名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

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【概要】

 ここ数年、新聞紙上を賑わせている企業による不祥事。
SUBARUや日産自動車による無資格検査員による検査。三菱自動車による燃費試験データの改ざん。神戸製鋼所によるアルミなど製品検査データ改ざん。

 またこの10年くらいの間に起こったいくつかの大事故も、まだ記憶に新しいところです。福島第一原子力発電所事故 笹子トンネル天井板落下事故、軽井沢スキーバス転落事故 など。

 「もはや日本の安全神話は崩壊し、経営や製品の質も著しく劣化している・・・・」そんな印象を抱かれている方も多いかもしれませんね。

 事故や失敗発生の原因究明をする学問領域に「失敗学」というものがあります。
 失敗学と言えば東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏が著名ですが、本書の著者は、畑村氏などと共に特定非営利活動法人「失敗学会」を立ち上げた理事の一人。

「致命的な失敗は、企業や組織の思考停止から生まれる」と説く著者。そういった風土や風潮を生み出しているのは、我々の職場そのものでもあります。
 
 職場の思考停止を防ぐために、上司は何を考えなければならないのか。部下とどうコミュニケーションをとればよいのか。本書は「エムパワリング・コミュニケーション」という手法を通じ、その課題解決に迫った1冊となっています。

【所感】

 4章からなる本書。

 まず1章では、コミュニケーション不足が引き起こす職場のリスクについての解説が行われています。何らかの失敗があった際に、ついとりがちな周知徹底や教育訓練、管理強化といった行動が、さらに自体を悪化させていく怖さなども明らかにされています。

 2~3章では、自ら考える部下を育てるためには、どう接しどう指導をすればよいのか、その具体策が明らかにされています。

 4章では、思考停止に陥らない仕事の進め方として、失敗の測定や分析方法。事後に生かすための報告書の書き方など、職場での具体的な運用の在り方に言及し締めくくられています。

 個人的に興味深く読んだのは3章で記された「どのような話し方が人の創造性を潰してしまうのか」という事例でしょうか。
「リスクがある」「前例がない」といった否定的な言葉はもちろんのこと、「かんたんだから」「期待してるよ」という抽象的な励ましや、「合理化・効率化」「コスト優先」といった、ついつい使いがちな言葉が、しばしば部下たちの思考を停止させたり、創造性を奪っているというくだりには、考えさせられるものがありました。

 かといって慎重になるあまり、話すことを謹んでしまっては本末転倒。自ら考え動機付けをするために必要なことは、部下を一人の人間として尊重すること。もっともこれはあらゆるコミュニケーションの前提として当たり前のことかもしれませんが。

 興味深い1冊ですが、惜しむらくは「エムパワリング・コミュニケーション」という手法につき本書内では、明確な定義は記されていないこと。
本書全体をもってそれを指すのかもしれませんが、明確な定義を求める方には、やや不満感を覚えるかもしれません。
 ただ本書の趣旨を考えれば、安易に「エムパワリング・コミュニケーション」の定義のみを知って分かった気になるのではなく、本書から自ら読み取ることを求めていると考えれば、それも納得ですが。


                                   大和書房  2018年4月1日 第一刷発行

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【概要】

 動画共有サイトYouTube。もはやその存在を知らない人は皆無ではないでしょうか。2005年に米国で設立、2006年にはGoogle社が買収をしており、日本では2007年からサービス提供がはじまっています。
 もともとは個人撮影した映像を共有し楽しむために誕生したサイトですが、著作権を侵害した違法動画の投稿や、犯罪すれすれの迷惑行為を撮影した動画が、しばしば炎上を起こすなど、同サイトに対して、あまりいい印象をお持ちでない方も多いのではないでしょうか。
 
 また数年前から、人目を引く動画の投稿で大金を稼ぐ若者たち。
いわゆるユーチューバーが注目を集めるようになっており、小中学生のなりたい職業にランクインしてくるなど、かつてなかった職種?の登場に戸惑う方も少なくないかもしれません。

 しかしいまやYouTubeには、全世界から毎月15億人もの人がアクセスをしており、毎分400時間を超える動画が投稿されているそうです。もはや動画投稿サイトの標準プラットフォームとなりつつあるYouTube。
 同社CBO(副社長)の手による本書は、同社の起業や経営について記したものではありません。Y
ouTubeを使い、世界にインパクトを与えるような作品や活動を生み出す人々に着目。
 彼らを通じ、世界は、メディアは、どう変わろうとしているのか?について考察をした1冊となっています。

 
【所感】

 YouTubeへの投稿で、多くの支持を集める先駆者たちを、著者は「ストリームパンク」と呼んでいます。音楽や動画をダウンロードしながら再生する技術「ストリーミング」と反権威主義「パンク」を掛け合わせた造語なのでしょうね。

 YouTubeを象徴するスターとなったジャスティン・ビーバー。韓国人ながら「江南スタイル」というMVで全世界で知られることとなったPSY。
 日本でも、ニュースなどを通じ、名前を聞いたことのあるアーティスト以外に、多くのユーチューバーたちが本書では紹介されています。

 〇YouTube上でコミュニティを形成し、全世界で2,000万部以上自書を売ったジョン・グリーン
 〇ゲイであることをカミングアウト。LGBTQコミュニティの認知に多大な貢献をしているタイラー・オークリー
 〇キルト作成のチュートリアル動画から、町おこしに一役買ったジェニー・ドーン など
  
 残念ながら個人的には、ほとんど名前を知らない人々ばかりですが、ジャンルは違えど動画投稿をきっかけに、それぞれの世界が大きく広がっていった様子が描かれています。
 
 彼(彼女)らの成功には、共通的な要素がみられるそうです。それは

 〇コミュニティを形成し育てることに長けている 
 〇偽らない等身大の自分を語っている
 〇国境を越える魅力を持つ動画を作成している
 〇自分達の多様性と独特の視点を活用している
 〇ニッチの魅力を理解し、一般大衆でなく熱い少数のファンにめがけ発信をしている
 

 そして、彼(彼女)らの成功は一夜にして生まれたものでなく、地道なトライアンドエラーの繰り返しであったことを著者は強く主張をしています。

 インターネットの普及で、誰もが世界に向けて情報発信が可能になって久しい昨今ですが、ブログなどの文書には、言葉の壁が付きまといます。しかし動画であれば、その壁は易々と超えていけます。また百聞は一見にしかずと言われるように、どれだけ言葉で語られるよりも、動画などで見ることが与えるインパクトは、特にジャーナリズムの面では図りしれないものがあります。

 思えばネットで、画像や動画といった容量のあるものを送るためには、大変な手間と労力、そしてコストがかかるものでしたが、いまやスマホ一台でそれが可能となっている時代。その意味の大きさを改めて感じさせられた本書。

 実は著者は、社会主義時代のチェコスロバキアの出身。
 あらゆる情報が統制される中、必死で見聞きした映像や音楽のインパクト。各自が自在に自身の考えや思いを表現できる素晴らしさ。それを痛感しているがゆえに活躍するユーチューバーたちに向けた暖かな目線。

 翻訳本ゆえ、章立てなど、やや読みづらい部分はありますが、示唆に富んだ興味深い1冊でした。



                            2018年3月15日 第1刷発行

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 2013年7月にはじまった当ブログも今回が250回目。いつもお付き合いいただきありがとうございます(^^)。
 毎週1冊ずつ新刊ビジネス書をさせていただき、これまでに紹介させていただいた冊数は249冊。
節目の250冊目には、こんな1冊を紹介させていただきます。

【概要】

 ちょうど5年程前に「機械との競争」という本が上程されました。
 これはリーマンショック後、一向に景気回復、雇用拡大しない先進国の経済状況に対し、その理由を「テクノロジーの進化が早すぎて雇用が喪失されている。つまりコンピューターとの競争に人間が負け始めているのだ。」と喝破した内容で、かなりの衝撃をもって受け止められた1冊でした。

 あれから5年。本書は同書籍の著者達の手による第三弾。

 人間の棋士を破った「アルファ碁」。さしたる資産をもたずとも、世の中に大きなインパクトをもたらす事業展開をする「Uber」「Airbnb」「Facebook」「Alibaba」といった企業群の出現。ニッチな需要しかない家庭用製氷機を作った巨大企業「GE」の試み。

 本書冒頭で、我々の身近な事例を引き合いにしながら、テクノロジーの進化は、大きな3つのトレンドを生み出しているのだと著者達は主張をします。それは「マシン」「プラットフォーム」「クラウド」の3点。

 ①マシン・・・・・コンピュータの能力が急速に成長・拡大していること
 ②プラットフォーム・・・・・有形固定資産はほとんどもたずとも、情報交換の場やサービス展開の土台となる環境 いわゆる「プラットフォーム」を提供する企業が台頭していること
 ③クラウド(ファンディング)・・・・・膨大な数の人々の知識や情熱の活用が可能になりつつあること

 本書では、この3つのトレンドを切り口に、これからの社会と企業が向かおうとしている未来につき考察を試みた1冊となっています。

【所感】
 
 500ページを超えるボリュームで、手にとるのも躊躇しそうな1冊ですが、意外と読み易いのは、事例の豊富さと、その影響を日々我々が実感する機会が増えているせいではないかと感じました。

 3つのトレンドには、それぞれ対になるものが存在します。

 ①マシン ⇔ 人間の知性 
 ②プラットフォーム ⇔ 物理的な世界のモノやサービス
 ③クラウド ⇔ コア(国や企業などの組織が、長年にわたり蓄積してきた知恵や知識、しくみなど)
  
 本書の内容を端的に言うならば、これからの企業や組織は、ここ数年飛躍的に拡大してきた、「マシン」、「プラットフォーム」、「クラウド」の能力をしっかり見極め、それぞれと対になる「人間」、「物理的なモノ」、「コア」との最適な組み合わせを考える必要があること。
そしてその最適な組み合わせを構築した企業が、成功を収めていくということでしょうか。

 ただ技術革新のスピードは、あまりに早く、今日の企業の成功は明日も約束されたものではありません。よって本書でも、明確な成功のためのノウハウやビジネスモデルの提示は出来ないとしています。

 しかし多くの示唆に富むトピックと、各章ごとに設けられた「まとめ」と「あなたの会社では?」との問いかけは、自社の将来を考え、その考えを整理していく上で、分かり易い構成であり、テクノロジー進化のガイド本としては、最高の1冊と言っても過言ではないかもしれません。

 個人的に印象深かったのは、3部11章の「専門家はなぜ役にたたないのか」という章でした。
 クラウドの進展で、しばしば専門家を凌駕する研究結果や成果が生まれていること。
その背景には、技術の進展はもとより、既存の組織などの枠にはまった専門家は、しばしば自身のやり方に固執するきらいがあること。またなかなか違う視点から問題をみることが出来なくなっていってしまう傾向などを指摘しており、非常に納得の出来る内容でした。

 人は基本的には保守的なものであり、本書で記される内容や傾向は、我々に大きなストレスをもたらすことは想像に難くありません。人間にとって「マシン」や、「プラットフォーム」、「クラウド」はしばしば敵対すべき存在として映るのかもしれませんが、その流れはもはや止められないもの。

 発想を柔軟にし、いかに共存を図るかに思いを馳せることが、我々が取り組むべき最重要課題かもしれません。

 著者達も、本書が伝えたいのは、悲観論ではないとしています。
たとえば、本書の3つのトレンドにより、世界中で「教育の機会」が大きく拡大したり、多くのイノベーターが発掘されやすくなっている状況などが明かされています。 

 「テクノロジーそれ自体は道具であって、運命ではない。運命を決めるのは私たちだ」

 それこそが本書における著者たちの最たる主張ではないでしょうか。

                    日経BP社 2018年3月27日 第1版第1刷発行

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