河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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【概要】

  企業の資金需要ニーズの低下、個人向け住宅ローンやアパートローンでは、とにかく低金利での苛烈な競争。国債購入もマイナス金利下で減る一方の利ザヤ。

  積極的に、投資信託や保険商品の販売にシフトするも、高すぎる手数料に対し金融庁から内容の開示を迫られる。 

  新たな収益源を確保出来ないまま、迫りくる、AI、フィンテック、ブロックチェーンといった技術革新の波。

   ネット銀行の台頭や、コンビニATMの普及で、問われつつある地域店舗の存在意義。

  今後大半の金融機関は、コスト削減に向けた取組にシフトせざるを得ず、大量の銀行員失職時代が幕を開ける・・・・・・

  大失職時代を迎える金融業界で生き残れるのは、果たしてどのような人材なのか?
元富士銀行(現:みずほ銀行) 出身のコンサルタントである著者が、そんな人材像を明らかにしていきます。

【所感】

   7章からなる本書。
 
 金融機関を取り巻く環境変化の概要。銀行員の日常とこれからの処遇。フィンテックやブロックチェーンがもたらす未来像。AIに代替されていく業務。地域金融機関、大手金融機関の行方。

  と幅広い内容を扱っています。

  いくつか印象的なトピックスがありますが、個人的にやはり考えさせられるのは銀行員たちの処遇。
業種柄、またかつて大学生の人気就職先であったことから、優秀な人材が集まっている印象の強い金融機関ですが、新規貸出の縮小や魅力的な商品の乏しさから、顧客接触の頻度が少なく、なかなか経験値を上げることが出来ない現状。

  その中で、「提案型営業」を求められても経験値の乏しさから結局、マニュアル営業となり顧客ニーズに応えられないジレンマ。金融機関業務と親和性の高いAIゆえに、その普及に脅かされる自身の業務。徐々に八方ふさがりとなりつつ銀行員たちの焦燥がじりじりと伝わって来る感を覚えました。

  ならば、これからの銀行員は一体どうすればいいのか?

  結局、著者がこれからの人材に必要な能力としてあげているのは「コミュニケーション能力」。
そして在職中には、とにかく顧客に尽くし自身の将来の行先を確保せよ。独立可能な資格取得を目指せ。と、しごく当たり前のことが説かれているのみ。

  そもそも税理士等含め国家資格者こそ今後、AIやフィンテックの台頭で存在が脅かされている存在。
規制により守られていた業界こそ、存続が危ぶまれるのは金融機関と同じこと。そういった前提も踏まえ、求められる人材像や取るべき行動の提言がほしかったところです。
またどうしても、一方的に金融機関を断罪するような論調になってしまっている点も残念なところでした。

  とはいえ金融機関をとりまく状況を幅広く網羅した本書。金融機関の現在をざっくり知るには、格好の一冊といえるのではないでしょうか。


                                        日本経済新聞出版社 2017年6月1日 1版1刷

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【概要】

  鳥取県。47都道府県の中で人口、県総生産とも最も小さな県です。
そんな鳥取県にある澤井珈琲 http://www.sawaicoffee.co.jp/ 
 
  同県米子市で創業し35年。コーヒー豆の卸小売を営む同社は、現在鳥取県を中心に、9店舗、3工場を構え、約160名を雇用。年商は約27億円に達するそうです。

    実は同社の売上の8割近くを稼ぎ出すのは、ネット販売。
鳥取県という地方都市にあり、コーヒー豆という非常に差別化しにくい商品を扱いながら、なぜここまでの成長を遂げることが出来たのか。

  本書は、創業者のご子息にして、現在同社の常務取締役を務める著者の手による1冊。
ネット販売で大躍進を遂げる原動力となった同氏の取組や思いを明かしています。

【所感】

 楽天市場11年連続ショップ・オブ・ザ・イヤー、3年連続ベスト店長賞。
2016年には、楽天市場の他にもYahoo!ショッピングモールやボンバレモールを含め12冠を達成。

 1982年に両親が脱サラをし、自宅を事務所に無店舗でコーヒー豆の卸売をスタート。
両親の懸命な努力により、著者が入社をした1994年頃には複数の店舗を展開するまでになり、年商も3億円ほどの規模に達していたそうです。

  実店舗の1店を任されていた著者。ライバル店などの登場もあり、売上が伸び悩む中、ネット販売に進出したのは2002年のことでした。
まだ今ほどネット販売が市民権を得ていない時代、創業者である社長からは、既存ブランドの評判を落とす懸念から、別ブランドを使用することを条件に進出を許可されます。
それから15年程で、先ほど挙げたような数々の受賞を受けるまでに、大きく売上を伸ばしてきました。

  その秘訣はどこにあったのでしょうか。

   HPのつくり方さえ分からず、扱う商品の選定にも迷う。当初はデロンギのエスプレッソマシンと自社焙煎豆をセット販売も、極端にデロンギ製品の低価格販売を行ったことから、取引停止の憂き目に。
それでも楽天市場での合宿や、コンサルタントの指導を受け、徐々にコツをつかみます。

 〇ターゲットを明確にし、見つけていただきやすいレイアウトにする
 〇トップページでアクセスユーザーの注意を引く
 〇お得感を徹底的に演出、安心して買っていただけるようにする
 〇また利用したいと、と思っていただける工夫をする

  その手法は決して奇をてらったものではなく、まずは認知されること。そしてリピート率や転換率をいかに高めていくのか。そんなことに重きが置かれています。

  ただ結局、同社躍進のきっかけとなったのは、2005年秋、楽天市場で60万円(当時の著者の4ケ月分の給与だったそうです)の広告枠を買ったこと。
そこで認知度を一気に高めたことがターニングポイントであったと語っています。

  所詮、楽天市場等で広告枠を買わなければ、駄目なのか?
そんな印象を持たれた方も多いのかもしれませんが、やはりネットの世界ではそれが現実。同社でも利益の6~7割を広告費に費やしているそうです。
  認知していただいたお客様をいかに繋ぎとめていくのか。それは実店舗であっても同じこと。商品を販売するのに営業マンが必要なように、ネットの世界ではそれが広告枠を購入することなのだという意識の転換が出来ない方には、なかなかネット販売での成功はおぼつかないのかもしれません。

  楽天市場メインであるということを割り引いて読む必要はありますが、これからネット販売に本腰を入れたい方、既に取り組んでいるものの、思わぬ成果が上がらない方には参考になる点もあるのではないでしょうか。

 章ごとに、美味しいコーヒーの淹れ方などのコラムも掲載されていますよ。

                
                                               宝島社 2017年6月30日 第1刷


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【概要】

  ビジネス書のカテゴリーにあてはまるのか?  少し悩むところはありますが、今週はこんな異色の一冊をご紹介させていただきます。

  防衛装備庁技術戦略部に在籍する著者。防衛技術研究に係わる同氏が常々抱いていたのは、「戦略を破壊するものは、何か」という疑問。

 「戦略」と聞いて、皆さまはどんな印象を持たれるでしょうか?
デジタル大辞泉によれば、「戦略」とは ①戦争に勝つための総合的・長期的な計略 ②組織などを運営していくについて、将来を見通しての方策とあります。
   いずれにしましても、「戦略」とは敵やライバルに打ち勝つために、いかに自らの優位性を確保するか叡智を振り絞ることと言えるのではないでしょうか。
  著者は「戦略」を理解する鍵は「非対称性」にあると説きます。非対称とは対称でないこと。つまりモノや条件が当事者間で対等でないことを言います。優れた「戦略」とはこの非対称性を最大限に活用することであり、この非対称性を生み出しているのが「技術」。

  本書は、過去の戦争を紐解きながら、大きく戦局を変えたと言われる著名な戦いを取り上げ、「技術」というフィルターを通じそれらの戦いを検証してみることから、今を生きる私たちにとって有益な教訓を得ることを目し記されています。

【所感】

    5章からなる本書。中でも中心となるのは2章~4章。第一次世界大戦~第二次世界大戦にかけてのヨーロッパを中心に、著名な戦いを順次紹介しています。 戦いの概略と勝者が生まれた背景。そしてキーとなった「技術」を記した後で【影響と教訓】というまとめをしています。
  
   当時の世界大戦についてあまり関心のない方には、具体的な戦いの名称を聞いてもあまりイメージが湧かないかもしれませんが、空母、航空機、レーダー、爆撃機、爆撃照準器、潜水艦、暗号機、洗車、対空砲、信管、ロケット、弾道ミサイルなどの武器の名称くらいなら、どこかで聞かれたことがあるのではないでしょうか。

    それまで王道とされていた「戦略」が、これらの武器や機器の登場で、いとも簡単にその優位性を失うさまは、とても興味深く、その影響の凄まじさには驚きを禁じ得ません。
また著者の手による【影響と教訓】には

 〇優れた要素技術をシステム化することで大きな成果を生む
 〇将来の可能性を秘めた萌芽技術を見つけ、育てたものが勝つ
 〇一見無関係に見える技術が、システムに大きな進歩をもたらすことがある

 などの表現で、今を生きる我々が「技術」に対峙する際のポイント的なまとめが記されています。

  武器のみならず、個々の戦いを率いた司令官や指揮官、そのマネジメントについても言及されていますが、共通しているのは優れた司令官や指揮官は皆、技術に精通していたということ。短期的な有効性がなくとも、技術開発には鷹揚であり、多少の不完全や粗削りの技術であろうと、その可能性に賭け、進取の精神に富んでいたことが浮かび上がってきます。

   本書は、成功事例ばかりが紹介されていること。先の大戦を中心としつつも、日本や米国の事例はほとんどない等、偏りや物足りない部分を感じないわけでありません。
また、ランチェスター戦略など一部のものについては、若干解説は入っていますが、もう少しビジネス面へのアプローチがあれが、より本書を有効なものにしてくれたと思う点が少し残念ではあります。

  ただ技術を介し戦略を考えるという発想はユニークなものであり、今を生きる我々へ、新しい技術の登場を恐れず、いかに自身の仕事や生活に取り込むかを考える柔軟性を持つべきとの著者のメッセージは大いに伝わっており、本書の目的は十二分に果たされているとは思います。

 最後に余談ですが、本書は先の大戦の貴重な写真が結構豊富に掲載されており、ビジュアル的にも楽しめる体裁であることを書き添えておきます。


                                                                      クロスメディア・パブリッシング 2017年6月1日 初版発行

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