河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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【概要】

   日本百貨店 http://nippon-dept.jp/
2010年12月に東京は上野御徒町でオープン。「ニッポンのモノヅクリ」と「スグレモノ」をテーマに日本全国からモノづくりにこだわった職人の手による商品を集め、販売をしています。

 東京御徒町以外にも6店舗を構えるほか、「出張百貨店」と称し、日本全国の商業スペースやイベントスペースでの出張販売も行っています。

 そんな同社の経営理念は「ニッポンのモノヅクリにお金を廻す」。社訓は「おもいやり」。そして行動指針は「日本のスグレモノ、発掘・発信!」とユニークなものになっています。

 今や年間70万人以上の利用者がおり、仕入先は1,000社近く。つながっている自治体は100以上。
オープンから7年で、多くの人々に支持される店舗や仕組みを作り上げたのは、同社を率い本書の著者でもある鈴木氏。伊藤忠商事で9年程勤務した後、起業をし現在に至ります。

 商社マン時代、海外ブランドを輸入し日本国内で広める業務に従事していた著者。日本のモノづくりの素晴らしさを再発見しつつも、おおよそ儲からない作り手たちの現状。そんな状況を変えたい。作り手にお金が廻る仕組みを作りたいとの思いが、同社を立ち上げるきっかけとなったそうです。

 本書は、そんな著者の語る日本百貨店の活動紹介と、モノづくりにお金の廻らない理由などにつきまとめた1冊となっています。

【所感】

 6章からなる本書。同社の活動紹介をベースとしつつも、本書は「売り手」「作り手」に対するメッセージを強く含んだ内容と言えます。
 どんなに優れたモノづくりをしようとも、それは認知され、実際に売上につながり、お金として回収出来なければ、意味がありません。

 ややもすれば、自身の一方的な思いが先行しがちな「売り手」や「作り手」に対し、同社での販売や仕入れを通じて得た経験則を分かり易く伝えています。

 そのキーワードはずばり同社の社訓でもある「おもいやり」。「おもいやり」とは想像力なのだと著者は説きます。自社の社員には、店頭で商品を並べるとき、こんな風に並べたらお客様はどう思うのだろうか?作り手の方はこんな風に並べられて喜ぶのだろうか?と考えることを求めます。

 はたまた売り手の方には、使い手に思いを馳せたモノづくりにをすることや、バイヤーに対するちょっとした工夫の必要性などを訴えています。

 売り手、作り手双方で絶えず想像力を発揮すること。「おもいやり」は本書で何度となく登場するキーワードでありタイトルにもなっていますから、これこそ著者が最も伝えたいメッセージに他ならないのでしょう。

 さて今や小売はネット通販が主流であり、投資金額や効率などを考えればリアル店舗を構えることは非常にリスクも伴います。同社もネット通販の存在を否定はしていません。
 ただリアル店舗による「作り手と使い手の出会いの場」の方がさまざまな化学反応を起こしやすいのだと説いています。
 実際に手にした触感。作り手の技を見ること。思いを聞いてみること・・・・。そんな一つ一つのプロセスによる実感が、これまで気付かなかった「新しいモノ」や「新しいヒト」との出会いを創出をしてくれる。それはネットでは出来ない体験であり、まさにリアル店舗ならではの価値。

 またこういったリアル店舗の存在が、様々な企業からコラボレーションを呼び込むきっかけにもなっており、別の商機も生み出しているそうです。

 モノの売れない時代と言われて久しい昨今、それでも勝機は必ずあるはず。そんな勇気と示唆を与えてくれる1冊でした。


                           実業之日本社 2017年9月30日 初版第1刷

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【概要】

 AI、IoT、ビッグデータが世界を変えると言われて久しい昨今。単純労働のみならず、その流れは医師や弁護士といったいわゆる専門職にも多大なる影響を及ぼそうとしています。

 医療、教育、宗教、法律、ジャーナリズム、経営コンサルティング、税務と監査、建築といった9業種の現況を紐解きながら、これら専門職の未来を大胆に予測した本書。

 イギリスはオックスフォード大学の権威の手による本書。

当ブログ執筆の私自身が、上記に掲げられた9種のうちの1つの業種に携わる者として、真摯に読ませていただきました。

 さしたる根拠に乏しいまま AI、IoT、ビッグデータが及ぼす近未来予報について記された書籍が多い中、緻密な理論に裏付けられた1冊。

 少々ボリュームはありますが今週はそんな本書をご紹介させていただきます。

【所感】

 大きく3章に分けられた本書。変化、理論、予測の流れで構成されています。
変化の章では、いわゆる専門職が他の職業と明確に区分される理由につき考察を重ね、特に冒頭で記した9業種については仔細に分析をしています。

 いわゆる専門職とは、知識や知恵の門番であったのだとの表現には非常にうなされました。
専門職の手掛ける分野は、なかなか一般の人ではアクセスが困難な領域であり、相応のコストを要するもの。専門職とはそのアクセスのための狭き門に立ち、導く存在であったという定義は非常に共感を生むものでした。
 
 その後の章では、専門職の将来につき、理論的な裏付けを踏まえつつ、予測をした構成となっています。

 結論から先に記してしまえば、もはや専門職のもつ知見を社会の中で役立てる仕組みが、いま根底から変わろうとしており、後戻りは出来ないという事実。

 その中で我々が唯一抗える術は、新たなスキルと能力を獲得することに他なりません。
①新たなコミュニケーション手法の取得 ②データ活用方法の取得 ③テクノロジーとの新たな関係を築くスキルの取得 ④多様化

 これらを総括して「柔軟性」の確保に他ならないのだと著者は記しています。

 しかしながら専門職に従事する人々が、いかに変化に対応しようとも、(その明確な時期は分からないとしながらも)これまでの伝統的な専門職は解体され、多くの(全てではない)専門家たちが彼らほどの能力を持たない人々や、高いパフォーマンスを発揮するシステムに置き換えられる未来は回避は出来ないのだと、まとめています。

 それは悲観すべきことなのか?

 いえいえ世界中の人々が、富める者も貧しい者も、支援やガイダンス、学習、知恵といった宝の山への直接的なアクセスを手にして、それを使ってより健康で幸福な生活を実現することになるという未来を開くのなら、それは非常に素晴らしい世界であり、専門家という自身の小さな砦など壊してしまうべきなのかもしれません。

 とはいえ、現実にそれを受け止めていくには大いなる葛藤があることは否定出来ないのですが。

 450ページほどの体裁、やや難解な部分はありますが、巧みな比喩で分かり易くプロフェッショナルの未来を説いた本書。示唆に富んだ一冊。お薦めです。

                             朝日新聞出版 2017年9月30日 第1刷

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【概要】

 ギグ・エコノミーとは、ネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済活動のことであり、近年注目を浴びている配車サービスのUBERや、宿泊施設仲介のAirbnbなどがその代表例などと言われています。

 ギグとは、元々音楽関係者などが使っていた俗語であり、小さなライブハウスでの短い演奏やクラブなどで一度だけ演奏することを意味しています。そこから転じ「単発の仕事」のことを指すようになってきたようです。

 本書は、まださほどギグ・エコノミーという言葉が認知されていなかった5年前に米国のバブソン大学(起業家育成に特化、卒業生にはトヨタ自動車の豊田章男氏など)のMBA過程でギグ・エコノミー講座を創設した著者の手によるもの。

 同講座は非常に人気を博し、フォーブスの「革新的なビジネススクール講座トップ10」にも選出されているそうです。

 本書はそんな講座をベースに記された1冊。
単にギグ・エコノミーの概要を解説するのではなく、成功のツールを提供することを目したと著者は記しています。

【所感】

 ギグ・エコノミーの世界で成功するために著者がまとめたのは以下の10の法則です。

 ①みずからの成功を定義する 
 ②働く場を分散させる 
 ③生活保障を設計する 
 ④ネットワーキングをせずに人脈をつくる 
 ⑤リスクを軽減して不安に立ち向かう 
 ⑥仕事の合間に休みをとる 
 ⑦時間への意識を高める 
 ⑧柔軟性のある家計を組み立てる 
 ⑨所有からアクセスに切り替える 
 ⑩老後の資金を貯める

 この10の法則を章立てして解説。各章の終わりにはこれらの法則を実践するためのエクササイズが記された構成となっています。

 仔細は是非本書をご参照いただきたいのですが、個人的に全編を通じ感じたのは、リスク回避に関した記述が非常に多いということでした。
 固定費を抑制する。借入をしない。貯蓄に励む。保険への加入。 などに関する記述は、わりとあらゆる法則の中に散見しています。

 元々個人の貯蓄率が低く、比較的各種ローンに抵抗の少ない米国という背景のせいもありますが、やはりギグ・エコノミーというスタイルは、収入面を含め不安定さは否めないため、リスクに対し柔軟な姿勢を取れるようその備えを促すことを意図しているのでしょうが、すでにこういった体験をされている自営業者以外の読者の方は萎縮してしまうかもしれません。

 とはいえ米国のみならず、我が国においても、非正規雇用者の増加、正規雇用者といえどももはや有り得ない終身雇用制、AIの台頭によりなどで奪われる職業 etc を考えていけば、大半の人々にとってこのギグ・エコノミーは避けられない流れであり、自身の意識を備えておくことはとても大切なことかもしれません。

 その際最も有効と思われるのは①のみずからの成功を定義するという法則ではないでしょうか。
働き方、収入を得る術が大きく個人に委ねられてしまえば、もはやステレオタイプの成功や幸せというものは存在しなくなるのかもしれません。
 
 自身の人生において何に価値を置き、何を成功とするのか? 本書では出口戦略が大切なのだと記されていますが、まさにその通りですね。
そんなことを自問するきっかけとしては、本書は大いに参考になるのではないでしょうか。


                            日経BP社 2017年9月25日 第1版第1刷 

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