名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2014年12月

IMG_4536  あ~この本は、ちょっと異色かもしれませんが面白いですね~。

  まず第1章で出てくるのは、本書の帯にあるように映画「Shall we ダンス?」 同作品を制作したのはアルタミラピクチャーズという小さな独立系映画プロダクション。

  実は同作品の発表に前後し、衰退著しかった日本の映画産業は急回復を見せたと言われています。著者はそれは単なる偶然ではなく、同社のプロデューサー桝井氏に憧れ、映画制作を志すクリエーターが増えたからだと推測をしています。

   資金や人材に乏しい独立系のプロダクションであっても、優れた企画力や(資金面を含め)他者を巻き込んでいく力があれば、大手に伍し優れた作品を世に問うことが出来ます。それを可能にするのは優秀なプロデューサーの存在。
  実はこういった人材は、映画やテレビ、音楽といった業界だけではなく、一般の企業や組織にとっても不可欠な人材なのではないか?

  そんな人々の持つ能力をプロデューサーシップと定義し、様々な切り口からアプローチしているのが本書です。
 
 企画し人を巻き込んでいくと聞くと、それはリーダーシップと同義では?と考えてしまいますが、著者は、それは違うと説きます。

  ビジョンを描き人をワクワクさせることは同じでも、リーダーとプロデューサーの決定的な違いは、後者は必ず目に見えるモノを創り出すこと。そしてその効果は絶大であると。
例として、故スティーブ・ジョブス氏を挙げています。頻繁に開発現場に出入りし、iPhoneやiPadを創り出しました。初めてそれを見たときの私たちがワクワクした感じ。記憶に新しいですよね。
 
  彼は優れた経営者でもあり、また優れたプロデューサーでもありました。
彼のようなカリスマ経営者は稀有な存在であり、なかなか普通の企業では、彼の様な振る舞いは出来ません。
ましてや日本の様に同調圧力が強く、上場企業等、サラリーマン社長が大半の企業では、尚難しい。
また外部からそういった経営者を招へいすることもなかなか考え難いところです。

 そこで必要となるのは、組織内からプロデューサーシップを持った人材が輩出されること。
 
  トップダウンではなく、各々が様々な企画を立ち上げ、周りのメンバーを巻き込みながら、新しい製品やサービスを生み出していく。そんな人材が企業に変革をもたらし、新しい世界へと企業を導いていくのかもしれません。

 プロデューサーシップとは何なのか? 
 どうすればその能力を会得することが出来るのか?
 どうすれば組織は、ぞんな人材を育成することが出来るのか?

   本書では、そんな疑問について8章に渡り、丹念に解説がなされています。
ビジネスとしての映画産業を取り上げた書籍は少なくないのかもしれませんが、その構成員であるプロデューサーに着目をしたものは珍しいかもしれません。
そんなユニークさが光った1冊でした。勿論参考になる点も多かったことは言うまでもありませんが。

IMG_4477    興銀、J・Pモルガン、リーマン・ブラザーズを経て独立した元金融アナリストによる著作。
超高齢化社会へと向かう日本。勤労世代に重くのしかかる税金や社会保険料の負担で、これから20年後の日本は、ある意味働く人にとって残酷な世界になっていく・・・・・
 
  そんな「残酷な社会」を生きるためには、どんな意識を持ち、どんな行動をすべきか? そんなことに迫ったのが本書です。

  主な内容としては

 ・人口趨勢、技術開発動向に目を向けること
 ・投資家視点で企業を見る力を養うこと
 ・職業選択で留意すべきこと
 ・語学力の重要性
 ・どんな働き方が望ましいのか
 ・起業の是非

  となっており、読者層はあまり明確にはなっていませんが、これから就職活動をする学生や、20代~30代の若手ビジネスマン向けといったところでしょうか。
   金融アナリストとして国内外の金融機関を渡り歩いて来た経験から、就職すべき企業の選び方、働き方、そして起業の是非まで言及をしています。
 
 よく言えば、幅広いジャンルについてカバーをしていますが、悪く言えば少々まとまりは欠いているように感じました。
 本書のタイトルもそうですが、各章とも見出しは非常に興味深い反面、(個人的に読み方に問題があるのかもしれませんが) 結論があるのかないのか?結局のところどうなのか?ややモヤモヤ感が残った章も多かったように思います。 
    ノウハウ本ではなく、あくまでこれからの働き方や生き方へのヒントを示唆することが本書の目的と考えれば、そこから先は自身で考えるべきことであり、やむを得ないところなのかもしれません。

  とはいえ、多数掲載された著名人を含む様々なエピソードの引用は興味深く、全般的な論調は、リスクを恐れず、将来に向かっていくための準備を怠らないというポジティブな内容となっており、 年末を迎え、来る年へ思いを馳せ読んでみるには好適な一冊と言えるかもしれません。

IMG_4431   近年、低価格により普及が進み、注目を集める3Dプリンタ。

  本書は、今後四半世紀で、この3Dプリンタが、いかに我々の生活や経済や法律を変えていくのかに言及した近未来予測書です。

  3Dプリンタは、樹脂等を用い、断面形状を積層していくことで立体物を造形する機器で、その造形される様子を映像でご覧になった方も多いかもしれません。
 一般的に3Dプリンタ、それを含む3Dプリンティングは下記特徴を備えていると言われています。 

 ①無限に複雑なものが作れる
 ②無限のバラエティ
 ③組み立てがいらない
 ④リードタイムが0
 ⑤デザインの幅が無限
 ⑥技能がなくても製造できる
 ⑦コンパクトでポータブルな製造設備
 ⑧ゴミになる副産物が少ない
 ⑨素材を無限に混ぜられる
 ⑩物理的な複製が正確

  まだまだ扱える素材や造形可能な大きさに限度はあるものの、この3Dプリンティングがもたらすインパクトは強烈なものがありますね。
 3Dプリンティングは、工業部品や玩具、雑貨といったものを造形するイメージが強いかもしれませんが、本書では「生体インク」を使い、人の臓器や血管等まで造形してしまうバイオプリンティングや必要な栄養素を組み合わせて加工食品ならぬ合成食品を製造してしまうフードプリンティングの事例が紹介されています。
  単なる工業製品にとどまらず、我々の生死に係わる領域にまで影響を及ぼす可能性を秘めていることには、正直驚きを隠せませんでした。

  本書は、上記の様な事例の他に、3Dプリンティングが及ぼす様々な影響についても幅広く言及しています。 
  例えば、製造業や製造業者に与える経済的な影響や学校教育への影響。造形物の著作権や安全性の保証といった法律面への影響。また3Dプリンタの物理的な仕組や必要なソフトウェア、ツールといった技術的な分野まで多岐に渡っています。
  反面、カバーしている範疇が広すぎ、ややまとまりを欠いているところは否めません。また問題提起の域を出ない部分もあり、それが本書を読みづらくしている側面もありますが、あくまで近未来予測書であり、それは致しかたないことかもしれません。
ただそれを差し引いても十二分に読む価値のある1冊であることに間違いはありません。
 
 さて最後に

 本書の帯には、この3Dプリンティングは人類にとって敵なのか味方なのかとあります。
3Dプリンティングを単なる生産手段の一形態と見てしまうと、それは我々の慣れ親しんだ仕事(特にモノづくり)を奪う敵なのかもしれません。しかし3Dプリンティングでしか作り得ない、我々が見たこともなかった新しいモノが創造される時、それは味方となるのかもしれません。巻末で本書の解説者はそう語っています。
 
  要は私たち次第ということなのでしょうね。


IMG_4402 エッセンシャル思考とは、何でしょうか。

 「エッセンシャル」と辞書で引くと、「絶対必要な」「欠くことのできない」「必須の」「きわめて重要な」「基本的な」等の訳が出てきますが、どうもピンときません。
  原著は Essentialismとありますので、さらに調べると、その意味は「本質主義」。分かったような分からないようなというのが正直なところです。

  さてそんな本書ですが、テーマは、副題にあるように、最少の時間で成果を最大にする手法を会得すること。

  それは短時間で、より多くの仕事をこなすことではなく、真に自身がやるべき仕事を見極め、そこに集中することで、より高い成果を生み出そうとするものであり、仕事のみならず生活全般にも影響を及ぼすものです。

  本書は4章で構成され、1章では「エッセンシャル思考」の基本となる考え方について、2章から4章は、「正しく減らすための技術」について解説がされています。

   「エッセンシャル思考」の要諦は、何をやり、何をやらないかの見極めであり、各章を使って、見極める技術、捨てる技術、しくみ化する技術が具体的に解き明かされています。
 
  さて、ここ10数年の技術革新や経済情勢、労働環境の変化等で、我々はかつてないほど様々な情報を得、多数の選択肢を持つようになってきています。またインターネットを通じ、他者から受ける干渉の度合いも高まっており、非常にストレスフルな状況に置かれています。

  そんな中、より多くの選択肢や声に反応しようとすればするほど、自分の時間とエネルギーをどこに注ぐか決められなくなってしまいます。
そうこうしているうちに、他者(上司、同僚、顧客、家族 etc)が自身のやるべきことを決めてしまい、結果として思考停止に陥り、更に自分にとって何が大切なのことなのか分からなくなってしまう・・・・
 
   これ、自身を振り返ってみても、非常に耳が痛い話です。

  自身が真になすべき仕事を見極めるためには、時に断ること、捨てること、手を伸ばさないことが必要となります。 それは他者からの依頼を断り、一見チャンスと思えるような事態に出会っても見送ることでもあります。
でもこれって非常に勇気が要ることですよね。

  著者も、そのあたりの困難さを認め、それ故、しくみ化し意識せずとも実施出来るような習慣化が必要と説いています。
  
 タイトルには戸惑った本書ですが、内容には非常に説得力があり、十分満足ができるものでした。
本書で紹介されている手法の中で、まず実践すべきは、忙しさにかまけず「考える時間」を持つこと。
そして自身の仕事や生活について明確な目標や目的を持つこと。その2点からですね~。

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