あ~この本は、ちょっと異色かもしれませんが面白いですね~。まず第1章で出てくるのは、本書の帯にあるように映画「Shall we ダンス?」 同作品を制作したのはアルタミラピクチャーズという小さな独立系映画プロダクション。
実は同作品の発表に前後し、衰退著しかった日本の映画産業は急回復を見せたと言われています。著者はそれは単なる偶然ではなく、同社のプロデューサー桝井氏に憧れ、映画制作を志すクリエーターが増えたからだと推測をしています。
資金や人材に乏しい独立系のプロダクションであっても、優れた企画力や(資金面を含め)他者を巻き込んでいく力があれば、大手に伍し優れた作品を世に問うことが出来ます。それを可能にするのは優秀なプロデューサーの存在。
実はこういった人材は、映画やテレビ、音楽といった業界だけではなく、一般の企業や組織にとっても不可欠な人材なのではないか?
そんな人々の持つ能力をプロデューサーシップと定義し、様々な切り口からアプローチしているのが本書です。
企画し人を巻き込んでいくと聞くと、それはリーダーシップと同義では?と考えてしまいますが、著者は、それは違うと説きます。
ビジョンを描き人をワクワクさせることは同じでも、リーダーとプロデューサーの決定的な違いは、後者は必ず目に見えるモノを創り出すこと。そしてその効果は絶大であると。
例として、故スティーブ・ジョブス氏を挙げています。頻繁に開発現場に出入りし、iPhoneやiPadを創り出しました。初めてそれを見たときの私たちがワクワクした感じ。記憶に新しいですよね。
彼は優れた経営者でもあり、また優れたプロデューサーでもありました。
彼のようなカリスマ経営者は稀有な存在であり、なかなか普通の企業では、彼の様な振る舞いは出来ません。
ましてや日本の様に同調圧力が強く、上場企業等、サラリーマン社長が大半の企業では、尚難しい。
また外部からそういった経営者を招へいすることもなかなか考え難いところです。
そこで必要となるのは、組織内からプロデューサーシップを持った人材が輩出されること。
トップダウンではなく、各々が様々な企画を立ち上げ、周りのメンバーを巻き込みながら、新しい製品やサービスを生み出していく。そんな人材が企業に変革をもたらし、新しい世界へと企業を導いていくのかもしれません。
プロデューサーシップとは何なのか?
どうすればその能力を会得することが出来るのか?
どうすれば組織は、ぞんな人材を育成することが出来るのか?
本書では、そんな疑問について8章に渡り、丹念に解説がなされています。
ビジネスとしての映画産業を取り上げた書籍は少なくないのかもしれませんが、その構成員であるプロデューサーに着目をしたものは珍しいかもしれません。
そんなユニークさが光った1冊でした。勿論参考になる点も多かったことは言うまでもありませんが。



