名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2013年09月

DVC00219    2011年度の1年間につき、宅急便の取り扱い1個あたり10円を東日本大震災の復興に当てる。その寄付総額は142億8448万751円。
    単に寄付金を集めるだけでなく、第三者委員会を設置。自薦他薦の寄付の申出の内、内容を検討し、緊急度や、地域再生に不可欠な先へ直接寄付を行う・・・・・・。
 
 本書は、ヤマト運輸が一連の寄付行為にいたった経緯。そしてその寄付を受け、再生の途についた団体からの報告をまとめた内容となっています。ただ出版の経緯は特に明らかになっていません。
 当初、ヤマト運輸のこの寄付行為について、パフォーマンスとする見方もなかったわけでは、ないそうですが、とてもそんなレベルの話ではないことが、本書を読むと良く分かります。

 ・上場企業が、(株主訴訟のリスクを恐れず)毎期の純利益の4割に匹敵する巨額な寄付金支出を決めれる決断力
 ・効果的な寄付とするため、民間企業ながら、指定寄付金の認定を受け全額無税となるよう財務省を動かす行動力
 ・スピードを生かすために直接、各種団体に寄付を行うが、公平性を保つ ために有識者による第三者委員会を設立させる発想力
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  ・震災後、わずか数日で被災地各営業所が独自判断で、地域の役場に直談判し、救援物資の配送を始めてしまう対応力

  「なぜこんなことが出来るのか」とのインタビューに「我が社のDNAだから」と、さらっと言いきれてしまう経営陣。

   同社の経営理念は、「サービスは先、利益は後」「ヤマトは我なり」だそうですが、未曾有の状況下において、これらの理念が生かされたことは、(当然普段の教育や啓蒙あってのこそでしょうが)まさにDNAとしか言いようがないのかもしれません。

   本書は、ジャンルで言ったらビジネス書になるのでしょうが、ヤマト運輸の経営に学ぶ云々という内容ではなく、その大半は冒頭で述べたように、東北で復興を目指す団体からの支援報告にページが割かれています。

   それだからいいのでしょうね。巻頭で糸井重里さんが寄稿してます。

   「(自分達が)責任を持って実行した復興支援につき、綿密で丁寧な報告をきっちり行う。」そんな姿勢が、ヤマト運輸という企業の在り方を一番端的に表しているのでしょう。 
  「企業が信じられていない時代」にこんな企業があること。素敵ですね。

DVC00149 「ジュガード」「ジュガード・イノベーション」が本書のテーマです。

ところで「ジュガード」って何でしょうか?

「ジュガード」とはヒンディー語で「革新的な問題解決法」とか「独創性と機転から生まれる即席の解決法」という意味があるそうです。

  本書では、常識にとらわれない思考と行動によって問題に対処すること、どんな逆境にあってもチャンスをとらえ、シンプルな手法によって臨機応変な解決策を見出す。より少ないもので、より多くを成し遂げることと定義されています。 http://jugaadinnovation.com/

  なぜあえてヒンディー語なのか、理由は説明されていませんが、おそらく著者がインド出身であること。とかくリソースの不足しがちなインドの様な新興国でこそ、この様な事例が多くみられることから、象徴的な言葉として使用をしているのかもしれません。
 
  いまや欧米(先進国)で行われている体系的な商品開発、組織運営では、莫大な資本や資源を投入しても、なかなか画期的なイノベーションが起こせない状況となっています。その背景には下記の様な要因があるとしています。

  ①リソース不足(化石燃料等の天然資源の減少、価格高騰/中小零細企業での資金不足)
  ②多様性(従業員の多様化/市場の細分化/顧客の価値観)
  ③相互の結びつき(SNS等の台頭)
  ④変化スピードの早さ
  ⑤急激なグローバル化

  そんな中、インドを含めたBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の様な新興国にこそ、実は新しいイノベーション手法のヒントがあるのでは?との調査から生まれたのが本書ということになります。

  「ジュガード」の基本原則は下記の6つです。

  ①逆境を利用する
  ②少ないものでより多くを実現する
  ③柔軟に考え、迅速に行動する
  ④シンプルにする
  ⑤末端層を取り込む
  ⑥自分の直感に従う

  本書では、各原則に1章ずつ割いて解説がされていますが、その内容は決して難しいものではありません。
 「不自由な状況を楽しみ、トライ&エラーを素早く繰り返す。決してあきらめず粘り強く取り組む。」 
個々人が、そんな考え方や気持ちを持つことが、「ジュガード」の要諦ではないかと個人的には感じました。

  「ジュガード」は体系的な従来のイノベーション手法に対抗するものや、否定するものではなく、それを補完するものとしており、体系的な従来のイノベーションが有効なケースとしても下記の3つをとりあげています。

 ①量を重視した規模の経済の実現
 ②ハードな資本の注入(大きな投資で大きなリターンを得る)
 ③効率性
 
 ここに「ジュガード」の手法を持ち込むことで、下記の様に利点が拡大するとしています。
 
 ①価値を重視した規模の経済
 ②ソフトな資本の注入(従業員の情熱を引出し、顧客との関係を強化する)
 ③柔軟性

  大切なことは、どちらか一方の手法を使うことではなく、どちらも共存させることであり、冒頭に掲げたような環境下においては、その両方を備え臨機応変に、手法の切り替えをしていくような組織運営でなければ、生き残れないというのがその理由の様です。 こう書いてしまうと簡単ですが、これはなかなかハードルが高そうです。

  まずは個々人が「ジュガード」的な発想に頭や行動を切り替えていくこと。そしてそれを容認する組織風土の醸成。まずはそんなところからスタートでしょうか。

DVC00134  デジタル・ディスラプション=「デジタル時代の創造的破壊」とは、何でしょうか?

  本書では「(デジタル技術を活用して)顧客の欲求を第一に考え、無料のツールを活用・提供し,迅速に、商品・サービス・仕組みに革命を起こすこと」と定義をしています。

    その象徴的な例として、ロス在住の12歳の少年(※)が、iPhone SDK(アプリケーション開発のためアップル社が提供しているソフトウェア開発キット)を用い、自ら開発したプログラムを、iTunes App Storeで販売している様子が挙げられています。

  従来であれば、ソフトウェアを開発し市場に送り出すためには、膨大な資本が必要であり、限られた企業しか参入が出来ませんでした。 
 ところが今や、アイデアさえあれば、誰でも無償か安価なツールを用い、自由にソフトウェアを開発することが出来ます。また驚くほど低コストで販売を行うことも出来ます。

   今後は、このようなソフトウェア業界だけでなく、デジタル化されていない産業でも、同様の動きが拡がっていくと、著者は指摘をしています。

 ①無料または安価なツールを用い ②(デジタルな)プラットホームというインフラを活用し ③(デジタルな)消費者を対象にすることで、資金がなくても、短期間で誰もが「創造的破壊」を起こすことが出来る。

    その時、企業は、個人は、どうあればいいのか?

    どうすれば自らが、デジタル・ディスラプター=「創造的破壊者」足りえるのか?

そのあたりを解き明かしていくのが本書のテーマとなっています。

  もう少し具体的に内容をお伝えしたいところですが、本書の構成のせいなのか、企業のあり方、個人のあり方を明確に区分しているわけでもないからか、どうも個人的には読みづらく、うまくとりまとめが出来ませんでした。

  ただ今後、このデジタル・ディスラプションという流れが、より加速し広まっていくことには、何ら疑いの余地はありません。 それは何故か?

  目まぐるしく移り変わり、しかもより個別の対応を要求し始めている現在の消費者のニーズに、企業が応えるためには、スピード感と個別対応をローコストで行うことが不可欠です。
少なくとも、現時点で、それを可能にする唯一の考え方が、このデジタル・ディスラプションだからです。
そしてそれは企業の構成員である個人にも、これまでのビジネススタイルを改めざるをえない影響を及ぼすことが想定されるからです。

 なんだか随分乱暴な紹介となってしまいましたが、こんな一つの大きな潮流が生まれつつあることを、御理解いただければと思い、今回は本書を取り上げさせていただきました。





(※)TED Talksで、同少年のプレゼンテーションを観ることが出来ます。
 トーマス・スウォレズ 「12歳のiPhoneアプリ開発者」

  http://www.ted.com/talks/thomas_suarez_a_12_year_old_app_developer.html

DVC00121   久しぶりに、ずっと手元に置いて、読み返したい本に出会いました。

 ちまたに溢れる様々な経営手法の書籍。でも経営手法を学ぶ以前に働く人みんなが知っておくべき、経営学そもそもに関する基礎的知識、すなわち「みんなの経営学」があってしかるべきではないのか?
そんな著者の疑問が、この本の執筆動機だそうです。

  そもそも「経営学」って何なんでしょうか。

  本書の中で、「経営学とは企業行動の原理や経営管理のメカニズムの解明とより良い経営活動の導出」とあります。そしてそれは企業や組織の構成員である「人間の行動や意思決定」を取り扱う学問領域であるとしています。

 「経営とは他人を通して事をなすことだけれども、人を直接動かすことはできない.。なぜなら、人は一人ひとりが主体的な意思決定や行動をする存在」だからだそうです。

  自身で考えるがゆえに、しばしばその意識決定や行動は客観性を欠くことがあります。経営理論を知ることは、ビジネスの場で自身が勝手に「これしかない」と思っていたやり方を見直すきっかけにつながります。また共に働く者同士が、経営理論という共通の認識を持つことで、よりよい組織運営につながることは明白かと思います。

 本書は、経営学がなぜ必要なのかという根本的な問いに始まり、企業論~モチベーション論~リーダーシップ論~組織論~経営戦略論、と各経営理論につき、非常に分かりやすく解説されており、まずは経営理論全般の入門書として非常に優れているという印象を持ちました。

 なおかつ各理論の中から最低限押さえておくべきエッセンスをうまく抽出し、普段の実務の中に、いかに生かしていくかについて言及している点も非常に参考になりました。

  著者は、単に理論を振りかざすことは意味がないが、かといって(理屈じゃないとばかりに)現実や経験に謙虚になりすぎて精神論に終始しても意味がない。理論と現実・経験は両方が大事で、それらの往復運動が肝要と語っています。
 
    やみくもにビジネスの現場に飛び込んでいくのではなく、一つか二つ何か使える(各経営理論にある)フレームワークはないか探してみる。あるいは、まずは飛び込んでみるが、時折振り返ってみて、自身の経験を整理し、何かそこに普遍的なエッセンスはないか考えてみる。

    そんな繰り返しが、経営学をきちんと実務の場で使える「みんなの経営学」にしていくのかもしれませんね。

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