
東日本大震災の被災地、宮城県山元町。一大イチゴ産地ながら、震災でイチゴ農家129軒中122件が壊滅。
そんな中、生まれ故郷を救うため、未経験ながら、IT技術を駆使した巨大イチゴ農園を建設した岩佐社長。
それからわずか3年。伊勢丹で1粒1,000円で売られるイチゴ。

「ミガキイチゴ」のブランディングに成功するまでの物語。
さらっと軽妙に書かれた手頃なページ数の本ですが、ビジネス本として極めて秀逸な本だと思います。何故か。
震災復興、農業振興の実例という面も当然ありますが、何より働くということ、ビジネスに取り組むための姿勢の要諦が、極めてコンパクトに分かりやすい言葉で語られているからです。
ちょっと挙げてみるだけでも
□仕事は「社会にどれだけインパクトを与えられるか」。やがてそれがお金に変わる。
□「何もない」ことを悲観せず、むしろ「ゼロから創りあげる」ことを楽しもう。
□弱者が勝ち残るためには、得意な部分を磨きに磨いて「一点突破」しよう。
□わからないときは調べまくる。最後は。専門家に聞きまくる。
□リーダーはコミュニケーションを最後まであきらめてはいけない。
□ギャップや小競り合いはイノベーション(革新)の源泉だから大切にしよう。
□ルールに従って勝てないなら、新しいルールをつくろう。
□命さえあれば取れない「リスク」なんてない。
□ロジカル、情熱、ストーリーで人を巻き込もう。
□チャンスは人が連れてくることに気づこう。
ちょっと読んだだけでも、何か勇気が湧いてきますよね。
現在、岩佐社長は、このイチゴ栽培の技術を引っ提げて、インドそしてサウジアラビアでの農園開発支援に取り組んでいます。
「宮城のイチゴ栽培も、まだまだ道半ば。なぜ海外に行くのか」と、仲間からの猛反対を受けても、彼は挑戦をします。
彼の答えは明確です。
チャンスに二度目はないから。
完璧にしてから行くのでは遅い。8割まで行ったら次に進むべきと語っています。
そして「電光石火」で行こう。スピードを高めるとむしろ質は上がるからと結んでいます。
何故これほどのスピード感、危機感を持って動けるのか。
勿論、岩佐社長の資質の高さがあってのことですが、やはり東日本大震災が彼に与えた影響は、計り知れないように思います。
まだまだ復興道半ばの東北ですが、一人でも多く、彼のような人材が出てくること。
再生の鍵は、そこにあるように思います。