2004年12月13日

プリンストン債金融詐欺事件を教訓として

大好評を博したプリンストン債物語ですが、「プリンストン債事件で得をしたのは誰?」以来、続編が止まっていました。今日はようやくその完結編をお届けしたいと思います。

プリンストン債を購入した投資家のお金が戻ってこなかった最大の原因は? 運用がヘタだったからではありません。リスクの高い運用をしていたからでもありません。キーワードは「分別管理」。
投資家がプリンストン債を購入する名目で投じた資金は、クレスベール証券を通じて米国の証券会社に送金されました。資金はそこで管理されつつ、担当者のアームストロング氏の運用指図によって資産が増える。そのはずでした。

しかし・・・。
そこでは顧客のお金とアームストロング氏のお金、あるいは会社のお金との間に仕切りはありませんでした。いわゆる“分別管理”がまったくなされていない状態にありました。つまり、投資家のお金が、こともあろうに、アームストロング氏とその一味の財布にそのまま入っていたのです。彼らは、はなから運用してお金を増やす気などさらさらありませんでした。

つまりこの事件は、海外のヘッジファンドは怖いとか、先物運用は難しいとか、そんなレベルの話ではなく、それ以下です。
バブル崩壊後に体力が弱まり判断力も鈍かった国内企業にも責任はあります。が、そんな弱みに見事につけ込んで、増やしてやるからと言って資金を集める。増やすどころか全額ネコババしてさようなら。増えたのは、顧客の資産ではなく、悪党どもが身に付ける貴金属や美術品コレクション。とてもわかりやすい詐欺ですね。
運用失敗して資金が減ったならまだしも、運用をまったくせずに、資金をまるごと流用するという極めて大胆で悪質な詐欺事件でした。

この手の詐欺は今後もなくなるとは思いません。私たち投資家にできることは、お金を出す前に、きちんと見分けることです。そしてお金を出した後も、分別管理がされているかどうか? 日々の運用がちゃんと行われているかどうか? 今まで郵便受けから取り出すと同時にそのままゴミ箱に直行していた報告書類に、たまには目を通す。一般投資家も、ちゃんといろいろ見ているんだぞ!という姿勢を見せて、金融関係者側にもっと緊張感を持たせることが必要ですね。
  

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2004年12月05日

NHKの採用試験は超難問!?

2000年春NHK採用試験問題(一般教養)より一部抜粋。

問題:最近の金融機関の不祥事と、その内容に関連するキーワードの組み合わせとして、正しいものはどれか。
.レスベール証券―プリンストン債―「外国証券業者に関する法律」違反
日栄―根保証―「商法」の特別背任容疑
クレデイ・スイス―ディリバティブ取引―「貸金業の規制等に関する法律」違反
す駝蔚箙圈宿埓詰算顱宗峩箙塰 廾稟

さて、どれが正しいでしょうか? 
プリンストン債物語を読んだ読者の方なら、もうおわかりですね! 答えは,任后
他は何が正しくないかと言うと・・・。
日栄がしでかしたのは「貸金業の規制等に関する法律違反」、クレディスイスがやっちゃったのは不正融資による銀行法違反、国民銀行の元頭取は銀行法に違反したのではなく商法の特別背任罪。

それにしても難しいですね。さすがは天下のNHKさん。これらの知識を一般教養として身に付けていないと入社できないようです。プリンストン債に関しては、NHK自らが被害拡大を助長する報道をしてしまった、その直後なのに・・・。単なる開き直りなのか? それとも、金融に精通した人間を採りたいとの意識の表れなのか?

いずれにしても、こんな難しい問題が解けて入社できたあかつきには、夜遊びにでも連れて行ってもらえるのかしら? 経費はもちろん受信料で!
  
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2004年11月29日

天下のNHKもプリンストン債事件の脇役だった!?

「番組の一部を使ってセールス活動をしていたとことはまったく聞いておらず、仮に事実とすれば著作権の重大な侵害にあたり、極めて遺憾です」

クレスベール証券のプリンストン債事件の被害拡大を助長したNHKの「クローズアップ現代」。冒頭の文章は、週刊ポストがNHKに当時の番組内容について質問したところ、それに対するNHKからの回答です。

NHKは番組中で、民間企業であるクレスベール証券の名前を出し、さらにプリンストン債について「為替リスクがまったくない商品も売り出されています」と、はっきり言っちゃいました。このことが、プリンストン債による金融詐欺被害を拡大させたのは事実です。

プリンストン債事件に心ならずも荷担したことを詫びるのかと思いきや・・・。自分たちの金融商品に対する認識の甘さを反省するのかと思いきや・・・。
反省や謝罪の気持ちはまったく見られませんでした。その上、あろうことか、NHK自身も著作権を侵害された被害者だとのたまっていらっしゃいます。開き直るにもほどがありますね。

NHKはその後、「甘い誘いにのった企業側の責任も問われる」という報道スタンスを取っています。その点は、プリンストン債物語の牛山さんにも当てはまりますし、おっしゃる通りです。
しかし・・・・。
甘い誘いを、さらに、こってり甘口にしたのは、NHKさん、あなたですよ!


<閑話休息>
NHKは最近不祥事が連発していて、私も読者の方も頭に血が上るといけませんので、本文と全然関係ありませんが、最後にちょっと話題を変えます。

経済大国我がニッポンの財布を預かる谷垣財務大臣。今日は主要通貨模様をあしらったネクタイを着用されていました。
為替市場を注視しているとの無言のアピールなのか、為替介入についての質問ばかりする記者たちに疲れたのか・・・・・。
理由はともかく、ウイットに富んでいると思いました。ご本人のアイデアなのかどうかはわかりませんが、私はそんな発想大好きです。
  
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2004年11月26日

天下のNHKもプリンストン債事件の脇役だった!?

昨日の記事の続きは延期にして、今日はプリンストン債物語のもうひとつの側面をご紹介します。

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プリンストン債はNHKやいろんなメディアで、ものすごい商品だと紹介されていたんですよね?
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さずがはレベルの高い「為替王」読者様です。過去のプリンストン債事件に絡むアンタッチャブルな案件をよく覚えておいででした。最近、いくつかの不祥事が明るみに出ているNHKですから、この際、「プリンストン債物語 NHKの巻」 と題して、その全貌を明らかにしちゃいましょう。

問題があったのは、おそらく読者の皆様もご存知のNHKの「クローズアップ現代」。これは、おじさまたちに大人気の美人キャスター、国谷裕子氏が司会を務めるNHKの長寿人気番組です。

1997年に放映された番組内容は、まるでクレスベール証券の営業を支援するような報道がなされました。そのときのテーマは、“ビッグバン時代の投資家と金融機関との向かい合い方”、だそうで、「外国債券が売られている」というタイトルの下、外資系証券会社が国内企業に対して外国債券を販売している実情が報道されました。

通常、NHKは民間企業の営利に関わることのないように社名を伏せます。放送法という法律でも、他人の営業に関する広告をしてはならないと定められています。しかし、その放送回では、クレスベール証券という会社名を明らかにしてしまいました。さらに、営業マンの「為替差損の心配がない」とか「円ベースで元本保証です」とか言っている姿まで放映されたではありませんか!
駄目押しで、美人キャスターの国谷裕子さんに「為替リスクがまったくない商品も売り出されていますね」なんて言われたら・・・・・。
おじさんたちは、「じゃあ僕、買っちゃいます!」と、テレビの前で身を乗り出して叫んでいたことでしょう。

NHKで元本保証と言って販売されている様子が放映されたプリンストン債ですから、国内企業が騙されて購入したのも肯けます。プリンストン債を購入した企業担当者の一人はこう言っています。「NHKでも報道されましたなんて言われたら、信じてしまいますよね」

「クローズアップ現代」は、放送文化基金賞や菊池寛賞など名誉ある賞を受賞しており、数々の素晴らしい報道も行ってきました。長い歴史のある番組ですから、時には間違いを犯すこともあるでしょう。そんなときは、謝ればいいのに。と、私は思いますが、その後のNHKの対応が実にあきれたものです。

NHKのあきれた対応とは!? 続く!!!
(今日の記事は、当時の週刊ポストさんの記事を参考にさせて頂きました)  
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2004年11月25日

プリンストン債事件で得をしたのは誰?

プリンストン債物語が終わり寂しい気持ちで一杯ですが、解り難かったお金の流れをもう一度整理してみたいと思います。一体誰が損をして、誰が得をしたのでしょうか?
お金の流れを順を追って見ていきましょう。

当時の国内企業はクレスベール証券を通じてプリンストン債を買いました。このとき、クレスベール証券には販売手数料ががっぽり入ります。プリンストン債の国内企業への販売総額が約1200億円ですから、単純に5%の手数料と仮定すると、販売手数料収入は60億円。社員約50人の会社で余分なコストをかけていないことを考えるとかなりの金額ですね。
販売手数料だけでなく顧客維持に関する報酬も本国からある程度入っていたものと思われます。それを仮に1%とすると、本国から送られてくる偽造運用報告書を顧客に届けて、一緒にお茶でも飲んでるだけで、毎年億単位の収入が自動的にクレスベール証券に転がり込むシステムだった訳です。

クレスベール証券にとっては、その後、プリンストン債がどうなろうがあまり関係のないことでした。投資家に投資信託や株を買わせて、手数料さえ手に入れば、その後は投資家が損しても知らんぷりの金融機関が他にも存在しているようです。そんな金融機関の体質を考えると、特にクレスベール証券が異質であったとは言えませんね。

クレスベール証券は当時の金融監督庁や証券取引等監視委員会から、「重大な誤解を与える勧誘」、「利益提供を約して勧誘する行為」、「虚偽の記載をした取引報告書の交付」などを指摘され、業務停止を命じられています。
わかりやすく言い換えると、お客に嘘をついて販売して、その後も嘘をつき続けた。あまりにひどかったのでお上に怒られた。となります。
いずれにしろ、どれも真新しい悪事ではなく、クレスベール証券としては、プリンストン債を販売することがすべてで、たくさん買わせて巨額の手数料を手に出来れば良かった訳です。

次に、クレスベール証券を通じてプリンストン債に投じられた資金が、一体どこへ流れたか追いかけましょう。


明日に続く!
  
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2004年11月23日

プリンストン債物語А 禅躬海気鵝▲┘蝓璽肇汽薀蝓璽泪鵑ら真人間に戻る〜

プリンストン債物語の続き

元本保証の安全運用という説明を信じた牛山さんは、会社の資金をプリンストン債に託しました。プリンストン債は、バブル崩壊で痛んだ資産を安全確実に回復してくれるはずでした。
しかし・・・。
プリンストン債購入に投じた資金は、丸ごとふっとんでしまいました。元本保証かどうかという次元の問題ではなく、運用すら行われていなかった。預けた資金はすべて運用担当者やその共犯者の私腹を肥やすことに流用されていたらしい・・・。

牛山さんの会社は、アメリカにあるプリンストン債の運用会社や資産管理会社、加えて関連会社などを相手に訴訟を起こしました。結果として、何とか和解成立にこぎ着けました。親会社であったリパブリック社(現HSBC)から被害額のおよそ8割程度を補償してもらうことなどを条件に和解が成立したのです。
プリンストン債事件の経済的ダメージが大きく、和解までもたずに破綻した会社もありました。一方、牛山さんの会社は、最悪の事態を免れ、何とかやり直せそうです。

しかし、左遷された牛山さんはサラリーマンとしてやり直せそうにありません。

牛山さん「ああ。今年は全然お歳暮が贈られてこないなあ。私が財務部長だった頃は、お酒にハムに缶詰・・・、ジュースや果物もあったなあ・・・、とても食べきれないくらいの大量のお歳暮が送られてきたのに・・・。」「結局、私に対してではなく、私の肩書きに対して皆は敬意を払っていたんだなあ・・・。否っ、敬意を払っていたのではなくて、シッポを振って擦り寄っていただけかも知れん。私自身が人柄や実力ではなく、肩書きを見て付き合う相手を選んでいたように・・・。」

財務部長から資料室に左遷された牛山さんですが、彼の心は見事に“治療”されたようです。
  
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2004年11月22日

プリンストン債物語Α 禅躬海気鵝会社に白状する〜

プリンストン債物語の続き

もうどうにも隠し通すことができないことを悟った牛山さん。社長にすべてを話しました。社長から増やすように命じられた会社の資金100億円を80億円に減らしてしまったこと。損失を隠すためにプリンストン債を購入したこと。そのプリンストン債が全額償還不能に陥っていること。すべてを話しました。

社長「牛山君。君の話はよくわかった。会社としては裁判を起こして、相手から少しでも資金を回収したい。」
牛山さん「はい・・・。」
社長「これまでも幾多の苦難を乗り越えてきたんだ。こんなことでは絶対にへこたれんぞ。」
牛山さん「はいっ。私も全力で資金回収に努めます。」
社長「君はもういい。」
牛山さん「はっ?」
社長「財務をすべて君に任せて、チェック体制を敷いていなかったのは私の責任だ。しかし、君は大変なことをやってくれた。明日からもう財務の仕事はしてもらわなくてもいい。近いうちに会社の資料室に異動してもらうよ。」
牛山さん「資料室って・・・。一日中何もすることがないじゃないですか。問題を抱えた社員ばかりが集まっていて・・・。女子社員の間では“治療室”って呼ばれているんですよ。」
社長「うるさいっ。クビにならなかっただけでもありがたいと思えっ。もちろん今回の件は私にも責任がある。しかし、こんな大チョンボをしでかした君にはもう我が社の重要なポストを任せられんのだ。理解してくれたまえ。」

サラリーマンとして20年以上も上司に媚びへつらってきた牛山さん。実力はないが、実力者に擦り寄るのだけは誰よりも上手かった牛山さん。
ここで左遷されるなんて・・・! 
同僚のささいな失敗をわざわざ誇張して報告したことも、優秀な部下の手柄を横取りしたことも、自分のミスを他人がやったことにして都合良く報告したことも、何もかも、彼のサラリーマンとしての偉業のすべてが水の泡です!

続く!
  
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2004年11月19日

プリンストン債物語ァ 禅躬海気鹽傾颪ら地獄へ〜

プリンストン債物語の続編

会社の資金運用に失敗し、100億円を80億円に減らしてしまった牛山さん。しかし、プリンストン債を購入することで、とりあえず損失の表面化を避けることができました。証券会社から送られてくる運用報告書を見ると、資産は着実に回復しており、営業マンの言うとおり、100億円に戻るのも時間の問題だと安心していました。
ところが・・・・・。

「プリンストン債が償還不能に陥っているらしい」
そんな噂を聞きつけた牛山さんは、すぐさま担当の営業マンに連絡しました。

牛山さん「もしもし、変な噂を聞いたのですが、プリンストン債の現状はどうなんでしょうか?」
営業マン「すいません・・・。償還は無理のようです。」
牛山さん「はっ? 運用報告書では当初の80億円を、もう85億円に増やして頂いていたので満足していたんですが。」
営業マン「はい。しかし、運用報告書も嘘だったようです。」
牛山さん「嘘だったようですって、お前は何も知らないのか!」

牛山さんは、かつて1億円のリベートをもらって「うっしっしぃー」と高笑いをした仲の営業マンをもう「お前」呼ばわりしています。

営業マン「はい。運用も資金管理もすべてアメリカの方でやってまして、私どもも騙された被害者です。」
牛山さん「寝ぼけたことを言うなっ! 仮に、運用が失敗したとしても、資金がゼロになるわけないじゃないかっ!」
営業マン「それが・・・。運用担当者や資産管理会社がつるんで、預かった資金を私的に流用していたようです・・・。」
牛山さん「何だとぉ! 詐欺だっ! まったく詐欺じゃないかっ!」
営業マン「私ども販売会社も完全に騙されました。詐欺ですね。」
牛山さん「お前らは手数料を何億円も徴収しておいて、その後は知らぬふりか! もういいっ! 訴えてやる!」
営業マン「訴えても構いませんが・・・。それと同時にこれまでの経緯はすべて明らかになり、あなたのサラリーマン人生は終わりますよ。」
牛山さん「ああっ、何ということだっ! うううっ・・・・・。」

続く
(本文は私の想像によるものです)
  
Posted by kawase_oh at 17:06TrackBack(3)
2004年11月18日

プリンストン債物語ぁ 全泙濛擦魃すカラクリ〜

プリンストン債物語で、100億円の会社の資金を80億円に減らしてしまった牛山さんは、それを簿価100億円のプリンストン債と入れ替えてもらいました。この取引のカラクリとは?

当時のクレスベール証券は、含み損を抱えた投信、特金、その他各種証券をプリンストン債と入れ替えることを積極的に提案していました。
プリンストン債は、オフショアで設立されたペーパーカンパニーにより発行された私募形式の債券です。オフショアとは、国内と比較して金融・税制上の制約が少ない市場のことです。このことが、資金80億円の相手に額面100億円のプリンストン債を販売することも可能にしました。そのための口座開設には、ある外資系信託銀行も絡んでいたようです。

ペーパーカンパニーに債券を発行させることで、プリンストン債との名が付けられましたが、その中身は債券だけで運用しているわけではなく、むしろ何でもありの運用でした。基本的にはドル建て運用でした。運用の中身まではわからなくても、為替リスクは明らかであり、どのように、「元本保証です」と顧客を言いくるめていたのかは不明です。また、手数料については、基本的なタイプで言えば、年間に5%もの手数料を毎年徴収していました。

プリンストン債を100億円販売すれば、年間5億円の手数料が運用成績に関係なく入ってきたわけです。含み損を明らかにしたくない会社や財務担当者の隙に見事に入り込む巧みな商品設計。そして、毎年勝手に転がり込んでくる法外な手数料。多少リベートでも渡しておけば、その後失敗したときの口封じにもなります。バブル崩壊で巨額の損失を抱える国内企業の隙につけ込み、売りに売りまくったプリンストン債。販売総額は1200億円。

このプリンストン債にはさらに驚くべき事実が隠されています。
運用が失敗して損する話はよく聞きますが、運用がまったく行われていなかったとしたら、どう思いますか? 元本保証でなかった点は我慢できたとしても、運用すらしていなかったとしたら・・・。

明日に続く!
(今日の本文は、当時のクレスベール証券販売資料などに基づきます。)
  
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2004年11月17日

プリンストン債物語 〜牛山さん、プリンストン債と出会う〜

プリンストン債物語の続編です。

会社の余剰資金100億円を80億円に減らしてしまった牛山さん。元本部分まで何とか回復させたいが、そのまえに、会社の人間にばれないように何とかしたい。そこへ、牛山さんにとって渡りに船のクレスベール証券の営業マンがプリンストン債を説明しにやって来ました。

営業マン「牛山さんが80億円にしてしまったファンド。とりあえず、額面100億で引き取らせていただきます。」
牛山「えっ、どういうことですか?」
営業マン「もちろん、80億円から運用開始させていただきます。100億円とはあくまで額面です。例えば、80円で買った割引債が何年後かに100円で償還されることがあるでしょう。あれと同じですよ。つまり、将来必ず100億円になる、額面100億円のプリンストン債を80億円で買って頂く形になります。」
牛山「なるほどー。そうすると、弊社の会計上は資金100億円のままに見えるわけですね。つまり、損失を先送りすると?」
営業マン「これで、とりあえず牛山さんが損失を出したことは誰にもばれません。しかもプリンストン債はこれまで、年率30%近くの運用成績ですので、本当に100億円に達するのも時間の問題です。債券ですから元本も保証されてるんですよ。」
牛山「よしっ、買った。是非、お願いします。この件が片付けば、何の問題もなく私は社長になれます。」
営業マン「そうですか。では、前祝として、弊社の受取手数料の中から、1億円をお受け取りください。どうせすぐ手数料分も元本損失分も回復するんですから。」
牛山「ああっ。リベートまで頂けるんですか! 社長になったらたっぷりお礼させてもらいますよ。うっしっしー。」
営業マン「うっひゃっひゃー。」


明日に続く!
(注)本文は私の空想によるものです。
  
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2004年11月16日

プリンストン債物語◆ 禅躬海気鵐團鵐繊

昨日の記事、
「プリンストン債物語 の続編。

“プルルルルー、プルルルルー”ある日、牛山さんのデスクの電話のベルがケタタマしく鳴りました。
証券マン「牛山さん、大変です。株が暴落しています。投信の基準価額も急落です。」
牛山「なんだって! くっそー。それくらいすぐに取り返してやる。俺様は金儲けの天才なんだぞ。残りの資金をかき集めて、下がっている株を買いまくってくれ!」

90年代に入ってバブルが崩壊した日本の株式市場は、牛山さんに容赦なく襲いかかりました。倍増した資金の一部は夜の銀座に消えていったものの、まだ巨額の利益が残っているはずでした。
しかし・・・。

毎日のように下がり続ける株価は、ついに元本部分まで侵食し始めました。
「会社から任された100億円が、80億円になってしまった。ああ・・・。どうしよう・・・・・。」「とりあえず、財務のことは俺様以外誰もわかっていないから、社長には黙っておこう。でも、20億円も損失を出してしまった。なんとかしなくては・・・。」
牛山さんもサラリーマンです。会社にばれたら、彼のサラリーマン人生は終わりです。定年まで10年以上ありますが、隠せるものなら隠し通したい。自分のミスを隠したいのがサラリーマン。自分のミスを誰かに押し付けたいのがサラリーマン。ついでに他人の手柄を横取りしたいのがサラリーマン。それができなきゃ出世できません。

そんな牛山さんの耳に、“バブル崩壊で傷ついた会社の財務内容をなんとかしてくれる人達がいる”との情報が飛び込んできました。
クレスベール証券という耳慣れない名前の会社。損がばれないようにしてくれた上に、元本部分まで回復してくれるような驚異的な運用をしてくれると言うのです。

「是非、クレスベール証券で販売しているプリンストン債について話を聞きたい!」牛山さんは、知人を通じて、プリンストン債の営業マンと会うことになりました。

明日に続く!
(本文は私の想像によるものです)
  
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2004年11月15日

プリンストン債物語  塑睫鈎甘の牛山さん〜

90年代に発覚した未曾有の金融詐欺事件、クレスベール証券プリンストン債事件。この事件の経緯を皆様とともに辿ってみたいと思います。架空の国内企業を舞台に私の想像をふんだんに交えながらフィクション物語風にアレンジしています。

あなたが、ある企業の財務担当者だったとします。仮の名を牛山さんとしましょう。会社は利益を上げており、その利益を運用することが求められました。

社長「おいっ、牛山君。会社の余剰資金が100億円あるから運用してくれたまえ。もちろん、損させたらだめだぞ!」
牛山「はいっ、かしこまりました。」

時は、バブルに湧く80年代。社長から、余剰資金を運用するように命じられた牛山さんですが、投資の知識などまったくありません。誰も彼もが株を買う時代でしたが、損するリスクがあるので牛山さんは躊躇していました。そんなとき、会社の取引先の証券マンから「株は絶対儲かりますから!」「主婦も株で大儲けしている時代に、ぜんぜん資産を増やせなかったら、それこそ、社長の牛山さんに対する評価はガタ落ちですよ!」
確かに、社長には、損するなとしか命じられていませんが、充分な利益を上げられなかった場合も、きっと怒られるでしょう。牛山さんの友人の中には借金をして株を購入した人もいました。「借金をして株を買う人がいるくらいだから、余剰資金で少し株を買うくらい問題ない。株を買わないことの方が僕にとってリスクが高いかも・・・。」
そう思った牛山さんは、証券マンの勧められるままに、会社の余剰資金で株式を購入しました。その結果は・・・・・。

証券マン「牛山さん!この前買った株が、高騰しています。大儲けです!もっと儲かる株があるので、今度はたくさん買いましょう!」
牛山「そりゃ良かった!よしっ、資金をどんどんつぎ込もう!」
買えば上がる、上がるから買う。それを繰り返していつの間にか、余剰資金100億円のすべてが、株やリスクの高い投資信託に姿を変えていました。株価も基準価額も上がり続け、余剰資金は倍増していました。

社長「牛山君、すごいじゃないか!この調子なら、最年少社長への道も近いなあ。その前に、うちの財務はすべて君に任せるよ。」
牛山「ははっ。ありがとうございます。」
会社の資金を倍増させた牛山さんは、社内ではスーパーエリートとして一目置かれ、もはや財務に関して誰も口出しする人はいませんでした。
そんな牛山さんは、調子に乗って、会社の経費で毎晩のように銀座のクラブへ通うようになりました。「俺様は金儲けの天才だ。」「会社も俺様が支えてやっているようなものだ。」「俺様が儲けたカネで遊んでるんだから誰も文句はないだろう。うっひゃっひゃー。」

ある国内企業の財務担当者として、80年代のバブルを謳歌した牛山さん。エリートサラリーマン街道を行く牛山さんですが、90年代に入ると風向きが変わります。

明日へ続く!
  
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2004年11月11日

天才相場師、マーティン・アームストロング

昨日の記事で、クレスベール証券のプリンストン債事件の概要をざっとご紹介しました。今日以降は、この事件の本質を追ってみたいと思います。

まずは、運用担当者である、マーティン・アームストロング。プリンストン債事件が発覚する以前から彼は有名人でした。相場を的確に予言する相場師として日本国内でもその名が轟いていました。特に、日本のバブル崩壊を言い当てたこともあり、日本では彼の予想を“御託宣”と呼ぶ者も現れ、市場関係者までもが彼のレポートを愛読し、彼のセミナーにこぞって参加する有様でした。昨日の記事で、私は彼のことを“つるっぱげ”と言ってしまいましたが、側頭部と後頭部にはまだ髪の毛が生えており、温厚そうな顔立ちをしています。

今から約6年前の彼のレポートがあるので内容を見てみましょう。当時、LTCM破綻と世界的金融危機を脱した世界経済は、日本を除いて回復基調にあり、為替市場は統一通貨EUR発足を契機に盛り上がりを見せていました。そして、ほとんどの市場関係者はEURはUSDに次ぐ、あるいはUSDを上回る基軸通貨になるものと期待していました。その中で、アームストロングはユーロ加盟国の金融政策・財政政策の硬直性を懸念し、EURが1999年の発足以降、下落基調を辿ることを予想していました。
現在は、彼の予想に反し、1ユーロ>1ドルの状態にありますが、発足直後にEURは急落し、その後3年間低迷を続けました。その点において、彼の当時の相場観としては見事であると私は思います。

さらに古い彼のレポートを見ると、インフレを抑制することこそ大事であると考えられた時代に、“合理的なインフレは必要である”と論じました。まさか、現在デフレに苦しむ日本の姿を予想していたわけではないでしょうが、高インフレと同様に極端な低インフレも悪者扱いすべきという主張は的を得ています。

彼は同じレポートでこうも言っています。投資で成功するには国際的な資本の動きに留意しなければならない。資本を動かすのは為替であり、為替を動かすのが資本である。10年以上安心して投資できる投資先などない。グローバルな観点で、世界的な金融市場の変化・為替市場の変化を理解した上で投資を行えば、資産運用の世界で生き残れるだろう。
私は、この一節を初めて読みましたが、為替を重要だと考える点では私と共通するものがあり、おっしゃる通りであるとしか言えません。

そんな彼が主宰したプリンストン債だけに、さらに明日以降も、この事件を追跡します!
  
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2004年11月10日

クレスベール証券とプリンストン債

今から5年ほど前のことでしょうか。クレスベール証券という会社が国内法人企業を相手に、プリンストン債という金融商品を買わせたものの、それが償還不能に陥り、販売手法や運用方法をめぐって、てんやわんやの大騒ぎになった事件がありました。
さすがの「為替王」読者の方々も記憶の彼方に飛んでいってしまっている事件ではないでしょうか? 今日はさらっと、その経緯を振り返ってみます。

マーティン・アームストロング。つるっぱげでありながら、数々の大胆な相場予測を的中させてきた米国の有名相場師です。彼が運用するというプリンストン債を日本の多くの有名法人企業が購入しました。債券と名が付きますが、中身は天才相場師アームストロングが運用するファンドです。なぜ、そのファンドを日本の企業が購入できたかというと、クレスベール証券という会社の東京支店が、日本国内で積極的に販売したからです。
90年代中頃から数年間に渡り大量販売されたプリンストン債の販売総額はおよそ1200億円。バブル崩壊で痛手を被った国内企業ですが、それくらいの力は残っていました。購入した国内企業は50社以上にのぼります。少ないところで数億円、多いところで100億円以上購入した会社も見られました。

元本保証のはずだったプリンストン債は、損するどころか、全額償還不能という信じがたい結末を迎えました。投資した企業の財務担当者は、顔が青ざめたことでしょう。その後当然、法廷闘争に持ち込まれ、最終的には、米国で資産管理などを行っていた会社のグループが、被害額の大半を補償する形で和解が成立しました。

リスクがあるのに元本保証であるかのように説明して買わせたり、買ってくれた企業の財務担当者にリベートを手渡していたことなどは、特に目新しい悪事ではありません。でも、金融に疎いよぼよぼのお年寄りじゃあるまいし、日本の有名企業がどうして、そんなものに手を出したのでしょうか? この奇妙奇天烈な事件の本質は何だったのでしょうか?

明日に続く!
  
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