名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

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2018- 9-16  VOL.273

  

【概要】

 

「働きがい」に関する調査・分析を行い一定の水準に達していると認められる企業や組織を各国の有力メディアで公表する活動を世界50ケ国で行っているGPTW。https://hatarakigai.info/

 第12回、2018年度ランキングにおいて、中規模部門(従業員数100-999人)で第一位となったのが株式会社コンカー。https://www.concur.co.jp/
 クラウドによる出張・経費管理システムを提供するIT企業です。
サンフランシスコに本社を置く外資系の企業で、日本法人設立は2010年。
 まだ10年にも満たない社歴ですが、大手企業を中心にユーザーを増やし、急成長を遂げています。
 本社は、そんな同社の代表による1冊。「人材こそ最大の経営戦略」と語る著者が同社の取組を明かしたのが本書です。

 

【所感】

 

 世界3位のソフトウェアメーカーSAP、マッキンゼーでの就業経験を持つ著者。
複数の企業を経て、自身も経営者となる中、いつの頃からか感じはじめたのは、「働きがい」を高めるためには、3つのドライバーが必要ということ。

 それは ①夢や志、大義との一体感 ②視座の高さと裁量の大きさ ③成果や失敗を通じた成長の実感 の3点でした。
 そしてこの3つのドライバーを促進するために大切にしているのは、①信念 ②文化 ③実行 の3点。これを基軸に記された本書。

 コンサル出身の著者らしく、「戦略立案」に始まり「社員間のコミュニケーション」「会社へのロイヤリティの醸成」「人材採用」「人材開発」「人材評価」とテーマ別に章立てをし整理された本書。

 働きがいを高めるために同社が取り組んできた施策の数々を惜しみもなく公開しています。「オールハンズミーティング」「オフサイトミーティング」「従業員アワード」「ランチミーティング」「紹介インセンティブ制度」「留学のための休職制度」「社長が全員をレビュー」「100時間勤務制度」etc 。
 必ずしも同社オリジナルでない施策もありますが、「本当にこれだけの施策を実行しているの?」と疑問を抱くほどに、「働きがい」を高めることに結び付くのならと、ありとあらゆる施策を実行しています。
 
 それもその筈、著者は「働きがい」を高めることが出来ないのはトップの姿勢にあると、厳しく指摘しているからです。
「働きがい」を高めることを阻害する要因には次の3つがあるそうです。
それは ①トップのコミットメント不足 ②アイデア不足 ③実行力不足
 
 トップ自らが「働きがい」を高めることに覚悟をもって取り組み、知恵を絞って施策を考え、皆を巻き込み実行していくこと。いいと思う施策なら、次々やってみればいい。社員の声に耳を傾け歩みよればいい。自らを律し実践してきた著者だからこそ。経営者へ厳しい注文を出しているのかもしれませんね。

 様々な示唆を与えてくれる本書。要点も的確にまとまり非常に読み易くもありました。
当ブログを読んでいただくと分かるかもしれませんが、著者は重要なポイントは全て3つにまとめ記しています。そんな細かな配慮も含め、お薦めしたい1冊に仕上がっています。

 
 
                   技術評論社 2018年9月22日 初版第1刷発行


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2018- 9- 9  VOL.272

  

【概要】

 

 本書のテーマは「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。端的に言えば、AIやIoTなどの先端的な技術を活用して、新たな付加価値が生み出せるように、従来のビジネスモデルや組織を変革していくこと。

 アマゾンやウーバー・テクノロジー、エアービーアンドビーなど、デジタル活用と言われると、既存市場に参入してきたこれら新興企業が使用する「ツール」という印象を持たれる方が多いかもしれませんが、その認識は誤っているそうです。

 今やデジタル化、デジタル・トランスフォーメーションは、あらゆる企業が取り組むべき喫緊の課題であり、そこに選択肢はない(やるしかない、さもなくは淘汰)のだと著者達は説きます。
 

 これまでに成功を収めてきた企業であっても、まったく違う業界からライバルが突然現れ、競争環境を一変させ、既存ビジネスを破壊していく。なまじ成功体験があるゆえ、環境変化、ライバルへの対応が遅れ、事業撤退を余儀なくされる・・・・・。
 先ほど挙げた企業例を見るまでもなく、そんな動きが、あらゆる業界で起ころうとしています。

 自社が生き残るためには、どのようにデジタル・トランスフォーメーションに取り組んでいけばいいのか。世界有数のコンサルティングファームであるマッキンゼーの手による本書は、そんな疑問に応えてくれる1冊。そしてその特徴は、特定の部署や部門、特定の商品やサービスといった小手先の変革を促すものではなく、全社規模でのデジタル・トランスフォーメーションへの取り組み方を記していることにあります。
 

【所感】

 

 10章からなる本書ですが、その全体の柱となるのは「WHY」「WHAT」「HOW」という3つの問いかけです。

「なぜ」企業はデジタル・トランスフォーメーションにとりくまなければならないのか。
 具体的に「何を」変える必要があるのか。
「どのように」デジタル・トランスフォーメーションを計画し実践していけばいいのか。

 主として1~3章までが「WHY」4~6章までが「WHAT」7~8章までは「HOW」というテーマで整理されており、そして残りの章で総括をしています。
WHY」「WHAT」「HOW」それぞれの問いかけについては、「マネジメントへの重要な問い」という表題で1ページずつのチェックリストが設けられており、自社の状況を棚卸しつつ、デジタル・トランスフォーメーションの実践で抑えるべきポイントの整理に一役買っています。

 また本書全体の構成としては、特定の業界を意図したものではありませんが、第4章では「自動車」「小売業」「金融業」「ヘルスケア業界」「建築物」「エネルギー業界」「通信・コンテンツ」「物流業界」「行政」といった業種については個別の課題についても触れており、今後の業界動向を知る上で興味深い内容でした。

 より実践的な内容となるのは4章以降で、デジタル・トランスフォーメーションに必要な個々の技術解説や、計画の立案方法、実践のポイント、組織風土の変革など幅広く網羅をしており、デジタル・トランスフォーメーションの指南書と呼ぶに相応しい内容となっています。

 しかし一読した感想は、この実践はとても容易ではないということ。一から会社を作り直すに匹敵する内容であり、相当の危機感、スピード感をもって取り組み、経営トップ層が強いリーダーシップを発揮しなければ、その実現はおぼつかないのではないでしょうか。

 それゆえ先んじた場合のアドバンテージは計り知れないものがあるのかもしれません。 
 

                    日本経済新聞出版社 2018年8月24日 1版1


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2018- 9- 2  VOL.271

  

【概要】

 

 Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)
 言わずと知れた世界最大規模のECサイト、Webサービス会社です。2017年決算では、売上1,778億6,600万ドル(約19兆9,209億円)純利益は30億3,000万ドル(約3,396億円)を誇ります。

 オンライン書店として起業から、はや20年強。今や世界中で50億以上の商品を出品。動画配信や、スマートスピーカーでも存在感を増し、「アマゾン・ゴー」といった実店舗までも手掛け始めています。

 その破壊力はすさまじく、書店のみならず多数の小売店舗が市場からの撤退を余儀なくされており、アマゾン進出の動向に戦々兢々とする企業も少なくありません。

 本書タイトルである「デズ・バイ・アマゾン」とはアマゾン恐怖銘柄指数のこと。
2012年に米国の投資会社が設定したインデックスで、アマゾンの台頭によって窮地に陥るであろう上場企業銘柄の株価を指数化したものです。

 ウォルマート、バーンズ・アンド・ノーブル、コストコ、JCペニー、メイシーズなど54社で構成されており、共通するのは収益の大半をリアル店舗から得ていること、そして扱う商品は基本的に他社製品であることです。54社の中には、アマゾンの参入報道が出るだけで、大きく株価を下げる企業も少なくないようです。

 その一方で、同投資会社はアマゾンの影響を受けず生き残っている企業で構成した「アマゾン・サバイバー」という指数も発表しています。

 いずれにせよ小売・流通業界のみならず、あらゆる業界でその影響力を拡大しつつあるアマゾンの戦略と、それに対抗する企業の戦略を紹介しつつ、いかに生き延びるかの方策を考察した一冊。
 主として米国での事例を中心にした内容ですが、日本企業の事例も踏まえた構成となっています。
 

【所感】

 

 7章からなる本書。アマゾンの最新動向に加え、迎え撃つリアル店舗の対抗策、配送の最前線の様子など豊富な内容で構成をされています。

   リアル書店「アマゾン・ブックス」、レジ無し店舗「アマゾン・ゴー」、ホールフーズ買収と実店舗への進出を加速しているアマゾンが次に目指しているのはファッションECへの進出。
 販促のため誕生した「アマゾン・エコー・ルック」というカメラを搭載したスマートスピーカーの発表。またもっともECに不向きと言われる家具にもAR技術を使って本格的に参入をしてきています。
 何か欲しいものがあれば、グーグルで検索、アマゾンで購入というスタイルが一般的になるなか、最終購買情報を握るアマゾンの立ち位置は圧倒的であり、グーグルすら畏怖を抱き始めている様子。
 ショールーム化、小規模化、体験型へ、そしてネットとの融合を加速するリアル店舗保有企業。

 次々と我々の想像を超える展開を行うアマゾン。競合企業の戦略、積極的にそのインフラに載ろうとする企業。それを取り巻く大きな技術革新の波などを丁寧に解説した本書は、大きく変わろうとしている流通最善の様子を知るには、最適の一冊となっています。

 さてそれでは一番知りたいアマゾンに打ち勝つ企業「アマゾン・サバイバー」になるポイントは何なのでしょうか。それは下記の3点だそうです。

 ①圧倒的な商品力で差をつける(消費者を惹きつける魅力的な商品の開発・販売)
 ②カスタマイズ&パーソナライズ(顧客ごとの好みにカスタマイズ。高級ブランドなら尚良い)
 ③痒いところに手が届くサービスの提供(サービスに徹底的に付加価値をつける)

 う~ん正直、目新しさはまったくないですね。結局これは全てニッチ志向。アマゾンに対抗するというよりも、市場が狭過ぎ進出メリットがない領域を目指す戦略の勧めと言うべきでしょうか。
それだけもはや既存企業には、生半可な方法では打つ手がないことの裏返しなのかもしれませんが。

 生活者目線で読めばワクワクも、小売・流通業者目線で読めば悩ましく。そんな感想を抱いた一冊でした。
 

                    日本経済新聞出版社 2018年8月22日 1版1


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