2023-12-24 Vol.549
【概要】
「賃上げこそ最重要課題。」
先般の参院予算委員会でも、岸田首相のそんな発言がありました。発言は「賃上げにより可処分所得を拡大し、経済成長を実現した上で、果実を多くの方に分配していく。」と続きます。
多くの企業にとっても、賃上げは、社員の採用率や定着率向上、モチベーション向上のためには不可欠な取り組みであり、折からの物価上昇もあり、社員にとっても切実な希望となっています。
問題は、その原資の確保にあります。賃上げは人件費を増加させ、会社の利益を減少させます。原材料費や電力費などが高騰する中、販売価格に転嫁出来ず、賃上げどころか、足元の利益確保に苦しんでいる企業、特に中小企業は少なくないのではないでしょうか。
賃上げ原資確保のため、会社の高収益化を図り、かつ賃上げ(高賃金化)を実現するためのコンセプトや仕組みを明かそうとするのが本書。著者は、高収益企業で知られるキーエンス出身の田尻望さん。
キーエンス退職後、起業をするも失敗。飲食店に勤務し、糊口をしのぎつつ、経営コンサルタントへ転身。100社を超える支援経験を通じ得た知見が、本書の下地となっています。
【構成】
全6章で構成されています。第1章~第2章では、賃上げのメカニズムや、高収益化と賃上げの両立方法について言及。第3章以降では、その実現のための個人やチームとしての取り組みや、組織としての構造改革など、個人、組織の両面から解説をし、総括しています。
【所感】
「1人1時間あたりの付加価値生産性」を高めるために何をすべきか。
本書の結論はこれに尽きます。「付加価値」とは売上高から原材料費や外注費、その他外部からの購入費用を差し引いた金額。いわゆる粗利です。「付加価値生産性」とは「付加価値額÷労働量」であり、なるべく少ない労働量で、高い付加価値を上げることで上昇をしていきます。
賃金とは経営上のコストであり、賃上げを望む社員とコストを抑え、利益確保を図りたい経営陣では、その利害は一見反します。そこで重要なのは、社員と経営陣が手を取り合い、まずは付加価値を高めることに注力すること。次に経営陣は、そこで得た収益をきちんと社員に還元する仕組みを構築することにあります。
本書では、そもそも社員自身が、自身の賃金の源泉がどこにあるか理解していない点や、高付加価値化や賃上げに対する意識の低い経営者は論外である点を厳しく指摘。
付加価値の基本となるのは売上であり、これはお客様に提供をしている価値の価格です。売上が増えないということは、自社の商品やサービスは、お客様に価値を提供出来ていないということ。お客様に支持される価値を、いかに効率良く提供出来るか。高賃金化のスタートはそこにあり、そのための仕組みをどう作るかがキーポイントとなります。
社員やチームは、自らの業務を棚卸しつつ、効率的な業務実施を、組織内で拡大出来ないかを考え、経営陣は、そのための組織体制と適切な人材登用を実施。その上で、労使ともに納得感のある報酬体系構築が重要と説きます。
具体的な施策については、是非本書をご参照いただきたいと思いますが、その要所は、ずばり「数値化」にあるようです。様々な施策は、具体的にどういう成果を生んできたのか。基準をきちんと設定し、成果との差異を数値で示すこと。それが労使ともに評価や処遇、成果配分の納得感を生み、更なる組織全体のモチベーション向上へ繋がるとのことでした。
クロスメディアパブリッシング 2023年12月21日 初版発行
【概要】
「賃上げこそ最重要課題。」
先般の参院予算委員会でも、岸田首相のそんな発言がありました。発言は「賃上げにより可処分所得を拡大し、経済成長を実現した上で、果実を多くの方に分配していく。」と続きます。
多くの企業にとっても、賃上げは、社員の採用率や定着率向上、モチベーション向上のためには不可欠な取り組みであり、折からの物価上昇もあり、社員にとっても切実な希望となっています。
問題は、その原資の確保にあります。賃上げは人件費を増加させ、会社の利益を減少させます。原材料費や電力費などが高騰する中、販売価格に転嫁出来ず、賃上げどころか、足元の利益確保に苦しんでいる企業、特に中小企業は少なくないのではないでしょうか。
賃上げ原資確保のため、会社の高収益化を図り、かつ賃上げ(高賃金化)を実現するためのコンセプトや仕組みを明かそうとするのが本書。著者は、高収益企業で知られるキーエンス出身の田尻望さん。
キーエンス退職後、起業をするも失敗。飲食店に勤務し、糊口をしのぎつつ、経営コンサルタントへ転身。100社を超える支援経験を通じ得た知見が、本書の下地となっています。
【構成】
全6章で構成されています。第1章~第2章では、賃上げのメカニズムや、高収益化と賃上げの両立方法について言及。第3章以降では、その実現のための個人やチームとしての取り組みや、組織としての構造改革など、個人、組織の両面から解説をし、総括しています。
【所感】
「1人1時間あたりの付加価値生産性」を高めるために何をすべきか。
本書の結論はこれに尽きます。「付加価値」とは売上高から原材料費や外注費、その他外部からの購入費用を差し引いた金額。いわゆる粗利です。「付加価値生産性」とは「付加価値額÷労働量」であり、なるべく少ない労働量で、高い付加価値を上げることで上昇をしていきます。
賃金とは経営上のコストであり、賃上げを望む社員とコストを抑え、利益確保を図りたい経営陣では、その利害は一見反します。そこで重要なのは、社員と経営陣が手を取り合い、まずは付加価値を高めることに注力すること。次に経営陣は、そこで得た収益をきちんと社員に還元する仕組みを構築することにあります。
本書では、そもそも社員自身が、自身の賃金の源泉がどこにあるか理解していない点や、高付加価値化や賃上げに対する意識の低い経営者は論外である点を厳しく指摘。
付加価値の基本となるのは売上であり、これはお客様に提供をしている価値の価格です。売上が増えないということは、自社の商品やサービスは、お客様に価値を提供出来ていないということ。お客様に支持される価値を、いかに効率良く提供出来るか。高賃金化のスタートはそこにあり、そのための仕組みをどう作るかがキーポイントとなります。
社員やチームは、自らの業務を棚卸しつつ、効率的な業務実施を、組織内で拡大出来ないかを考え、経営陣は、そのための組織体制と適切な人材登用を実施。その上で、労使ともに納得感のある報酬体系構築が重要と説きます。
具体的な施策については、是非本書をご参照いただきたいと思いますが、その要所は、ずばり「数値化」にあるようです。様々な施策は、具体的にどういう成果を生んできたのか。基準をきちんと設定し、成果との差異を数値で示すこと。それが労使ともに評価や処遇、成果配分の納得感を生み、更なる組織全体のモチベーション向上へ繋がるとのことでした。
クロスメディアパブリッシング 2023年12月21日 初版発行