名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2015年03月

IMG_5073  タイトルや帯を見ると、ちょっとなぁと思わないでもありませんが、今週は、この一冊をご紹介させていただきます。

   日本に「銀座」と名がつく通りや商店街は数多く存在しますが、その出自は間違いなく、東京都中央区銀座。

  本書は、銀座で3代続く老舗テーラー壱番館洋服店の店主、渡辺新氏による、銀座の著名店主達へのインタビュー集です。

  ネット通販や量販店、大型ショッピングセンターの台頭。少子化、成熟化。日本の小売業が置かれた環境には大変厳しいものがあります。
その一方で、数々の苦難を乗り越え、2代、3代に渡って続く老舗も少なくありません。

  なぜそういった商店は生きながらえてきたのか、そしてこれからの商売をどう考えているのか、そんなことを日本を代表する商店街でもある銀座の店主達へ聞いてみようという狙いから生まれたのが本書です。
 
 ・戦後、欧米のブランドを数々紹介してきた日本のセレクトショップの草分けともいえる「サンモトヤマ」
 ・17代も続く、羊羹の代名詞とも言える「虎屋」
 ・高級寿司店として名高い「鮨青木」・・・・・
 
他にも、美術商や不動産会社等、多様な業種から12名の店主達が登場しています。
 
  皆、自身の商売、銀座のあり方について、一家言をもっており、それぞれの個性が表れ面白かったですね。
それでも共通して言えるのは、銀座という日本一の場所で商売をするという一種の矜持でしょうか。
そして皆、自店の伝統を大切にしながらも、進取の精神は忘れず、また顧客との長期の関係維持に尽力している点も共通項と言えるのかもしれません。

  「資本論」という大層なタイトルの本書ですが、何か総括をしたり、結論めいたものは記されていません。
よってそのあたりを期待して読むと、ちょっと肩透かしの感を受けるかもしれません。

  読み手によって琴線に触れる箇所は、マチマチかと思いますが、個人的には最初に登場するサンモトヤマ会長のインタビューで「お得意様」についての話が、一番印象に残りました。

  お客様がお客様を繋いでくれる。お得意様を多く持っている店は簡単につぶれない。 
 (何かを買わなくても)お客様に普段そうやってお会いして得意になって遊んでいただく。お客様は「私が来ないと、この店はつぶれちゃうんだ」って冗談を言えるぐらい得意になれる。昔の商人はそうやってお客様を大切にし ていたんですよね・・・・・。

IMG_5074  お会いして、得意になって、遊んでいただく。 だからお得意様なんですね。
今やなかなかそんな関係の構築は難しいのかもしれませんが、商売の原則としては不変なのかもしれません。

  さてサンモトヤマについては、幸田真音さんが、「舶来屋」というタイトルで同社のことを本にしていますので、ご関心をお持ちであれば、こちらも一読いただくと良いかもしれません。
少し前の本ですが、面白いですよ。

   

                                                                                                                                    2015-03-28  VOL.92

IMG_4966  ビジネス本のジャンルに入るのか?ちょっと微妙なところはありますが、なかなか興味深い一冊でしたので、ご紹介させていただきます。

  今から約20年前、日本で初めてインターネットの商業ビジネスを始めた会社、インターネットイニシアティブ(IIJ)。
  本書は創業社長で、約20年に渡り同社を率いた鈴木幸一さんによる奮闘記。 
  今や東証1部上場で、連結売上 114,272(百万円)、従業員数3,000人近い規模を誇る同社ですが、創業時の資本金は僅か1,800万円。1年半後に解体の決まっている千代田区永田町の雑居ビルからのスタートだったそうです。
しかも鈴木氏は、「10億円近い創業資金が集まるから」と乞われ代表者に就任。ほどなくその資金調達は不可能となったことを知ります。

  更に創業しながらも、理不尽な理由で郵政省の事業認可が下りず1年以上に渡り事業はスタート出来ません。給料支払に四苦八苦する日々。

  そんな環境下にありながらも、来るべき事業開始に備え、サービスや技術開発を続ける技術者達。なんとか彼らのモチベーションを鼓舞し続けようと奮闘する著者。
  イニシアティブという社名に込めた「自らの手でインターネットの世界をつくりあげる」という気概と、安酒場で日々語る夢だけが、その原動力だったのかもしれません。

  苦心惨憺の末に事業がスタートすると、同社は爆発的な勢いでユーザーを増やし急成長を遂げます。
日本市場を飛び越えて、米国ナスダック市場での上場。
その勢いをかって、新しいインターネット接続インフラ構築を目指してトヨタ自動車やソニーと合弁でCWCという会社を設立する等、時代の趨勢を捉えたかに見えます。

  しかしCWC社は破綻し会社更生法の適用を受けることになります。出資をしていた同社も投資損失で、10,000(百万円)の債務超過に陥ってしまいます。 まさに波乱万丈の20数年・・・・・・ そんな同社の現状は冒頭に述べたとおりです。
 
  度々の危機に際し、同社を支えたのは、技術者たる社員達の存在。

   著者は、一貫して人材育成と技術開発の重要性を説きます。
同社のマネジメント方法等、あまり実務的は話は出てこない本書ですが、社員とどの様に対峙してきたかについては比較的ページが割かれており、例えばこんなエピソードも紹介されています。

   若き日に日本能率協会に在籍していた著者は、本田宗一郎氏に度々会う機会に恵まれたそうです。
ある時、本田氏に「濡れぞうきんは絞りすぎるなよ」と教わったそうです。
例えどんなに厳しい状況下にあっても、技術者にはある程度、遊びを許容し、次に大化けするような技術開発をさせておかなければ企業に明日はないと。

  かつてのこんな体験で得た教えが、 破綻の淵まで追い詰められながらも。上場を果たし、今なお独自の技術力で成長を続ける同社には根付いているのかもしれませんね。
  

   本書は、上記の様な自社の奮闘記に留まらず、インターネットの歴史や技術背景、日本の通信事業者の抱えてきた課題や、なぜIT業界で日本は頭角を現せないのか?といった問題提起と解決のための提言も含んでおり、非常に読み応えのある一冊となっています。日本のインターネット産業史を知る上でも一読の価値はあるのではないでしょうか。

                                                                                                                                    2015-03-21  VOL.91

IMG_4989  日本企業の「強み」とは何でしょうか?
  
   それは「企業の長期の競争力を重視する慣行である。」そんなはしがきから本書は始まります。

  社歴の長い企業が、数多く存在する日本では、しばしばそのことが日本的経営の強さとして挙げられてきました。

  著者は、必ずしも日本企業が、その強みを十分に持っているわけではなく、他の先進国に比べ少し多くあるにすぎないと、やや厳しい見方をしていますが、それでも、その折角の長所を捨て、欧米並みの株主重視、短期業績重視を志向すべきという昨今の論調には、違和感を覚えるとしています。

  長期の競争力の源泉は人材であり、その育成には時間を要します。
また優れたビジネスモデルの構築過程では、トライ&エラーが不可欠であり、これもまた時間を要するものです。

  労働経済学の大家である著者が、いくつかの企業やビジネスモデルを引き合いに、企業が長期の競争力を高める条件の解明に迫ったのが本書です。

   引き合いにしている事例は決して多くありません。

 ①セブンイレブンを筆頭に日本独自の進化を遂げたコンビニエンスストア業界
 ②小さなイノベーションすら起こしてないと言われる日本のソフトウェア業界
 ③トヨタ生産方式に代表される生産ラインの設計と構築
 
   そして長期的視野という概念の対局にあるように思われる投資銀行とヘッジファンド

   一見脈略のないようにみえる事例選択ですが、その選択理由を読むに独自性が光ります。

  研究者の書かれた本ですので、ビジネス本としてジャンル分けするには、やや重いですし、正直読み辛い部分がない訳ではありませんが、人材とその育成の重要性に対する様々な視点からのアプローチは興味深く、著者の主張は大いに賛同出来るものです。

  高賃金の先進国こそ人材に頼らざるを得ない。

 そしてその人材は、言われたとおりの仕事をするだけでなく、職場で絶え間ざる工夫が出来、さらには企業の経営方針についても発言出来なければならない。そんな人材を擁することが企業の長期の競争力を高めるのだとしています。
 
  そんな人材を育む施策の一環として、企業の役員会へ従業員代表を参加させることを提言しています。
一見突飛な提言に思えますが、ドイツでは、実際にそんな施策が行われているそうです。
とかく経営革新と言われると、米国型の経営スタイルを信奉しがちな日本人ですが、日本と同じく長い歴史を誇る欧州の国々に学ぶことも、大切なことかもしれません。
 
  経営への従業員代表の参加というと、既に労働組合がある企業はたくさんあるのではとの疑問が生じますが、より積極的に経営にコミットしていくという点は少し趣を異にするようですね。

  少々重めでしたが、今回も、価値ある一冊との出会いでした。

                                                                                                                                    2015-03-14  VOL.90

IMG_4966  今、日本で最もカッコいい車を作っているメーカーはマツダではないだろうかと、個人的には考えます。

  車種やカテゴリーは異なれど、全車に共通する統一されたデザイン感。Be a driver というコンセプトをきちんと具現化しているCM。折に触れて発せられる「走らせて退屈なクルマなんて絶対につくらない」という車づくりに対する強烈な信念・・・・・。

    何よりも今のマツダの魅力の源になっているのは、SKYACTIV(テクノロジー)というエンジン、トランスミッション、ボディ、シャシー技術。
  特にその中核を成すのは、エンジン技術。ハイブリッドやターボといった過給機に頼るのではなく、純然たるエンジン(内燃機関)技術の改良だけで、画期的に燃費を上げることに成功しています。

  同エンジン技術のインパクトは凄まじく、あのトヨタ自動車の開発陣達をも驚愕させたと、他の媒体で見たことがあります。

  本書の著者は、そんなマツダで、入社以来一貫してパワートレイン開発に従事してきた同社常務執行役員の人見光夫氏。
本年1月に放送された NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 http://www.nhk.or.jp/professional/2015/0112/に登場されたので見た方も、多いかもしれませんね。

  数度の経営危機に見舞われ、他の自動車メーカーに比べ圧倒的にリソースの劣る同社が、なぜこのような技術開発に成功出来たのか。そのプロセスと秘密に迫ったのが本書です。 

  エンジン開発のプロフェッショナルが書いた本ですから、当然技術的な話はたくさん出てきますが、読み辛さはほとんどありません。
  やはり興味深いのは、開発の過程でしょうか。
開発メンバーも含め限られた経営資源しかない中、余計な無駄は許されません。
そうなれば当然、本書の帯にあるような「選択と集中」が必要となりますが、同社のそれは、多くの選択肢から、どれかよさそうなものを選んで集中するということではなく、様々な課題に共通する主要共通課題を賢く選択し、その部分の解決に集中するということだそうです。

  まずは課題解決に関する因子を整理すること。そして開発全般のロードマップをきちんと作成し、個々の課題解決のゴールを明確にしつつ全体を俯瞰しながら、進捗把握をすることに腐心されています。
  また効率よく開発を進めるために、一つずつ条件変更をしながら実験を進めるのでするのではなく、時には極端な条件変更を課し、実験してみることで、新たなブレークスルーを促す等、独自の開発スタイルも目を引きます。

  しかし何よりも、本書で一番印象に残るのは、エンジン(内燃機関)技術は、まだまだ改良出来る余地があるし、車の主流はエンジン車であることは当面変わらないという著者の揺るぎない信念かもしれません。
その信念が皆を巻き込み、不可能と考えられていた開発に成功した大きな原動力に繋がっているように思います。
  そしてどんな難題であっても、「答えは必ずあると信じる人にこそ、答えは見つかるものだ。」という前向きな思いが、更に強くそれを後押ししたのかもしれませんね。

  マツダ復活の物語としても十分楽しめる本書ですが、多くのビジネスパーソンにとって、課題解決への取り組み姿勢を考える一助となる好著かと思います。

このページのトップヘ