名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2014年07月

写真  ここ最近、孫子ブームらしく、数多くの解説本が出ています。
特に今年1月に発売された守屋淳氏の「孫子」は、ベストセラーランキングに相当な期間、名を連ねていました。
 ②写真
 また「孫子」の解説本?
と思わないわけではありませんが、「孫子」の解説書は、軍事研究者、中国研究者によるものが多い中、本書は経営学者が「経営」という観点からアプローチをした、なかなかユニークな内容となっており、今回ご紹介させていただくこととしました。

 ところで、今から2,500年もの昔に書かれた「孫子」が、今なお人々の間で、読み継がれ続けるのは何故でしょうか。
   そこには、様々な理由があるのでしょうが、一つにはその短さ、簡潔さにあると言われています。
  字数にして、わずか漢字6,000字ほど、漢文にしても40ページにも満たないそうです。そして端的な結論。それゆえ人は、その行間や字間を読みたくなる。それが色々と考えるきっかけへと繋がっていく。多くの解説書が生まれていく。そんなところかもしれません。
 
  さて、本書では、「孫子」の中から30の言葉が選ばれ、経営のトピックごとに6章に編成されています。

 1.経営の本質 2.将のあるべき姿 3.兵の情 4.戦略の真髄 5.戦略的思考とは 6.勢いは経営の肝 

 言い換えるなら、それぞれ

 1.経営者のあるべき姿 2.現場の指揮官のあるべき姿 3.現場の人々の心理 4.戦略論 5.思考法 
 6.集団心理  といったところでしょうか

  さすがに人気の経営学者だけあって、実在したリーダーや企業のエピソードをうまく交えながら(伊丹流)
「孫子」の読み方を展開しています。

  登場するのは、ウィンストン・チャーチル、松下幸之助、稲盛和夫、小倉昌男、本田宗一郎、藤沢武夫、吉田昌郎、韓信、 西山弥太郎、三枝匡、數土文夫、スティーブ・ジョブスといったリーダー達。 
  そして、サムスン、グーグル、アップル、トヨタ自動車、本田技研工業、ソニー、コマツ、東芝、3M 川崎製鉄といった企業群。

  ちょっと驚いたのは、吉田昌郎氏。同氏は震災時の福島第一原発所長であり、経営者ではありません。
そんな彼までも、とりあげる発想の柔軟さにはちょっと驚きますね。

  この類の本は、人によって捉え方、琴線に触れる箇所もそれぞれかと思います。
最初から順番に。気になる箇所から。各人各様の読み方で接しても、得るところは多いと思います。

 個人的には、この言葉が一番琴線に触れました。

 「始めは処女の如く、後に脱兎の如し ~学習する能力が死命を制する~」
 
 「まず、動いてみよ。処女の如くでいい。そこで学習せよ。そして、敵が隙を見せたら、鋭く攻めよ。」


  各章のコンパクトで的確なまとまり具合。大きな活字で読みやすいレイアウト。好著です。お薦め!



写真  本書のテーマは、イノベーション戦略を管理するうえでの最も基本的な原則について理解を深めること。

  ただ寓話仕立てになっているので、それに抵抗感を覚える方もあるかもしれません。好みが分かれる本だと思います。

  さて物語は、動物だけで経営をする架空の牧場が舞台です。
  勤勉な動物達の努力により、同牧場は、羊毛製品や牛乳製品の製造販売で安定成長をしてきました。そんな中、トップの死去(馬ですが)で後継者となった娘を中心に、高品質ウール(アルパカ)の製造に乗り出し、成功の端緒をつかむところまでの物語です。

  登場するのは、牛、馬、羊、鶏、アルパカ。
一匹一匹、きちんと名前がついていますので、読み進める上で混乱することはありません。

  架空の物語とはいえ、イノベーション研究の権威による10年以上のリサーチに基づいて練られており、非常に現実味があります。

  ・新規事業の必要性を訴える新しい経営トップと既存事業に固執する古参幹部の対立
  ・「ひらめき」をいかに事業化していくのか
  ・メンバー集めを含めたチーム作りの難しさ
  ・不採算チームのリーダーをどう評価するのか 
  ・新規事業への嫉妬と不満    等
 
  全体で19章の構成となっており、おおよそ組織内で新しいことを始める際に起こり得る諸問題を、巧みな構成で描いており、最後まで飽きずに読み進めることが出来ます。
  各章の巻末には、「ビジネス思考を鍛える質問」と「もっと考えてみよう」という問いかけが設けられており、単なる読み物で終わらせない工夫も、なかなかのものだと思いました。

  特に、個人的に印象に残ったのは、新規事業を率いるチームリーダーをどう評価するのかという点です。

  業績でリーダーを評価する組織は少なくないと思いますが、既存事業のリーダーと同じ評価は出来ません。
それでは何によるか。 新規事業で優先されるのは、「利益」ではなく「学び」。

  正しく「学ぶ」ためには、仮説、検証を何度も繰り返すこと。新規事業のリーダーに求められるのは、「計画に忠実に実験を行うこと」であり、評価は確実にそれが実行されているかに拠るべきとの話が出てきます。
 これ非常に納得が出来る話ですね。未知の領域だからこそ、計画や実験内容をきちんと定義し、進捗状況をきちんと把握すること。
  実は、それはチームリーダーの評価に留まらず、新規事業に皆を巻き込み、理解を得る上でも、極めて重要なことなのだと思います。案外これが出来ていない組織って多いのではないでしょうか。 

  薄い本ですが、様々な示唆に富んだ一冊でした。
  著者も冒頭で、物語(寓話)にすることは、学ぶスピードを早める役割を果たす。物語にすると、複雑なことや細かいことは省かれ、本質を突く生き生きとした会話が生まれるからだ。と述べています。まったく同感です。
 
    

写真②  綿100%の100番手(糸の細さ)素材、天然の貝ボタンを使用し、日本国内で縫製。そんな高品質のシャツを4,900円という廉価で提供する「鎌倉シャツ」。 http://www.shirt.co.jp/

  現在の直営店舗数は22。残念ながら名古屋には直営店はありませんが(出店検討中)、ニューヨークにも店舗を構え、日本品質で現地ビジネスマンのファンを増やしつつあります。

  59%という常識外れな高い原価率(一般的なアパレルの原価率は20%以下)をかけながら、着実に右肩上がりの成長を続けています。
  何故この様なビジネスモデルが、成り立つのか? そんな秘密に迫ったのが本書です。

  高い原価率でも成り立つのは、高い回転率と商品消化率。
回転率はメンズが0.8回、レディスは1.2回転(単位が不明ですが、おそらく月だと思われます)そして消化率は99%、バーゲンセールは一切なし。

  他にも独特の経営ポリシーを貫いています。

 ・仕入は全品買取。返品は一切無。支払は翌月現金100%
 ・工場直結の取引ルート
 ・縫製工場を巻き込んでの「品質統一会議」
 ・経営計画は作らない
 ・販売マニュアルはなく、教育研修はとりたてて行わない ・・・・ etc

  しかしながら最も特筆すべきは、その志の高さなのかもしれません。

 ・上質なシャツを誰もが気軽に買える値段で提供することで「日本人のお洒落」を誘発する
 ・男女の区別なく国際社会のビジネスにプライドを持って着用できる正統派シャツを作る
 
 という創業の思いを忘れず、

 ・優れた商品を、適切な価格と真当な方法で提供することで、顧客に利を与え
 ・適正な価格や、真当な支払条件で取引をすることで、協力業者に利を与え
 ・結果として、自社も利を得る

 そんな「利他の精神」を貫くこと。

 それを、経営トップのみならず、全ての社員が理解し、自らの行動に結びつけていること。
 それが同社の最大の強みなのかもしれません。

 それにしても同社は、1993年の創業。創業会長の貞末良雄氏、53歳での独立だそうです。
 なぜ、そんな年齢から、こんなビジネスモデルの構築が出来たのでしょうか。

 実は、氏は倒産したヴァンヂャケットで管理課長を勤めていたそうです。
 一世を風靡したアパレルメーカーが、あっという間に凋落していった強烈な体験。

 そして師と仰ぐ、ヴァンヂャケットの創業者、故石津謙介氏が語った「1,800人いた社員の中で、俺がやりたかったことを誰が受け継いでいるのだ。お前、何もやってないじゃないか」 「とにかく業界に一石を投じろ」 「世界に通用するメンズウェアを作れ」という言葉が、独特のビジネスモデル誕生につながったようです。
  
 そんな誕生秘話も、鎌倉シャツの魅力に一役買っているのかもしれませんね。
  
   斜陽と言われる繊維、アパレル産業にあっても、高い志と優れたビジネスモデルがあれば、まだまだ成長出来る可能性があることを示した同社の存在は、多くの中小企業に勇気を与えるものではないでしょうか。

 まずは一枚。同社のシャツを買ってみて、その熱い思いに触れてみたいですね。
 

写真  あ~これは抜群に面白いですね~。

  「ストーリーとしての競争戦略」で著名な楠木建氏による、14名の経営者へのインタビュー集。

  テーマはずばり、「好き嫌い」。

  何故「好き嫌い」がテーマなのか? その狙いを著者は、こんな風に語っています。

 経営者に限らず、ビジネスパーソンを動かすものは「誘因(インセンティブ)」と「動因(ドライバー)」。
 「誘因」とは、文字通りその人の行動や意思決定をあるべき方向へと「誘うもの」であり、給与や賞与、昇進や出世等がそれにあたります。
目の前にそうした誘因を提示すれば、人はそれに誘われ一定の行動をします。

  それに対し「動因」はその人の内部から自然と湧きあがってくるもの。

    経営トップともなれば、この「誘因」はほぼ達成されてしまいます。
その結果、今度は自身の「誘因」ではなく、部下を動かすためのインセンティブの設計等、内部管理に明け暮れ、単なる管理者に成り下がってしまいます。それは本来の経営トップの仕事ではないと。

  ならば 経営トップの位置にあっても、尚、その「動因」を作るものは何か。
それは結局のところ、その経営者の「好き嫌い」にあるのではないか。

  そんな仮設に基づき、精力的に活動し結果を出し続ける14名の経営者にインタビューが行われています。
14名の顔ぶれは下記の通りです。(役職はインタビュー当時)

 ①永守重信   日本電産 代表取締役
 ②柳井  正   ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長
 ③原田泳幸   日本マクドナルドホールディングス 取締役会長
 ④新波剛史   ローソン 取締役会長
 ⑤佐山展生   インテグラル 代表取締役パートナー
 ⑥松本  大   マネックス証券 代表取締役社長CEO
 ⑦藤田  晋   サイバーエージェント 代表取締役社長
 ⑧重松  理   ユナイテッドアローズ 名誉会長
 ⑨出口治明   ライフネット生命保険 代表取締役会長兼CEO
 ⑩石黒不二代  ネットイヤーグループ 代表取締役社長兼CEO
 ⑪江幡哲也   オールアバウト 代表取締役社長兼CEO
 ⑫前澤友作   スタートトゥデイ 代表取締役
 ⑬星野佳路   星野リゾート 代表
 ⑭大前研一   経営コンサルタント

  著名な経営者が多く、その言動については広く知られている方が多いのですが、その経営者の「好き嫌い」について単刀直入に触れたものというのは、意外と無いものなので、非常に新鮮に感じますね。
  一口に「好き嫌い」と言っても、その対象は色々とあり、ビジネスに関すること以外にも聞き及んでいます。
    
  あ~ホントそのままだなという方もあれば、へぇ~こんなこと思ってるんだという方もあり、まさに千差万別。
非常に面白く読むことが出来ました。

   インタビューを受けているのは、創業経営者が多く、自身の「好き嫌い」を経営に反映させやすいポジションにあるのも事実ですが、著者の仮説通り「好き嫌い」が、各経営者の「動因」に多大な影響を与えていることは、間違いなさそうですね。

  本書を読んで何を感じるのか?インタビュー集ですので、その受け止め方は人それぞれかと思いますが、個人的に思ったことは、人はもっと自身の「好き嫌い」に、正直でいいのではないか?ということです。

 ややもすれば人は「善し悪し」「正しいか正しくないか」で物事を判断しがちです。

 でも、それはタイミングや状況によっては、ブレてしまいがちです。でも「好き嫌い」はもっと本質的なものです。
著者も、本書が「自身の好き嫌いについて、改めて思いを馳せる一助になれば」と結んでいます。

  是非手にとっていただきたい一冊。今年上期一番のお薦めです(^O^)/

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