名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2015年04月

IMG_5253 シリコンバレーに拠点を置くベンチャー・キャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」社。
同社の投資先には、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム等、短期間で爆発的に成長をした企業が並び、その資金調達力の高さ等から、シリコンバレーで最も有力なベンチャーキャピタルの一つとして数えられるそうです。

  本書は、同社の共同経営者による、若き経営者達への助言の書といったところでしょうか。
その下敷きとなっているのは、同氏の企業経営者としての経験。
世界最初のウェブブラウザ「モザイク」を開発した「ネットスケープ」に在籍も、マイクロソフト社との競合に敗れ、同社がAOLに買収されたのを機にクラウド・サービスの先駆けである「ラウドクラウド」社を創業します。

  ほどなくしてドットコム不況の到来で、同社は経営破綻の危機にさらされます。
次々と破綻していく得意先。苦肉の策で上場するも株価は低迷し、資金調達に苦慮します。更には売上の9割を占める得意先からの絶縁宣言。その対処のため行った起死回生の他社買収。
最終的には、自社の売却を決断するも、会計事務所の不手際から間際で、ご破算の危機に・・・・・
 
  本書の前半部分で描かれている、このエピソードは、臨場感にあふれ、深刻な困難(HARD THINGS)に直面する度、必死に解決策を探る著者の様子が目に浮かぶようでした。

  企業経営にマニュアルはなく、発生する問題に決まった対処法はないと著者は説きます。
よって本書も特に体系的に整理され、解決策が列挙されているわけではありません。
ただ自身の直面した問題に、どう考え、どう行動したか?何を学んだかについては、丁寧に記されており、読者として想定される若手経営者がヒントを得るには十二分な内容であるように思いますし、共感する部分も多いのではないでしょうか。
 
  個人的な感想としては、様々な問題の中で「人」に関してのウェイトが比較的高かったように感じます。
米国、ましてやIT企業ともなれば、流動的に人が動くのは当たり前であり、もっとドライな扱いかと思いきや、本書を読む限りでは、採用・昇進・昇格ややむを得ないレイオフ時の配慮。自身の選んだ社員が自社に貢献出来ないことが明確になった場合の対処。
コミュニケーションの大切さや、企業の置かれた状況を(良い時も悪い時も)きちんと社員に伝えることの重要性等、社員のモチベーション維持に、非常に気を配っている点が、印象深く残りました。
このあたりは国を問わず共通の課題と言えるのかもしれません。

  一方、上場による資金調達や必要な技術があれば買収という選択が比較的ポピュラーであること。創業経営者はしかるべき時期で交代させるべきという投資家の考え。取締役会がきちんと機能し意思決定している様子等、日本の経営慣行と違う点等も興味深く感じました。
 
  単なる経営者の回顧録でもなく、かといって無理矢理、何か理屈付けしているわけでもなく、ちょっと位置づけに悩む本書ですが、なかなか示唆に富んだ1冊。面白かったです。


                                                                                                                                    2015-04-25  VOL.96

IMG_5228   「問題解決のジレンマ」とは何でしょうか。
 
 近年、ビジネスの場では「問題発見力」の必要性が、声高々に叫ばれています。
しかしながら、「問題解決」が得意な人は、往々にして「問題発見」は不得手なことが多く、その逆もまた真だそうです。

  「問題解決」と「問題発見」とでは、必要な着眼点に加え、仕事の価値観やスキルも異なります。例えば「問題解決」には、過去の経験や知識の蓄積が重要ですが、時に、それは先入観として足かせにもなります。それが本書で言う「問題解決のジレンマ」 。

  話変わって、経営学、マネジメントの巨人と言われたピーター・ドラッカー。  彼が最後に書き記したいと思ったテーマは「無知のマネジメント」に関することだったそうです。また、かのソクラテスが語ったと言われる「無知の知」。

 「無知」こそが新しい知を生み出すためのキーワードではないか。
そんな「無知」に着目し、「問題発見」のための思考法に迫ったのが本書です。

  本書は四章構成となっており、第一章では「知」「無知・未知」の定義について、第二章では「問題解決」と「問題発見」の思考法の違いについて、第三章では、これらの概念を分かり易く伝えるため「アリとキリギリス」の寓話を引き合いにしています。そして最終章では、問題発見のための「メタ思考法」として3つの思考法を解説しています。

  決して難解な本ではないと思うのですが、ちょっと抽象的で、なかなか腹に落ちなかったというのが正直なところでしょうか。
  著者も、まずは比較的入りやすい第三章の「アリとキリギリス」から入ることを薦めています。
同章では、「フロー」と「ストック」 「閉じた系」と「開いた系」 「固定次元」と「可変次元」というキーワードで、寓話にあった「アリとキリギリス」をモチーフに、「問題解決」と「問題発見」の思考方法の差異を解き明かしていきます。
   飛ぶ羽を持たないアリは二次元的な動きをし、飛ぶ羽を持つキリギリスは三次元的な動きをします。
羽を持つキリギリスが、あたかも飛び上がって、高みから眺めることが出来るように、見たり考えたりする次元を上げることが、「問題発見」のためのメタ思考法へ繋がるということは、おぼろげながら理解出来るのですが、その域を超えてうまく取りまとめが出来ないのは、私の読み方が浅いせいであり、ご容赦いただければと思います。

  「無知」であることを認識することの有益性を説く本書ですが、本書で試みているように構造化したり体系化したことにより、それは「既知」となり、新たな「問題発見」の妨げとなるものかもしれません。
学習するが故に、より「問題発見」からは遠のいてしまうという矛盾。 
それゆえに「問題発見」力を身に着けることは、非常に難易度が高いことなのでしょうね。

  ちょっとモヤモヤ感を残しましたが、多くの示唆に富み、考えさせられた1冊。しばし再読し理解を深めたいと思います。
 
                                                                                                                                    2015-04-18  VOL.95

IMG_5092  会社の成長には三つのステージがあるそうです。
「第一のステージ」は、経営者が自分のやりたいことを定めて、事業を立ち上げる段階。
「第二のステージ」は、立ち上げた事業を通じて、成果を出す段階。
そして「第三のステージ」は、自社以外の利害関係者の利害を調整して、彼らの期待に応えながら、会社を更に発展していく段階。
 
 会社の成長を決定づけるうえで一番大切なのは「第二のステージ」。
このステージでは、「いかに社員に働いてもらうか」が重要であると著者は説きます。
 
  複数の企業経営者としての経歴を持つ著者が、自身の経験も踏まえ、そんな「第二のステージ」における経営者の動き方、社員への接し方を「7つの法則」としてまとめたのが本書です。

  法則1.社員を動かそうと思ってはいけない
  法則2.「社員のために」がヤル気を生む
  法則3.悪い報告こそ歓迎する
  法則4. 伝えたいときこそ、聞く
  法則5.できない社員には、できるための支援を
   法則6.何かを始めたら、何かをやめる
  法則7.異動や抜擢で「いまに甘んじない組織」に

  各法則につき、4~5つの項目が掲げられており、平易な文書で非常に分かり易くまとめられています。

  結局のところ、これらの法則の要諦は「社員にいかに任せるか」ということ。
とはいえ、決して丸投げしたり、放任することではなく、任せる意図を明確に伝え、十分なサポートをすることが大切なことと言えます。

  社員を尊重し、常に聞く耳を持つこと、適材適所に配慮すること等が、そのサポートに当てはまるのですが、個人的に一番印象に残ったのは、「何かを始めたら、何かをやめる」という部分でしょうか。

  限られた経営資源しかない中で、経営者は絶えず自社の事業や業務内容について「新たに始めること」「継続すること」「やめること」に目を配っていかないと、あっという間に行き詰ってしまうという指摘は、大いに賛同出来るものでした。
  新しく始めることに関心は高くても、やめることには案外無関心で、結果曖昧になってしまっていることって意外と多いのではないでしょうか。そしてそのことが社員を疲弊させている状況は決して少なくないように思います。
裏返せば、そこまでの配慮を経営者はすべきという、なかなか辛辣な指摘ですが、極めて大切な要素であることは間違いありません。

   社員に任せることが出来れば、企業の状況は必ず好転するという著者の主張には大いに納得出来るものであり、また本書の内容もそれを裏付けるに十分なものでした。
  企業経営者の方に限らず、管理職の方や、何らかの形で人をまとめる必要のある方にとっては、非常に有益な一冊といえそうです。


                                                                                                                                    2015-04-11  VOL.94

IMG_5092IMG_4966  エンタテインメント企画集団「指南役」。
過去に何冊か著作を読んだことがありますが、その独特の視点と軽妙な語り口は、ちまたのビジネス書とは一線を画すもので、面白く読んだ記憶があります。

   さて、そんな彼らの手による本作は、過去の著作とはちょっと趣を異にした「絶滅企業に学べ!」という、いわゆる失敗学へのアプローチ。

  10社の事例を挙げていますが、その選択がユニークです。

  ①「会社が目的化」して迷走した「フォーライフ・レコード」
  ②「五社協定」に縛られて時代に取り残された「大映」 
  ③「稼ぎは他で」と、慢心で倒れた「虫プロダクション」
  ④「ノブレス・オブリージュが果たせず去った「パンアメリカン航空」
  ⑤「唯我独尊」に陥り、没落した「セゾングループ」
  ⑥「天下り社長」で衰退した「アラビア石油」 
  ⑦「叩き上げの罠」で潰れた「鈴木商店」
  ⑧「政商になろう」として果てた「中島飛行機」
  ⑨「大口顧客」に頼りすぎて自滅した「山一證券」
  ⑩「異国と融和せず」に破滅の道を歩んだ「満鉄調査部」

  硬軟、新旧取り混ざり一見脈絡のない選択に見えますし、若い方には、もう馴染のない企業も多いかと思いますが、どれもかつて社会に強烈なインパクトを残した企業ばかり。
 その存在が、後の社会や経済に与えた影響は軽視出来ないものがあります。当然そういった企業は他にも数え切れないほどあるのでしょうが、やはりエンタテインメント企画集団である著者ですから、ストーリーとして面白いものを選択したことは想像に難くありません。

  これらの10社につき、概要と誕生から消滅までの経緯をコンパクトに1章ずつにまとめ、章末には「勝因」と「敗因」が簡潔に記されています。過去の著作と変わらない軽妙な語り口は読み易く、エンタメ性も十分なところはさすがという感じです。

  さて著者は、本書の狙いをこんな風に語っています。
倒産した企業というと、つい日本人は、それを「失敗した」対象として、全否定しがちであり、しばしば人に対してもそうであると。
  しかし、絶滅した企業であっても、素晴らしい偉業を成し遂げた企業は少なくありません。
それらの偉業に目を向け学び、そのDNAを受け継ぎ次代への指針とすることが大切ではないかと思い、本書を記したとしています。

   本書に登場する10社も、創業時の高い志で一旦は栄華を極めますが、その成功体験ゆえに、最後は破綻へと向かいます。企業の存続には、創業時の志をDNAとして受け継ぎながらも、時代に即し変化し続けることが不可欠であること。改めてそんなことを考えさせられました。
  サクッと読めますが示唆に富んだ1冊。お薦めです。

                                                                                                                                    2015-04-04  VOL.93

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