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 さて、本日は、少し前にSNSで話題になっていた件を・・・。

1.
 雑誌「週刊T&A master」の681号(2017年3月6日号)の40~41頁に、株主総会決議取消しの訴えに関する東京地裁の判決(東京地裁平成28年12月15日判決)の概要が紹介されており(その記事のタイトルは「地裁、原告株主の総会決議取消請求を斥ける 従業員株主が複数質問も総会決議に著しい不公正なし」というものでした)、とても興味深い内容となっておりました。

(なお、このブログ記事を書いている2017年3月15日の夜現在、当該判決は、各種判例雑誌や、私が利用しているLEX/DBには掲載されていないようです。
 したがって、以下の文章は、判決文の全文を確認した上でのものではなく、上記記事で紹介されている内容をベースにしている点、予め御留意頂ければと存じます。 )

2.
(1)
 本件は、原告である株主が、東証一部上場企業である被告企業(記事には会社名の記載がありますが、ここでは敢えて記載を控えます)に対して、同企業の定時株主総会において、被告企業がその子会社の従業員である株主らに質問をさせて一般株主の質問時間を剥奪した上で一方的に質疑を打ち切ることにより一般株主の質問権または株主権を侵害したなどとして、同総会における各決議の方法は著しく不公正であるなどと主張して会社法831条1項1号に基づき各決議の取り消しなどを求めた事案です。

(2)
 本定時総会の所要時間は2時間44分で、このうち株主との質疑応答に充てられた時間は1時間30分11秒でした。株主との質疑応答の際に質問した株主は16名いましたが、このうち8名が従業員株主であり、これ以外の一般株主8名の質疑応答に充てられた時間は52分47秒だったとのことです。

 原告株主は、本件訴訟の中で、「株主総会で8人の従業員株主がした質問は被告企業の総務部長の指示に基づきあらかじめ用意されたヤラセ(川井注:雑誌記事の記載のまま。なお、雑誌記事には、「  」で括った記載はありません。)の質問である」と主張。被告が従業員株主に質問を依頼し、修正動議を無視して一方的に質疑を打ち切ったことにより一般株主に十分な質問をさせなかったことは一般株主の質問権または株主権の侵害にあたる、と主張。
 これに対し被告側は、総務部長が従業員株主に総会で質問するよう依頼したことは認めたようでして、その上で、そうした依頼は、より多くの株主が発言しやすい雰囲気を醸成することを企図したものだ、と反論。一般株主の質問権や株主権は侵害されていない、と主張しました。

(3)
 本件判決で、裁判所は、

 本件で被告の総務部長が従業員株主に総会への出席及び質問の依頼をすること自体、株主総会の議事運営の在り方として疑義がないとはいえないものと言わざるを得ない

 と指摘した一方で、

① 一般株主の質疑応答のためにも約53分間の時間が充てられていることから、一般株主の質疑応答の時間が短時間に過ぎるとはいえないこと
② 一般株主の質問内容は質疑応答の時間が経過するに従い株主総会の報告事項または決議事項と関連性を有するとはいえない事項に関するものが続くようになっていたこと
③ (敢えて割愛いたします。詳細は雑誌記事をご確認下さい)
④ (同上)

 との4つの事情を挙げた上で、被告において質疑の打ち切りに際し一般株主の質問権または株主権を不当に制限したものとまで断ずることはできない、したがって、各決議の方法が著しく不公正であると断ずることはできない、と判断し、原告株主の請求(総会決議の取消し等)を斥けました。

3.
 株主総会における従業員株主・社員株主における、いわゆる「サクラ質問」(本件の原告は「ヤラセ質問」と称していたようですが)について、本件の東京地裁判決は「株主総会の議事運営の在り方として疑義がないとはいえないものと言わざるを得ない」(かなり回りくどい言い回しですが・・・)と判示したんですね。うーむ・・・。コメントは控えますが・・・。

 ただそれでも、本判決は、本件の具体的事案のもとでは、他の一般株主の質問の機会(質問権)は「不当に制限したものとまで断ずることはできない」(これもかなり慎重な言い回しになっていますが)として、決議方法が著しく不公正とまではいえない、と判断しました。

 本判決に基づいて実務上どのようなケアをすべきか、そもそも実務上の新たなケアが必要かどうかについてはコメントはさしあたり控えたいと思いますが、まずは判決文について目を通しておく必要がありそうだな、という気がいたしました。
(判決文がどこかのメディアに掲載されましたら、上記2の内容に追記・補充等をしたいと思っております。)

 それでは、本日はこんなところで・・・。