名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2015年01月

IMG_4772  「乱世にはカリスマが生まれる」と言われますが、日本の場合、混乱や困難に直面すると、全員の力で乗り越えようとするDNAが埋め込まれているそうです。 
   今の日本は、そのDNAを呼び覚まし、全員経営や衆知経営のあり方を取り戻して、弱体化した組織能力をもう一度、高めていくべき時に来ているのではないか・・・・・。

   そんな書き出しで本書は始まります。
 
   経営環境の大きな変化の中で、唯一の意義ある経営資源と成り得るのは知識。
  今や企業の戦い方は、戦力の大きさ(企業規模)で相手を圧倒する消耗戦から、一人ひとりが「知的機動力」を発揮する機動戦へと転換をしています。それはまさに全員経営のあり方そのものです。

  それでは一人ひとりが身に着けるべき知識とは何でしょうか?

  それはずばり「実践知」。
実践知とは、その時々で変化する環境の中で、その前後の事象の関係性を読み解きながら的確な判断をする能力。

 本書では、そんな「実践知」に優れた人材には、以下の様な特色があるとしています。

 ①「何がよいことなのか」という判断基準を持ち、「よい目的」をつくる能力を持つ。
 ②ありのままの現実の中で本質を直感する能力を持つ
 ③「場」をタイムリーにつくる能力を持つ
 ④直感した本質を概念化し、物語として伝える能力を持つ
 ⑤あらゆる手段を駆使し概念を実現する政治力を持つ
 ⑥実践知を埋め込み組織化する能力を持つ

  このような人材を生み出し、育むような組織はどうあるべきなのでしょうか。どのようなマネジメントを行えばいいのでしょうか。そんな疑問に対し本書では13の事例を用い、6章立てで解説を行っています。

  中堅、中小企業については、企業そのものを。大手企業については、ヤマト運輸の「まごころ宅急便」やセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」、ダイハツの「ミラ・イース」という商品やプロジェクト単位で取り上げています。
    また企業だけでなく、小惑星探査機・はやぶさや、東日本大震災で、市内の小中学生99.8%の命を救った宮城県釜石市の津波防災教育も紹介されており印象的でした。

  各事例とも、物語編+解釈編で構成されており、解釈編では、やや難解な部分もありますが、13年にも及ぶ丹念な取材結果に基づくものであり、著者両名の提言する「全員経営」を大変説得力のあるものにしています。

   さて本書のキーワードである「実践知」ですが、これは経験を繰り返すことによってしか会得出来ないものかもしれません。 それにはまず試してみること。

  巻末では、本田宗一郎氏のこんな言葉が引用されています。
 
  「人生は見たり、聞いたり、試したりの三つの知恵でまとまっているが、多くの人は見たり聞いたりばかりでいちばん重要な "試したり" をほとんどしない。ありふれたことだが失敗と成功は裏腹になっている。みんな失敗を恐れるから成功のチャンスも少ない」と。  
  
  試す人。チャレンジする人。いつまでも幾つになっても、そんな人でありたいですね。

 

IMG_4753   コモディティ化著しいパソコン。今や日本国内でパソコン製造をしている事業所は全国で8か所しかありません。http://japan-pc.info/ 
 
    その一つが山形県米沢市にある㈱NECパーソナルコンピューター米沢事業所。同社は日本市場のデスクトップパソコンとノートパソコンのシェアNO.1を維持し続けています。

  電化製品、ましてやコモディティ化著しい製品は、もはや日本では作れない。
  そんな定説を見事にひっくり返した同社の秘密に迫ったのが本書です。
   
  本書は全7章からなり、1~4章までを、米沢生産方式の要諦である、「生産革新」「先進的IT活用」「ものづくり財務」の解説にあて、残り3章で同生産方式が同社の他部門に与えた成果、人材育成、そして、どうすれば日本国内でものづくりを継続出来るのかの提言で締めくくられています。
  
  さて本書の副題にある「米沢生産方式」とは何でしょうか。
一言で表現するなら「生産技術、IT、財務管理手法を駆使して、徹底的な効率化、スピード向上、品質向上を実現し、継続させている、米沢事業所におけるものづくりの方式」ということになるそうです。

   そしてその特徴は、「トヨタ生産方式」を基本に、電機メーカーらしくRFID(無線と電子タグ)で同生産方式をIT武装。そして独自の原価計算方式を加味した財務管理手法にあります。
またYOZAN道場(上杉鷹山にちなんでいます)というスキル向上取組やWillという女性作業者を中心とした改善プロジェクト等、独自の人材育成も特筆すべき点かもしれません。

  仔細な内容につきましては、是非本書をご参照いただきたいのですが、全編を通しての簡潔で分かり易い説明は、私の様な生産管理門外漢の者が読んでも、非常に分かり易く、大変興味を引くものでした。

  またYouTubeで動画の公開もされており、併せて見ることで、より理解が深まったように思います。https://www.youtube.com/watch?v=vefpyHHQiyY
  
  日本でものづくりを行うことの意義は「スピード」と「マザー機能」であるとして本書は結ばれています。
成熟する国内市場、コモディティ化する製品、短い製品のライフサイクル・・・・・
  そこで付加価値を生むのはスピード。そして国内にマザー工場を保有しながら、海外生産拠点を設け、グローバルなものづくりとローカルなものづくりの最適化を図ること。

  そのために必要なものは、製品開発、製造、品質保証からサービス、サポート、製品廃棄の処理までを行うような一気通貫の拠点を設けること。そして全行程の担当者が毎日のように顔を合わせ密な連携をとる体制作りが理想であるとしています。

  最近の円安傾向を受け、日本国内での製造機運が高まりつつある感もありますが、為替動向のみならず、なぜ国内製造するのか?そのメリットは何か?どうやって差別化するのか?
  その意義を明確にし不断の改善努力をする覚悟のある企業のみが、今後も国内生産を継続する資格を持つのかもしれませんね。

IMG_4648  「エクセレント・カンパニー」 「ビジョナリー・カンパニー」 ・・・・
時代の移り変わりと共に、優良とされる企業の定義も変わってきています。
  特に変化の激しい昨今、これから10年後も20年後も勝ち残れる企業とは、いったいどんな企業なのでしょうか?

  本書は外国人著者の手によるものですが、翻訳本ではありません。
日本在住二十余年を数え、国際シンポジウムの企画、運営に従事した他に企業経営や企業コンサルティグの経験を通じて得た知見を基に本書を記しています。

  ところで近年、政治や経済、環境、あらゆる場面で「レジリエンス」という言葉を聞く機会が大変増えたように思います。
 「レジリエンス」とは心理学の用語で、「抵抗力」「復元力」「耐久力」「弾力」といった意味があるようです。
ならば「レジリエント・カンパニー」とはどういう意味なのでしょうか?

  著者はそれを、「危機に直面したときの回復力が高く、事業環境の変化に柔軟に対応し、そのストレスや不確実性の中から、次なる発展のきっかけを見出し、社会全体のきっかけを見出し、社会全体の健全な営みに資する行動をとる企業」と定義をしています。

  そしてそんな企業には3つの特徴(トリプルA)があると説きます。

  ①アンカリング(Anchoring)が出来ている
  →企業としての「拠り所」があり、社員と顧客(およびその他の利害関係者)を惹きつける魅力がある。
   さらに、信頼と信用を積み上げている。

  ②自己変革力(Adaptiveness)が高い
  →事業環境の変化をいち早く察知し、機敏に行動に反映できるカルチャーと組織をつくっている。  

  ③社会性(Alignment)を追及している
  →社会の方向性と自社の戦略と行動のベクトルが合っている。
    また、社会との好循環を生み出す行動に努めている。

  本書では、P&G、ネスレ、GE、ユニリーバ、IBMといった世界的企業20社の事例を引き合いに、更に上記の3つの特徴を下記の7つの行動に細分化し、解説を行っています。

  ①アンカリング
   行動1. 価値観と使命を活かす / 行動2. 信頼を積み上げる

  ②自己変革力
   行動3. ダイナミックに学ぶ / 行動4. 創造性と革新力を引き出す / 行動5. 研究開発を一新する

  ③社会性
   行動6. トレード・オンにこだわる / 行動7. ブランドをつくり変える
   

  このトリプルAという特徴づけ。引き合いに出されている企業の事例。的を得た事例の分類整理と、上手くまとめられています。
ただ選定された20社は、上場しておりグローバル展開している海外企業という基準はあるものの、それに加え事例のユニークさと著者自身が尊敬出来る企業であることとしており、選別には、やや客観性を欠く部分もあるかもしれません。
 この「レジリエント・カンパニー」という定義に普遍性を持たせるには、より多くの企業事例を加える必要があること。またかつて 「エクセレント・カンパニー」や「ビジョナリー・カンパニー」 であった企業の凋落についても、踏み込むことで、より説得力の増す内容になったのではないかというのが、本書を読んでの感想です。

   とはいえ「レジリエンス」の必要性については、何ら異論を唱えるものではなく、大いに賛同出来るものです。
個人的に「レジリエンス」とは、「しなやかな強さ」と考えます。植物に例えれば、柳や竹といったイメージでしょうか。一見頼りなげながら、風雪にも折れることなく、青々と。
組織の一人一人がそんな意識を持つこと。そこから企業は変わるのかもしれませんね。

IMG_4576   人口減少社会に突入した日本。

  政府は50年後も人口1億人を維持する方針を掲げ、少子化を乗り越え人口減少に歯止めをかけようと努めることを発表していますが、いずれにしても人口が減少することには間違いがありません。

  人口の減少による経済規模の縮小がもたらすものは公共サービスの劣化。そして国の荒廃。
  それを避けるためには、日本人一人ひとりの生産性を高め、一人ひとりが豊かになることを考えなければなりません。

  2014年現在、日本の1人当たりGDPは世界24位。1990年代前半には2位だった時代もあったことを考えると、その凋落ぶりには凄まじいものがあります。

   今や決して裕福とは言えなくなった日本と日本人。

そんな背景の中、これからの日本は、日本人は、一体どうやって、何によって食べていくのか? 

   他国の事例を踏まえ、これからの日本人が付加価値を高める方法を提言しているのが本書です。
日本人付加価値向上のため、著者は一つの方程式を紹介しており、それが本書の主題でもあります。

   日本人付加価値向上=日本ブランド価値最大化×日本人機能最大化×国内に残る付加価値最大化

  ・日本ブランド価値最大化とは、日本文化への憧れを醸成すること

  ・日本人機能最大化とは、日本人の競争力を高める情報通信インフラの整備

  ・日本に残る付加価値の最大化とは

    ①変革の遅れた国内産業にイノベーションを起こし、成長産業にすること
    ②地方産業のグローバル化を図ること
    ③「日本人のDNAに組み込まれた感性×先端技術」で勝負すること
 
  仔細な内容は、本書をご参照いただければと思いますが、実行可能性はさておき、提言自体はユニークで興味深く、一つの日本再生論として、非常に面白く読むことが出来ました。

  これらの提言実行にとって最も必要なことは、我々のマインドセットを変えること。

  終章で、こんな話が出てきます。
 
  日本人は不安に弱いが不満には強い。欧米人は不安には強いが不満には弱い。
つまり自身で(不安を回避するような)目標設定をすることは不得意だが、与えられた目標達成のためには我慢(不満に耐える)することが出来る。
  しかし現在の様な、先の見通しの効かない時代、自身で目標設定をし、その達成に向け必要な行動が取れなければ、先行きはおぼつきません。

  今の日本人に必要なことは、追い詰められた日本の状況を「自分ゴト」と捉え行動を起こすこと。
日本人は物事を「自分ゴト」と捉えた瞬間に、極めて合理的な行動が起こせる国民であると著者は説いていま
す。
  そしてそのためには「自身の身の丈」を知ること。
身の丈を知るとは、諦めたり慢心をするためではなく、自身の強さや弱さ、魅力をきちんと理解すること。
それにより自身がすべきことがクリアになると結んでいます。

  まずは自身の立ち位置をきちんと理解すること。
それこそが、我々日本人の稼ぐ力を最大化する第一歩なのかもしれませんね。

IMG_4542  昨年9月に亡くなられた経済学者、宇沢弘文氏。

  ノーベル経済学賞の候補とも目され、「効率を優先し、過ぎた市場競争は格差を拡大、社会を不安定にする」とし、経済効率と人が人らしく生きていくことを両立させようとする「社会的共通資本」という考え方を提唱された方でした。

「社会的共通資本」とは下記の3つに類型」にされます。

 ①自然環境(森林・河川・湖沼・海洋・水・土壌 等)
 ②社会的インフラ(道路・橋・鉄道・上下水道・電力・ガス 等)
 ③制度資本(教育・医療・金融・司法 等)

 これらの資本については国家管理や、過度の市場競争に晒すことなく、人々の共有財産として管理運営されるべきものであり、その健全さが守られることで、人が人間らしく生きることが出来るというのが「社会的共通資本」という考えの様です。
 
  閉塞感漂い、経済格差や教育格差、貧困問題等が深刻化する現在の日本。特に
没後、そんな彼の思想が再着目されているようで、関連する記事等を見かけることが多くなったように思います。

  2014年末の総選挙、その後の税制改正大綱等を見るに、今後経済格差等は更に拡大することが予想されます。格差を拡大してでも、それを起爆剤に経済活性化を意図したもののように思いますが、その効果には正直疑問が残ります。そんな背景も彼や彼の思想に関心が高まる要因になっているのかもしれません。


 本書は日本経済新聞に掲載された「私の履歴書」と同紙への寄稿文をまとめたもので、純然たる氏の著作ではありません。
  ただその生い立ちや経歴を知ること。コンパクトにまとまった寄稿文を読むことで、彼の思想の根幹を成すものは、おぼろげながら理解出来たような気がしました。

  最後に本書で一番印象に残ったのは、氏が昭和天皇に接見し自身の実績を話すエピソードです。
緊張した氏が、しどろもどろに自身の実績を話す中「キミ、キミは経済、経済と言うけれども、要するに人間の心が大事だと言いたいんだね」と昭和天皇に返され、衝撃を受けるというシーンが回想されています。

 「(それまではタブーとされていた)経済学の中に人間の心を持ち込むこと」

 まさに氏が天命を悟った一瞬だったのかもしれません。


  宇沢氏についても、彼の思想についても、個人的に、さほど知っている訳ではありませんでしたので、本書は入門書として好適な1冊だったように思います。
    ちょっとビジネス書というカテゴリーからは外れてしまうのかもしれませんが、日本の生んだ偉大な経済学者に思いを馳せてみるのも、年初にはよいのかもしれませんね。

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