河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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【概要】

  北九州の地で、サロン6店を中心に事業展開を行っているBAGZY http://www.bagzy.net/ 
  創業から33年間、増収増益を続ける美容院です。2009年、サービス産業生産性協議会「ハイ・サービス日本300選」、2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」を受賞するなど、業界外からも注目を集める同社。
同社代表である久保氏への講演依頼はひきもきらないそうです。
 
  厚生労働省による昨年の衛生行政報告によれば、平成27年3月末現在の全国の理容施設数は12万6546件、美容所は23万7525件。
新たに理・美容師免許を取得される方が、年間に約4万人もいる一方で、業界から去る人たちが10数万人とも言われる過酷な業界でもあり、ブラック業種と揶揄されることも少なくありません。

  そんな業界にありながら、なぜ同社は躍進を続けることができるのか。
 本書は、そんな久保氏が明かす同社経営の秘訣とリーダー論です。

【所感】

  本書は大きく2部で構成されています。前半はタイトルにもなっている「幸せにするべき5人の人」について。
こちらは主として同社における取組を中心に描かれています。後半は、リーダー論について。こちらは久保氏の個人的な体験や思いを中心に描かれています。

    さて、本書タイトルにもなっている「幸せにするべき5人の人」とはいったい誰なのでしょうか。
本書では①「働く仲間」 ②「お客様」 ③「かかわりのある業者さん」 ④「地域の人たち」 ⑤「家族」の順に挙げています。その中で最もページを割いているのは、「働く仲間」について。

  「縁あって入ってくれた社員とは一生つきあう」

  そんな思いで、行われている様々な施策。
ややもすれば徒弟性の名のもとに、まともな育成プランすらないサロンが多い中、40もの段階があるキャリアパスプラン。社員の間に過度の競争を持ち込まない配慮。独立開業を応援し、自店舗近所での開業も大歓迎。ライバルが増えたと考えず、仲間が増えたことを素直に喜ぶその姿勢。業種を超えて、参考になるエピソードが多々盛り込まれています。

  個人的に一番印象に残ったのは、後半のリーダー論で語られる、同氏の師とのエピソードでしょうか。
自身の店を開くも、閑古鳥がなく日々の中、氏はアメリカに渡ります。それは日本で講演を聞いたヴィダル・サスーン、ロサンゼルス店のトップだった喜田修二さんに学ぶため。
なんと喜田氏の帰路の飛行機便を調べ同乗。無理矢理弟子入りをしてしまったそうです。

  そんな氏に喜田氏が語ったのはこんな言葉だったそうです。
 「技術はビジネスの手段だ。お客様をハッピーにして、ビジネスをするための手段なんだ」「だから最高の技術を持たないとビジネスはできない」と。 プロとしてあるべき姿を端的に表した言葉ですよね。

  豊富なエピソードと平易な語り口で一気に読めてしまいますが、示唆多き1冊。
どなたが読んでも必ず、一つや二つは琴線に触れる部分があるのではないでしょうか。

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【概要】
 
 例年この時期になると話題になるのが、流行語大賞。
2013年の流行語トップテンに「アベノミクス」という言葉が入ったことをご記憶の方も多いのではないでしょうか。

 アベノミクスとは、①大胆な金融政策 ②機動的な財政政策 ③民間投資を喚起する成長戦略 のいわゆる「三本の矢」を柱とする経済政策のことであり、皆さんもよくご存じのことかと思います。

  2013年末、エコノミスト懇親会で、日経平均を大幅に押し上げたアベノミクスの成果を、得意満面に語る安倍晋三首相。
本書は、その発言を聞きながら、「危ないな」と著者が呟くシーンから始まります。
  なりふり構わずデフレ脱却を図る政策は、意図的にバブルを作り出そうとするものであり、そこに危険な兆候を感じた著者が発したものでした。

バブル景気から早30年。徐々に、皆の記憶から薄れる中、改めて「バブル」とは何だったのかを問おうとする一冊。バブル時代に日本経済新聞の証券部で記者を務めた著者が、丹念に時系列で記しています。

【所感】

  本書は、「胎動」、「膨張」、「狂乱」、「清算」という4章で構成され、1971年の三光汽船のジャパンライン買取事件から、1992年、公的資金導入を画策するも、幻と終わった宮沢政権時代あたりまでが記されています。

    一般的にバブル経済というと、1985年のプラザ合意あたりから描かれることが多いのですが、本書では、もう少し前の時代から始まります。
戦後の高度経済成長期が終焉を迎え、世界経済の動きに否応なしに巻き込まれようとする中、金融行政を含め従前の日本的システムを維持しようとする軋轢が生んだ、象徴的なエピソードとして挙げられている三光汽船のジャパンライン買取事件と、幻に終わった野村證券とモルガンスタンレー合弁による信託会社の誕生。

  一見バブルとは関係ないように思える二つのエピソードの中に、後のバブル経済につながる端緒があったとの見方は、非常に興味深いものでした。

   〇レーガノミクス 〇NTT株式上場 〇財テク 〇リクルート事件 〇イ・アイ・イ・インターナショナル 〇秀和
   〇小糸製作所事件 〇イトマン事件 〇損失補填  etc

  様々なキーワードが登場する本書。 
改めて読めば、なぜこのようなことが起こり得たのか首をかしげざる事件も少なくありませんが、一億総狂乱ともいえる当時の世相下では、一部の良識者の唱えた警告や提言すら、簡単に吹き飛んでしまったことは、想像に難くありませんでした。

  本書帯には、日本を壊した「真犯人」は誰か?とのコピーがありますが、本書はその解を与えてくれるものではありません。ただ個人的に一番印象深く残ったの興銀(日本興業銀行)にまつわるエピソードでした。
  同行は、戦後から高度経済成長期まで、日本経済を牽引した立役者であり、都銀、信託銀行、外長信銀、地方銀行のヒエラルキーの頂点に立つ銀行でした。
名門中の名門と呼ばれた同行ですら、自行の発行する金融債ワリコーを担保とした不正融資に加担をするところにまで、転落していく異常さ。
 
  著者は、「バブルとは、グローバル化による世界システムの一体化のうねりに対して、それぞれの国や地域が固有の文化や制度、人間の価値観を維持しようとしたときに生じる矛盾と乖離であり、それが生みだす物語である」 と記していますが、まさに 過去の成功体験と強烈なエリート意識があったゆえに、環境変化に対応出来ず消滅していった興銀こそ典型的な事例ではなかったのかと個人的には感じました。

  時系列で記されつつも、個々のエピソードは比較的独立した内容になっていますので、つまみ読みをしても十分に読み応えのあるものとなっています。

  学術的に、バブル経済とは何かを検証する本ではありませんが、当時第一線の記者が見たバブルの実際。
とても興味深いものでした。
 

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   今週は異色の一冊をご紹介させていただきます。
タイトルだけを読んでしまうと、とてもビジネス書には思えませんが、なかなかどうして興味深い一冊にまとまっています。

【概要】

  誰もが知っているイソップ寓話「アリとキリギリス」。
夏の暑い時期にせっせと冬の食料を蓄えるために働くアリ。それを傍目にバイオリンを弾きながら歌い過ごすキリギリス。
やがて冬が来てキリギリスは・・・・・。同寓話は「将来を見すえた勤労と貯蓄」の大切さを啓蒙した物語でした。

  記されたのは、紀元前ともいわれるイソップ寓話。
長らく美徳とされてきたこの「アリ的思考、アリ的価値観」は、現代に生きる我々にとって、もはやそぐわなくなってきているのではないか。「キリギリス的思考、キリギリス的価値観」こそ、今必要とされているのではないか。
  イソップ寓話を引き合いに、そんな命題に迫った一冊。
ベストセラーとなった「地頭力を鍛える」を記した著者がユニークな持論を展開しています。

【所感】

  アリとキリギリスの思考と価値観の違いを大きく3つあげ、その対比を軸に本書は構成されています。
 ①「貯める」アリと「使う」キリギリス ②「巣がある」アリと「巣がない」キリギリス ③「二次元」のアリと「三次元」のキリギリス
③が少しわかりにくいかもしれませんが、羽があり飛べるキリギリスを三次元に倣え、行動の自由度として表現しています。
それぞれは「フローとストック」「閉じた系と開いた系」「固定次元と可変次元」という概念を指しており、我々が普段体験するエピソードを50に及ぶ小見出しとヒトコマ漫画で紹介しながら、分かり易く解説をしています。
   
    いやいや~面白いですね~。  基本的に、様々なものを「持つアリ」と「持たないキリギリス」。
両者の比較を巧みに展開しており、あっという間に読めてしまいました。

  本書は、「アリ的思考、アリ的価値観」と「キリギリス的思考、キリギリス的思考」双方の対立を促すものや、優劣を競わせるものではなく、相互理解を深めることを意図しているように感じました。
  世の中は、アリとキリギリスの双方がいて成り立つものであり、その比率は現在1:9くらいではないかと著者は推測をしています。ただ今後はAIの進展で、定型業務や反復業務を得意とする「アリ的思考、アリ的価値観」の領域は徐々に侵食をされていく可能性が高く「キリギリス的思考、キリギリス的思考」の割合を高めていく必要は示唆をされています。

  タイトルや構成含め、読み易くも考えさせられる一冊。お薦めです。
 

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