河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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【概要】

   大阪は道頓堀、ナイトクラブの専属バンドのドラマー、トラック運転手等を経てソニー子会社の地方勤務社員としてサラリーマン生活をスタートした著者。
  後にソニー本社へと転籍し43歳で渉外担当の職につきます。担当業務は、国際標準化。

  デンソーの開発したQRコード。ソニーの開発した非接触ICカードフェリカ(JR東日本のSuica)。マイクロソフトの文書フォーマットOOXML。東京電力の超高圧標準化電圧UHV。

  欧米の列強を相手に数々の国際標準化規格を勝ち取ってきた著者が語る交渉の記録とその極意。
 
  非エリートの叩き上げ社員が、厳しいビジネス現場で結果を出し続ける痛快さ。その一方で非エリート社員故に味わう不当とも言える人事への抵抗や、1997年に過去最高益を計上も以降は低迷を続けたソニーの凋落ぶりも併せて描きつつ興味深い1冊に仕上がっています。

【所感】

  5部15章からなる本書。第1部では、著者が国際標準化交渉人となった経緯。標準化規格の概要。2章~4章では先ほど挙げた、QRコードやフェリカなど実際に国際標準化の取得に成功した経緯や成功要因について記されています。

 そして最終章の5章では失敗しない交渉のコツとして、交渉成功の22箇条や交渉手順のフローチャートを紹介しながら交渉のポイントについて整理、統括をしています。

  ややもすれば過度の技術信仰に陥りがちな日本。「良い技術や製品を作っていれば、自ずと市場に受け入れられていくのだ。」もはやそんなことが幻想であることは、現在の日本の家電メーカーの現状を見れば明らかですよね。

  著者も、(国際)標準化の実務では、その技術の理解やプロセスの理解よりも重要なことがあると語っています。それは、「交渉、会議、闘争」とそれに伴うロビー活動。
標準化や知財権は技術をベースにしたルール制定活動であり、人と人との交渉が必要となります。
  高度な交渉力には、人や組織の行動に関する深くて広い知識と経験に加え、社会や文化の違いに関する理解が欠かせないとしています。
  そして交渉とは理詰めで議論するディベートではなく、もっと人間の根幹的な部分、すなわち自分の欲と相手の欲とのぶつかり合いなのだと喝破をしています。

    はたしてそんな交渉力はどうすれば身につくのか。
著者は本を読んでもセミナーを聞いても、そんな力は身につかない。自身が企業や国家の代表として独力で交渉に当たるなどの経験を通ずるしかないのだとしています。それでも我々に一つの示唆として自身の経験則をまとめ提示をしてくれていることは、先ほど紹介させていただいた通りです。

  さて、標準化決定をした機関の上位機関を口説く。競合する国であっても同国内で利害が反する団体を見つけ仲間に引き込む等、深謀遠慮を張り巡らす一連の国際標準化獲得の内容も面白いのですが、個人的には本書の著者自身に非常に関心を覚えました。

  子会社からの叩き上げとはいえ、やはり非凡な人なのでしょう。国際標準化に英語は不可欠とし、独自の勉強法を徹底し、ついには技術翻訳を引き受けるまので実力を身に着けてしまうこと。

    また技術翻訳に際しては、自身で工夫して翻訳ソフトを作り上げ、ついには土日の副業としての翻訳だけで年収10,000千円を稼ぐまでに至ります。
  迷走したソニーゆえ生じた理不尽な降格減給要請には頑として戦い、4度反抗をし自身の交渉力を持って翻させた経験についても語られており、(失礼ながら)無名の一介のサラリーマンとは思えぬしたたかな生き方には尊敬の念を覚えました。
 
   しかし(企業の意識、人材の枯渇から)日本企業が国際標準化を勝ち取ることなど今後はないのだと吐露する著者。それは「いやいや、そんなことはない。これからだって、自分たちだってやれる。」
そんな奮起を若いビジネスマンに促すエールなのだと、個人的には受け止めました。そんな好著。お薦めです。

                                           2017年6月26日 日経BP社 第1版第1刷

 

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【概要】

 チーズ専門店「チーズ王国」「フロマジュリー・ヒサダ」 http://www.cheese-oukoku.co.jp/shop-guide/ を展開する株式会社 久田。この地域では名古屋駅の名鉄百貨店メンズ館B1Fに店舗がありますので、ご存じの方も多いかもしれませんね。

  40年前、同社を創業し現在は代表取締役会長を務める著者。
母子家庭に育ち、経済的困窮から高校を中退。地元の老舗割烹に就職も3年で上京し寿司職人に転じます。その後伊勢丹商事でサラリーマン生活を送った後、独立開業。選んだのは飲食業、当時まだ珍しかったクレープ屋さんでした。

   その後、業態を変え、チーズ専門店へとシフトをし現在に至ります。
徒手空拳で事業を展開した著者が、絶えず考えてきたことは「大きな会社と戦って勝つにはどうしたらいいのか」ということ。そんな思いと経験から学んだビジネスのヒントを若い世代、特に起業を考えている人に向け、まとめられた1冊。 起業、戦略、人材、継承という4章で構成されています。 さほどボリュームのない本書ですが、著者の熱い思いの込められた1冊となっています。

【所感】
  
  著者の経歴を見ても分かるように、何か明確な目的を掲げて職業選択をし、起業に至ったわけではなさそうです。ビジネスチャンスは人との出会いとご自身も挙げている通り、ターニングポイントになっているのは、他人からの依頼や相談。
 
  起業のきっかけも当時、著者の住んでいた立川に出来る駅ビルで何か店を出さないかとの親族からの声掛けでした。出店を決めてから、どんな店を始めたらいいのかリサーチを始めており、ビジネスのセオリー的にはとても危ういスタートだったと言えるのかもしれません。

  それでも非凡であったのは、当時さほど認知されていなかったクレープに着目をしたこと。そして作り置きはせず、新鮮な生の果物や野菜を使用し、その都度焼き上げるオリジナルなスタイルを貫いたこと。
追随する低価格指向の店舗が表れても、値引きには走らず品質面でも妥協せずリピーターを増やし続けることで経営を軌道に乗せていきます。

  そんな著者が、次に選んだのはチーズ専門店。今やスーパー等でも様々な種類のチーズが売られていますが、当時はそのように食べ分ける習慣などない時代。
最初は商社経由で品揃えを始めますが、やがて飽き足らず直接買い付けを始め、ついには自社オリジナル商品を製造してもらうまでに至ります。

  実は本書で、小さい会社が大きな会社に勝つために必要なこととして再三著者が発しているのはオリジナリティの大切さ。品質面で妥協をしないこと。つけた値段に自信を持ち、値引き販売をして定価販売で購入したお客様を裏切るような行為をしないこと。

  出店に関しても、いたずらに規模は追わず、自社のビジネスをきちんと理解した専門家たる人材が育ち、そんな見込んだ人材が活かせる店を出店するように心がけていると語っています。

  商品しかり、人材しかり、手間やコストをかけ、時間をかけオリジナリティを磨く。
大手を含め他者が二の足を踏むような立ち位置を作ることこそ、小さな会社が大手に勝つ秘訣。本書を要約するならそんなまとめとなりそうです。

  起業家向けに記したとありますが、実は本書には財務面や資金調達、プロモーション等に関する記述は、まったくありませんので、こういった面を期待して読むと物足りなさを感じるかもしれません。
実務的な話よりも、起業家、経営者のあるべきマインドセットはいかなるものか?それが本書で著者が一番伝えたかったことなのでしょう。                                                    
                             
                             日経BPコンサルティング 2017年7月3日 初版第一刷


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【概要】

   コンサルティングファーム、ボストンコンサルティンググループ社長を経て現在は自身で創業したドリームインキュベータの代表取締役会長を務める堀紘一氏の著作。

  元マッキンゼーの大前研一氏と並び日本における戦略コンサルティング黎明期を牽引した人物であることはよく知られているところです。
  
  35年以上に渡り経営コンサルティングに従事してきた堀氏が、自身の集大成として戦略についてまとめた一冊。

  変化の激しい世の中にあっても経年劣化しない戦略。それこそが「戦略の本質なのだ」と語る堀氏が、その思いの丈をぶつけています。

【所感】

 4章からなる本書。「戦略の基本常識」、「競争戦略」、「成長戦略」、「戦略の立て方」で構成されています。

 1章の「戦略の基本常識」では、(日本の)戦国時代、ローマ時代、太平洋戦争など過去の歴史を紐解きつつ、負けないこと(自滅しないこと)が戦略の前提であること。戦略と戦術、戦闘の違い。兵站の確保や情報を制する重要性等を説いています。

  そして2章、3章では現代のビジネスを舞台に、業界内のポジションや市場の違いにより取るべき戦略の類型を明かしつつ、イノベーターは必ず業界外からやってくることや、スピードを問われる現代にあっても、攻めの戦略の基本はロールアウト(面で戦う)であることなどが説かれています。

  実は著者自身が「本書を読んで、決まった答えやノウハウを求める人には拍子抜けした気分になるかもしれない」と語っているように、個々のエピソードは興味深いものの、何か体系立てた構成となっているわけではありませんので、一読しただけでは、なかなか理解しづらい点は否めませんでした。

  唯一体系だって整理されているのは終章で紹介されている戦略立案に必要な ①観察力 ②連鎖思考力 ③質問力 ④(相手の行動を読む)想像力 ⑤(相手の意表を突く)創造力という5つの力でしょうか。

  中でも重きを置くべきは、②と③だと堀氏は説きます。
創造力には先天的な要素も大きく培うことはかなり難しいが、質問を繰り出し得た答えを元に、次の質問を考え連鎖して思考することは、訓練次第で十分会得可能なものであり、その繰り返しで正解に近づいていくのだとあります。そしてそんな知的対話を楽しめる人は、優れた戦略家になれる可能性が高いのだとも説いています。

  先ほど、本書は一読しただけでは、理解しづらいと記しましたが、思えばこの対話こそが本書の読み方を端的に教えているのではないかとふと思いました。
著者の記す意図を考え、自問しつつ読み進める。答を得られればまた新しく自問をし読み進める・・・・・。

  「戦略の本質」につき安易に答を得るのではなく、自ら気づき考え実践するためのヒントを散りばめた構成と考えれば、本書は極めて有益な一冊と言えるのかもしれません。


                                        PHP研究所 2017年7月4日 第1版第1刷

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