
本書は、最新の税制動向に基づいたアップデート版であると同時に、企業の「運」や「実力」についても言及をした、ちょっと変わった構成となっています。
著書も、「ちょっと不格好な本になった」とは冒頭で述べていますが、読み終えてみれば、そんなことは気にさせない示唆に富んだ一冊でした。
余談ですが、 実は私は10年程前、著者、岡本吏郎氏の新潟の事務所を訪ねて、直接お会いしたことがあります。
1時間程の面談でしたが、普通の税理士とはちょっと(かなり?)違う、そのユニークな発想や事務所の運営方法に、非常に感心した覚えがあります。
さて本書の内容ですが、大きく二つの構成となっています。
一つは最新の税制改正動向を盛り込んだ、会社にお金を残すためのシミュレーション。
法人課税軽減、個人課税重増のトレンドを受け、いかに会社にお金を残すか緻密なシミュレーションを繰り返しています。
随分と平易には書かれていますが、ちょっとここは知識がないと理解は難しいところがあるかもしれません。
そしてもう一つは「運」「実力」「可能性」についての考察。
数字というリアルな世界について触れながらも、何故にその一方で、非科学的も言える「運」に言及しているのでしょうか。
企業の成功には「運」と「実力」が不可欠です。どんなに「実力」のある企業であっても、運には抗えない。
優れた製品や商品、サービスを世に出したところで、受け入れられず消えていってしまう例には暇がありません。
うまくいかなかった理由付けはいくらでも出来ますが、端的に言えば「運がなかった」と。
しかし「運」のもつ影響度を下げることは、可能であると氏は説きます。ただそのために最も大切なことは何か。
種明かしはしませんが、それが一見内容の異なる二部構成となっている本書を繋ぐ要諦と言えるのかもしれません。
他にも「可能性」についての考え方や、企業が取るべき行動につき、ノウハウ、セオリー、メソッドと違いをうまく整理しつつ言及していたりと、独自の目線に気づかされる点が多々ありました。
ただ全般に引用が非常に多く、硬軟混ざって面白い反面、ややもすると本文を見失いがちになりますので、その点はちょっと注意が必要かもしれません。