ブログ懇親会(4/23(月)午後7時~)、引き続き参加者募集中です。4/14現在、ご参加申込者5名(私を入れて、6名)です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
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 さて、本日(4/13)でパブコメ期間も終了ということですが、ようやく連載「会社法改正中間試案を読む」の第3回です。

 今回は、「取締役の報酬等」です。

 中間試案でいいますと、「第2部 取締役等に関する規律の見直し」の「第1 取締役等への適切なインセンティブの付与」の「1 取締役の報酬等」の部分です。 

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1.
 このテーマに関しては、実務上のインパクトも大きい、重要な改正提案が複数なされております。

 これらの改正提案を大きく分けますと、以下の趣旨からの提案になっているものと、私なりに理解しております。(あくまで、私なりの理解ですので、整理の仕方が適切ではないかもしれませんが。)

① 取締役の報酬に関する会社法の現在の規制や解釈は「お手盛り防止」という趣旨に基づくものになっているが、その趣旨だけではなく、近時の報酬に関する議論の流れ、すなわち、「取締役に適切なインセンティブを与えるため」という報酬付与の趣旨をも踏まえた、法規制のあり方を考えるべきではないか。

・・・中間試案の第2部、第1、1(1)(取締役の報酬等の内容に係る決定に関する方針)。

② (①にも関連しますが)近時、株式報酬という報酬支給方式が普及しつつある現状を踏まえ、株式に関する報酬について、規定を新たに設けるべきではないか。

・・・中間試案の第2部、第1、1(2)(金銭でない報酬等に係る株主総会の決議による定め)、(4)(株式報酬等)。

③ 現行の実務や解釈において、必ずしも株主や投資家から見て透明化がされていないと思われるものにつき、昨今の取締役という立場の意義の在り方の変化(「社内取締役中心で、代表取締役は取締役のトップである」という従来多数を占めていた在り方から、「取締役は他の取締役や執行者を監督する立場である」という近時増加しつつある在り方への変化)も踏まえ、一定程度の明確化を図るべきではないか。

・・・
中間試案の第2部、第1、1(3)(取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任)、(5)(情報開示の充実)。

2.
 このうち、法制審の部会での議論(一応、このテーマに関するこれまでの部会資料と議事録に全て目を通しました。とても面白かったですが、結構大変でした・・・)を含めて、印象に残った内容とそれについての簡単なコメントを。

(1)
 上記1②については、いわゆる相殺方式(というそれなりに迂遠な方法)ではなく無償交付の方式で、株式や新株予約権を報酬等として発行することを会社法で規定してはどうか、という問題意識からの提案ですね。

 この点、株式の無償交付については、部会の議論の中で、無償交付という方式での株式発行を法で認めてしまうと、それによって
、議決権を有する株式を増加させることを認めることになってしまい、特に非公開会社の場合には、支配権の公正が歪められるなどのリスクが大きいのではないか、といった反対論・慎重論が、結構な数の委員から出されていたのが印象的でした。

 言われて見れば、確かにそうかもしれないなあ・・・という印象がいたします。

(その懸念を踏まえたのが、中間試案の第1、1(4)の【B案】または【C案】です。この2案は、株式については、無償交付についてのルールを改正で定めない(【A案】の①の内容を、改正内容に含めない)、という提案になっています。)

 そして、この点について、田中亘先生は部会で、

・無償発行という方式によって生じる問題というのは、現在実務で行われている相殺方式でも全く同じように起きるのではないか。

・しかしながら、無償交付という方式を法律で規定することによって、「こういうことを好きにやってもいいです」というようなメッセージとみなされるおそれは、考えられなくはない。

・そう考えると、現行法の下でも、相殺方式で別に困っていなくて、無償交付のルールを新たに設けることは必要ないのであれば、「あえて寝た子を起こす必要」はなく、これについて何も規律を設けないというのも、一つの立場。

とおっしゃられているのが、問題点をうまく捉えたコメントに思えました(偉そうですみません。上記は、逐語的ではありません)(部会第6回会議議事録57~58頁)。

 ただまあ、相殺方式がやたらと技巧的だというのは私にも良くわかりますので、シンプルに無償交付を認めるという規律は、わかりやすさの観点からは非常にいいことは間違いないですので、簡単にこの無償交付のルールは不採用、と決めてしまうのもどうかなあ、と私には思えます。

 例えば、無償交付を行える会社の範囲を限定するとか、交付数の上限を設けるとか、といった形で絞りを掛ける、という方向性が、私はいいのではないかなあ、と思うのですが。

 この論点は、このあたりのことも踏まえて、もう少し詰めた議論が必要になりそうです。

(2)
 次に、上記1③については、まず、取締役の報酬等を、取締役会の決議で、取締役(通常は代表取締役)に再一任するという方法について、何らかの改正が必要か否か、という点で、部会では様々な意見が出されていました。

 その結果、最終的に、

・再一任そのものを駄目、とするのは、現状の実務からの大きな変更をもたらすので、そこまでは求めなくてもいいかもしれない。

・ただ、再一任の事実については、やはり株主の判断にゆだねるべきでは。したがって、総会決議を求めるべきでは。

・もっとも、総会決議まで求めるのは、公開会社だけで良いのでは。


という方向性で概ね議論が収斂し、その結果、中間試案では、「公開会社では、株主総会の決議で、各取締役の報酬を取締役に再一任できる」という趣旨の提案内容(第1、1(3)②)となった訳です。

 この提案については、部会では経団連の委員の方は反対されていましたが、うーん、これは提案内容として今後も残ってしまうかもしれないですね・・・。

(3)
 また、上記1③のうち、「情報開示の充実」については、やはり、

・報酬等の再一任の内容(第1、1(5)③)

・報酬等の個人ごとの額(第1、1(5)の(注))

を事業報告で開示するかどうか、という点が目を引きますね。

 このうち、後者については、日本の取締役の報酬はアメリカの取締役の報酬よりもずっと低いこと、報酬等の個別開示をすることが結果的に逆に報酬等の額の高騰化のリスクもあること、などを理由に、まあ個別開示はしなくてもいいのではないか、という雰囲気に部会の議論ではなっていたのが印象的でした(だからこそ、中間試案では(注)に落ちてしまっているのでしょう)。

 まあ、個人的にも、報酬等の個別開示まではしなくてもいいように思いますね・・・。

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 それでは、本日はこんなところで・・・。

 この連載、次回は「会社補償」「D&O保険」を予定していますが、次回があるかどうかは、私にもわかりません(笑)。

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