意見の内容(会社法施行規則93条1項2号)
④ 株主が議案の通知請求(議案提案権~会社法305条1項)に際して提案の理由を株式会社に対して通知したときは、その理由(ただし、その提案の理由が、明らかに虚偽である場合または専ら人の名誉を侵害し、若しくは侮辱する目的によるものと認められる場合における当該提案の理由を除く。)(会社法施行規則93条1項3号)
⑤ 議案が取締役、会計参与、監査役または会計監査人の選任に関する場合に、株主が議案の通知請求(議案提案権~会社法305条1項)に際して会社法施行規則74条から77条までに定める事項(これらの者の選任事案における参考書類記載事項)を会社に対して通知したときは、その内容(当該事項が明らかに虚偽である場合における当該事項を除く。)(会社法施行規則93条1項4号)

 株主総会に関する実務本などでは、上記のうち①の要件を記載していないものが少なからず見られるのですが(当たり前過ぎて記載を省いているのかもしれませんが)、株主提案であっても議案である以上、議案(すなわち、今回の招集通知に記載された株主提案の議案で言えば、「提案の内容」)の記載は当然必要になります。

 ②③は特に問題はないでしょうね。今回の株主提案の議案にも、もちろん記載されています。

 次に、④⑤に関しては、株主が通知した事項が、「株主総会参考書類にその全部を記載することが適切でない程度の多数の文字、記号、その他のものをもって構成されている場合(株式会社がその全部を記載することが適切であるものとして定めた分量を超える場合を含む。)」には、「当該事項の概要」の記載で足りる、とされています(会社法施行規則93条1項柱書)。
 
 上記の「株式会社がその全部を記載することが適切であるものとして定めた分量を超える場合」という規定からわかりますとおり、会社が自社の規定(例えば、株式取扱規程など)で、株主提案の場合における④⑤の事項の字数の上限を定めることができる訳なのですね。
 ただこの場合、字数の上限について何字までとすべきかについては会社法施行規則には規定がなく、会社が任意に判断して字数の上限を決めることになります(もっとも、旧商法施行規則に「400字以内」という規定が存在したため、会社の規定として、400字という字数を上限としている事例が比較的多いように思われます)。

 ↓ 野村HDの株式取扱規程はこちらのページにありましたので、見てみましたところ・・・。
 http://www.nomuraholdings.com/jp/investor/shareholders/sstep.html

 第13条に規定がありますね。
 それによりますと、
・上記④の「提案の理由」=各議案ごとに400字。
・上記⑤の「提案する議案が役員選任議案の場合における株主総会参考書類に記載すべき事項」=各候補者ごとに400字。
 となっております。

 ただ、上述した会社法施行規則93条1項柱書のルール(及び野村HDの株式取扱規程第13条の規定)は、逆に言いますと、例えば株主提案の「提案の理由」として株主が通知してきた内容が、字数が400字以内であり、また「その提案の理由が、明らかに虚偽である場合または専ら人の名誉を侵害し、若しくは侮辱する目的によるものと認められる場合」以外である場合には、その内容をそのまま参考書類に記載しなければならない訳なんですね。

 今回の招集通知(参考書類)の株主提案の記載を見ますと、「提案の理由」は、いずれの議案も400字以内に収まっているようですね。このため、会社は株主提案を原文のまま掲載することとしたのでしょうね。
 これが400字を仮に超えていたならば、会社はどうしていたでしょうか・・・。

 ちなみに、上記③の取締役会の意見の内容については、字数の制約は法令上一切ありません。ですので、理屈の上では、提案の理由は400字以内である一方で、それに対する取締役会の意見を400字より多い字数で記載して参考書類に載せることも可能なわけです。
(今回の野村HDの招集通知(参考書類)を見る限り、さすがに400字を超えるような取締役会の意見というものはないようですが・・・)。

 もう一つちなみにですが、株主提案を行った当該株主の氏名や名称は、法令上、参考書類に記載することは要件とされておりません(もちろん、任意で記載することは可能です)。

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 以上、株主総会担当者(のうちでも、適法な株主提案権を受けた会社の総会担当者)以外の皆様には、ほとんど縁がないであろうマニアック(笑)なルールではありますが、簡単にまとめさせて頂きました(記載に誤記等ございましたら、ご指摘下さると幸いです・・・)。

 では、本日はこんなところで・・・。