
新事業を創造するための「ビジネスプロデュース」という方法論を解説した本書は、元BCGの堀紘一氏が主宰するコンサルティング会社、ドリームインキュベータ社の執行役員の手によるものです。
一般的な戦略コンサルティング会社では、あまりやりたがらない「新規事業創出」コンサルティングに同社が従事する中で育まれたノウハウがそのベースとなっています。
ところでビジネスプロデュースとは一体どんな意味なのでしょうか。
プロデュースとは、本来は「生産する」、「制作する」という意味があるそうですが、日本では和製英語化しており「様々な方法を用いて目的物の価値をあげること」を指す意味となっているようですね。
本書では、「ビジネスプロデュース」とは「社会的課題を取り込み、それを解決する形での業界を超えた構想を描き、その仲間づくりをして連携をしていくこと」としています。
さてそんな本書は、①日本から世界を制するような大きな事業が生まれなくなってしまった理由 ②ビジネスプロデュースの解説 ③ビジネスプロデュースの進め方 ④架空のストーリーによるビジネスプロデュース疑似体験 ⑤ビジネスプロデュース型人材の育成方法 の5部で構成されています。
特に③の進め方のパートでは、構想、戦略、連携、ルール化、実施と仔細に渡りポイントが記されており、本書の中核を成す部分ですが、個人的には①の米国企業との比較の中で、日本企業が大きなビジネスを生み出せなくなった背景を興味深く読みました。
優れた技術や人材を擁しながらも、「構想」と「連携」する力の弱さから、成長の機会を逸している日本企業の現状を端的に捉えており、考えさせられる章となっています。
全般的に丁寧に分かり易く、まとめられおり、自社の過剰なアピールもなく概ね好感の持てる内容でしたが、惜しむらくは、ビジネスプロデュースの事例が一般的に知られたものに終始し、具体性に欠けたところでしょうか。ただ守秘義務もあり、これは望んでも仕方がない部分なのかもしれませんが。
タイトルに、3000億円の事業~とあるように、ビジネスプロデュースは実は中小企業より大手企業こそ、取組易いものであると本書にはあります。
とはいえ「構想」や「連携」の重要性やビジネスプロデューサー人材の存在は企業規模に関係なく不可欠な要素であり、本書で明かされている手法は、多くの中小企業にとっても参考になる部分は多いように思います。
2015-05-30 VOL.101