河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

2017- 5-21 VOL.204IMG_0436

 気軽に読める書籍の紹介が続きましたので、今週は久しぶりに読み応えのある1冊をご紹介させていただきます。

【概要】
 
 -コンサルティング-

  デジタル大辞泉によれば「専門家の立場から相談にのったり指導したりすること。また企画・立案を手伝うこと。」 とあります。

  いまや「コンサルティング」とは、コンサルティング営業や不動産コンサルティング等の呼称があるように、業種や職種を問わず一般的な用語として定着しています。

    単なる商品販売やサービス提供にとどまらず、顧客の課題や問題解決に一歩踏み込んだ姿勢が求められている昨今、いわゆる経営コンサルタントと呼ばれる職業以外の方でも、高いコンサルティング能力が問われていることには、異論のないことと思います。
  
  本書著者は、MITスローン経営大学院名誉教授であり、組織心理学の権威にして、組織文化や組織開発のコンサルタントとして、数多くの企業支援を行ってきたエドガー・H・シャイン氏。
 
  近年、組織が直面する問題は複雑かつ多様。そして不確実であり、外部者がいくら診断をしたところで、問題の本質をとらえることは非常に困難であり、また仮に有効な解決策を提示出来たとしても、当事者が実践をしないことは往々にしてあること。
  
  長年、コンサルティングの世界に身を置く同氏が、そんな背景を踏まえ本書で提唱するのは「謙虚なコンサルティング」。
  その要諦は、「コンサルタントは何を話すのか?ではなく、いかにクライアントに問いかけ、聴くのか?」にありました。

【所感】

  7章からなる本書。第1章のタイトルは「コンサルタントなのに、どうしたらいいのかわからない」。
著者自らを振り返り、「自身はクラアイントにとって本当に有益なコンサルタントでありえたか?」との自問から始まります。
   50年にも及ぶキャリアを持つ著者ですら、そんな思いを抱くのは、冒頭でも述べた通り今や、組織が直面する問題は複雑かつ多様そして不確実であり、安易に解を出すことが非常に困難になっているという事実。

  そしてそんな著者が辿り着いたのは、これまでとは全く異なる関係をクライアントと結ぶこと。
その前提は、クライアントに対し「なんとかして役に立ちたい」と思って全力を尽くすこと。誠実な「好奇心」をあふれんばかりに持つこと。適切な「思いやりのある」姿勢を持つこと。
 
  そのためには、クライアントとの距離感が大切になります。
著者はクライアントを含む人間関係の在り方に4つのレベルを掲げています。

  レベルマイナス1 - ネガティブな敵対関係、不当な扱い
  レベル1 - 認め合うこと、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係
  レベル2 -  固有の存在として認知する
  レベル3 - 深い友情、愛情、親密さ

 通常のビジネスの場ではレベル1であることが大半。かといってレベル3では深入りをしすぎ客観性を欠きます。
そこで著者はレベル2の関係を結ぶことを推奨しています。レベル2の状況とは、ほどほどの距離を保つ必要のある個人ではなくなり、もっと個人的な話の出来る唯一無二の相手となることだそうです。

 それはクライアントを一つの独立した個と認め、クラアイントに関心を持ち、真摯に話に耳を傾けること。
聴き方には、「自己中心的に聴く」、「内容に共感しながら聴く」、「人に共感しながら聴く」の三様があり、質問の種類には概念に関する質問(基本的に「なぜ」と問うこと。)、感情に関する質問(相手が「それについてどのように感じたか」を基本に問うこと)、行動に関する質問(相手が「どんな行動をとったか」を問うこと)の3種類があると説きます。

 そして著者の成功例、失敗例を交えた25のケーススタディを通じ、その仔細につき分かり易く解説がなされています。何より素晴らしいのは、極めて平易な言葉で記されながらも、絶えず我々に問いかけをするような語り口。
これは著者のみならず監訳者と訳者の力量もあってのこと。読み進める内、著者の投げかけに知らず知らず自問自答している自分に気付きました。

 コンサルタントと言わず、あらゆるビジネスパーソン。いやいやビジネスパーソン問わず、様々な方に示唆を与えてくれること間違いなき1冊。なぜなら人は皆、他者との関係性の中でしか生きられないから。お薦めです。



                                           英治出版 2017年5月15日 第1版 第1刷

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【概要】

  「出勤・退勤時間は自由」「休みたければ会社に連絡せずに休んでOK」「有給休暇も事前申請不要」「嫌いな作業はやらなくてよい」 etc

  常識やぶりの取組みで、様々なメディアがこぞって取り上げる ㈱パプアニューギニア海産 http://pngebi.greenwebs.net/ 
同社は大阪にある、総員11名ほどの小さなエビ加工会社です。

本書は、同社創業者のご子息にして工場長を勤める著者による一冊。

  まさに 「フリースケジュール」とでも言うべき同社の働き方は、いかにして生まれたのか。実際にはどのように運営され、どのような効果をもたらしているのか。課題や問題はないのか。
  5章にわたり、著者の思いと同社の様々な取組が明かされています。

【所感】

  同社は、元々は宮城県石巻市にあった会社でした。ご多分に漏れず、同社も東日本大震災で被災し全てを失います。福島第一原発事故もあり、東北での再建を断念した著者は取引先の計らいで、大阪府中央卸売市場内で事業の再興を決断します。

  被災地を離れた同社には、行政からの支援は一切なく、二重債務を抱えてのスタート。
不慣れな地で、パート社員集めに苦労をし、やっと集めたものの離退職者も絶えず、職場に二つも三つも派閥の出来てしまう始末。

  パートさんとの面談を繰り返す中で感じた「誰もこの会社のことを好きではない」との確信が、著者を突き動かします。子育てや介護など時間的な制約の多いパートさんたちにとって働きやすい職場とは、どんな職場なのか。著者のたどり着いた結論は「好きな日に休める会社」。

   その原型は家族経営の会社にありがちな親族の働き方にありました。
親族に対し子育てや私生活を優先した出勤形態を可能としているのは、親族ゆえにお互いの状況が分かっており、互いに融通しあいながら仕事を進めることが出来るから。そしてその根底にあるのは双方の信頼関係。
親族に対しては当たり前に行われているそんな雇用慣行を、普通のパートさんにも取り入れてみること。そんなことが「フリースケジュール」へと繋がる発端だったようです。

  具体的な取り組みや、ルールの決め方など、仔細は是非本書をご参照いただきたいのですが、一連の取組が同社にもたらしたものは、品質・作業効率の向上と、離職率・人件費率の低下でした。

   会社の規模が小さいから。パート社員だけを対象にしているから。冷凍(エビ)の加工を主業務としているから。同社の特殊性ゆえに、このような働き方が可能なのだとの批判がない訳ではないそうですが、まずはこのような取り組みが実際に行われているのだという事実は、十二分に称賛に価するものだと思います。

  「働き方革命」なるものが声高々に叫ばれつつも、具体的な施策の提示がほぼされてない現状に一考を与えてくれる本書。

 「 自由にすることが重要なのではなく、自由にする信頼関係を作る工程が重要なのだ。」
示唆に富んだ本書ですが、著者のそんな言葉が個人的には一番印象に残った一冊でした。



                                   イースト・プレス 二〇一七年四月二四日 第一刷発行

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【概要】

    GW中(もうおしまいですが)ということで、今週も気楽に読める一冊を。黄色い背景に太字ゴシックという印象的な装丁が目を引きます。

  巷にビジネスモデルに関する書籍は多数あれど、大半は実践的な内容からはほど遠く、中小企業経営者や個人事業主が、参考にするには難しいと語る著者。

  いくつかの事業を立ち上げ、自らをビジネスモデルアナリストと称する著者による本書は、1日15分、ペラペラめくるだけで、自社オリジナルのビジネスモデルを次々思いつく発想法が身につくという画期的な書。

 3章から構成され、1章では著者の考えるビジネスモデルの定義について、2章ではビジネスモデルの発想法、3章では実例に基づくビジネスモデルの公式として50のケースが紹介されています。

  本当に誰でも簡単にビジネスモデルを思いつくことが出来るようになるの?
眉唾ではないの?そんな思いで手に取ってみた本書です。

【所感】
 
  著者も語る通り、本書の肝は3章であり、本書活用のためには、とにかく毎日15分、50の公式のどれかを読んで、紹介された事例に、何か違うものを当てはめてみる習慣を読者が自身に課してみること。

  アイデアの発想に必要なことは、すでに世にあるものを掛け合わせる(既存のもの×既存のもの=今までにないもの)ことであり、50の公式は、この組み合わせのパターンを実例に基づき整理したものと言えます。

 その公式も決して難しいものではなく、「待ち時間に価値を提供する」「おひとりさまを意識する」「とことん手間を省く」など平易な言葉で記されており、抵抗感なく読み進めることが出来ます。 
 
  結局、これは武道やスポーツで言う「型の習得」ですよね。
どんな武道やスポーツでも、いきなり出来るようになることはまずありません。基本となるパターンをいくつか身に着け、徐々にそれを応用しながら、自身のスタイルを築き上げていきます。

  ビジネスも同じで、いきなり優れたビジネスモデルを発案し、大成功を収める経営者などほぼ皆無であるように一見華々しい成功を収めている経営者でも、その成功の前に何百何千というアイデアの発想があるのだと著者は説きます。そこまでの資質を持たずとも、誰でもビジネスモデル発想力を身に着けることの一助となる本書。

  派手な装丁には、少々たじろぎますが、内容は極めて真っ当。日々地道に考え、積み重ねることの大切さを改めて教えてくれた一冊でもありました。


 
                                       自由国民社 2017年4月22日 初版第一刷発行

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