名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2014年11月

IMG_4353  創業300年を超える社歴を持ち文化財修復事業を営む小西美術工業社 http://www.konishi-da.jp/index.html 

  実は同社の代表取締役社長は、 元ゴールドマン・サックスのアナリストであるイギリス人です。

  バブル~バブル崩壊までを金融アナリストとして過ごした経験から、日本の金融機関や銀行員と接する中で、彼らのあまりの無茶苦茶な理屈の振りかざし方にうんざりし、何故こんな国がこれだけの経済大国になれたのか、疑問と失望を抱きながら、日本を去ろうと決意をします。

  しかしそんな中、縁あって茶道に触れたことから日本の良さを再認識します。そこから小西美術工業社の代表者へ就任することになっていくのですが、そこは文化財修復という異文化、そして職人の世界。

  経営を任された彼は、同社の職人の3割を占めていた日雇いの非正規雇用者を全て正社員とし、年功序列の給与体系を改めます。それは「後継者不足」と「職人の技術の低下」を解決するため。
反対する職人達を説得し、同社の改革に成功した彼は「やるべきことをやれば日本の組織は劇的に改善する」
という思いを強くします。

  そんな著者による本書は6章からなります。
1~4章では、日本経済や日本的経営の常識に疑問を投げかけます。

 ・日本の高度成長を実現したのは、単に爆発的な人口増加があったからに過ぎない
 ・日本の効率の良さは「世界で25位」
 ・日本の経営者には「サイエンス」が足りない
 ・日本は本当に「おもてなし」が得意なのか
 ・滝クリスピーチへの違和感 etc

  辛辣な表現ですが、これがなかなか的を得ていて 小気味好ささえ覚えてしまいます。

  そして5~6章では、文化財保護と真の観光立国化で、日本はまだまだ成長出来ると説きます。

大半の先進国はGDPの30%は輸出入だが、日本は15%程度。また観光業は、世界ではGDPの9%の貢献が一般的であるところ日本は2%程度。共に十分な伸びしろがあるというのが、その理由のようです。
  ヨーロッパにひけをとらないほど、貴重な文化財が現存している日本。それら良質のコンテンツをいかにして活かすのか、自身の現業も踏まえた提言で締めくくられています。

  元アナリストという冷静な分析と、外国人ならではの目線で描く日本経済復活の処方箋。
新書にしておくのが、もったいないような好著。お薦めです。
 

IMG_4325  地域再生、JAPANブランド育成・・・
国の主導で声高々に叫ばれど、その実現は困難を極め、成功例も少ないのが実際のようです。

  今から90年前「四国のマンチェスター」と呼ばれ、日本のタオル生産の5割以上を占めていた愛媛県今治市。
今やその生産量は最盛期の1/5に、かつて500社以上あったタオルメーカーも今や100社程度しか残っていないそうです。

   そんな中、2006年から佐藤可士和氏のプロデュースで、同地域で生産されるタオルは「今治タオル」として全国で知られるブランドとなり、今や海外でも大きく販路を開きつつあります。

 本書は、2006年から現在に至るまでの軌跡。
プロデュースした佐藤可士和氏だけではなく、プロデュースを依頼した四国タオル工業組合の組合長との共著となっており、より臨場感のある内容となっています。

  低予算。100社以上からなる組合であり、組合員の思いは必ずしも一つではなく、トップダウンで物事が決めれない・・・・・ 
通常のブランディングとは違った様々な障害がある中、丹念に一つ一つの課題を解決し「今治タオル」ブランドを作り上げていく過程は、示唆に富んでおり、地域ブランドに限らず個々の企業のブランディングを考える上でも参考になる点は多いのではないでしょうか。
 
  ブランドというのは実は作ることよりも、守ることの方が難しいのだと、氏は語ります。
成功が見えてくると、人はつい油断をし当初のブランドコンセプトの解釈を勝手に変えてしまう。
本書でも、実際にそんな事例が出てきます。
「今治タオル」はこれからが正念場。今は出来すぎくらいと考えるのが丁度良いと戒める姿勢にプロとしての矜持を感じました。

 さて個人的に一番印象に残ったのは、終章で佐藤氏の語るこんな言葉です。

 「かつての今治は、今の日本と似かよった状況にある。今治には素晴らしい技術を持ったメーカーがたくさんあるのに、全社に共通するベースの価値がなかった。それが産地消滅という危機を招いていたが、「今治タオル」というブランド構築で復活をしつつある。」
 「今の日本にも、素晴らしいコンテンツはたくさんあり、海外からも認められる日本の価値はいくつもある。
そかしそれらを繋ぐコンテクスト(文脈)がない。共通するブランド(マスターブランド)がない中で、それぞれの価値が、切り離された状態でプロモーションされているのが、日本の現状だ」と。

 「日本のコンテンツというとすぐ「MADE・IN・JAPAN」という謡い文句が出るが、「日本製」とはプロダクトの情報であってブランドではない」のだと。

 我々が、つい陥りがちな日本製信奉への一喝。辛辣だけど真理をついた一文ですよね。

IMG_4293 味覚や健康、アレルギー等、個々人の好みを反映させたオリジナルのシリアルバーの製造販売を行うYOUBAR http://youbarmanufacturing.com/
 2006年に創業し、今や多い日で一日1万本のシリアルバーの発送を行う日もあるのだとか。
 そんな同社の創業者が語る「特注をビジネスにする戦略(論)」
共同執筆者を加えることで、自社の体験談に留まらない、なかなか説得力のある内容となっています。
 
 キーワードは、CIY(クリエイト・イット・ユアセルフ)。
    自分の手で作るDIYではなく、人と違うものをクリエイト(創作)する。楽しい部分だけを自分でやるということ。つまりデザインや素材、仕様の選択等の工程だけは、自分で行い、後の面倒な作業は人にお願いをしてしまう。
 かつては、自分のためにオーダーメイドの洋服を作ることや、自分達のためだけに料理をしてもらう料理人を抱えるといったことは、富裕層だけに許された特権でした。 しかし今やその門戸は誰にでも開かれています。
  
  ①インターネット回線の高速化 
    ②ウェブデザインの低価格化 
    ③オンライン決済に対する信頼感 
    ④インターネット接続がいたるところで可能に 
    ⑤インターネットでニッチメディア広告が可能に 
    ⑥発送システムの効率化 

そんな環境変化が、誰もが自身の好みにあった製品を選択出来る世界を可能にしたのです。
 
 本書前半では、そんなCIYの現状と未来像について。後半ではCIYビジネスの立ち上げ方や既存の事業にCIYを加える方法等について解説がなされています。

    著者自身の体験に裏打ちされた細に微に入った解説は分かりやすく、帯にある「すべてのアントレプレナーと、商業の未来に関心を持つ者の必読書」という言葉も誇張ではない内容でした。
各論それぞれに興味深いのですが、著者はまずは大局的な捉え方をすることが必要として下記の7つの教訓をあげています。

    ①大量生産と張り合うスピード・品質・価格を目指せ
    ②最高のカスタマーサービスを提供する
    ③顧客が商品を気に入ることを再三保証する
    ④どんな場合でも顧客に選択肢を与えすぎない
    ⑤顧客行動を促す感情をターゲットにし、技術をダイレクトに売り込まない
    ⑥顧客が自社を褒めやすい環境を作る
    ⑦顧客の声を聞く

これらの教訓には具体的な実行作戦も併記されており、
この記述のある章を読むだけでも十分に本書を読む価値はあるように感じました。

    さて、このCIYの進展は我々に何をもたらすのでしょうか。
著者は「そもそも
CIYの世界では、誰かが欲しいと言わなければ何も作られないのだから、無駄は激減する」と予言しています。

    流石に全ての人々が真に自身が欲しいものを理解し、それのみしか購入しないとは考え難いのですが、確かに店頭に並べられた不特定多数の人に向けられた商品から選択をするという購買形態が変わるということは想像に難くありません。既に自動車などは、ほぼ受注生産になっていますから。

    見込生産というビジネスモデルが無くなった時、メーカーは、卸売業者は、小売業者はどうなるのか。
今後の企業経営に多大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。この潮流、しっかり捉える必要がありますね。 

IMG_4237 「成功は十社十色で、一つ一つの成功はユニーク(独自)である。したがって、成功はパターン化出来ないし、他社の成功をモノマネしても成功しない。一方、陥りがちな共通の失敗は多く、ある程度パターン化できる。」  そんな書出しで本書は始まります。

 元BCGで一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授が語るビジネスの成功確率を上げる方法。それは成功例でなく失敗例から学ぶこと。

 成功はパターン化出来ないと語る著者ですが、(結果としての)成功について著者はこんな風に定義をしています。

①負けない戦略×②他社を凌駕する努力×③時の運=(結果としての)成功 
 
 この3つが揃うことは成功の必要条件であって、十分条件ではありません。3つ全てが揃っても、必ず成功する保証があるわけでもありません。
しかし一つでも欠ければ、かなり高い確率で失敗をしてしまうそうです。

 本書は大きく前後半の2部構成となっており、前半では、失敗から学ぶことの有効性や、何故成功学が存在し得ないかの理由について。そして後半では具体的な失敗パターンについて整理、解説をしています。
 
 本書で紹介される失敗パターンは下記の様に分類されています。
①②は戦略に関する事項、③は実行に関する事項と言えるのかもしれません。

 ①考えるアプローチ/頭の使い方
  ・教科書の理論を何も考えずに使ってしまう
  ・意思決定の質とスピードのバランスを欠いている
  ・そもそもの出発点としての論点がずれている

 ②ビジネスの立案
  ・そもそも戦略の筋が通っていない
  ・(各論)顧客が求めている価値を提供していない
  ・(各論)定量的な詰めが甘い
  ・(各論)不確実性・リスクに対処していない
  ・各論で持論排除をやりすぎた結果、戦略が「尖っていない」

 ③ビジネスの実行
  ・実行に際しての徹底度が足りない
  ・実行者の意識・行動を変えていない

  こうして並べてみると、実は当たりまえのことばかりであると著者自身も述べています。

 しかしながら、上記をみても分かる通り、慎重でなければならない反面、慎重すぎればタイミングや競争力を逸する等、これら全てのバランスを取ることがいかに難しいかが分かります。
またどんなに上手にバランスを取ったとしても、冒頭で述べたように、さらにそこには運が作用するのですから、やはり成功というのは非常に高いハードルであることを改めて感じました。

 様々な示唆に富んだ本書ですが、個人的には特に③のビジネスの実行という部分が一番印象に残りました。
   どんなに優れた戦略が描けたとしても、所詮実行するのは人。
戦略実行に向け、徹底して取り組んでいるか、そんなマインドセットが出来ているのか。実はこれが一番難しいのではないかと。
    
    ビジネスは才能で成功するのではなく、意思の力でやるべきことをやり切ることで、大きな差がつくもの。本書もそんな言葉で締め括られています。

IMG_4007   同氏の著作は初めて読みますが、斬新な切り口で、なかなか面白く読ませていただきました。ただちょっとモヤモヤ感も残った1冊でした。

   なぜ一流と言われる大手企業の頭脳明晰な経営者達が、誤った判断を下してしまうのか?  なぜ同じような過ちを繰り返すのか?

 著者はその理由をこんな風に説明しています。

  データや資料に基づいて戦略を立てるまでは論理の世界。でも、それを実行するかどうかの決断は理性だけでは決められない。過去の経験に基づくひらめきや、成功体験から生まれたしがらみ、プライドや功名心、執着心といったような要素が大きな影響力を行使しているから。
  優秀な経営者であるからこそ、自分が理性以外の要素で判断しているとは思ってもみない。これが経営破断を誤る最大の要因であると。

 本書では 多くの事例を紐解きながら、顧客志向、プライシング、ブランド、コミュニケーション、経営戦略といった観点から、その判断の誤りにつき検証をしています。

 それでは正しい経営判断をするためには、何が必要なのでしょうか。
どうすれば絶え間なくイノベーションを促進し、更なる成長を企業にもたらすような意思決定が出来るのでしょうか。

 残念ながら、本書にはその明確な解は記されていないように思いました。
いかに優秀な経営者であろうと、巨大化しすぎた企業を率い、変化を起こすことは、ほぼ不可能だと。
  
  例えば今や凋落著しいソニー。
もし現在、井深大氏の様な経営者が現れ、同社の舵取りをすれば、かつての様な輝かしい栄光を取り戻すことが出来るのでしょうか。
恐らくそれは難しいでしょう。経営環境、時代背景もさることながら、あまりにもソニーは巨大化し過ぎてしまったから。

  今後、大企業にはイノベーションは起こせない。 かつてのソニーや多くの企業がそうであったように、これからイノベーションを起こし得るのは中小企業だと。
  そしてそういった適切な規模の企業で働くことは、そこで働く人々の幸福感にも繋がりやすいのだと著者は結んでいます。
    けだし正論だとは思うのですが、経営者はなぜ判断を誤るのか?との問題提起が、こういった結論に帰着することが、本書を読んで私がモヤモヤ感を抱いた一番の理由です。

  とはいえ、個々の事例に対する著者の見識には感心する点も多く、また巻末に設けられた緻密な引用文献一覧には、出典を明確にした上で持論の展開をするという著者の矜持が感じられ、好感の持てる1冊でした。

 

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