名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2016年10月

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【概要】

 〇好景気を知らない最近の若者は「かわいそう」
 〇「ゆとり世代」「さとり世代」「草食男子」 - 若者には「欲がない」
 〇若者世代は「消費離れ」している

   まことしやかに語られる若者論、若者消費論。

    はたしてそれは本当なのでしょうか?
マーケティングリサーチ会社で、生活者インサイトマーケティングリサーチに従事する著者が、U26平成男子コミュニティ(首都圏に住む20歳~26歳の独身男性を対象としたコミュニティ)を通じて見えてきたものは、ネット普及により誕生した「シミュレーション消費」という新しい消費形態でした。

  何事も「検索」からはじまる彼らは、モノでも場所でも体験でも、まずは検索をして情報を集めます。
  たくさんのリアリティある情報に触れて、「自身に本当に必要なものか」と自問自答しているうちに「(買わなくても、行かなくても、しなくても) まぁいっか」となり最終的には欲しくなってしまう。そんな傾向が強くなっているのではないかと、著者は推測しています。
  本書はそんな「シミュレーション消費」を含めた若者の消費行動の実態と、「シミュレーション消費」を超えて成果を上げている企業の事例を紹介した一冊となっています。

【所感】
 
  物心ついた時から、携帯電話やパソコンが普及していたデジタルネイティブであり、ゆとり教育の名の元に個性の尊重が叫ばれた世代。
失われた20年と揶揄されデフレの続く日本ですが、逆にこれが企業努力を生んだ結果、衣料品を含めデザインや機能性に優れたコスパの高い製品が生まれたり、ネット通販を含め購買方法も多様化するなど、実は旧世代よりも恵まれた部分も多いのだとの指摘は大いに納得できるものでした。
 
  そんな「シミュレーション消費」を超えて、彼らの購買意欲を刺激するものは何なのでしょうか。  
シミュレーションとは、失敗をしないために行う疑似体験であることは、みなさんご存じの通りかと思います。
 「無駄なことをしたくない」「失敗したくない」 そんな傾向の強い彼らが選ぶのは「本物」であること。
そして店員やスタッフが愛情や思い入れをもって、自身の製品やサービスを扱っていること。
  
   実は若者が求めているのは意外にも単純なことだと著者は説きます。
製品やサービスの付加的な価値や機能を訴求するのではなく、その製品やサービスには、どんなストーリーがあり、それが自身の生活をどうよくしてくれるのか。それがイメージできるなら、彼らの財布の紐は決して固くはないのだそうです。
  
   興味深い一冊でした。
惜しむらくは調査対象が首都圏に限られることでしょうか。所得水準が劣る一方、車などの購買意欲は高いと言われる地方の若者、いわゆるマイルドヤンキーと言われる層は、また異なる消費傾向を持つと思いますので、是非そのあたりの考察も読んでみたいところです。

  案外賢く、スマートな若者世代。彼らの消費行動に学ぶべきは、実は我々オジサン世代かもしれませんね。

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【概要】

  〇男子トイレにある「的」のついた小便器
 〇ゴミがポイ捨てされそうな場所に置かれた小さな鳥居
 〇コミック漫画の背表紙に描かれた1枚絵
 〇道路に設置されたスピードカメラ
 〇駐輪場に描かれた白線  etc

 誰でも一度は見かけたり、ご自身で体験されたものも多いのではないでしょうか。 こんな工夫がされているのは

 〇便器の周辺を汚させない
 〇ゴミをポイ捨てさせない
 〇コミックをきれいに巻の順に並べる
 〇自動車のスピードを緩める
 〇自転車をきちんと駐める

  ことを促すためです。

  このように、行動を上手に誘導し、結果として問題を解決する仕組みのことを著者は「仕掛」と呼んでいます。

  本書は、そんなありそうでなかった「仕掛学」について解説をした本です。
冒頭で挙げた事例を含め、30以上の事例を写真付きで紹介しながら「仕掛学」の定義や分類、またその発想法にまで踏み込んだ1冊となっています。

【所感】

  人が作ったものは全て、何かしらの目的があって作られていますから、広義ではすべてが「仕掛」ともいえます。そこで本書では下記の3つの要件を満たすものだけを著者は「仕掛学」と定義しています。

 ①公平性 (誰も不利益を被らない)
 ②誘引性 (行動が誘われる)
 ③目的の二重性(仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる)
 
    また著者が収集した「仕掛」の事例を調べた結果、「仕掛」は2種類の大分類、4種類の中分類、16種類の小分類の原理の組み合わせで説明が出来るそうです。

  これらの定義や分類を経て、発想のための4ステップが解説されていますが、何より大切なのは「仕掛」を見つけだす頭の柔軟さ。そのため著者は、子供を観察することを薦めています。

  好奇心旺盛な子供たちは、思わぬ発見をしたり、挑戦したくなる課題を勝手に作って遊ぶことも大得意。
大人がもつ「常識」というフレームを外してみることから、思わぬ発見や発想が生まれ、世の中はぐっと楽しくなるのだと著者は説いており、大いに賛同できるものです。

   著者のスタンフォード大学での在外研究を経て生まれた「仕掛学」。
日本発の新しいフレームワークとして、その展開を大いに期待したいですね。
ちなみに「仕掛学」に該当する適切な英訳はないそうで著者は Shikakelogy と名付けたそうです。
是非、欧米で定着し、トヨタのKaizenのようなポピュラーな存在となってほしいものです。

  ページ数を抑え、平易な文書ながら、理路整然とした構成で非常に読み易かった本書。
普段の生活の中だけでなく、必ずやビジネスの場でも活用できそうなヒントに満ちた1冊。好著です。

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【概要】
 
  「モノは売り方が9割」 

  そんな帯がついた本書は、マーケティング理論の入門書です。
「メルスデス・ベンツ」、「セブンイレブン」、「はなまるうどん」、「ブックオフ」、はては「きゃりーぱみゅぱみゅ」まで。
  我々を取り巻く身近な製品やサービスを題材に、8つのストーリー仕立てでマーケティングの基礎理論を分かり易く解説しています。

  モノが売れない時代にあっても、確実に成果を上げる人たちは、間違いなくマーケティングの考え方を理解して、それを行っている人たち。
  ビジネススキルとしてマーケティングを学びたいと思っている方には、新書で価格も手ごろな本書は、最適な入門書ではないでしょうか。

【所感】
 
  本書が取り扱ってるのは、概ね下記の理論です。
マーケティングに詳しくない方でも一つや二つはお聞きになったことがあるのではないでしょうか? 

  〇バリュープロポジション 〇ブルーオーシャン戦略 〇ブランド戦略 〇商品戦略 〇顧客開発
  〇価格戦略 〇チャネル戦略 〇ランチェスター戦略 〇プロモーション戦略 〇マーケティングミックス(4P)
  〇イノベーター理論 〇キャズム理論 〇競争戦略(マイケル・ポーター/5フォース分析)

 こう羅列をしてしまうと抵抗感を覚えるかもしれませんが、心配はいりません。
8つのストーリーは、全て著者の実体験から始まります。我々と同じように感じる素朴な疑問を切り口に、その理由の解説にこれらの理論をうまく当てはめており、さらっと読めてしまえます。

   さすがにこれだけの理論を、まとめて詰め込んでいますので、順序よく体系立てて整理されているわけではありませんが、関心をもった分野を掘り下げていくためのガイド本と考えれば、とてもよく出来ていると思います。

 個人的には、「はなまるうどん」で行われていた他店の期限切れクーポンによる割引施策や、メルセデスが経営するカフェなど、初めて聞く事例も多く興味深く読めた1冊でした。

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    正式発売は10/20となる本書ですが、先日たまたま丸の内・丸善で先行販売されているのを入手しましたので、いち早くご紹介させていただきます。

【概要】

  前著「ワーク・シフト」がベストセラーとなったリンダ・グラットン氏。
本書は、同氏と共にロンドン・ビジネススクールで教鞭をとるアンドリュー・スコット氏との共著です。
 
 過去200年間で、我々の平均寿命は10年に2年以上のペースで延びており、いま20歳の人が100歳以上、40歳の人が95歳以上、60歳の人が90歳以上生きる確率は50%以上もあるそうです。

 今や人生100年といっても差し支えない時代。本書でも様々な変化が予想されています。

 〇70代~80代まで働くことが当たり前となり、新しい職種とスキルが生まれます。
 〇教育→仕事→引退 という3ステージで考える生き方は終焉を迎え、我々はマルチステージの人生を生きるようになります。
 〇年齢とステージは結びつかなくなり、企業の人事制度やマーケティングは変革を余儀なくされます。
 〇変化が当たり前となり、多くの選択肢をもつことの価値が高まります。 etc

    これまでの価値観が大きく変わる中、計画なき生き方で迎える長寿は、災厄でしかありません。
本書は、そんな時代を生きる我々への指南書です。
いかに長寿化社会を有益に生きるのか。示唆に富んだ一冊となっています。


【所感】

   やはり長寿化ということになれば、人々が一番関心を持つのは「お金」。
終章を含め10章ある本書でも、独立した2章を割いて、それぞれ資金計画や資金調達について言及をしています。しかし本書で一番ページ数が割かれている章は「見えざる資産」についてでした。
 「お金」という有形の金銭資産の蓄積が長寿化社会を生きる上で不可欠なことは言うまでもありませんが、著者達はこの「見えざる資産」の蓄積こそが、この100年人生を考える上で、最も大切な要素であると主張してるように感じました。
 
 「見えざる資産」とは具体的には以下の3つの資産を指しています。
 
 ①生産性資産(人が生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素/スキル・知識・etc )
 ②活力資産  (肉体的・精神的な健康と幸福/健康・友人や家族との良好な関係) 
 ③変身資産  (自分について良く知っていること/多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること/新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていること)

  個人的にはこの3つの資産の中でも③の変身資産で挙げられている「自分について良く知っていること」こそ最も大切な要素ではないかと感じました。
 
  先ほども記しましたが、長寿化の進展は年齢とライフステージの相関関係を切り離していきます。
恐らく今後は新卒一括採用など同年代が一斉に社会人となることもなくなり、結婚や子育てする時期の個別性も高まるでしょう。また社会人を経て学生に戻り再度スキルの習得を図ることも一般的になるかもしれません。
もはや横並びで回りを見渡しながら、なにかを決めることは出来なくなり、自身の考え、自身が何を大切にするのかが極めて重要なこととなります。

  本書でもアイデンティを確立し、「ありうる自己像」を描くことが、100年人生を考える上で、自身の強力なインセンティブになると説明しています。
 
  他にもお伝えしたい内容は多々ありますが、この「見えざる資産」を意識し、全編に目を通していただくことで、より理解も深まるように感じましたので、少しスペースを割かせていただきました。

  「100年人生時代の指南書」であると紹介させていただいた本書ですが、自己啓発本にありがちな具体的なライフプランを描くフォーマットや、具体的な行動を促すようなチェックリストがあるわけではありません。

  本書から何を感じ、具体的にどんな行動から始めるのか。
大きく時代が変化する中で、本書をきっかけに自ら考えること。それこそが著者達が我々に一番期待するものなのかもしれません。

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【概要】

  「いままでにない新しい製品やサービス、事業を作り出したい。」
おおよそビジネスに従事している方で、そのことを考えたことがない方は皆無ではないでしょか。

   しかしながら市場が成熟し、一定の技術進化を果たしてしまうと、それ以上の伸びしろはなく、成果も上がらなっていくという事例は、枚挙にいとまがないところです。
 
  市場の創造に限らず、ビジネスの分野で課題解決といえば、既知の問題の枠組みの中で、定量情報を分析、分解して優先順位をつけて選択するという「分析的アプローチ」が一般的ですが、本書が提言するのは、 これとは真逆ともいえる「機会発見アプローチ」。

  枠組みの外からの視点で、定性情報を集め、結合をすることで、新しい価値を生み出す方法を解説しています。

   著者である岩嵜博論氏は博報堂イノベーションセンターのディレクター。
ご自身のビジネス経験に、社会学で用いられるフィールドワーク手法や、人間中心に発想するデザインシンキングの手法を交え体系化をされたのが本書です。

【所感】
 
  「機会発見アプローチ」は ①課題リフレーミング(課題解決に対する初期視点を導出) ②定性調査(定性情報の収集) ③情報の共有と整理(定性情報をチームで共有・整理する) ④機会フレーミング(定性情報の構造化) ⑤機会コミュニケーション(ステークホルダーから機会に対する共感と賛同を得る)という5つのステップで構成されています。

  本書では、この5つのステップに基づき、微に入り細に入り、その方法を解説しています。
分析手法の図示化が豊富で分かり易いことに加え、実際に使用をするフォーマット類も紹介されていること。
何より全体の構成、筋立てがしっかりしており、帯書で、三宅秀道氏が寄せている「完成された技術書」というのもうなずける内容でした。

   本書は個人のビジネススキルを高めるというよりも、あくまでチームビルディングにより成果を出す方法を提唱しているものです。
  イノベーションは、ごく限られた人間が偶発的に起こすものではなく、きちんとしたアプローチを踏むことで、その発生と成功確率を高めることが出来るのではないかというのが、著者の一番の思いではないのかと個人的には理解をしました。
 
  惜しむらくは、ケーススタディの記載がないことでしょうか。当然個々のチャートや、フォーマットには具体例が記されていますが、一貫した内容ではありません。一つの事例に基づき、上記ステップによる具体的な解説があれば、より理解は深まるように感じましたので、「実践編」のような体裁の続編を是非期待したいところです。
 

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