「ビッグバン」
宇宙創成の起源になったと言われる「宇宙の初めの大爆発」を指す言葉ですが、一般的には衝撃的、破壊的な変化や変革を指す言葉として使われることが多いように思います。
日本でも平成8年、時の総理であった橋本龍太郎氏の提言した金融システム改革案である「金融ビッグバン」という言葉が印象に残っている方も多いかもしれません。
さてそんな「ビッグバン」というタイトルをつけた本書。
本書では 「ビッグバン・イノベーション」とは、「安定した事業を、ほんの数ケ月か、時にはほんの数日で破壊する新たなタイプのイノベーション」と定義されています。
著者たちは、この数十年、イノベーションにまつわる専門家達の考えには大きく3つのフェーズがあったと語ります。
企業の競争優位は「トップダウン」のアプローチによる「差別化」「低コスト」「集中」いずれかの選択により築かれるとしたマイケル・ポーター氏。
これに異議を唱え、破壊的な製品やサービスは「ボトムアップ」から生まれるとした「イノベーションのジレンマ」で知られるクレイトン・クリステンセン氏。
その考えを更に発展させ、競争相手のいない新たな市場「ブルーオーシャン」を創造すべきとした「ブルー・オーシャン戦略」で知られるW・チャン・キムとレネ・モボルニュ氏。
本社著者は、それは「トップダウン」でも「ボトムアップ」でもない「サイドウェイ」からの変革と定義をしています。
そして第4フェーズとも言える「ビッグバン・イノベーション」の時代では、破壊的な製品やサービスは、「トップダウン」「ボトムアップ」「サイドウェイ」の3方向から同時に襲来し、かつ既存顧客の大半を奪い去っていく「破滅的」なイノベーションであると説きます。
アドレス帳・スケジュール帳・ビデオカメラ・ポケベル・腕時計・地図・書籍・固定電話・トラベルゲーム・ウォークマン・トランジスタラジオ・カーナビ・空港のチケットカウンター・書店・旅行代理店・保険代理店 etc
我々の慣れ親しんだ、製品やサービスの現状を考えると、非常に分かり易いかもしれません。
さてそんな「ビッグバン・イノベーション」には、①枠にとらわれない戦略 ②とめどない成長 ③自由奔放な開発という3つの特徴があるそうです。
本書では、様々な事例を引き合いにこの特徴を解説したのち、「ビッグバン・イノベーション」時代の製品ライフサイクル図「シャークフィン」(本書表紙にある鮫のひれのような形状)に沿って4つのステージを紹介しながら、「ビッグバン・イノベーション」時代を生き延びるための12のルールを提言しています。
4つのステージとは、本来の「ビッグバン」になぞらえ、特異点、ビッグバン、ビッグクランチ、エントロピーがあり、それぞれのステージに応じ、3つずつ計12のルールが記されています。
特異点のステージでは①「真実の語り手」の声に耳を傾ける。②市場に参入するタイミングをピンポイントで選ぶ ③一見ランダムな市場実験に着手する
ビッグバンのステージでは④「破壊的な成功のシグナル」を見逃さない ⑤「ひとり勝ち市場」で勝者になる ⑥「ブレットタイム」をつくる
ビッグクランチのステージでは⑦市場の飽和に先んじる ⑧負債化する前に資産を処分する ⑨リードしている間に徹底する
エントロピーのステージでは⑩「ブラックホール」を逃れる ⑪他の企業の部品サプライヤーになる ⑫次の特異点を目指す となっています。
やや抽象的で分かりにくい表現もありますが、共通して言えることは「スピード」。
様々な事例が紹介されている本書ですが、実のところ「ビッグバン・イノベーション」への明確な対応策はないように思います。唯一言えることは、環境変化に敏感であれということなのでしょうね。
著者達も断りを入れていますが、本書でいう「ビッグバン・イノベーション」は全ての産業について当てはまるわけではないそうです。今起こっている「ビッグバン・イノベーション」の影響を特に受けているのはクラウドとモバイル技術に関する産業。しかしこの影響があらゆる産業に及ぶことは想像に難くないですよね。
この「ビッグバン・イノベーション」という定義が確かなものであったかを判断するには、時の経過を待つ必要がありそうですが、その結果がどうであれ、それが様々な示唆に富んだ本書の価値を下げるものではないと思います。構成も上手く、ボリュームがありながらも比較的読み易かった本書。お薦めです。
2016- 3-26 VOL.144
宇宙創成の起源になったと言われる「宇宙の初めの大爆発」を指す言葉ですが、一般的には衝撃的、破壊的な変化や変革を指す言葉として使われることが多いように思います。
日本でも平成8年、時の総理であった橋本龍太郎氏の提言した金融システム改革案である「金融ビッグバン」という言葉が印象に残っている方も多いかもしれません。
さてそんな「ビッグバン」というタイトルをつけた本書。
本書では 「ビッグバン・イノベーション」とは、「安定した事業を、ほんの数ケ月か、時にはほんの数日で破壊する新たなタイプのイノベーション」と定義されています。
著者たちは、この数十年、イノベーションにまつわる専門家達の考えには大きく3つのフェーズがあったと語ります。
企業の競争優位は「トップダウン」のアプローチによる「差別化」「低コスト」「集中」いずれかの選択により築かれるとしたマイケル・ポーター氏。
これに異議を唱え、破壊的な製品やサービスは「ボトムアップ」から生まれるとした「イノベーションのジレンマ」で知られるクレイトン・クリステンセン氏。
その考えを更に発展させ、競争相手のいない新たな市場「ブルーオーシャン」を創造すべきとした「ブルー・オーシャン戦略」で知られるW・チャン・キムとレネ・モボルニュ氏。
本社著者は、それは「トップダウン」でも「ボトムアップ」でもない「サイドウェイ」からの変革と定義をしています。
そして第4フェーズとも言える「ビッグバン・イノベーション」の時代では、破壊的な製品やサービスは、「トップダウン」「ボトムアップ」「サイドウェイ」の3方向から同時に襲来し、かつ既存顧客の大半を奪い去っていく「破滅的」なイノベーションであると説きます。
アドレス帳・スケジュール帳・ビデオカメラ・ポケベル・腕時計・地図・書籍・固定電話・トラベルゲーム・ウォークマン・トランジスタラジオ・カーナビ・空港のチケットカウンター・書店・旅行代理店・保険代理店 etc
我々の慣れ親しんだ、製品やサービスの現状を考えると、非常に分かり易いかもしれません。
さてそんな「ビッグバン・イノベーション」には、①枠にとらわれない戦略 ②とめどない成長 ③自由奔放な開発という3つの特徴があるそうです。
本書では、様々な事例を引き合いにこの特徴を解説したのち、「ビッグバン・イノベーション」時代の製品ライフサイクル図「シャークフィン」(本書表紙にある鮫のひれのような形状)に沿って4つのステージを紹介しながら、「ビッグバン・イノベーション」時代を生き延びるための12のルールを提言しています。
4つのステージとは、本来の「ビッグバン」になぞらえ、特異点、ビッグバン、ビッグクランチ、エントロピーがあり、それぞれのステージに応じ、3つずつ計12のルールが記されています。
特異点のステージでは①「真実の語り手」の声に耳を傾ける。②市場に参入するタイミングをピンポイントで選ぶ ③一見ランダムな市場実験に着手する
ビッグバンのステージでは④「破壊的な成功のシグナル」を見逃さない ⑤「ひとり勝ち市場」で勝者になる ⑥「ブレットタイム」をつくる
ビッグクランチのステージでは⑦市場の飽和に先んじる ⑧負債化する前に資産を処分する ⑨リードしている間に徹底する
エントロピーのステージでは⑩「ブラックホール」を逃れる ⑪他の企業の部品サプライヤーになる ⑫次の特異点を目指す となっています。
やや抽象的で分かりにくい表現もありますが、共通して言えることは「スピード」。
様々な事例が紹介されている本書ですが、実のところ「ビッグバン・イノベーション」への明確な対応策はないように思います。唯一言えることは、環境変化に敏感であれということなのでしょうね。
著者達も断りを入れていますが、本書でいう「ビッグバン・イノベーション」は全ての産業について当てはまるわけではないそうです。今起こっている「ビッグバン・イノベーション」の影響を特に受けているのはクラウドとモバイル技術に関する産業。しかしこの影響があらゆる産業に及ぶことは想像に難くないですよね。
この「ビッグバン・イノベーション」という定義が確かなものであったかを判断するには、時の経過を待つ必要がありそうですが、その結果がどうであれ、それが様々な示唆に富んだ本書の価値を下げるものではないと思います。構成も上手く、ボリュームがありながらも比較的読み易かった本書。お薦めです。
2016- 3-26 VOL.144