2015年06月29日

洒落怖 かんかんだら

皆さんこんばんは!



岩本です。



前回に引き続き、



洒落怖という掲示板から



ゾッとするお話をご紹介します。



「かんかんだら」

20120616201502a35










中学の頃、俺は田舎者で世間知らずで、
特に仲の良かったA、Bと三人で
毎日バカやって荒れた生活をしていた。

俺とAは家族にもまるっきり見放されて
いたのだが、Bのお母さんだけは、
Bを必ず構ってくれていた。
あくまで厳しい態度ではあったけれど、
何だかんだ言ってBのために色々と
動いてくれていた。

中三のある時、そんなBとお母さんが、
かなりキツい喧嘩になったことを知った。
詳しい内容は言わなかったものの、
精神的にお母さんを痛め付けたらしい。

お母さんをズタボロに傷つけていたころ、
親父が帰ってきた。一目で状況を察した
親父は、Bを無視して黙ったまま
お母さんに近づいていった。

服や髪がボロボロなうえに、
死んだ魚のような目で床を茫然と
見つめてるお母さんを見て、
親父はBに言った。

B父
「お前、ここまで人を踏み躙れるような
 人間になっちまったんだな。母さんが
 どれだけお前の事を思ってるのか、
 それが何で分からないんだ。」

親父はBを見ず、お母さんを抱き締めながら
話していたそうだ。


「うるせえよ。てめえは殺してやろうか?あ?」

Bは全く話を聞く気がなかった。

だが親父は何ら反応する様子もなく、淡々と
話を続けたらしい。

B父
「お前、自分には怖いものなんか何もないと、
 そう思ってるのか?」


「ねぇな。あるなら見せてもらいてえもんだぜ。」

親父は少し黙った後、こう言った。

B父
「お前は俺の息子だ。母さんがお前をどれだけ
心配しているのかも良く分かっている。
だがな、お前が母さんに対してこうやって
踏み躙る事しか出来ないのなら、
俺にも考えがある。これは父としてでなく、
1人の人間、あくまで他人として話す。
先にはっきり言っておくが俺がこれを話すのは、
お前が死んでも構わんと覚悟した証拠だ。
それでいいならそのまま聞け。」

Bは、その言葉に何か凄まじい気迫の様な
ものを感じたらしいが、
「いいから話してみろ!」と煽った。

B父
「森の中で立入禁止の場所があるのを知って
 いるな。あそこに入って奥へ進んでみろ。
 後は行けばわかる。そこで今みたいに
 暴れてみろ。出来るもんならな。」

親父が言う森というのは、俺達が住んでいる
地域に小規模の山があって、そのふもとにある
樹海みたいな場所の事だ。

山自体は普通に入れて、森全体も普通では
あるのだが、奥に進んで行くと立入禁止に
なっている区域がある。
言ってみれば、四角の中に小さい円を書いて、
その円の中には入るな、という状態だ。

2メートル近い高さの柵で囲まれ、柵には
太い綱と有刺鉄線、柵全体には連なった
白い紙がからまっていて、大小いろいろな鈴が
無数に付いている。変に部分的なせいで
柵自体の並びもイビツだし、
とにかく尋常じゃないの一言に尽きる。

そして、特定の日に巫女さんが入り口に数人
集まっているのを見かけることがあるが、
その日は付近一帯が立入禁止になるため、
中で何をしているのかは謎だった。

様々な噂が飛び交っていたが、カルト教団の
洗脳施設があるという説が一番有力だった。
そもそもその地点まで行くのが面倒なので、
その場所まで行ったという話もほとんど聞いた
事が無かった。

親父はBの返事を待たずにお母さんを連れて
2階に上がって行ったそうだ。
Bはそのまま家を出て、待ち合わせていた
俺とAと合流。そこで俺達もこの話を聞いた。


「父親がそこまで言うなんて相当だな。」


「噂じゃカルト教団のアジトだっけ?
 捕まって洗脳されちまえって事かね。
 怖いっちゃ怖いが…どうすんだ?行くのか?」


「行くに決まってんだろ。
 どうせ親父のハッタリだろうからな。」

面白半分で俺とAもついて行くことになり、
三人でそこへ向かった。あれこれ道具を用意し、
時間は夜中の1時過ぎぐらいになっていた。

意気揚々と現場に到着し、持参した懐中電灯で
前を照らしながら森へ入って行く。
軽装でも進んで行けるような道だった。
俺達はいつも地下足袋だったので
歩きやすかったが、問題の地点は40分近くは
歩かないと行けない場所にある。

ところが、山に入って5分もしないうちに、
おかしな事が起こった。

俺達が入って歩きだしたのと同じタイミングで、
遠くから何か聞こえ始めたのである。
夜の静けさがやたらとその音を強調させる。
最初に気付いたのはBだった。


「おい、何か聞こえねぇか?」

Bの言葉で耳をすませてみると、
確かに聞こえた。落ち葉を引きずるカサカサ…
という音と、枝がパキッ…パキッ…と折れる音。
それが遠くの方から微かに聞こえてきている。

遠くから微かに…というせいもあって、
さほど恐怖は感じなかった。
山の中だし動物ぐらいいるだろう・・・
そんな思いもあり構わず進んでいった。

動物だと考えてから気にしなくなったが、
そのまま20分ぐらい進んできたところで、
またBが何かに気付き、俺とAの足を止めた。


「A、お前だけちょっと歩いてみてくれ。」


「は?何でだよ?」


「いいから早く!」

Aが不思議そうに一人で前へ歩いていき、
またこっちへ戻ってくる。
それを見て、Bは考え込むような表情になった。


「おい、何なんだよ?」


「B、説明しろよ。」

俺達がそう言うと、

Bは「静かにしてよ〜く聞いててみ?」と、
Aにさせたように一人で前へ歩いていき、
またこっちに戻ってきた。
2、3度繰り返してようやく俺達も気が付いた。

遠くから微かに聞こえてきている音は、
俺達の動きに合わせていた。
俺達が歩きだせばその音も歩きだし、
俺達が立ち止まると音も止まる。
まるでこっちの様子がわかっているようだった。

俺達は何かひんやりした空気を感じずには
いられなかった。

周囲に俺達が持つ以外の光はない。
月は出ているが、森の木々に遮られ、
ほとんど意味はなかった。
懐中電灯を点けているので、こちらの位置が
分かるのも不思議ではない。
しかし一緒に歩いてる俺達でさえ、互いの姿を
確認するのに目を凝らさなければならない程の
暗さだ。

そんな暗闇の中で、光もなしに何をしている?
なぜ俺達と同じように動いているんだ?


「ふっざけんなよ。この闇の中、誰か俺達を
 尾けてやがんのか?」


「近づかれてる気配は無いよな。向こうは
 さっきからずっと同じぐらいの位置だし。」

Aが言うように森に入ってからここまでの
20分ほど、俺達とその音との距離は一向に
変わっていなかった。
近づいてくるわけでも遠ざかるわけでもない。
終始、同じ距離を保ったままだった。


「監視されてんのかな?」


「そんな感じだよな…カルト教団とかなら
 何か変な装置とか持ってそうだしよ。」

音から察すると、複数ではなく一人がずっと
俺達にくっついてるような感じだった。
しばらく足を止めて考え、下手に正体を
探ろうとするのは危険と判断し、周辺を警戒
しながらそのまま先へ進む事にした。

それからずっと音に付きまとわれながら
進んでいたが、やっと柵が見えてくると、
音などもうどうでもよくなっていた。
音以上に、その柵の様子の方がよっぽど
意味不明だったからだ。

三人とも見るのは初めてだったが、
想像以上のものだった。
同時にそれまでなかったある考えが
俺達の頭をよぎった。

普段は霊などバカにしてる俺達から見ても、
その先にあるのが現実的なものでない事を
示唆しているとしか思えない。
それも半端じゃなくヤバイものを。

まさか、“そういう意味”で、
いわく付きの場所なのか?
ここへ来て初めて、俺達はやばい場所に
いるんじゃないかと思い始めた。


「おい、コレぶち破って奥に行けってのか?
 誰が見ても普通じゃねえだろコレ!」


「うるせえな、こんなんでビビんじゃねえよ!」

柵の異常な様子に怯んでいた俺とAを怒鳴り、
Bは持ってきた道具で柵を壊し始めた。
柵を壊す破壊音よりも、鳴り響く無数の
鈴の音が凄かった。

しかしここまでとは想像してなかったため、
持参した道具では貧弱すぎた。
というか、不自然なほどに頑丈だった。
特殊な素材でも使っているのではないか、
というくらいびくともしなかった。
結局よじのぼるしかなくなってしまったが、
上ること自体は簡単だった。

だが柵を越えた途端、激しい違和感を覚えた。
閉塞感のような、檻に閉じ込められたような
息苦しさを感じた。
AとBも同じだったようで、奥へ踏み出すのを
躊躇していたが、柵を越えてしまったからには
行くしかなかった。

先へ進むべく歩きだしてすぐに
3人ともが気が付いた。ずっと付きまとってた
あの音が柵を越えてからはパッタリと
聞こえなくなった事に。
正直そんな事どうでもいいとさえ思えるほど
嫌な空気だったが、Aがふと放った言葉で
さらに嫌な空気が増した。


「もしかしてさぁ、そいつ・・・
 ずっとここにいたんじゃねえか?
 この柵、こっから見える分だけでも出入口
 みたいなのはないしさ、それで俺達に
 近付けなかったんじゃ・・・」


「んなワケねえだろ。俺達が音のに気付いた
 場所ですらこっからもう見えねえんだぞ?
 それなのに入った時点から俺達の様子が
 分かるわけねえだろうが。」

普通に考えればBの言葉が正しかった。
禁止区域と森の入り口はかなり離れている。
時間にして40分程と書いたが、
俺達だってちんたら歩いていたわけではないし、
距離にしたらそれなりの数字にはなる。

だが、現実のものじゃないかもしれない・・・
という考えが過ぎってしまった事で、
Aの言葉を否定できなかった。
柵を見てから絶対に“ヤバい”と感じ始めていた
俺とAを尻目に、Bだけが俄然強気だった。


「霊だか何だか知らねえけどよ、
 お前の言う通りだとしたら、そいつはここから
 出られねえって事だろ?
 そんなやつ大した事ねえよ。」

そう言ってさらに奧へ進んで行った。

柵を越えてから2、30分歩き、うっすら反対側の
柵が見え始めた所で、不思議な物を見つけた。

特定の六本の木に注連縄(しめなわ)が張られ、
その六本の木を六本の縄で括り、
六角形の空間が作られていた。
柵にかかってるのとは別の、正式なものっぽい
紙垂もかけられてた。そしてその中央に賽銭箱
みたいなのがポツンと置いてあった。

目にした瞬間は、3人とも言葉が出なかった。
特に俺とAは、マジでやばい事になってきたと
焦ってさえいた。

いくらバカな俺達でも注連縄が通常どんな場で
何の為に用いられてるか、何となくは知ってる。
そういう意味でも、ここを立入禁止にしている
のは、間違いなく目の前にある光景の為だ。
俺達はとうとう、来るとこまで来てしまったんだ。


「Bの親父が言ってたの、多分これの事だろ?」



「暴れるとか無理だって。明らかにヤバイだろ。」

だが、Bは強気な姿勢を崩さなかった。


「別に悪いもんとは限らねえだろ?
 とりあえずあの箱見て見ようぜ!
 宝でも入ってっかもしれねぇしな。」

Bは注連縄をくぐって六角形の中に入り、
箱に近づいて行った。俺とAはその箱よりもBが
何をしでかすかが不安だったが、
とりあえずBに続いて行った。

野晒しで雨などにやられたせいか、
箱はサビだらけだった。上部は蓋になっていて、
網目で中が見える。だが、蓋の下に更に板が
置かれていて、結局中を見ることはできない。

さらに箱にはチョークか何かで白く模様の
ようなものが書いてあった。
前後左右それぞれの面にいくつもの家紋
みたいな模様が書き込まれており、
しかも全部違う模様で、同じものは
見当たらなかった。

俺とAは極力触らないようにし、構わず触る
Bにも乱暴にはしないよう、注意しながら
箱を調べてみた。

どうやら地面に底を直接固定してあるらしく、
大きさから言って、大して重くはないはずなのに
持ち上がらなかった。
中身をどうやって見るのか箱を隅々まで
観察すると、Bが後ろの面だけ外れるのに
気が付いた。


「おっ、ここだけ外れるぞ!中見れるぜ!」

Bが箱の一面を取り外し、俺とAもBの後ろから
箱の中を覗き込んだ。

箱の中には四隅にペットボトルのような
くびれた形の壺が置かれていて、
その中には何か液体が入っていた。
箱の中央に、先端が赤く塗られた五センチ程の
楊枝みたいなものが、変な形で置かれていた。


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このような形で六本。
接する四ヶ所だけ赤く塗られてる。


「なんだこれ?マッチ棒か?」


「おい、壺の中に何か入ってるぜ。
 気持ち悪いな。」


「ここまで来て壺と爪楊枝かよ。
 意味分かんねぇな。」

俺とAはぺットボトルのような壺を
少し触ってみたぐらいだったが、
Bは手に取って匂いを嗅いだりしていた。

Bは壺を元に戻すと、今度は爪楊枝を
触ろうと手を伸ばす。

ところが、汗をかいていたのか指先に
一瞬くっつき、そのせいで離すときに
形が崩れてしまった。

その瞬間。



チリンチリリン!!チリンチリン!!



俺達が来た方とは反対、六角形地点の更に奧、
うっすらと見えている柵の方から、物凄い勢いで
鈴の音が鳴った。流石に3人ともうわっと声を上げ、
一斉に顔を見合わせた。


「誰だちくしょう!ふざけんなよ!」

Bはその方向へ走りだした。


「バカ、そっち行くな!」


「おいB!やばいって!」

慌てて後を追おうと身構えると、
Bは突然立ち止まり、前方に懐中電灯を
向けたままピタッと動かなくなった。

「何だよ、フリかよ〜」と俺とAがホッとして
急いで近付いてくと、Bの体がブルブルと
小刻みに震えだした。

「お、おい、どうした…?」
言いながら無意識に照らされた先を見た。

Bの懐中電灯は、立ち並ぶ木々の中の一本、
その根元のあたりを照らしていた。

その陰から、女の顔がこちらを覗いていた。
ひょこっと顔半分だけ出して、眩しがる事もなく
俺達を眺めていた。

上下の歯をむき出しにするように「い〜っ」と
口を開け、目は完全に据わっていた。



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「うわぁぁぁぁぁ!!」

誰のものかわからない悲鳴と同時に、
俺達は一斉に振り返り走りだした。
頭は真っ白で、体が勝手に最善の行動を
選択したような感じだった。
互いを見合わせる余裕も全くなく、
それぞれが必死に来た道を柵へと向かった。

柵が見えると一気に飛び掛かり、
大急ぎでよじのぼる。
上まで来たらまた一気に飛び降り、
すぐに入り口へ戻ろうとした。

だが、混乱しているのかAが上手く柵を上れず
なかなかこっち側に来ない。


「A!早く!!」


「おい!早くしろ!!」

Aを待ちながら、俺達はどうすればいいのか
分からなかった。


「何だよあれ!?何なんだよ!?」


「俺が知るかよ黙れ!!」

と完全にパニック状態だった。

その時、



チリリン!!チリンチリン!!



凄まじい大音量でまた鈴の音が鳴り響き、
柵が揺れだした。

「何だ…!?どこからだ…!?」

俺とBはパニック状態になりながらも周囲を
確認した。

入り口とは逆、山へ向かう方角から鳴り響き、
近づいているのか、音と柵の揺れがどんどん
激しくなってくる。


「やばい!やばい!」


「まだかよA!早くしろ!」

俺達の言葉が余計にAを混乱させている事を
分かってはいたが、Aを急かさないわけには
いかなかった。

Aは無我夢中に必死で柵をよじ上った。

Aがようやくの上り切ろうというその時、
俺とBの視線はそこにはなかった。
がたがたと震え、体中から汗が噴き出し、
何も声を出せなくなった。

それに気付いたAも、柵の上から俺達が
見ている方向を向いた。

山への方角にずらっと続く柵を伝った先、
しかもこっち側にあいつが張りついていた。

顔だけかと思ったそれは、裸で上半身のみ、
右腕左腕が三本ずつあった。

それらで器用に柵と有刺鉄線を掴んで
い〜っ」と口を開けたまま、
獲物を求め巣を渡る蜘蛛のように
こちらへ向かってきていた。

とてつもない恐怖

「うわぁぁぁぁ!!」

Aがとっさに上から飛び降り、俺とBに向かって
倒れこんできた。それではっとした俺達は、
すぐにAを起こし、一気に入り口へ走った。

後ろは見れない。前だけを見据え、
ただひたすらに必死で走った。

全力で走れば30分もかからないはずの
道のりを何時間も走ったような気がした。

入り口が見えてくると、何やら人影も見えた。
おい、まさか・・・三人とも急停止し、
息を呑んで人影を確認した。

誰だかわからないが何人か集まっている。

ヤツじゃない。そう確認できた途端に
再び走りだし、その人達の中に飛び込んだ。

「おい!出てきたぞ!」

「まさか、本当にあの柵の先に行ってたのか!?」

「おい!急いで奥さんに知らせろ!」

集まっていた人達はざわざわとした様子で、
俺達に駆け寄ってきた。何を話しかけられたのか、
誰がいるのかすぐには分からないほど、
頭が真っ白で放心状態だった。

そのまま俺達は誰かの車に乗せられ、
すでに時間は3時を回っていたにも関わらず、
行事の時などに使われる集会所へと
連れて行かれた。

中に入ると、うちは母親と姉貴が、Aは親父、
Bはお母さんが来ていた。
Bのお母さんはともかく、
最近ろくに会話すらしていなかった
うちの母親までボロボロ泣いていた。
Aもこの時の親父の表情は、
今まで見た事のないものだったらしい。

B母
「みんな無事だったんだね・・・!よかった・・・!」

Bのお母さんとは違い、俺は母親にぶん殴られ
Aも親父にぶん殴られていた。
だが、今まで聞いた事ない暖かい言葉を
かけられた。

しばらくそれぞれが家族と接したところで、
Bのお母さんが話し始めた。

B母
「ごめんなさい。今回の事はうちの主人、
 ひいては私の責任です。
 本当に申し訳ありませんでした!
 本当に・・・!」

Bのお母さんは、皆に何度も頭を下げた。
よその家とはいえ、子供の前で親がそんな姿を
さらしているのは、やはり嫌な気分だった。

A父
「もういいだろう奥さん。こうしてみんな
 無事だったんだから。」

俺母
「そうよ。あなたのせいじゃない。」

この後はほとんど親同士で話が進められ、
俺達はただポカンとしていた。

時間も時間だったので、無事を確認し合って
終わりという感じだった。
この時は何の説明もないまま解散した。

1夜明けた次の日の昼頃、
俺は姉貴に叩き起こされた。
目を覚ますと、昨夜の続きかというぐらい
姉貴の表情が強ばっていた。


「なんだよ?」

姉貴
「Bのお母さんから電話。やばい事になってる。」

受話器を受け取り電話に出ると、
Bのお母さんは凄い剣幕で叫んできた。

B母
「Bが・・・Bがおかしいのよ!
 昨夜あそこで何したの!?
 柵の先へ行っただけじゃなかったの!?」

とても会話になるような雰囲気じゃなく、
いったん電話を切って俺はBの家へ向かった。
同じ電話を受けたらしく、Aも来ていて、
2人でBのお母さんに話を聞いた。

話によると、Bは昨夜家に帰ってから急に
両手両足が痛いと叫びだしたそうだ。
痛くて動かせないという事なのか、
両手両足をぴんと伸ばした状態で倒れ、
痛い痛いと、のたうちまわっているらしい。

お母さんが何とか対応しようとするも、
痛いと叫ぶばかりで意味が分からない。
どうにか部屋までは運べたが、
ずっとそれが続いてるので、俺達は
どうなのかと思い電話してきたという事だった。

話を聞いてすぐBの部屋へ向かうと、
階段からでも叫んでいるのが聞こえた。
「いてぇ!いてぇよぉ!」と繰り返している。

部屋に入ると、やはり手足はぴんと伸びたまま、
痛いと叫びながらのたうちまわっていた。


「おいB!どうした!」


「しっかりしろ!どうしたんだよ!」

俺達が呼び掛けても痛いと叫ぶだけで
目線すら合わせない。

どうなってんだ・・・
俺とAは何が何だかさっぱり分からなかった。
一度お母さんの所に戻ると、さっきとは違い
静かな口調で聞かれた。

B母
「昨夜あそこで何をしたのか話してちょうだい。
 それで全部わかるの。何をしたの?」

俺もAも何を聞きたがっているのかは、
もちろん分かっていたが、答えるためにアレを
また思い出すことが苦痛となり、
うまく伝えられなかった。

それよりも、“アレ”を見たというのが大部分を
占めてしまっていたせいで、何をしたのかという
部分がすっかり抜けてしまっていた。

「何を見たか」ではなく「何をしたか」と尋ねる
Bのお母さんは、それを指摘している
ようだった。

Bのお母さんに言われ、
俺達は何とか昨夜の事を思い出し、
原因を探った。

何を見たか?なら、
俺達も今のBと同じ目にあってるはず。
だが何をしたか?でも
あれに対してほとんど同じ行動だったはずだ。
箱には俺達も触ったし、壺みたいなものにも
俺達2人とも触ってる。

後はあの楊枝・・・

2人とも気が付いた。

楊枝だ。あれにはBしか触ってないし、
形も崩してしまっている。しかも元に戻してない。
俺達はそれをBのお母さんに伝えた。
すると、みるみる表情が変わり震えだした。
そしてすぐさま棚の引き出しから何かの紙を
取り出し、どこかに電話をかけだした。
俺とAは、その様子を見守るしかなかった。

しばらくどこかと電話で話した後、戻ってきた
Bのお母さんは震える声で俺達に言った。

B母
「あちらに伺う形ならすぐにお会いして下さる
 そうだから、今すぐ帰って用意してちょうだい。
 あなた達のご両親には私から話しておくわ。
 何も言わなくても準備してくれると思うから。
 明後日またうちに来てちょうだい。」

意味不明だった。
誰に会いに?どこへ行くって?
説明を求めてもはぐらかされ、
すぐに帰らされた。
一応2人とも真っすぐ家に帰ってみると、
何を聞かれるでもなく「必ず行ってきなさい」
とだけ言われた。

意味がまったく分からないまま、
2日後に俺とAは、Bのお母さんと3人で、
ある場所へ向かった。
Bは前日にすでに連れて行かれたらしい。

ちょっと遠いのかな・・・ぐらいだと思っていたが、
町どころか県さえ違う場所だった。

新幹線で数時間かけて、さらに駅から車で
数時間。絵に書いたような山奥の村まで
連れて行かれた。

その村の、またさらに外れの方、
ある屋敷に俺達は案内された。

大きく、古いお屋敷で、離れや蔵もある、
物凄い立派な家だった。
Bのお母さんが呼び鈴を鳴らすと、
“おじさん”と女の子が俺達を出迎えた。

おじさんの方は、まさに“その筋”の人のような
ガラの悪い感じで、スーツ姿だった。

女の子は俺達より少し年上ぐらいで、
白装束に赤い袴、いわゆる巫女さんの格好を
していた。

おじさんは、どうやら巫女さんの伯父らしく、
普通によくある名字を名乗ったのだが、
巫女さんは「葵官女(あおいかんじょ)」という、
よくわからない名を名乗った。

名乗ると言っても、一般的な認識とは全く違う
ものらしい。よく分からないのだが、ようするに
彼女の家の素性は一切知る事が出来ない
事のようだった。

実際、俺達はその家や彼女達について
何も知らされていない。

広い座敷に案内され、訳も分からないまま、
ものものしい雰囲気で話が始まった。

伯父
「息子さんは今安静にさせてますわ。
 この子らが一緒にいた子ですか?」

B母
「はい。この三人であの場所へ行った
 ようなんです」

伯父
「そうですか。君ら、わしらに話してもらえるか?
 あそこで何をした、何を見た、出来るだけ
 詳しく思い出してな。」

突然話を振られて戸惑ったが、俺とAは何とか
詳しくその夜の出来事をおじさん達に話した。

ところが、楊枝のくだりで「コラ、今何つった?」と
いきなりドスの効いた声で言われ、睨まれた。
俺達はますます状況が飲み込めず、さらに
混乱してしまった。


「は、はい?」

伯父
「おめぇら、まさかアレを動かしたんじゃあ
 ねえだろうな!?」

身を乗り出し今にも掴み掛かってきそうな勢いで
怒鳴られた。

すると葵がそれを制止し、蚊の泣くような
か細い声で話し出した。


「箱の中央・・・小さな棒のようなものが、
 ある形を表すように置かれていたはずです。
 それに触れましたか?触れた事によって、
 少しでも形を変えてしまいましたか?」


「はぁ、あの、動かしてしまいました。
 形もずれちゃってたと思います。」


「形を変えてしまったのはどなたか、
 覚えてらっしゃいますか?
 触ったかどうかではありません。
 形を変えたかどうかです。」

俺とAは顔を見合わせ、Bだと告げた。

すると、おじさんは身を引いてため息をつき、
Bのお母さんに言った。

伯父
「お母さん、残念ですがね、
 息子さんはもうどうにもならんでしょう。
 わしは詳しく聞いてなかったが、
 あの症状なら他の原因も考えられる。まさか
 アレを動かしたとは思わなかったんでね。」

B母
「そんな・・・」

それ以上の言葉もあったのだろうが、
Bのお母さんは言葉を飲み込んだような感じで、
しばらく俯いてた。

口に出せなかったが、俺達も同じ気持ちだった。
「Bはもうどうにもならん」てどういう意味なんだ。
一体何の話をしているのか。そう問いたくても、
俺もAも声に出来なかった。

俺達3人の様子を見て、
おじさんはため息混じりに話し出した。

ここでようやく、
俺達が見たものに関する話がされた。

古くは「姦姦蛇螺」「姦姦唾螺
俗称は「生離蛇螺」「生離唾螺

「かんかんだら」「かんかんじゃら」
「なりだら」「なりじゃら」
など、知っている人の年代や家柄によって
呼び方は色々あるらしい。

現在では、一番多い呼び方は単に「だら」、
おじさん達みたいな特殊な家では
「かんかんだら」の呼び方が
使われているようだ。

もはや神話や伝説に近い話。

人を食らう大蛇に悩まされていたある村の
村人達は、神の子として様々な力を
代々受け継いでいたある巫女の家に退治を
依頼した。依頼を受けたその家は、
特に力の強かった一人の巫女を大蛇の討伐に
向かわせる。

村人達が陰から見守る中、
巫女は大蛇を退治すべく懸命に立ち向かった。
しかし、わずかな隙をつかれ、大蛇に下半身を
食われてしまった。
それでも巫女は村人達を守ろうと術を使い、
必死で立ち向かった。

ところが、下半身を失っては勝ち目がないと
決め込んだ村人達はあろう事か、
巫女を生け贄にする代わりに村の安全を
保障してほしいと大蛇に持ちかけた。

強い力を持つ巫女を疎ましく思っていた大蛇は
それを承諾、食べやすいように村人達に巫女の
腕を切り落とさせ、だるま状態の巫女を
食らった。

そうして、村人達は一時の平穏を得た。

後になって、巫女の家の者が思案した計画
だった事が明かされる。
この時の巫女の家族は6人。
異変はすぐに起きた。

大蛇がある日から姿を見せなくなり、
襲うものがいなくなったはずの村で
次々と人が死んでいった。

村の中で、山の中で、森の中で。

死んだ者達はみな、右腕・左腕のどちらかが
無くなっていた。

18人が死亡(巫女の家族6人を含む)。
村で生き残ったのは4人だった。

おじさんと葵が交互に説明した。

伯父
「これがいつからどこで伝わってたのかは
 分からんが、あの箱は一定の周期で場所を
 移して供養されてきた。
 その時々によって、管理者は違う。
 箱に家紋みたいのがあったろ?
 ありゃ今まで供養の場所を提供してきた
 家々だ。うちみたいな家柄のもんでそれを
 審査する集まりがあってな、
 そこで決められてる。
 まれに自ら志願してくるバカもいるがな。」

さらにこう続けた。

伯父
「管理者以外にゃ“かんかんだら”に関する
 話は一切知らされない。付近の住民には、
 いわくがあるって事と万が一の時の相談先
 だけが管理者から伝えられる。
 伝える際には相談役、つまりわしら
 みたいな家柄のもんが立ち合うから、
 それだけでいわくの意味を理解するわけだ。
 今の相談役はうちじゃねえが、
 至急って事でうちに連絡が回ってきた。」

どうやら、一昨日Bのお母さんが電話していた
のは別の人らしいことが分かった。
話を聞いた先方は、Bを連れてこの家を尋ね、
話し合った結果こちらに任せたらしい。
Bのお母さんは俺達があそこに行っていた
間に、すでにそこに電話していて、
ある程度の詳細を聞かされていたようだ。


「基本的に、山もしくは森に移されます。
 ご覧になられたと思いますが、
 6本の木と6本の注連縄は村人達を、
 6本の棒は巫女の家族を、
 四隅に置かれた壺は生き残った4人を
 表しています。そして、6本の棒が成している
 形こそが、巫女の姿を表しているのです。
 なぜこのような形が取られるようになったか、
 箱自体に関しましても、いつからあのような
 ものだったか。私の家を含め、今現在では
 伝わっている以上の詳細を知る者はもう
 いないでしょう。」

ただ、最も語られてる説としては、
生き残った4人が巫女の家で怨念を鎮める為の
ありとあらゆる事柄を調べ、その結果生まれた
独自の形式ではないか・・・という事らしい。
柵に関しては鈴だけが形式に従ったもので、
他はこの時の管理者によるものだったらしい。

伯父
「うちの者で“かんかんだら”を祓ったのは
 過去に何人かいるがな、その全員が
 2、3年以内に死んでんだ。ある日突然な。
 事を起こした当事者もほとんど助かってない。
 それだけ難しいんだよ。」

ここまで話を聞いても、俺達3人は完全に
話についていけず、置いて行かれたままで
いた。

だが、そこから事態は一変した。

伯父
「お母さん、どれだけやばいものかは何となく
 分かったでしょう。さっきも言いましたが、
 棒を動かしてさえいなければ何とかなった。
 しかし、今回はダメでしょうな。」

B母
「お願いします。何とかして頂けないでしょうか。
 私の責任なんです。どうかお願いします。」

Bのお母さんは引かなかった。
一片たりともお母さんのせいではないのに、
自分の責任にしてまで頭を下げ、
必死で頼み続けていた。でも泣きながらとか
じゃなくて、何か覚悟したような表情だった。

伯父
「何とかしてやりたいのはわしらも同じです。
 しかし、棒を動かしたうえでアレを
 見ちまったんなら・・・。
 お前らも見たんだろう。お前らが見たのが
 大蛇に食われたっつう巫女だ。
 下半身も見たろ?
 それであの形の意味がわかっただろ?」

「…えっ?」
俺とAは言葉の意味が分からなかった。
下半身?
俺達が見たのは上半身だけのはずだ。


「あの、下半身っていうのは・・・?
 上半身なら見ましたけど・・・?」

それを聞いておじさんと葵が驚いた。

伯父
「おいおい何言ってんだ?
 お前らあの棒を動かしたんだろ?
 だったらアレの下半身を見てるはずだ。」


「あなた方の前に現われた彼女は、
 下半身がなかったのですか?
 では、腕は何本でしたか?」


「腕は6本でした。左右3本ずつです。
 でも、下半身はありませんでした。」

俺とAは互いに確認しながらそう答えた。

すると急におじさんがまた身を乗り出し、
俺達に詰め寄ってきた。

伯父
「間違いねえのか?
 ほんとに下半身を見てねえんだな?」


「は、はい…」

A
「見てません・・・」

おじさんは再びBのお母さんに顔を向け、
ニコッとして言った。

伯父
「お母さん、何とかなるかもしれん。」

おじさんの言葉にBのお母さんも俺達も、
息を呑んで注目した。

2人は言葉の意味を説明してくれた。


「巫女の怨念を浴びてしまう行動は、
 二つあります。やってはならないのは、
 巫女を表すあの形を変えてしまう事。
 見てはならないのは、その形が表す
 巫女の姿です。」

伯父
「実際には棒を動かした時点で終わりだ。
 必然的に巫女の姿を見ちまう事に
 なるからな。だが、どういうわけか
 お前らはそれを見てない。
 動かした本人以外も同じ姿で見える
 はずだから、お前らが見てないなら
 あの子も見てないだろう。」


「見てない、っていうのはどういう意味
 なんですか?
 俺達が見たのは・・・」


「巫女本人である事には変わりありません。
 ですが、“かんかんだら”ではないのです。
 あなた方の命を奪う意志がなかったの
 でしょうね。かんかんだらではなく、
 巫女として現われた。その夜の事は、
 彼女にとってはお遊びだったのでしょう。」

巫女とかんかんだらは同一の存在であり、
別々の存在でもある・・・という事らしい。

伯父
「かんかんだらが出てきてないなら、
 今あの子を襲ってるのは葵が言うように
 お遊び程度のもんだろうな。
 わしらに任せてもらえれば、
 長期間にはなるが何とかしてやれるだろう。」

緊迫していた空気が初めて和らいだ気がした。
Bが助かると分かっただけでも充分だった。
この時のBのお母さんの表情は本当に凄かった。
この何日かでどれだけBを心配していたか、
その不安とかが一気にほぐれたような、
そういう安らいだ笑顔だった。

それを見ておじさんと葵も雰囲気が和らぎ、
急に普通の人みたいになった。

伯父
「あの子は正式にわしらで引き受けますわ。
 お母さんには後で説明させてもらいます。
 お前ら2人は、
 一応葵に祓ってもらってから帰れ。
 今後は怖いもの知らずも程々にしとけよ。」

この後Bに関して少し話した後、お母さんは
残り、俺達はお祓いしてもらってから帰った。

この家の決まりで、Bには会わせてもらえず、
どんな事をしたのかも分からなかった。
転校扱いになったのか、
在籍していたのか分からないまま、学校でも
2度とBを見ることはなかった。
ただ、すっかり更正して今はちゃんとどこかで
生活してる、という話だけを聞かされた。

結局、Bの親父はこの騒動に関して
1度も顔を出さなかった。

俺とAも、その後すぐに落ち着くことができた。
理由はいろいろあったが、1番大きかったのは、
やはりBのお母さんの姿だった。
母親というものがどんなものなのか、
色々と考えさせられた。
その1件以来、うちもAの家も、親の方から
俺達に少しづつ接してくれるようになった。

他に分かった事としては、
特定の日に集まっていた巫女さんは
相談役になった家の人。
“かんかんだら”とは、危険だと重々認識
されていながら、ある種の神に似た存在に
されてるということ。
それは元々、大蛇が山や森の神だった事に
よるものだということ。
それで年に一回、神楽を舞ったり
祝詞を奏上したりするそうだ。

そして、俺達が森に入ってから音が聞こえた
のは、“かんかんだら”が柵の中で放し飼いの
ような状態になっているかららしい。
6角形と箱の“爪楊枝”が封印の役割となって、
棒の形や6角形を崩したりしない限り、
姿を見せる事はほとんどないそうだ。

供養場所は何らかの法則によって、
山や森の中の限定された一部分が
指定されるらしく、入念に細かい数字まで出し、
その範囲を決めるらしい。
基本的にその区域からは出られないらしいが、
柵などで囲んでる場合は俺達が見たように、
外側に張りついてくる事もあるようだ。

俺達の住んでいるところからは、
既に移されている。

たぶん今は別の場所にいるんだろうな。


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1. Posted by (´・ω・`)   2016年06月21日 19:35
2枚目の画像はエロ漫画じゃないですか…

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