さて、少し遅れましたが、元東京高裁部総括判事で、裁判所を定年退官後は西村あさひ法律事務所に所属されていた鬼頭季郎弁護士の執筆による「企業間ビジネス紛争及び会社組織等紛争に関する裁判の運営上の諸問題-企業法務の訴訟弁護士及び裁判官のために(1)」(判例時報2018年6月1日号126頁)を入手し、大変興味深く読ませて頂きました。

 今回は連載の第1回目ということで総論的な記載が中心のせいか、また、私が企業間紛争や訴訟に弁護士として従事して約20年経ち、さすがにそれなりの知見をたくわえたからなのか、はたまた、その両方なのかもしれませんが、記事で記載されていた内容については、多くは既に知っていることで、「あるあるだよなあ、それって」と思いつつ読ませて頂きました。

 ただそれでも、裁判官が企業間ビジネス訴訟をどのように考えているかについての鬼頭先生の見解やコメントの中には、とても参考になる記述がいくつもあり、大変有益な論稿でした。

 ことに、「多くの裁判官は、判例・学説の集積が十分でなく、法的にグレーもしくは空白の事案に対しては、先頭を切って法的判断を展開する面白さややり甲斐を感じて、誠実に研究・検討を重ねるものである」との鬼頭先生の記述については、ああなるほど、と、とても納得した次第です。

 また、今回の論稿の最後に書かれていた、日本の裁判においていわゆる「経営判断原則」的な法理が採用されてきた理由についての考察も、非常に合点がいきましたね。(ただ、最終文については、そんなふうに考えている弁護士は、会社法を普通に勉強したり業務として扱っている者の中には、おそらく1人もいないと思いますが・・・。)

(あと、これは形式論ですが、論稿中、鬼頭先生は「コーポレートガバナンス」「ステークホルダー」とは決して書かず、「コーポレイトガバナンス」「ステイクホルダー」と何度も必ず書いていたのに、言葉に関する独特の「こだわり」を感じましたね(批判している訳ではありません・・・)。)

 ということで、本論稿、ご興味がある皆様は、お読みになると面白いのではないか、と思います。今後の連載の続きも楽しみです。

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 それでは、本日はこんなところで・・・。