東大卒→興銀出身 山内社長独占インタビュー 〜1997年アジア通貨危機の仰天秘話「通貨危機のリスクについて警笛を鳴らしたら、現地当局から脅しが!」 男前な仰天エピソード〜
今回は、1997年に起きたアジア通貨危機について。
当時、興銀でシンガポールに赴任されていた山内社長。手に汗握る仰天エピソードを赤裸々に語っていただきました。
(為替王)
1996年(興銀時代)にはシンガポールに赴任されて、アジア通貨危機を事前に予測されました。どうしておかしいと気づかれたのですか?
直前のアジアのバブルの状況や、クラッシュした当時のお話をお聞かせください。
(山内社長)
当時、アセアンをはじめとするアジア諸国は経済成長が本格化し、経済が好調でした。ちょうど昨今のBRICS諸国のように。私の任務は、急成長し始めたアジアの金融市場における新規事業を立ち上げるというものでした。アジア市場に対する知識に乏しかったため、いろいろと調査してみると、意外な歪みがあることがわかったのです。
具体的には、各国当局が自国通貨を対ドルで固定するなど相場管理していた結果、無リスクの裁定機会が市場に対して提供され、それを目がけて大量の資本が流入していたのです。資本流入をエンジンとしたアジア諸国の成長は、そうした資本の動きに依存している面があり、現地企業も自社のバランスシートの中にそうした裁定機会を無意識に取り入れることにより企業収益がかさ上げされていました。さらに悪いことに、国単位でみた対外収支はその結果急速に悪化しており、早晩、この資本フローは破綻する可能性が高いと思われたのです。
私は92年の欧州通貨危機のときにちょうどEMS(欧州通貨制度)通貨を担当しており、ポンドやスペインペセタの暴落を通じて通貨管理相場の限界を経験していましたので、当時のタイバーツ、インドネシアルピアなどアセアン通貨の状況はまったく同じであると直感したわけです。といっても、私が特別鋭い観察眼を持っていたわけではなく、マーケット業務経験と『常識(センス)』がある人なら同じように感じたはずですが、群集心理が作り出すバブルの中にいると、ありとあらゆる正当化(今回は違うんだ、という解説)がきわめて理論的に施され、市場参加者はその居心地のよさ(多数派が共通の利益を享受し続ける状況)に安住してしまうのかもしれません。
97年3月に東京に出張した際、本店(※)の大会議室に100名程度集まってもらい、アジア通貨急落リスクについて説明したのですが、当時はアジアに対する関心が薄かったこともあってか半信半疑といったところでした。
(※)山内社長が当時勤務されていた旧日本興業銀行の本店。
97年5月に入り、市場が極端に不安定になりました。当時のアジア通貨市場は規模が大きくなく、主要な市場参加者の顔ぶれも限られており、市場と当局の虚虚実実の駆け引きが展開され、私もまたその渦中にありました。
まずタイバーツに売り仕掛けが入って、バーツ切り下げかと思われたそのとき、タイ中央銀行が資本移動規制を突如発表。タイ国外にいるバーツの売り手はショートポジションの資金繰りがつかなくなり、一晩にして巨額の損失を抱えて撤退を余儀なくされたのです。バーツの高金利を享受する仕組債を大量に組成して販売していた香港系投資銀行がタイ当局に対してバーツ売り投機の撃退法を耳打ちしたのが背景といわれていました(真偽のほどは確認のしようがありませんが)。
しかし、強引な規制による通貨防衛が長続きしないことは自明と思われました。私はバンコクで日系企業向けにセミナーを開催してリスクヘッジの方法を提案したり、まだタイを他人事のようにのんびり眺めていたジャカルタやKLなど他のアジア諸国の通貨のリスクにもさかんに警鐘を鳴らしたのですが、こうした努力は現地当局の通貨防衛の観点から問題視されたらしく、直接間接に警告されたこともありました。
その後、アジアがお祭り気分に沸く香港返還の当日、タイ中央銀行は静かにバーツ切り下げを容認。その津波はアジア諸国から世界に波紋を広げていきました。およそ18ヶ月間をかけて、世界的に膨張した信用(マネー)が急速に逆流し始め、ドルをいったん経由した後、最終的にはわずか一日で20円近い円急騰となって債権国のポケットに帰っていったのです。このとき、当の日本では大手銀行が破綻して金融機能が麻痺しかけていたことは興味深い事実です。
余談ですが、当時シンガポールや香港では為替のマージン取引(FX)が個人投資家の間で結構人気でした。なかでも、固定相場で変動しない高金利のバーツやルピアをロングし、ドルをショートしてレバレッジを多少かけておくと、一見確実に利益を得られたのです。しかし、こうしたポジションが後日大きく毀損したことはいうまでもありません。
激動のシンガポール駐在時代は、FXやヘッジファンドと出会い、エマージング市場の特質とアジアの成長に触れることができたという点で、私にとってとても貴重な経験でした。
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(為替王のワンポイント解説)
アジア通貨危機とは、1997年夏にタイで始まり、その後、一気に東南アジア諸国に(東アジアにも)伝染した金融危機。
危機発生前は、東南アジア各国はバブル景気に沸いており、当時の山内社長のように警笛を鳴らす本物の金融マンが存在したものの、バブル崩壊とその後の大混乱を事前に食い止めることはできませんでした。
山内社長の名言「群集心理が作り出すバブルの中にいると、ありとあらゆる正当化(今回は違うんだ、という解説)がきわめて理論的に施される」は、心に刻みたいです。
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アジア通貨危機の裏話は、大変面白かったですね。
さて、次回は・・・。
ほんの数年前までは世界的な物価下落(デフレ)が話題となっていたのに、最近では一転して穀物価格やエネルギー価格の急騰などに伴う物価上昇(インフレ)が生じています。さて、これからの世界の市場・経済動向のシナリオは? どこを見ても誰に聞いても教えてくれないような崇高な歴史観・世界観をもとに、山内社長にこれからの世界の動きをズバリご教示していただきます。
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