「黒霧島」 お酒、特に焼酎を飲まれる方は、一度は目にしたことのある銘柄かもしれませんね。今や、ほぼ全国で販売され飲むことの出来る芋焼酎です。
誕生は1998年。宮崎県都城市にある霧島酒造という蔵元が製造をしています。
同蔵元が、「黒霧島」の販売をした1998年度の売上高は81億9,300万円。
その15年後の2013年度には、565億7,600万円と、7倍の成長を遂げています。その牽引役は間違いなく「黒霧島」。
こんなデフレの時代に、なぜ「黒霧島」は、爆発的に販売量を伸ばすことが出来たのでしょうか。なぜ全国で販売されるまでに成長することが出来たのでしょうか。 そんな秘密に迫ったのが本書です。
今回、本書を紹介させていただく理由は2つあります。
1つ目は、自社製品を持つ中小企業の多くが、直面するであろう課題と対応が丹念に描かれている点です。
下請から脱却し、自社製品を持つべきというのは、中小企業経営論では、よく言われる話ですが、その実現は並大抵のものではありません。
脆弱化していた財務体質、ライバル蔵元の台頭、そんな中で始まった「黒霧島」の開発から、宮崎県を振り出しにドブ板営業を経て、最大の消費地東京へ乗り込むまでの過程。そして販売量増加に伴う原料確保の苦労、決断を迫られる大型設備投資の是非・・・・・。
芋焼酎不遇の時代に事業を継いだ3代目が直面する様々な課題と対応は、多くの中小企業経営者の方々に参考になる点も多いのではないでしょうか。
そしてもう1つは、地域創生の要は、やはり地域の中小企業にあるという点です。
「黒霧島」の成功により、同蔵元は、地域の雇用拡大に貢献するだけでなく、その認知度向上により同蔵元へ就職を希望する若者が集まり始めます。定住者の増加は地域の人口増へ繋がりますし、税収増も期待できます。
また同社の在る都城市は、ふるさと納税に同蔵元の芋焼酎を特典とすることで、わずか4ケ月間で4億円の寄付金を集めることに成功しており、地域の魅力度を高めることへも貢献しています。
かつて地方振興のためには、長らく産業誘致が不可欠と考えられてきましたが、その限界は明らかです。
今は、個々の地域が持つ魅力を掘り起し産業につなげる産業開発が不可欠と考えられ始めています。
そんな一つのモデルが、この「黒霧島」を巡る物語。
日本各地で、様々な「黒霧島」モデルが生まれることが、地域創生の望ましい姿と本書は結ばれています。
その担い手となりうるのは間違いなく各地域の中小企業。それは容易いことではありませんが、その可能性を感じさせてくれた本書。「黒霧島」を傍らに、是非ご一読ください^^。
2015-06-27 VOL.105



