組織風土改革の第一人者、柴田昌治氏の新作。といっても、本書は書き下ろしではなく、日経情報ストラテジーでの連載記事を抜粋、加筆修正した内容となっています。
「成果を出す」というのは、様々な捉え方が出来るかと思いますが、本書では、働く人が自らの成長を感じられるような環境が用意され、そういう働き方が出来るようになることで、結果として企業の成果につながっていく状態は作り出せないものか。
企業の業績と、そこで働く人の働きがいとを同時に満たすことが出来る経営は、どうすれば実現出来るのかがテーマとなっています。
また併せて、欧米の組織改革のうわべだけを真似し、その根底では相変わらずの精神論を振りかざす日本的マネジメントが限界に来ていることへの警鐘も鳴らしています。
さて企業が成果を出し、それを維持し続けるために必要なキーワードは二つ。
一つ目は、「考える力」。
経営層のみならず社員全員が「考える力」を持つこと。
ここで言う「考える力」とは、「(目の前の仕事を)どうやるか」ではなく、「そもそもと、意味・目的・価値等を深く問い直す力」のことを指しています。
二つ目は「自己再生力」。
「自己再生力」とは、その企業が一時だけ、いい状態を維持するのではなく、絶えず今よりも良くなっていこうとする内在的な力のことを指します。そのために不可欠なのは、社員の会社への帰属意識を高めることと、組織の一体感を醸成していくこと。
本書では、思考錯誤し苦労しながらも、これらの「考える力」と「自己再生力」を獲得し、成果をあげつつある6社の事例が紹介されています。
目指すところは同じなれど、企業規模や経営環境が異なれば、その取組方法は各社各様で、それぞれに違いが出るものです。これら各社の事例紹介が、単なる理屈の解説に終わらず、本書の主張により説得力を持たせています。
ただいづれの会社でも、必ず行われていることは「オフサイトミーティング」
これは以前から柴田氏が提唱している手法で、組織や部門の壁を越え「気楽にまじめな話をする場」を設けること。
その目的は、組織のメンバー同士がきちんと向き合い、自分の言葉で話し合うことで、個人の意欲や他者と協力していこうという自発性や「考える力」を高めることにあります。
実は当事務所でも、10年程前に個人的にこのオフサイトミーティングを主宰したことがありますが、長続きせず頓挫した経験があります。
主旨がうまく理解されなかったこと。経営陣の参画を促せなかったこと。要因は色々とあるのですが、結局のところは、主宰者自身が、粘り強く継続する気持ちが足りなかったこと。
本書の事例の中でも、なかなか軌道に乗らない、成果が出ないといった状況下でもあきらめず、取組み続けたケースがいくつも紹介されています。トップの揺るぎない信念や主宰者の地道な取組で、その壁を突破していくのですが、真に皆で思いを共有する難しさを、改めて感じますね。
それだけに、その実現は企業に大きな成果をもたらすのかもしれません。
陳腐な話となってしまいますが、結局大切なことはコミュニケーション。
対話をする手間、思いを伝える気持ち、惜しんでは駄目ですね。




