河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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【概要】

  UAE(アラブ首長国連邦)  アラビア半島のペルシア湾側に位置する7つの首長国からなる連邦国家です。
サッカーファンの方なら国名そのものを、旅行好きの方であれば、ドバイやアブダビを擁する国家として、その名前を聞かれたことがあるかもしれません。 
  しかしながら、ほとんどの方にとってUAEは、中東にある産油国の一つであり、実情はよく分からないというのが正直なところではないでしょうか。

 本書は、このUAEで日本の特命全権大使を務めた著者が語る同国の実像。国家の概要から歴史。地政的リスクや日本との関連。そして同国におけるビジネスの可能性まで、幅広く網羅をしています。

【所感】

  世界一高いビル、ブルジェ・ハリファ。世界最大のショッピングモール、ドバイモール。世界最大の人工島パーム・アイランド。現代都市と砂漠が融合した独特の景観の映像を、ご覧になった方も多いかもしれませんね。

  産油国であることは説明の必要はないかと思いますが、実に日の丸油田の40%以上が集中している地域であることや、世界最大級を誇る政府系投資ファンド、アブダビ投資庁がある金融大国でもあること。
  総人口1,000万人とも言われますが、実は自国民はほんの100万人程度。9割は外国人いう開かれた労働環境。そして所得税課税はなし。
また教育費や医療費は無料であり、結婚すればマイホームがプレゼントされるなど自国民に対する破格な厚遇。

  知られざるUAEの特色が次々と明らかにされる本書。
もちろん魅力的な話ばかりでなく、民主制を引いていないことや地政上のリスク、居住者間の経済格差、外貨は呼び込むも国際競争力のある産業は乏しい等、欠点がないわけではありません。

  それでも著者はUAEの理解と積極的な進出を説いています。
UAEの最大の石油輸出国は日本。つまりUAEの繁栄を支えたものはジャパンマネーですが、その巨額の資金は、アブダビ投資庁等を介し欧米へと流れており、日本への還流はほとんどありません。
同国に外国人居住者が多いということは、外国人に広く就業機会が開かれており、欧米はうまくその流れに乗っているのに対し、日本のUAEに関する無関心さや、最大の購買者である立ち位置をうまく活用しないもどかしさが本書を執筆した動機のようにも伺えました。

  とはいえ、具体的なビジネスの可能性についてはさほど言及されておらず、ホテル業界、日本料理、日本文化や伝統の普及、デザイン等が有望とあるだけで、どちらかと言えば個人としての就業に関する色合いが強いように思いました。
  石油産業プラント産業、建設業が以前から進出しているのは、もちろんですが、近年は紀伊国屋書店、ダイソー、無印良品、ヨックモック等が進出し人気を博していますので、いまや業種を問わず進出のチャンスは多いのかもしれませんね。

  やや総花的な面は否めない本書ですが、UAEに対する入門書としては十分な内容ではないでしょうか。

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【概要】

 中川政七商店 http://www.yu-nakagawa.co.jp/top/#
享保元年に創業。奈良に本拠を置き、創業以来手摘み、手織りの麻織物を扱う企業です。

   300年もの歴史を持つ老舗ながら、独自性のある戦略によって競争に成功した日本企業や事業部に贈られるポーター賞(一橋大学大学院国際企業戦略研究科が運営)を受賞 。

http://www.porterprize.org/pastwinner/2015/12/15104405.html
  
  取り扱う商品のみならず、そのユニークな経営から、最近は多くのメディアに登場しているので、ご存じの方も多いかもしれませんね。

   さて本書は、そんな同社13代目の当主が語る自社の経営と将来へのビ思い。実は当主はまだ40歳代、同社に入社して15年。経営トップに就いて9年目の若き経営者です。
300年の歴史があるとはいえ一地方企業であり、扱う商品は麻生地と茶巾や袱紗といった茶道具など。自社ブランドを持つものの、いわゆる家業の域を出ない、ごくありふれた企業に過ぎなかったようです。
 
  多くの中小企業経営者の方の頭を悩ます「ファミリービジネス承継」 「地方企業」 「地場産業の衰退」etc といった問題の数々。本書を読まれれば、著者の奮闘ぶりに共感を抱かれる方も多いのではないでしょうか。
そしてその取り組みのいくつかには、必ずや業種や事業規模や超え参考になる点も多いかと思い、今回ご紹介をさせていただくこととしました。

【所感】

    本書のタイトルでもある「日本の工芸を元気にする!」  これは中川政七商店のビジョンでもあります。
2003年、当時唯一の自社ブランドで玉川高島屋ショッピングセンターに出店した同社。著者はそこである経営者に出会い「何のために会社を経営しているのか?」と問われます。
自問自答を繰り返す中で、著者がたどり着いたのが同ビジョン。自社商品の展開だけでなく、自社と同じように各地域工芸の分野でがんばる企業を支援すること。

  そこで氏は、業界特化型のコンサルティング事業に取り組み、産地再生を図る地域でいくつかの企業再生に成功します。また単にコンサルティング活動にとどまらず、実際に支援した企業が販路を確保できるよう、「大日本一」という展示会を開催。また、優れた地域の工芸品販路でありながら、ややもすればおざなりがちであった土産物屋に着目。「仲間見世」という形態で、観光地での新しい売り場を展開しています。

  一方で自社の改革も進めます。家業から脱却すべく、ごく当たり前の管理を取り入れようとするも、古参社員は続々と退職。残った社員にも伝わらない思い・・・・。
試行錯誤を重ねつつ、一歩ずつ理想の経営を目指す著者。そして断念はしたものの、いつしか上場を狙える企業にまで同社を発展させていきます。
 
  自身の経験談をただ連ねるのでなく、ブランドマネジメント、クリエイティブマネジメント、ビジネスモデルといった経営管理手法の目線も加え、普遍性をもたせていることで、とても読み易い構成となっている点は、さすがコンサルティング業務も展開されているだけのことはあります。

  さて示唆に富んだ本書ですが、個人的に一番飲食に残ったのは、経営者自身がクリエイティブのリテラシーを養うのと同時に、経営を理解するデザイナーを選ぶことが重要というくだりでした。

  多くの中小企業が欲するものに、自社ブランドや自社オリジナルの商品やサービスがあると思います。
その創造に欠かせないがクリエイティブマネジメント。創作を理解できない経営者の元では、当然こういったものが生まれる余地はありません。とはいえ創造的であれば、センスあるものであれば採算度外視でよいかと言えば、それもあり得ない話です。双方の歩み寄りと理解があって成り立つこと。
   これは工芸に携わる著者ゆえに強く意識をされているのかもしれません。ややもすれば 「いいものを作れば誰かが分かってくれる。求めてくれる。」 という発想に陥りがちそうなモノづくりの世界。

 「日本の工芸を元気にする!」とは、持続するために経済的に自立可能な仕組みを作ること。
それこそ著者が自社のビジョンや本書タイトルに込めた思いなのかもしれませんね。

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【概要】
 
  AI、シェアリング・エコノミー、IoT、フィンテック。最近よく耳にするキーワードですね。
   AIとは人工知能の略称。シェアリング・エコノミーとはネットを介し、個人間や企業間で余剰なモノやサービスのやりとりをすること。IoTは「モノのインターネット」、様々な機器がネットに接続され相互通信を可能にする仕組みのこと。そしてフィンテックはITを活用した金融サービスの総称と言われています。
   これら4つの新しいテクノロジーの普及を第四次産業革命と呼ぶむきもあり、我々の生活や仕事を大きく変えていこうとしています。

  事実、自動車の運転支援技術や「メルカリ」などのフリマアプリの人気。企業が保有していた業務ソフトやサーバー類のクラウドサービスへの移行などすでにその影響を受け始めていることも少なくありません。

  本書はそんな4つのテクノロジーの進展が企業に及ぼす影響を考察した1冊です。
6章で構成される本書は、最初に象徴的な最新事例を紹介した後に、4つのテクノロジーの特徴や影響につき1章ずつを割いて解説。そして終章では業界別に日本企業の将来を予想した内容となっています。


【所感】

     2年程前にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授が発表した論文「雇用の未来」。
それは米国労働省のデータに基づいて、702の職種について分析した結果、「今後10年~20年の間に米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」という衝撃的な内容であり、随分話題となったものでした。
  
    それは米国に限った話ではなく、我が国でも十二分に起こり得ること。
本書でも、象徴的な事例として、東京のタクシー初乗り料金の引き下げ、電通の不正取引・過労死問題、ソフトバンク社のARM社買収、日本におけるビットコインの準通貨化を取り上げながら、すでにその端緒があちこちに見られ始めていることを教えてくれます。

  4つのテクノロジーは、各々が独自に進化を遂げてきたものでしたが、今やこれらはインターネットを通じ有機的に結びついており、複雑に絡み合いながら、普及をしていくのではないかと著者は考察をしています。

 さて気になる日本企業への影響ですが、著者は、縦軸に30の業種、横軸に4つのテクノロジーをとった独自のマトリックス表を作成し、整理をしています。
 
  結果、最も影響が大きい(複数の項目の影響を受ける)のは、情報サービス業。次いで自動車産業と運輸業、小売・飲食サービス業が続いています。
本書帯には「トヨタが下請けになる」などセンセーショナルな記述がありますが、あくまで各業界を代表する企業を取り上げているに過ぎませんので、そのあたりを期待されると少々肩透かしをうけるかもしれません。

  ただ総じて言えるのは、このままでは大半の企業が苦境に陥ることは必須ということ。
IoT関連である日本電産など、センサーなど半導体を扱うメーカーは現状の優位性の維持が可能である点、宅配業界でラスト1マイルを抑えているヤマト運輸の大化けの可能性などは明るい材料として取り上げてはいますが。

    また本書では今後有望な職種やスキルが示唆されているわけではありません。
ただ今後は、どんな業界にもあった物理的な制約条件がなくなり、そこで働くビジネスマンの能力格差も無限大に広がる可能性があること。
  これは既存の価値観に捉われた人にはとても厳しい状況になりますが、いち早く価値観を変えれた人にはまたとない好機と言えるのかもしれません。

  我々が今後の業界動向や働き方を考えるうえで、テクノロジー進展の未来を簡潔にまとめた本書は一助になる一冊。これから起こる変化を恐れることなく、前向きに考えていきたいですね。

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