河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

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   当ブログでも、2年ほど前に著作を紹介させていただいたアダム・グラント氏。同氏の新作を今回はご紹介させていただきます。
  ジャンル的には自己啓発なので、当ブログでは基本的には取り上げない類ですが、組織心理学者である著者の手による本書は、安易な精神論をふりかざす同類の書籍とは一線を画す内容であり、皆さまに様々な示唆を与えること必須との思いから、今回取り上げさせていただくこととしました。

【概要】
 
  「オリジナルたれ!」

  混迷する現代社会を生き延びるためには、個性や独創性の発揮が大切であると、まことしやかにささやかれるのを聞くことがあります。
アップル社のスティーブ・ジョブズ氏、グーグル社のラリー・ペイジ氏、テスラモーターズのイーロンマスク氏、アマゾン社のジェフ・ベゾス氏 etc そんな経営者の顔を思い浮かべた方も多いのかもしれません。
 
   そしてオリジナリティを発揮するためには、徹底的にリスクを冒すことが必要なのだ。

  はたして本当にそうなのでしょうか?オリジナルな人たちは、わたしたちが思うよりもずっと普通の人たちであり、裏返せば、本書の帯にあるように、わたしたち自身も十二分にその資質を秘めているということ。
具体的な事例と科学的アプローチに基づき、その事実を示そうというのが本書の狙いです。

  全部で8章から構成される本書。
まずはインターネット眼鏡店の米ワービー・パーカー社https://www.warbyparker.com/ の事例などをつかみに、オリジリナリティを発揮し成功を収めるのは、既存のものに疑問をもち、リスクのバランスをとりながら行動をする人たちであることを示します。

  続けて、アイデアを生み出して的確に発言する方法やタイミングの是非、支持者の増やし方などについての解説が行われています。また家族や職場などの環境がもたらす影響にも言及し、終章では、オリジナリティの実現を阻害する感情のコントロール方法に触れ、結ばれています。

【本書のポイント】

  オリジナリティを実現し成功する人も、皆我々と同じような恐怖や不安を感じている。
しかし何が違うかといえば、それでも行動を起こすということ。
「失敗することよりも、やってみないことのほうが後悔する」ということを身をもって知っていること。 

【所感】

 ・成功するためには、一つのことに集中し、思いを注ぎ込まなければ駄目なのだ。
 ・他者よりも先行しなければ、成功はおぼつかない。スピードが第一なのだ。

  本書では、一般的に「成功のために必要」と思われるこんな通説に対し、ことごとく疑問を投げかけます。
前述した、ワービー・パーカー社の幹部たちは、起業の一方で、学生との二足のわらじをを脱がず、事業が失敗しても就職が可能なよう学位取得にこだわるというリスクヘッジを試みていたそうです。

  またどんなに独創的なアイディアで製品やサービス開発に先行しても、機が熟さなければ勝ち目はありません。ネット関連ビジネスなど、その典型かもしれませんね。
他者の動向を窺う、インフラ整備の状況を見極める。「先送りの効用」というべきものが確かに存在をしています。

  監訳者も述べていますが、本書でとりあげられているのは、ごく当たり前のことばかりです。
あたり前のことゆえに、つい見逃しそうなこと、「オリジナリティとはこうあるべし」という世間一般の常識をつい妄信しがちな私たちに様々な問いかけをしています。

  本性としてリスクを回避しようとする私たちが、流れに逆らう不安や恐怖をはねのけて、オリジナルな何かを実現するために様々なヒントを与えてくれる本書。自身を信じ一歩を踏み出すことの勇気も与えてくれる好著でもあります。お薦め!
 

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【概要】

  野村総合研究所未来創発センター内にある「2030年研究室」。

 同研究室は、社会の様々な領域で、従来の常識とは異なるユニークな切り口をもったビジネスモデルを100パターン探索し、それを実践している経営者と深く対話し人脈化をする「革新者プロジェクト」を推進しています。

  その目的はどこにあるのでしょうか。

  どんなマクロ予測をしてみたところで、日本の未来が厳しいものにならざるを得ないということは、もはや疑う余地もありません。
人は漠然と危機感をいだいても、なかなか自ら挑戦し、行動を起こすことは出来ないものです。そのために必要なことは、具体的で刺激的な実モデルを提示し行動を促すこと。

  そこで、まずは現在の日本の「革新者」とでも呼ぶべき100名の経営者の思考や行動を深く分析し、そのスキルや暗黙知を、展開、承継させていく施策を講じること。場合によっては、100名の「革新者」との直接交流を通じ、共に事業展開を行うことで、日本の未来を切り開く人材を多数生み出していこうとするのが、同プロジェクトの目的のようです。
 
  本書は、そんな「2030年研究室」の室長を務める齊藤氏の手によるものです。

  4章で構成される本書では、「革新者」の定義にはじまり、100名の「革新者」の中から特に刺激的な8名の経営手法の紹介、「革新者」の持つスキル分析と解説が行われています。
そして最終章では、この「革新者」の知見やネットワークを活用するための施策「イノベーション・プログラム」の進め方を解説し、日本の抱える大きな課題の一つでもある「地域創生」に向けて、実際に展開されているプロジェクトの報告で締めくくられています。

 とはいえ決して堅苦しい内容ではなく、スノーピーク社(アウトドア用品製造販売)、GRA社(1粒1,000円のイチゴ生産)、Ubdobe(福祉・介護)、千葉県流山市(人口16%増) とユニークな事例を切り口に、一気に読み進めることが出来ました。

【本書のポイント】

  〇革新者とは
 
 社会課題を見据えながら、あたりまえの常識を疑い、新しい切り口を見出し、埋もれている潜在価値を引き出して、それを事業として創造し、やり切り、どんどん進化させ、最終的に社会や驚きや感動を生み出す人

 〇革新者のもつ7つのスキル

 ①あたりまえを疑う
 ②Needsを探すのではなく、Wantsを創造する
 ③「面白い」から始めて、社会課題の解決につなげる
 ④同類とはつるまない
 ⑤マイナスをプラスに
 ⑥イノベーションの武器としてTED(テクノロジー・エンターテイメント・デザイン)を用いる
 ⑦「打たれ強い」、しかも「負けたふりをする」

【所感】

  示唆に富んだ1冊でした。経営者、起業を志す方のみならず、何らかの行動を起こす必要に迫られている方は多いに刺激を受けること請け合いです。

  地域創生のため、次々と生まれる地域ファンド、「カネは用意したが、タマ(投資すべき事業)がない」と言う金融機関や支援機関。自治体が募る地域創生プラン、様々な意見を語る人は多くとも、行政への要望や提案のみで行動を起こす人はほぼいない・・・・・。

  地方創生、いや今の日本に必要なのは「雇用の創出」ではなく、「経営者の創出」なのだと語る著者の主張には、まったく異論のないところです。そのための施策を机上の空論に終わらせず、具体的な方法論に落とし込み、既に実行しはじめているところは、さすが日本有数の民間シンクタンクの矜持というところでしょうか。

   選出した「革新者」100名の内訳や、その選出方法までは言及されていないところは残念ですが、それを差し置いても読み応えがあり、アクションを起こすことを促す好著でした。
   

【概要】IMG_8148

  日本国内にある企業数は約386万社(2015年版・中小企業白書)。そのうち上場企業だけで 約3,600社。
就職、取引、投資、目的はいろいろあれ、業界・企業研究をする機会は意外と少なくありません。 

    しかし近年ビジネスをとりまく環境変化は著しく、業務が多角化している企業も少なくない中、従来の業界分類では、なかなかその企業の実態は見えてきません。
   そこで従来にはなかった新しい業界分類を設定し、その業界概要と将来について解説した「新しい業界研究本」を目して記されたのが本書です。
東洋経済新報社で30年に渡り記者を務める著者が、独自の分類で「知られざる優良企業」を紹介しています。

【本書のポイント】

  著者独自の分類による優良企業260社の紹介

  ①世界の人口爆発に勝つ企業
     水ビジネス/水素ビジネス/原子力ビジネス/資源ビジネス/都市鉱山ビジネス

  ②世界が驚くニッポンオリジナルの企業
      日本の当たり前ビジネス/グローバルニッチビジネス/凄みのある老舗企業

  ③世界が注視する高齢化対応企業
       ロボット・ビジネス/介護ビジネス

  ④お家芸の「おもてなし」で伸びる企業
        医療観光/外食/物流/自動販売機

  ⑤急成長!技術力が高く買われる企業
       鉄道ビジネス/素材・部品

 ⑥新たなインフラ需要で収益を伸ばす企業
      スーパーゼネコン/道路工事/特殊土木/その他の建設・土木/マリコン/トンネル工事/建設機械/セメント/ガラス/不動産

【所感】

    新書で紙面も限られる中、上記分類に基づき簡潔なコメントと共に、260社がリスト化され紹介されています。
またリスト化された企業の大半については、本文中でも取り扱われ、業界動向も踏まえ分かり易く解説がされています。(帯にある250社とは、本文中で取り上げた企業数と思われます)

  ただ成長企業、優良企業という触れ込みながら、残念ながらその選定基準は定かではありません。また当然ですが、財務状況などの踏み込んだ情報が記載されているわけでもありません。
またどうしても技術系の企業やBtoB企業の紹介が多いこと、著名ではないとはいえ、大手企業中心となり、全般的な偏りは否めないところがあります。
  
  本書は、あくまでもガイドブックであり、関心をもった企業については、自身でより詳しく調べることを著者は期待しているものと思います。
その意味で、これだけ簡潔にポイントを抑えた類書もあまり見かけませんから、その目的は十分に果たされているのではないでしょうか。
  企業研究という明確な目的をもたず、さらっと読んでも興味深い内容であり、新書で価格も手ごろ、コスパの高い1冊でした。

                                                                                                                                     2016- 6-11 VOL.155

 

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