河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

2016- 8-20 VOL.165IMG_8611

【概要】 

  少し前に、本ブログで取り上げさせていただいた「トヨタの強さの秘密」
同書が明かしたのは、トヨタの利益の源泉は製造過程ではなく、設計過程にこそあるというものでした。
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本書は、著者こそ違えど、設計過程の要とも言える「原価」「原価低減」に踏み込んだ一冊。
トヨタ出身の著者が、知られざる「トヨタの原価」について記しています。
 原価低減というと「ムダ取り」が連想されますが、製品開発から生産までの流れを①企画・設計 ②各工程での詳細設計 ③量産 といった三段階で見た場合、「ムダ取り」とは③の段階。
   しかしトヨタが最も重視するのは①の段階、そこで行われているのが「原価企画」です。
  トヨタにおける仕事の基本姿勢や原価低減の進め方を紹介した後、この「原価企画」の概要を紹介するとともに、「自工程完結」「主査制度」「大部屋方式」など特徴あるトヨタの取組にも触れています。

【本書のポイント】

 〇利益=売価(市場価格)-原価

  原価に利益を乗せるのではなく、売価から利益を引いて原価を決定するという発想が大切。
 
 〇原価企画

  企画から設計、生産へと川上から川下へ工程が進むほど原価低減の余地は小さくなる。
  工程の早い段階で原価をつくりこむことが利益確保につながる。   

 〇原価低減

  全社員で取り組め、努力と工夫で実現できる。間接部門にも利益貢献の意識を持たせることが出来る。
     
【所感】
          
  数多く出版されているトヨタ生産方式を扱う書籍の中で、ジャンル的には、最近特に注目されているTPD:Toyota Product Development(トヨタ流製品開発)の領域を扱ったものとなっています。

  メーカーであり、自社で企画した製品を販売するのだから、こんな取組が可能なのだろうと、多くの中小企業経営者の方は思うかもしれませんが、トヨタといえど車種やグレードで販売価格は決定されており、正確な販売数予想など不可能、その中で確実に利益を確保するためには原価低減は不可欠という考え方は、業種や事業規模は問わないものかもしれません。
  
  職業柄もありますが、個人的に関心をもったのは、経理の仕組みと原価算出の取組でしょうか。
原価低減取組みのスタートは、商品別の原価を正確に知ることであり、そのためには日々のデータ収集と蓄積が欠かせません。データ収集の最前線は現場。
トヨタでは企業会計担当、原価管理担当と経理部を二つに分け、現場での原価教育を徹底すること。手間やコストをかけさせずに、いかに正しいデータの収集を行うかに尽力をしているとのことです。

  また原価計算においても、①経済性検討 ②内外製検討 ③損益分岐点 ④差額原価・絶対原価などの使い分けなどについて言及しており、興味深いものでした。

   なかなかこういった業務に時間や人材が割けないのが、多くの企業の現状かと思いますが、ここは不可欠な部分であり利益の源泉。その価値を理解し、粘り強く仕組みを定着させることの重要性を改めて認識した次第です。
 
   さて最後に本書掲載の原価にまつわる凄いエピソードを紹介し、今週は締めくくりたいと思います。
トヨタの主要な部品供給メーカーであるデンソー。とある部品の供給をデンソーに頼らざるを得ないも、その価格が適正か分からず、デンソーも原価明細を提出してこない。
  そこで価格交渉が出来ないのは、同部品を内製化するする技術、ノウハウがないからだという結論から、豊田市内に広瀬工場を建設し、設計、内製。その結果をもとにデンソーに納入価格見直しを認めさせたことがあったそうです。原価を知るための徹底ぶり。こんなところにもトヨタの強さを垣間見た思いがしました。
          

2016- 8-13 VOL.164IMG_8594

【概要】

  2014年に上程され好評を博した「ビジネスモデルの教科書」
本ブログでも紹介させていただきましたが、100社以上の実例をひもとき31パターンのビジネスモデルを解説した画期的な内容でした。

  続編ともいうべき本書も、前著同様、10ジャンル20のビジネスモデルが紹介、解説されています。

  「製造小売」「フランチャイズ」「定額制」など我々もよく知る事例の他に、吉本興業やAKB48などを「プロフェッショナルサービスファーム」と称し、一つのビジネスモデルとして定義するなどユニークな分析も光ります。

  また前著同様に、各ビジネスモデルについて「モデルの概要と例」「価値創造過程」「落とし穴」「まとめ」という体裁での編集も踏襲されており、読み易いレイアウトとなっています。
  
  加えて本書では、ビジネスモデルの定義、ビジネスモデルが重要とされる背景について詳しく触れるとともに、読者自らがビジネスモデルの分析や構築を行うための方法についても言及しており、前著に比べより実践的な内容となっています。

【本書のポイント】

 〇ビジネスモデルは「ある業界を前提とした競争優位獲得を目的とした仕組み」であり、戦略と業務プロセスの橋渡しをするもの
 〇ビジネスモデルとは「仕組み」であり規則性、再現性があることが不可欠
 〇「仕組み」とは「構造」+「筋立て(ダイナミズム)」 
 〇「仕組み」はいくつかの「モジュール(部分的な仕組み)」に分解することで理解が深まる

【所感】

  上級編に相応しく、充実の内容でした。

  馴染み易いのは、やはり具体的なビジネスモデルの紹介や解説のパートですが、第一部で語られるビジネスモデルの定義や解説を丹念に読み込むことが、本書を理解する上では不可欠との感想をもちました。

  著者は我々がビジネスモデルを理解、活用する上で、様々な企業のビジネスモデルの収集を勧めています。
経済番組やビジネス雑誌、実体験を通じ、我々が様々な企業の成功事例に触れる機会は少なくありませんが、成功の真因に、ビジネスモデルを見出すためには、前提となる相応の知識が必要というのがその理由です。

   さて個人的に強く印象に残ったのは、日本人固有の思考がビジネスモデルの思考を阻害しているというくだりでした。
 「良いものを作れば勝てる」「自前の技術で勝つ」という過度の技術偏重、そしてその精神性への指摘。

 「日本人には、個人の技量や頑張り、精神性に依存して戦いに勝とうとする思考パターンがあり、頑張っていないと後ろめたい反面、頑張っていれば負けても「頑張ったのだから、しょうがない」で済まされてしまう。また個人でなく複数人が連携プレーをする場合にも、阿吽の呼吸によって場当たり的に連携して勝とうとうする傾向がある。」とし、続けて第二次大戦における日本軍と米軍の空中戦を引き合いに、戦闘方法を仕組み化し、その仕組みをブラッシュアップするマネジメントをとった米国の事例が紹介されており興味深いものでした。

  日本企業が世界に進出する中、日本国内と同じような環境は望めず、日本人特有のメンタリティやコミュニケーション方法に依存できなくなる現実に向き合い、仕組みによって勝つことを学ばなければ、もはやグローバル市場では勝てません。

  ビジネスモデルにつき理解を深め、自社のビジネスその活用につき真摯に考えること。
大半のビジネスパーソンにとって、今一番大切なことかもしれませんね。そんな学びの一助となる1冊でした。

  

2016- 8- 6 VOL.163IMG_8491

【概要】

 〇総人口は1億4,000万人
 〇平均寿命は95歳
 〇経済成長率は4.5%
 〇国の債務はGDPの50に%まで削減
 〇フォーチュン500に名を連ねるグローバル企業の1/4は日本企業
 〇英語が公用語
 〇移民受入が正式決定され、総人口に占める在日外国人の割合は6%
 〇女性の就業率は85%を超え、企業の役員の半数は女性
  
  他にも、ビジネスやイノベーション、クリーンエネルギーなど、様々な分野で世界トップを走る・・・・・ それが2050年の日本。
 
  本書の著者であるクライド・プレストウィッツ氏は、レーガン政権時に商務長官特別顧問を務めた人物。
1980年代の日米貿易摩擦時には「ジャパン・バッシャー(日本叩き)」として、名を馳せた対日交渉担当官でした。

  そんな日本通の著者の手による本書。
はたしてこれは、本当に実現可能性の高い近未来予想なのでしょうか。それとも単なる唐無稽な夢物語に過ぎないのでしょうか。


【本書のポイント】

   膨大な海外資本投資、グローバルサプライチェーンにおける存在、食や芸術、文化、礼節という日本の豊かな価値観、地政学的な位置。あらゆる点で日本が衰退していくことは、米国のみならず世界の利益を損ない、世情を不安定な状況に陥れてしまう。日本の復活には世界の利害がかかっている。


【所感】
 
   2017年5月に創設された「特命日本再生委員会」の提言が功を奏し、2050年の日本は目覚ましい復活を遂げたというストーリー仕立で、全編は構成されています。
  扱っているジャンルは、安全保障、女性、英語、イノベーション、エネルギー、日本型経営、行政と多岐にわたります。
各ジャンルごとに1章を割き、本書が執筆された2015年前後の日本の現状を交えつつ話が展開されていきますので、はたしてどこまでが事実で、どこからかフィクションなのか、正直混乱する部分がなかったわけではありません。
  丹念な現状分析や海外事例なども踏まえて、盛り込まれた提言は、ユニークで興味深いものですが、過去に様々な識者による日本再生の提言と重なるものも少なくありません。
 
  今の日本に一番足りないのは、「提言」ではなく、「実行」ではないでしょうか。

  さすがに本書も、提言を具体的にどう実行して、2050年を迎えたのかまで踏み込んだ内容にはなっていません。そこが本書内の数々の提言を今一つ物足りないものにしている感もありますが、あくまでもフィクションであり、そこまで求めるのは酷なのかもしれませんが。
 

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