河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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【概要】

  ビジネス書を紹介するブログで、ビジネス書の書評を中心に構成された書籍を紹介するのもなんですが(笑)。なかなか興味深い内容ですのでお付き合い下さいませ。

  かつて会計本の火付け役となり、163万部を売った「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者で知られる公認会計士、山田真哉氏の手による本書。

  ビジネス書黄金期ともいえる2000年代初頭(概ね2000年~2010年まで)を中心に、当時著者が書評を書いた書籍41冊を振り返りながら、
  なぜビジネス書はなぜ一時ブームとも呼べる活況を呈したのか?
   なぜ廃れてしまったのか?
   そしてこれからビジネス書というジャンルはどうなっていくのか?
について考察をした1冊となっています。

  書評編、考察編、資料編(1990年~2016年の年間ベストセラーランキング)で構成されており、資料編は過去発表された書評に再コメントを付与した体裁となっています。 

【所感】

 1990年代後半から始まったと言われる出版不況。書籍・雑誌の売上高が1996年の2.6兆円をピークに、昨年2016年には、1.4兆円とほぼ半減をしています。
   その中にあって、ビジネス書だけは、1997年に1206万冊だった出版点数が、2002年には1600万冊。2009年には1752万冊とピークを迎えます。その後は下降を続け、2015年以降は1200万部と20年前の水準に戻ってしまいます。
  
  景気低迷期にあり、出版不況を克服しようとした出版社と、「失われた20年」にあり、なんとか自身の活路を見出すことを書籍に求めた人々との需給がマッチし生じたバブルではなかったのか?と著者は考察しています。

  さらに、DTPやネット等のインフラ整備で、執筆者候補が増加したこと。出版不況下における経営多角化を目しで、ビジネス書専門出版社以外の出版社からの発刊が相次いだこともその背景にある点も指摘しています。

 アベノミクス効果があるとはいえ、今だ景気浮揚感も実感しにくい昨今、なぜビジネス書は売れなくなってしまったのでしょうか?

  ビジネス書が売れなくなった理由として本書では5つの通説が挙げられています。

 ①想定外の時代(過去との断絶、経験則から学ぶノウハウの無効化) ②人口減少 ③キャリアアップは時代遅れという風潮 ④ノウハウが出尽くした感 ⑤ネットの台頭

  その中にあり②の人口減少と⑤ネットの台頭がその真因ではないかと推測をしています。
ネットの台頭により、今や何かを調べたり情報を得る際には、まず書籍を開くのではなく、ウィキペディアや「まとめサイト」を使えば、いくらでも無料で調べることが可能になっており、ビジネス書を買うことは、とてもコスパの悪い行為になっていること。

  権威者や著名人でない「身近な存在」の執筆者が多数生まれたこと。Amazonに代表されるレビュー機能により誰でも書評家になり得る時代となったことから、今や書籍や著者に対し特段の畏怖や尊敬の念を抱く人は減少していること。
  何より(粗製乱造とまで著者は言ってはいませんが) タイトルで煽るだけ煽るも、内容も乏しい書籍が多数出回り出し、結果として読者がそっぽを向き始めたことにあるのではないかと指摘をしていますが、全く異論のないところかと思います。

  私見ですが、最近のビジネス書は、とにかく無名の書き手が多い。巷の中小企業経営者に書かせる書籍が非常に増えている。大手出版社名を名乗るも、実際の出版は子会社や関係会社など、明らかに自費出版と思われるものが増えている点を感じています。

  それでは今後のビジネス書はどうなっていくのでしょうか?
著者は ①予備校文化の拡大(カリスマ予備校講師が書き手となる) ②新しい女性著者が必ず現れる ③本格派の時代 ④電子書籍のさらなる拡大とその先 ⑤ビジネス「書」作家の消滅 という5つのキーワードを挙げ、本書を締めくくっています。

  個人的には、今後も凋落は続き、ビジネス書というカテゴリーは相当縮小していく。過去に発表された原稿を引用したものではなく純然たる書下ろししか支持されなくなる。所有するステイタス(本格的・普遍的で、ある程度人に見せびらかしたい体裁)のもあるものしか書籍化はされない。紙としての機能(書く、折る、切る)が必要とされるもの以外はほぼ電子書籍化する。

  と考えますが、皆さまはいかがでしょうか。 


                                         中央公論新社 2017年8月10日 発行

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【概要】

  2005年、愛知県で初めて設立されたNPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」。http://www.momobank.net/
  2007年より融資事業を開始。法人や個人あわせ約540の出資者を集め、その後10年間で地域の課題解決に挑む60の事業者に融資を実施しています。その金額は1億4,000万円。その間、貸倒となり回収不能となった先は一件もないそうです。

  またNPOバンク設立の8年後の2013年には、更なる事業者支援のための施策として公益財団法人「あいちコミュニティ財団」http://aichi-community.jp/ を立ち上げています。

  本書の著者はそんなNPOや財団の代表理事を務める木村氏。
「 地域の人々から集めたお金を、地域をよりよいものにするための事業に生かす。」
そんな「お金の地産地消」の必要性と可能性について実例を通じ綴った1冊となっています。

【所感】

  母子家庭に育ち奨学金を得て大学を卒業。日本を元気にするような情報発信をしたいと新聞記者を志すも頓挫。地元に帰って「地域貢献」を理念にあげる名古屋の地方銀行へ就職をしますが、金融機関の実態を知るにつれ、自身の仕事に疑問を持ち始め、わずか1年半で退職をしてしまいます。
 
  なぜそんな彼が今のような仕事に携わるようになったのでしょうか?
詳しくは是非本書をお読みいただきたいのですが、とある研修プログラムを通じ、一つのNGOと出会ったことが彼のターニングポイントになったようです。

    さて6章からなる本書。1章ではNPOバンクや財団の概略に触れ、2章ではNPOバンク設立までの経緯と実際の運営内容について記されています。3章では財団設立の経緯、4章では著者達が融資や支援を実施しているNPO等に求める運営の姿勢などについて触れています。5章では支援先8事業者に関する事例紹介。そして終章ではこれからの活動展開について思いの丈が綴られています。

  NPOと聞くと、なんとなくボランティア活動のイメージが強く、果たしてそれを主宰して食べていけるの?そもそも非営利じゃないの?と、あまり知識のない方(私自身もそうですが)は思いがちですが、そんな素朴な疑問への回答も含め、NPOバンクや、財団の活動実態について丁寧に記されています。
 
  個人的に興味深く読んだのは、実際の融資審査の姿勢です。融資上限は500万円。審査に立ち会うのはなんと30名もの理事やボランティアスタッフ。
  資金借入申込書に加え、事業内容説明書を提出してもらい審査を進めるそうですが、なんと88項目ものチェックリストがあるそうです。
  同バンクの運営資金は、基本的には、彼らが「志金」と呼ぶ支援者からの出資金や寄付。自身の資金ではないだけにきちんと説明責任を果たすためにも、徹底した審査を行っているそうです。

  また支援先もNPOだから儲からなくてもいいわけではなく、持続するためには当然一定の収益や継続した信金調達の術を確保しなければ立ち行かないのは当たり前。
  そこまでの厳しい姿勢で臨むことで、結果同NPOバンクが融資をすることが、一般の金融機関融資の呼び水となったり、中期経営計画を見直すきっかけともなっているようです。10年間で60の事業者への融資というのは決して多い数ではありません。しかしここまで手間をかけていれば、その数にも納得です。それゆえ貸倒が0件という実績を生んでいるのでしょうね。

  他にも示唆に富んだ事例に満ちた本書。 地域のお金を地域で使うとは、ある意味その調達や使途をより明確にしていかなければなりません。それゆえお互いが真剣にその使い道を考える。そんな意識革命こそ、これからの我々に必要なもの。そんなことを感じた1冊でした。  
  

                                        英治出版 2017年7月10日 第1版第1刷 


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  奇しくも二週続けてインバウンド関係書籍となってしまいますが、興味深い内容ですので、是非お付き合い下さいませ。

【概要】

  大分県にある湯平温泉。かつて療養温泉地では「西の横綱」と呼ばれ九州では別府に次ぐ温泉地として非常に栄えた地域だったそうです。
しかし近隣にある湯布院の目覚ましい台頭とは逆行するように、衰退の一途をたどっていきます。

  本書の著者はそんな湯平温泉にある小さな旅館 山城屋http://e-yamashiroya.jp/ の当主。
築50年、客室はわずか7室。料理長がいるわけでもなく、何か際立った特徴があるわけでもありません。

   しかしそんな同館は、世界各国から連日観光客が押し寄せ、客室の稼働率はほぼ100%。世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」https://www.tripadvisor.jp/Hotel_Review-g1023445-d1674608-Reviews-Yamashiroya-Yufu_Oita_Prefecture_Kyushu_Okinawa.html  の宿泊施設満足度ランキング「日本の旅館部門2017年」で全国第三位に選ばれる等、高い評価を得ています。
  
  なぜそんなことが可能となったのでしょうか?
元信用金庫マンにして、奥様の実家を継いだ著者が語るこの11年間の取組み。小さな家族経営の旅館でも世界を相手にビジネスは出来る。そんな勇気とアイデアに溢れた一冊となっています。

【所感】

  同館が外国人受入を始めたのは、ほんの些細なきっかけでした。
たまたま著者の知人に、韓国の旅行雑誌に九州の温泉地を紹介するコーディネーターを務めてみえる方がいらしたそうです。そこで大分県の温泉地が紹介されることとなりました。

  別府、湯布院に加え、残り一か所の温泉地を探しているとの情報を聞き、著者は湯平温泉も是非にと名乗りをあげます。両温泉地に比べ、規模や知名度が劣るゆえ、さほど期待もしなかった著者ですが、完成した旅行誌の紙面を見て破格の扱いに驚きます。

 下手に開発をされなかったゆえ、残されていた古き良き日本の温泉街の風情。その様子が編集者たちの心を掴んだのでした。 この一件を契機に、同館を訪れる外国人が増え始めます。そして活路を見出した著者は様々な工夫を凝らします。

   〇ホームページを四か国語対応に
  〇ネット予約は、半年~1年先の長期対応
  〇無料Wi-Fiを設置
  〇主要な空港から最寄り駅までの、案内動画を作成
  〇マナーの違いも動画で説明
  〇休憩室には、「ワンピース」や「ドラえもん」の英語版コミックを備え付け etc

  また外国人受入れへシフトすることは副次的な効果を生み出します。
来館者が平準化することで、同館は毎週水木曜日を休館日としています。しかも一般の旅館では書き入れ時である、お盆や正月、GWも休んでしまいます。

   小規模な家族経営の旅館が陥りがちな過重労働から解放されることで、余裕が生まれ、その余裕ある気持ちで来館者へ接することが顧客満足度を高め、さらにリピーターを増やすという好循環を生み出しています。

   仔細は是非本書をお読みいただきたいのですが、トライアンドエラーを繰り返しつつ、徐々に外国人受入れのノウハウを積み重ねていく様、小規模な旅館にもたらされた変化と恩恵。興味深く読ませていただきました。
  
  個人的に印象に残ったのは、外国人受入れは気苦労が多いのではないか?とよく聞かれる問いに対する著者の言葉でした。
  「(正直さほど大きな問題を感じたことはない)むしろお互いにコミュニケーションをとろうと努力するため、より深い関係性が生まれることのほうが多いような気がする。」と。

  「不自由さが、逆に信頼を深める。」
今後、日本が観光立国を目指す上で、非常に示唆に富んだ言葉ではないでしょうか。

                                               あさ出版 2017年7月18日 第1刷

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