名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2014年02月

写真   そういえば、いわゆる「ヤンキー」って今やほとんど見ることがありませんし、そもそも「ヤンキー」という言葉自体を、ほとんど聞かなくなっています。

  ところが、かつてのヤンキーは、服装も精神もいたってマイルドな新ヤンキーに進化?をしていました。

  著者はそれを「マイルドヤンキー(新保守層)」と名付け、多少昔のヤンキーを彷彿とさせる「悪羅悪羅(おらおら)系残存ヤンキー」と「ダラダラ系地元族」に分類し、その実態に迫っています。

  何故、そんなアプローチを試みるのか。

  それは「若者がモノを買わない。お金を使わない」と言われる昨今、比較的旺盛な消費意欲を示す層だからであり、その消費動向を掴むことはマーケティング上、無視出来ないものになっているからだそうです。
 
  本書では、135名のマイルドヤンキーの若者への調査を通じ、その消費動向を丹念に解き明かしていきます。

  例えば、マイルドヤンキーの消費動向には、こんな特徴があるそうです。

  ①地元大好き 
  ②ダラダラと仲間で集まり一緒に過ごすのが好き
  ③弱い上(京)昇志向 「なぜ都会に行く必要があるの?」
  ④イオンモールは、なんでも揃う夢の国
  ⑤旅行は別に好きではないが、TDLだけは大好き
  ⑥みんなが乗れるミニバンが欲しい
  ⑦一軒家を構えてこそ一人前
  ⑧EXILE好き
  ⑨今だ喫煙率高く、ギャンブルやアルコール好き
  ⑩スマホは苦手、閉じたSNS利用   etc

  いや~面白い。
  でも40代以上の人には、ほとんど理解し難い世界なのかもしれません。

  本書の取材対象となっている世代(20代前半~30代前半)は、その生涯の大半を、「失われた20年」と言われる不安定な経済環境下で過ごしています。
  彼らには、もはや親や先輩達の価値観は到底理解が出来ません。そんな中、彼らが辿りついた考えは、とにかく安定をしていたい。
  住み慣れた場所で、いつまでも地元の仲間達(小・中学校までの同級生)と一緒にいたい。夢や大志を抱くより日々の何気ない生活を大切に過ごしていきたい。 そんなところなのではないのでしょうか。
 
  そんな彼らは、これからどんなものに消費をしてくれるのか。
  彼らに対し、どんなビジネスを展開したら良いのか。いくつかのヒントやアイデアが挙げらています。、

  確かに一時の消費層としては、彼らはとても有力な層かもしれません。でも個人的には、彼らの存在には非常に危惧を覚えました。
  この極端な地元志向と上昇志向の無さが、これからの若者達の大半の傾向だとしたら、とても経済の活性化どころか、国際競争なんて望むべくもない。もはやこの国に未来はないのではないか。

  それは、言いすぎでしょうか。

image    新規創業、起業家輩出の必要性が声高に叫ばれつつも、なかなか実現出来ない今の日本。

  不安定な経済環境下ゆえに、公務員や大企業への就職を望む学生やその両親。リスクを冒さず、自分の就任期間だけ、そつなくこなしたい経営陣。そんな安定志向、事なかれ志向が、余計に閉塞感や停滞感をもたらせてしまっている。
 
    そんな中、ベンチャー企業こそが、日本の停滞を打ち破る存在であり、その育成と起業家の輩出が、これからの日本には不可欠であること。
   起業家になることは、決して特別なことではなく、日本にはそれだけのポテンシャルを持った人材が十分に揃っていること。
  あとはいかにチャレンジを恐れないよう、マインドセットを変えていくのか。  そんなメッセージが熱く込められているのが本書です。

  10数名を超える、(日本の)若手ベンチャー経営者へのインタビューを中心に、ベンチャー・キャピタルよりもっと早い段階から企業を支援するアクセラレーター が台頭し始めているシリコンバレーの現状や、積極的にベンチャー企業の技術を買い上げ、自社のビジネスモデルに取り込んでいく、米国企業の様子等が描かれています。

  本書に登場する若手経営者には、人生を賭してこのビジネスに挑んでいるという悲壮感は、あまり感じられません。むしろ冷静にリスクを見据えており、手堅さすら感じてしまいます。

  IT系や、比較的高学歴な経営者へのインタビューが多いせいなのかもしれませんが、中でも 株式会社スポットライト http://www.smapo.jp/ の柴田陽社長のインタビューは、これからの起業家にとって示唆に富んだ言葉が多かったように思います。

  例えば、彼はこう語っています。

 「起業をする上で、精神論は否定しません。出資を募って起業をするのだから、覚悟や責任は必要です。ただ、人から投資を受ける覚悟や責任と、個人の人生のリスクはまったくの別物です。というかこれを同一視することしかできない人は起業家には向いていないと思います。個人が抱えうるリスクはそれぞれヘッジすべきです。」と。

  現に彼は、起業時においても、別に生活の糧を確保する姿勢を崩さず、失敗しても再チャレンジが可能な仕組みを自ら構築しつつ創業をしています。

  こんな風なマインドセットを持つだけでも、随分と起業に対する心理的なハードルは下がるのかもしれませんね。
  
  非常に参考になる点の多かった本書ですが、実は個人的に一番考えさせられたのは、著者である並木裕太氏が代表を勤めるコンサルティング会社のスキームです。

  本書内では、1章をこれからのコンサルティングのあり方として割いています。

  なんでも自前でやりたがり、ベンチャー企業との取引や提携も積極的に出来ず、外部の知見としてのコンサルティングファームをうまく活用出来ない日本の企業の多さ。

  そこの打破も、日本でベンチャー企業が育っていく上で不可欠なこととし、こんなコンサルティングサービスを手掛けています。
   クライアントに対し、単に提言をするだけでなく、自ら提言内容を実践し、新規ビジネスの立ち上げや創業に積極的に関わっていく。
  そしてコンサルティング報酬を得るのではなく、成功報酬として、その事業を将来買い取ってもらう。
 
  そういったビジネスモデルに抵抗の無い企業が増えていくことも、これからの日本には必要なことであるし、結果責任を負うコンサルティングファームが増えることで、その活用の仕方もより有効なものになっていくのかもしれません。

  (中小)企業支援に携わる我々も、このあたりの考え方は参考にしていく必要がありそうです。

写真  ビジネス書というより、郷土史という方が適切かもしれませんが、なかなか良い本なのでご紹介。
 
  中日新聞での連載記事をとりまとめたものですが、実は中部財界史をとりまとめた書籍というのは意外となかったのだとか。

  この地域の財界というと、五摂家(松坂屋、中部電力、東邦ガス、名古屋鉄道、東海銀行)が思い浮かびます。

  東海銀行は、もはや存在しませんし、松坂屋は大丸との経営統合、名鉄グループは低収益に喘いでいます。
そして中部電力でさえ、今期中間決算は無配に転落・・・・・・・
残念ながら今や、どの企業にも往年の威光はありません。

   しかし、明治後半から大正~昭和、特に太平洋戦争以降、この地域の著しい躍進を支えた中心企業であったことは揺るぎない事実です。

  関東圏、関西圏に挟まれ、ややもすれば存在感が薄れがちな東海圏、中部圏において、強い危機意識を持ち、高い先見性とブレない軸で、この地域の発展に邁進した経営者の面々。ちょっと胸熱くなるものがありました。

 本書を読んで、中部日本放送(CBC)誕生には松坂屋が一役買っていたり、戦後の電力再編成をけん引したのは中部電力であったこと。また名古屋テレビ塔建設の影には、名古屋鉄道があったことを知りました。
 
    自社の主力事業のみならず、他者を巻き込みながら次代の産業や事業創設にも積極的に関わってきた、その姿勢。高度経済成長という背景があったにせよ、彼らなくして今の東海圏、中部圏の発展はなかったと言っても過言ではないのかもしれません。

 本書では、他にも森村グループ、岡谷鋼機、滝兵、瀧定、盛田、ミツカン、敷島製パン、ブラザー工業、ミキモト等が登場します。五摂家以外にも、この地域の発展を支えた企業群の多さに改めて驚かされます。

  そして、ものづくり地域と言われるだけに、最後の章では零戦にまつわる逸話が色々と紹介されています(映画 風立ちぬや永遠の0を意識したのかもしれませんが)。
 
   いやぁ面白かった。そして初めて知ることも多々ありました。
名古屋を含め、この地域で働くビジネスマンにとっては一読の価値がありますね。
商談や雑談時に、いいネタを提供してくれること間違いなしの一冊です。

写真  オープンソースWeb開発フレームワーク「Ruby on Rails」の開発元として著名な「37シグナルス http://37signals.com/」  その創業者兼CEOが語る新しい働き方「リモートワーク」の提案。
 
  世界中に散らばる36人の社員を率いつつ、数百万というユーザー対応をする同社。
 
   今や、高度に通信技術が発達し、様々なツールやソフトウェアが生まれ、どこにいても世界中の人と簡単にコミュニケーションができる時代。

 なのに、なぜオフィスが必要なのか。

 皆が一つの場所に集わずとも、高いパフォーマンスを発揮出来る「リモートワーク(在宅勤務)」について、自社事例を引き合いにしながら、解き明かしています。

    リモートワークに対して、恐らく多くの人が抱くであろう疑問点の解説に始まり、具体的なリモートワークの進め方や、人材採用、マネジメント、個々の仕事のスタイルの在り方に至るまで、懇切丁寧に記されています。

  またリモートワークのメリットだけでなく、デメリットについてもきちんと触れていますが、そこまで踏み込めるのも、同社が真にリモートワークを実践している企業であるとの自負があるからかもしれません。

  ところで、リモートワークとは同社の様な、IT企業、ソフトウェア業だから可能なのでしょうか。

  著者は、リモートワークに向く業種として、こんな業種をあげています。

  経理/会計 ・ 金融 ・ 広告 ・ コンサルティング ・ カスタマーサービス ・ 保険 ・ デザイン ・ ハードウェア ・ 映画製作 ・ 行政 ・ 法律 ・ マーケティング ・ 人材紹介 ・ ソフトウェア etc。
 
  いわゆるホワイトカラーと言われる人々の取り組む仕事の大半は、リモートワークが可能だということなのでしょう。

  「自社に弁護士や税理士を抱える企業は少なく、これら専門性の高い業務に対し企業は当たりまえの様に外部の人や機関を使い、当たりまえの様に、自社の秘密や情報を与えている。ならば、これら以外の自社の業務についても、リモートワークとして外部に切り出すことに、何の問題があるのか。」との一文が本書内にあり、はっとさせられました。
 
  どれほどの技術発展があったとしても、そもそも自社内の個々の業務内容や範囲を、きちんと定義出来なければ、社内に残す業務、社外に出す業務の切り分けも出来ません。
リモートワークに対する穿った先入観だけでなく、実はこういった部分の未整備こそが、障害になるのかもしれません。
 
  そして何よりも大切なのは、リモートワークに参加するメンバーなのでしょうね。

  お互いに離れて仕事をする以上、個々がもつスキルや専門性の高さも必要ですが、まずは自身のスケジュール管理を始めとした自己管理能力、そして顔を合わせないが故に、コミュニケーション能力の高いメンバーでなければ、そもそもこのモデルは成り立たないのかもしれません。

  なぜなら、やはり管理をしたり、動機づけをするには一か所に集めてしまう方が楽だから。
 
  ただ、これからの時代、もはや企業は人を雇用し、生涯面倒をみるなどということは不可能です。必要な業務やプロジェクトごとに、社内外から適切な人材を集め業務を遂行し、目的を達すれば解散をしていく・・・・.。
そんなスタイルが主流になっていくと思われます。

  となれば、高度なスキルや専門性を持たない、ましては自己管理が出来ない人材がどうなるかは、リモートワーク云々を抜きにしても想像に難くありません。


  250ページ程で、版型も小さく、3~4ページに1ページの割合でイラストが挟まっているため、とても読みやすい本でした。
  
  軽く読めますが、これからの組織は、働き方はどうあるべきなのか、様々な示唆を与えてくれる一冊でした。

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