2016- 9-24 VOL.170
【概要】
株式会社ミスミグループ本社 http://www.misumi.co.jp/
製造業に従事されている方なら、同社について「機械部品をカタログで販売する会社」くらいの印象はお持ちかもしれませんね。
同社を一躍有名にしたのは、1980年代後半に発刊された「金型部品のカタログ」でした。プラスチック製品や金属製品製造に不可欠な金型。
同社のカタログが発刊されるまで、こういった金型製造は図面を描くことからはじまるのが当たり前でした。
ところが同社のカタログの発刊により、金型設計者の仕事は自身で図面を引くのではなく、同社のカタログから必要な金型を選択し採寸を指定することへと大きく変わっていきます。
これは画期的なことであり、このユニークなビジネスモデルにより、同社は1994年に東証二部上場、1998年には東証一部上場を果たします。
日本の景気低迷期にありながら、そのユニークなビジネスモデルで高成長、高収益を続けてきた同社。
創業社長である田口弘氏の経営手腕が大いに着目されたことも記憶に新しいところです。
ところがそんな創業社長は、2002年、とある人物に同社の経営を委ねます。
その人物こそ、本書の著者である三枝匡氏。彼は率いた12年間で代表就任当時、社員数340人、売上500億円だった同社を、グローバル社員数1万人、売上2,000億円の企業へと大躍進をさせます。
本書は、そんな同社の12年の歩みを描いたノンフィクションです。
三枝氏は、過去にも会社再建に関し3冊の著書がありますが、今回は「ミスミ」という実在する会社を舞台にしています。但し三枝氏本人と創業者の田口氏以外は全て仮名という変わった体裁をとっています。
【所感】
8章から構成される本書。
三枝氏が代表就任に際し、まず取り組んだのは、ミスミの強み弱みの見極め。そこから始まるのは、経営幹部への戦略思考の叩き込みでした。
そして原価管理、海外投資、M&A、生産管理、オペレーション管理、組織風土と、同氏の取り組んできた改革の過程が時系列で描かれています。
読み応えのあるダイナミックな改革ぶりですが、本書の素晴らしさは、当事者である三枝氏が、個々の改革につき、客観的にその意図や背景を分析し理論面の解説を加えていること。
各章の巻末を中心に記されている「三枝匡の経営ノート」というコラムや、要所で記されている「読者への設題」という囲み記事のある体裁は、さながらケーススタディブックの様であり、絶えず「あなたなら、こんな時どうするのか?」と問われているような臨場感あふれる構成となっています。
全編を通じ感じるのは、三枝氏の取り組みは決して奇をてらったものではないこと。
その取り組みの過程や内容は、経営学や経営理論を通じ、かつて我々が見聞きしたことのあるものが大半かと思います。ただ違うのは、その深堀りと徹底ぶりが半端ないということではないでしょうか。
凡百の経営学や経営理論のテキストを読むよりも、本書を繰り返し読むことで、経営に関する見識は相当向上するのではないかと実感した次第です。
三枝氏の手腕も素晴らしいのですが、個人的には、創業者の田口弘氏にも驚かされます。
自身が築きあげ、東証一部にまで上場までさせた我が子ともいえる企業を、他者に託すその胆力。
三枝氏に経営を任せた後は、何一つ経営に口出しすることはなかったそうです。また本書の出版に際し、ややもすれば田口氏の経営手法への非難とも取られかねない内容もありますが、何一つ加筆修正させず、ニコニコと笑って出版を許してくれたそうです。
希代の経営者二人に率いられたミスミグループの社員の方々は幸せですね。

【概要】
株式会社ミスミグループ本社 http://www.misumi.co.jp/
製造業に従事されている方なら、同社について「機械部品をカタログで販売する会社」くらいの印象はお持ちかもしれませんね。
同社を一躍有名にしたのは、1980年代後半に発刊された「金型部品のカタログ」でした。プラスチック製品や金属製品製造に不可欠な金型。
同社のカタログが発刊されるまで、こういった金型製造は図面を描くことからはじまるのが当たり前でした。
ところが同社のカタログの発刊により、金型設計者の仕事は自身で図面を引くのではなく、同社のカタログから必要な金型を選択し採寸を指定することへと大きく変わっていきます。
これは画期的なことであり、このユニークなビジネスモデルにより、同社は1994年に東証二部上場、1998年には東証一部上場を果たします。
日本の景気低迷期にありながら、そのユニークなビジネスモデルで高成長、高収益を続けてきた同社。
創業社長である田口弘氏の経営手腕が大いに着目されたことも記憶に新しいところです。
ところがそんな創業社長は、2002年、とある人物に同社の経営を委ねます。
その人物こそ、本書の著者である三枝匡氏。彼は率いた12年間で代表就任当時、社員数340人、売上500億円だった同社を、グローバル社員数1万人、売上2,000億円の企業へと大躍進をさせます。
本書は、そんな同社の12年の歩みを描いたノンフィクションです。
三枝氏は、過去にも会社再建に関し3冊の著書がありますが、今回は「ミスミ」という実在する会社を舞台にしています。但し三枝氏本人と創業者の田口氏以外は全て仮名という変わった体裁をとっています。
【所感】
8章から構成される本書。
三枝氏が代表就任に際し、まず取り組んだのは、ミスミの強み弱みの見極め。そこから始まるのは、経営幹部への戦略思考の叩き込みでした。
そして原価管理、海外投資、M&A、生産管理、オペレーション管理、組織風土と、同氏の取り組んできた改革の過程が時系列で描かれています。
読み応えのあるダイナミックな改革ぶりですが、本書の素晴らしさは、当事者である三枝氏が、個々の改革につき、客観的にその意図や背景を分析し理論面の解説を加えていること。
各章の巻末を中心に記されている「三枝匡の経営ノート」というコラムや、要所で記されている「読者への設題」という囲み記事のある体裁は、さながらケーススタディブックの様であり、絶えず「あなたなら、こんな時どうするのか?」と問われているような臨場感あふれる構成となっています。
全編を通じ感じるのは、三枝氏の取り組みは決して奇をてらったものではないこと。
その取り組みの過程や内容は、経営学や経営理論を通じ、かつて我々が見聞きしたことのあるものが大半かと思います。ただ違うのは、その深堀りと徹底ぶりが半端ないということではないでしょうか。
凡百の経営学や経営理論のテキストを読むよりも、本書を繰り返し読むことで、経営に関する見識は相当向上するのではないかと実感した次第です。
三枝氏の手腕も素晴らしいのですが、個人的には、創業者の田口弘氏にも驚かされます。
自身が築きあげ、東証一部にまで上場までさせた我が子ともいえる企業を、他者に託すその胆力。
三枝氏に経営を任せた後は、何一つ経営に口出しすることはなかったそうです。また本書の出版に際し、ややもすれば田口氏の経営手法への非難とも取られかねない内容もありますが、何一つ加筆修正させず、ニコニコと笑って出版を許してくれたそうです。
希代の経営者二人に率いられたミスミグループの社員の方々は幸せですね。