河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週土曜日更新予定。

【概要】IMG_8078
 
  米大手コンサルティング会社、ペイン・アンド・カンパニーが世界43ケ国の約3,000社を対象に、2003年ー2013年までの業績を調査したところ、どの期間をとっても、売上、利益が対象平均を上回って成長し、株主に資本コスト以上の収益をもたらした企業は10%程度しかなかったそうです。

 それほど変化が激しく、企業が強さを維持するのが困難な時代。
しかし裏返せば、どんな状況下にあっても、勝ち組企業は必ず10%程度はいるということ。

  本書は、そんな勝ち組とも言える日本の中堅企業、ベンチャー企業、かつてのベンチャーから大企業へと成長を遂げた企業経営者に着目をしています。時代の変化に捉われず、確実に成長を続ける「永続成長企業」とも呼べる彼らの経営の秘訣に迫った内容となっています。

  登場する企業は、トランコム、IBJ、エレコム、ダイオーズ、アクサ生命、白寿生科学研究所、ユーグレナ、メタップス、筑水キャニコム、セレボ、トラスト、SORABITO、ニチコン、そーせい、サトーホールディングス、サイバーエージェント、カルビー、加賀電子、そして日本電産。
 
   各章ごとに、市場戦略、顧客満足、イノベーション、コスト管理、M&A等の観点から、これらの企業の経営の特徴に迫ります。
また最終章では創業50年を待たずに、零細企業から1兆円企業へと大躍進を遂げた日本電産に一章を割き、同社を率いる永守社長を取り上げています。
その理由につき著者は、上記で挙げたような成功企業のもつべき強みを、全て具現化してきたのが同社だからと説明をしています。 

【本書のポイント】

 永続成長企業の特徴

 ①コア事業の定義がしっかりしている
 ②コア事業を中心に一つか二つ圧倒的に強い事業をもっている
 ③創業からの精神が受け継がれている

 永続成長企業の競争力の源泉 

 ①独自の戦略を生み出せる「経営者と本社の力」
 ②それを実行できる「現場の強さ」
 ③顧客基盤や技術などの「資産の価値」

 このいずれかの力で突出するか、3つの組み合わせで抜きん出るか その独創性こそが競争力の源泉である。 

【所感】

  事例企業選出の根拠が明確でないこと。
副題に「日本電産・永守流究極モデル」とあるものの、そのモデルを明確化し、事例企業に落とし込んで整理・分類がされている訳ではありません。よって内容も総花的であり、企業読み物としては非常に面白いのですが、全般の編集としては、個人的にはあまり納得できるものではありませんでした。

   とはいえ、最終章でとりあげた日本電産については、コスト管理、人材育成、数値管理の3点に絞り込みアプローチをしており、非常に分かり易く、参考になる点が多いものでした。

 好業績の企業はオーナー企業であったり、今だ創業者が経営のかじ取りをしている企業が多いということを改めて実感した1冊でもありました。
その時代に合わせた事業展開は当たり前としても、やはり創業の精神、自社は何を以って社会貢献をするのか。その軸がぶれないこと、それなくして永続成長企業などありえない。
そんなことに改めて気づかせてくれた1冊でした。
                                                                     
                                                                                                                                     2016- 5-28 VOL.153

   

IMG_8011【概要】

  鴻海精密工業傘下となり経営再建を目指すシャープ。
グループ全体で7,000人の人員削減を発表したニュースも記憶に新しいところです。

  佐々木正氏

  かつて同社の副社長までを勤め上げたエンニジアです。
50歳を前に、三流電気メーカーと揶揄されていたシャープに乞われて入社。産業機器事業部長として電卓戦争を征し、同社の存在感を大いに高めることとなりました。
   トランジスタ、LSI、液晶。日本の電子技術開発をリードした人物であり、その功績はシャープだけに留まらず「電子立国日本」の立役者との声もかかるほどです。

  またその人脈も幅広く、創業間もない孫正義氏に個人保証をし、ソフトバンク発展の礎を築いたり、故スティーブ・ジョブスとも交流があり、佐々木氏との雑談から、iPod、iTunesの構想を得たとの逸話もあるそうです。

  本書は、そんな佐々木氏の評伝です。
佐々木氏の生い立ちから、シャープを退任する1989年頃までを中心に描かれる本書。
戦後の焼け野原から復興し、数々の技術開発で世界を席巻していく日本の電機メーカーの成長と共に、その活躍ぶりが生き生きと描かれています。
    ちなみに「ロケット・ササキ」とは、共に超LSIの開発を進めていた米国の半導体メーカー、ロックウェル社の技術者たちが佐々木氏につけたニックネーム。
開発のために活発な議論を続ける中、時に突拍子もないことを言い出すものの、その豊かな発想力に下を巻いた技術者たちが、敬愛を込めてそう呼んだそうです。

【本書のキーワード】

 「共創」
 
  分からなければ聞けばいい。持っていなければ借りればいい。
逆に聞かれたら教えるべきだし、持っているものは与えるべきだ。
人間、一人でできることなど高が知れている。技術の世界はみんなで共に創る「共創」が大切なのだ。

【所感】

  いやいや面白いですね~。
  創業社長でもない一介の技術者からスタートしながら、その卓越した先見性と大胆な行動力で、次から次へと技術開発に成功していくビジネスセンス。
一つの技術開発に成功しても、それに固執することない攻めの姿勢。一方で自社の技術開示を望まれれば、惜しまず公開してしまうオープンな面も。
  
   その根底にあったのはキーワードでも挙げた「共創」という思想。

  残念ながら、その後シャープは液晶技術へ経営資源を集中しすぎ失敗。破綻の危機を迎えたのはご周知のとおりです。
「オンリーワン」「ブラックボックス戦略」と称し、自社単独で開発に勤しみ成果を独り占めしようとした、その経営姿勢は、佐々木氏を含めシャープそのものが大切にしてきた「共創」の思想に反するものでありました。

  終章で、佐々木氏を訪ねた7代目社長の高橋氏に、佐々木氏はこう語ります。

  「イノベーションとは、他の会社と手を携えて新しい価値を生み出すことをいうんだ。シャープはそうやって大きくなってきたんだ。」と。

   鴻海精密工業傘下で、シャープはかつての輝きを取り戻すことが出来るのか?
それはこの「共創」の精神を再び取り戻すことが出来るかどうかにかかっているようにも思います。

  シャープの経営危機に関する書籍は、いくつか出版されていますが、その類の書籍とは一線を画す本書。
なぜ著者が、佐々木正氏に着目したのか。
その理由につき特に言及はされていませんが、もう一度自社の本分は何であるのかを、経営陣や社員に取り戻してほしいという強い応援メッセージと感じたのは私だけでしょうか。


                                                                                                                                     2016- 5-21 VOL.152


IMG_7993【概要】

  株式会社タビオ http://www.tabio.com/jp/corporate/

 世界的にも珍しい靴下専業メーカーです。
 「靴下屋」というブランド展開をしていますので、その店名をご覧になった方も少なくないのではないでしょうか。

  婦人用靴下を中心に、日本国内に291店舗を構え、今やロンドンやパリ。中国・大連、台湾にも出店をしています。

今や国内の繊維製品は廉価な中国製が主流を占めますが、同社の製品は全てメイド・イン・ジャパン。徹底した高品質を貫いています。

  本書は、そんな比類なき企業を一代で築き上げた創業会長の手による「経営訓」。 
  丁稚奉公時代から創業時代~成長期を経て事業承継まで。同社の歩みともに、29の「経営訓」が紹介されています。

【本書のキーワード】     

   〇一生一事一貫
  
   〇運命共同体ではなく理念共同体

   〇経営とは商品の研究

   〇商品はプライド、価格は良心

【所感】

    中卒、丁稚奉公からスタートし、大証2部上場企業を作り上げた著者。
学歴のなさを補うべく、丁稚奉公時代に古本屋で購入した「孫子」を、暗唱できるほどに繰り返し読んだそうです。
さらに「孫子」をはじめ多くの中国古典を読み、学んだ教えに沿って意思決定をしてきたことで、孤独を感じることもなく、自身の判断に自信を持ち、行動を移すことが出来たのだと語ります。

  全編を通じ感じることは、まさにタイトル通り、著者の「靴下」に対する強烈な思い。
 
   ・全ての製品を自身の足で履いて確かめてみる
  ・履いた時の感覚が鈍らないように、50年ちかく常に裸足でサンダル履きで過ごす
  ・良い靴下かどうかは噛んでみる
  ・売上が激減しても3足1,000円の靴下ブームに乗らず、品質と価格を維持し国内生産にこだわる
  ・顧客の店頭で製品が滞留していれば、売れずに製品を卸していた自社の営業マンを叱りとばす
  ・協力工場を大切にしながらも、運命共同体ではないのだからと常に自立を促す姿勢
  ・多くのアパレルメーカーに先んじ、SCMを構築したその先見性

  上記キーワードに「一生一事一貫(一生を通じて、一つのことを貫き通す)」を挙げましたが、縁あって丁稚奉公時代に出会った「靴下」に生涯を捧げたその姿勢には、胸を打たれるものがありますね。
    全編、関西弁の語り口調で記され、決して洗練された内容ではありませんが、それが余計に説得力を増しているようにも思います。「中小企業経営は楽しいよ」と語る著者。笑顔で写った表紙の写真が素敵ですね。

          
                                                                                                                                     2016- 5-14 VOL.151

   

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