名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2014年06月

写真②    組織風土改革の第一人者、柴田昌治氏の新作。
といっても、本書は書き下ろしではなく、日経情報ストラテジーでの連載記事を抜粋、加筆修正した内容となっています。

 「成果を出す」というのは、様々な捉え方が出来るかと思いますが、本書では、働く人が自らの成長を感じられるような環境が用意され、そういう働き方が出来るようになることで、結果として企業の成果につながっていく状態は作り出せないものか。
  企業の業績と、そこで働く人の働きがいとを同時に満たすことが出来る経営は、どうすれば実現出来るのかがテーマとなっています。

  また併せて、欧米の組織改革のうわべだけを真似し、その根底では相変わらずの精神論を振りかざす日本的マネジメントが限界に来ていることへの警鐘も鳴らしています。
  
  さて企業が成果を出し、それを維持し続けるために必要なキーワードは二つ。

  一つ目は、「考える力」。
  経営層のみならず社員全員が「考える力」を持つこと。
  ここで言う「考える力」とは、「(目の前の仕事を)どうやるか」ではなく、「そもそもと、意味・目的・価値等を深く問い直す力」のことを指しています。

  二つ目は「自己再生力」。
 「自己再生力」とは、その企業が一時だけ、いい状態を維持するのではなく、絶えず今よりも良くなっていこうとする内在的な力のことを指します。そのために不可欠なのは、社員の会社への帰属意識を高めることと、組織の一体感を醸成していくこと。

  本書では、思考錯誤し苦労しながらも、これらの「考える力」と「自己再生力」を獲得し、成果をあげつつある6社の事例が紹介されています。

  目指すところは同じなれど、企業規模や経営環境が異なれば、その取組方法は各社各様で、それぞれに違いが出るものです。これら各社の事例紹介が、単なる理屈の解説に終わらず、本書の主張により説得力を持たせています。
 
  ただいづれの会社でも、必ず行われていることは「オフサイトミーティング」
  これは以前から柴田氏が提唱している手法で、組織や部門の壁を越え「気楽にまじめな話をする場」を設けること。
  その目的は、組織のメンバー同士がきちんと向き合い、自分の言葉で話し合うことで、個人の意欲や他者と協力していこうという自発性や「考える力」を高めることにあります。

  実は当事務所でも、10年程前に個人的にこのオフサイトミーティングを主宰したことがありますが、長続きせず頓挫した経験があります。

  主旨がうまく理解されなかったこと。経営陣の参画を促せなかったこと。要因は色々とあるのですが、結局のところは、主宰者自身が、粘り強く継続する気持ちが足りなかったこと。

  本書の事例の中でも、なかなか軌道に乗らない、成果が出ないといった状況下でもあきらめず、取組み続けたケースがいくつも紹介されています。トップの揺るぎない信念や主宰者の地道な取組で、その壁を突破していくのですが、真に皆で思いを共有する難しさを、改めて感じますね。
それだけに、その実現は企業に大きな成果をもたらすのかもしれません。

  陳腐な話となってしまいますが、結局大切なことはコミュニケーション。
対話をする手間、思いを伝える気持ち、惜しんでは駄目ですね。

写真③    2014年4月発売なので、新刊という訳ではありませんが、今週、著者の山田氏から直接、講義を受ける機会がありましたので、本書をご紹介。

  著者の山田氏は、外資系を含む6社の企業経営者を経てコンサルタントに転身した人物。

  自身の経営者経験を通じ、「使える」経営戦略立案の重要性を知る著者が、「戦略カード」と呼ぶ小さなカードを用い、5つのステップを踏むことで、部門戦略や全社戦略の立案を可能とするノウハウを紹介しています。

 5つのステップは

 ①目標設定 ②課題の発見 ③解決策の策定 ④派生問題と対処
 ⑤発表 となっており、①~④までで作成したカードを、パワーポイントのテンプレートに転記することで⑤の発表形式にまとまる形となります。

 使用するのは、このような「戦略カード」 (巻末に添付しています) 写真①

カードを使って、アイデア出しをするという手法は、別に珍しいものではありませんが、カード上段に設けられたチェック項目がポイントになっています。全て同じカードを使用しながら、この項目で分類をしていきます。

まずは①②③と、各テーマに沿って、出来るだけ多くのカードを作成していきます。
まずは①の「目標設定」として作成したカードから、3大目標として3つのカードを選びます。
次に②の「課題の発見」でも、多くのカードから、重要課題3つのカードを選びます。そして②で選んだ3つのカードに対応する「解決策の策定」カードを各課題につき3枚づつ選んでいきます。
最後に③で作成した9枚のカードに対し、1枚ずつ「派生問題と対処」カードを作成していきます。
 結果、3枚+3枚+9枚+9枚=24枚のカードが完成します。

 カード作成に際しては、箇条書きではなく、文章で書くこと。①~④で選択したカードの裏側には、全てそのカードを選んだ理由を記載することなど、いくつかの押さえるべきポイントがありますが、さほど難しいことはありません。

 とにかく感心するのは、このシステマティックな一連の流れです。そして行う作業に無駄がなく、全ての過程がとても理にかなっていること。

 例えば、優れた経営戦略は、聞く人をワクワクさせるようなストーリー性がなければならないとは、良く言われることですが、なかなかそんなストーリーが語れるものではありません。

 しかしカード作成において、文書で書く、選択したカードに裏書きをするという行為が、こういったストーリー作成にうまく寄与しており、単に目標設定から課題解決までを一連の手順で整理するという手法ではなく、こういった点もうまく練られているところは本当によく出来ていると思いました。

 世の中に「経営戦略」の解説をした本は、多々あれど、「経営戦略」立案手法について書かれたものは、ほとんどなく本書が唯一のものかもしれないという著者の話も、決して誇張ではないと思います。

 自身の経営者経験に裏打ちされた本当に使える経営戦略策定手法。
 部門責任者等、何らかの立場で戦略立案をする立場にある方には、必読の一冊。お薦めです!
  

写真 「戦略」とは何でしょうか。

 著者は、戦略とは未来を形づくることであると語ります。
でも、どんなに優れた計画であっても、実践され目指す方向に現実を動かしていかなければ、意味がありません。
  
 そしてその当事者となるのは、特に企業においては、我々の様なビジネスパーソンに他なりません。
 
 本書では、我々ビジネスパーソンが理解し、身につけておくべき24の戦略が紹介されています。

 戦略家になる心構えから始まり、戦略の活かし方までの5部に分け、この24の戦略を1章ずつに分類しています。

 各章の構成は全て統一されており、各戦略につき「目標」「背景」「課題」「成功の基準(チェックリスト)」「落とし穴(まとめ)」「こんなアイデアも」と6つの項目に分けており、各戦略の意図するところから、その発展的な解釈まで踏み込んでいるため、とても分かりやすいものになっています。
 
 「大全」という仰々しいタイトルがついていますが、決して名前負けしていませんね。
教科書的に戦略を網羅した書籍は、多々ありますが、ここまで実践し易い形でまとめたものはそうはないのではないでしょうか。

 本書の性質から言って、これは折に触れ読み返すタイプの書籍だと思います。

 本文内には、特に記述はないのですが、各戦略のタイトルページには、戦略を使用すべきタイミングや頻度 戦略に関わる主な対象者、そして重要度が★の数で表わされています。

 そのタイミングとは、すなわち本書を開く機会でもある訳で、このタイトルページだけをコピーするか、一覧にまとめておくことで、より有効活用出来るのではないかと個人的には思いました。

 帯を見てしまうと、世界に名だたる有名企業ばかりで、中小企業や経営幹部でない者には関係ない書籍かと思ってしまいますが、そんなことはありません。

 規模を問わず、どんな企業や組織、また個人にとっても戦略と無縁ということは無いわけですから。


 本書巻末には、27の重要な経営戦略のフレームワークが見開き2ページで完結にまとめられており、これもとてもよく出来ています。著者も、ここを先に読んで、本文に戻る読み方も推奨していますので、自身の関心のあるフレームワークから入ってみるのもいいかもしれませんね。
 
 う~んホントに良くできた一冊。経営戦略決定本と言っても過言ではないかもしれません。  

写真  2011年3月29日、上場廃止となった三洋電機。
かつて10万人以上いた社員の内、三洋電機を買収したパナソニックに残った社員は、わずか9,000人余り・・・

 戦後に生まれ、携帯電話、デジカメ、太陽電池などの新規事業に先鞭をつけ、ピーク時には、2兆5,000億円を超える売上高を誇り、ネットバブル崩壊後は、数少ない勝ち組電機メーカーと言われ、当時の社長、井上敏氏は「ナニワのジャック・ウェルチ」とまで呼ばれました。
 
  経営不振で、存亡の危機に立たされた企業は少なくありません。
かつての日産自動車、三菱自動車、そして最近では日本航空(JAL)等があります。
  日産自動車は仏ルノー傘下に。三菱自動車は三菱グループ全社で支援。そして日本航空(JAL)は会社更生法の適用まで追い込まれながらも国の支援等を受け再生をしました。
   
    なのに何故、三洋電機は存続することが出来なかったのか。

  保有する技術力、知名度、雇用者数が及ぼす地域経済への影響、常識的に考えても、何らかの形で存続してしかるべきと思われましたが、残念ながらそうはなりませんでした。

  さて、本書は大きく二部構成となっており、前半部分では、経営不振から上場廃止に至るプロセスを追いながら、何故に三洋電機は「消滅」をせざるをえなかったのかという理由に迫っています。
そこには、支援を表明した金融機関3行や最終的に買収をしたパナソニックの思惑が見え隠れします。

  そして後半部分では、会社を失った社員達のその後の様子を追っています。
解体され売却された多くの事業。ハイアールや京セラへ事業ごと売り渡された社員、最後の三洋ブランド製品を売り切った社員、電池技術ベンチャーを起こした社員、異業種の西松屋に転職した社員 etc

   不遇な状況に置かれながらも、前を向き、新天地で活路を見出そうとする彼らの姿勢には、胸打たれます。
彼らは、ほんの一握りの社員に過ぎませんし、インタビューに応じれるということは、それなりに新しい生き方に納得し、居場所を確保しつつある恵まれた人たちなのかもしれませんが、元社員達の多くに勇気を与える存在であることに間違いはないように思います。

  実は本書を読んで、個人的に一番印象に残ったのは著者の下記指摘です。

  三洋電機の「消滅」という事態は、今後多くの企業でも起こり得ることであり、あるいは日本そのものが、そうなりつつあるのではないか。
   産業革命以降、多くの産業を生み出した英国、第二次大戦後、世界経済を牽引した米国。
技術のキャッチアップで、これらの国に追いつき、そして今アジア勢に追われ、追いこされる立場となった日本。
 
 その流れに抗うことは出来ません。ただ欧米は産業を失っても、資本家は残ったと著者は指摘をしています。そこには、資本家の財産を守るプライベートバンカーの存在があると言います。

 かつて日本の電機メーカー各社は、創業家の資産管理会社を持っていました。
パナソニックの松下興産、ソニーのレイケイが著名ですが、その全ては不動産投資やリゾート投資で破綻し、創業者の資産を守るどころか、保有株式も雲散霧消する結果に終わっています。
 これは電機メーカーに限らず、他の企業でもよく聞かれる話です。
 
 本来であれば、一時代を築いた創業家は資本家となり、その資本を次代の産業へ投資していくことで、資本は循環をしていく。それが資本主義なのだと。残念ながら、日本にはそれがありません。
  税制、プライベートバンカー不在等の要因もありますが、一億総中流で、資本家という存在を忌避しがちな日本人の気質も大いに影響をしているのかもしれません。

  経済成長で一時代を謳歌しつつ、こういった資本蓄積の出来なかった日本。
その末路は欧米以上に悲惨なものになるのかもしれません。


 明日には自分の会社が無くなってしまうかもしれない。その覚悟は出来ているか。
その時、強かに生きていける準備はあるか。そんな思いを抱かせた一冊でした。

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