名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2017年02月

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   ビジネス書のカテゴリーから外れてしまうかもしれませんが、今週はこんな一冊をご紹介させていただきます。

【概要】

   5年ほど前に世間を騒がせた「オリンパス事件」。
財テク失敗で生じた巨額の損失を10年以上にわたり「飛ばし」という行為で隠し続けた同社。
  最終的には、2007年、2008年の二期にわたり、1,100億円もの利益上乗せをした粉飾決算を作成し提出。
金融証券取引法に違反した疑いで、当時の取締役を含め7名もの逮捕者を出した事件でした。

   本書著者の横尾氏は、その逮捕者の中の一人。
粉飾決算の指南役と言われたコンサルティング会社の代表でした。
実は同氏はかつて野村證券に在職。将来を嘱望された辣腕営業マン。
  「コミッション亡者」と揶揄されながらも、多額の手数料収入を野村證券にもたらせた人物でもありました。

  被告人となった同氏は、2015年7月に懲役4年の実刑判決を受けます。二審でも有罪判決を受け、現在は最高裁に上告をしています。

  そんな著者による本書。
「オリンパス事件」について言及されているのは、もちろんですが、過半は自身の野村證券での日々を振り返る内容となっています。 ブラックマンデー、バブル景気、損失補填、総会屋利益供与 日本経済の変遷を辿りつつ描かれた本書。
 ゼロイチ国債、ゼロクーポン債など登場する特殊な金融商品や、実名で登場する個人には注釈をつけており、金融の専門知識のない方でも読み易い構成となっています。

【所感】

  京都大学を卒業。金融機関とは言え、銀行などに比べれば「株屋」と称され、蔑まされていた時代に入社。
ノルマ證券と揶揄された強烈な営業体質。パワハラなど朝飯前で、退職者は後を絶たない。
そんな中で、日中は飛び込み営業、夜は3時間にもわたる営業電話。キーマンに会うためなら不意打ちも厭わない。そんな努力で徐々に頭角を現す著者。

   地頭のいい人なんでしょうね。社の命ずる商品を単に力技で売り込む営業マンで終わらず、自身で仮設を立てスキームを仕込むなど、様々な仕掛けを講じていきます。上司や同僚に「コミッション亡者」と呼ばれても、結果を出す人間が引き立てられる社風が同氏にはあっていたのかもしれません。
  金沢支店でスタートを切った著者ですが、ほどなく本書タイトルにもなっている事業法人部へ異動。エリートが集まる出世コースですが、ここでも独自のセンスで結果を出していきます。

  顧客を顧客とも思わない扱い。顧客を嵌めてでも商品を売って一人前。売買の繰り返しで、手数料を積み上げる不埒な行為。時代も時代とは言え、本書を読まれた方は、証券業界のありように不快感を覚え辟易するかもしれません。

  ただ個人的に、これは昔の証券業界特有のビジネス慣行に過ぎないとは言い切れず、たとえ時代や業界は違えど、新しい顧客をつかむ。実績を上げるといったプロセスの中では不可欠な要素と感じ、多くのビジネスマンも示唆を得る点は多いのではないかと感じました。

  さて将来を嘱望された、そんな著者がなぜ「オリンパス事件」に巻き込まれていったのでしょうか。

  実は著者は、野村證券時代にデータベースマーケティングに出会います。損失補填、利益供与事件で、その評判は地に落ちた証券会社。その旧態然とした営業体質を変える一助になることを確信。しかし社では思いかなわず同社を去ります。  
  独立した著者はコンサルティング会社を興し、データベースマーケティングを基軸に活動を始めます。
奇しくも当時、このデータベースマーケティングで先行していたのはオリンパス。
実は両者の接点は、投資指南ではなく、このデータベースマーケティングの活用を巡ってでした。しかしかつて野村證券時代に同社の損失補填で成果を出したことがあった著者は、会社の別の思惑に取り込まれていきます。

  真実は分かりませんが、本書を読む限り、個人的な印象は、豊富な金融知識やノウハウを持ちつつも、野村證券という後ろ盾を失くした著者がオリンパス社に翻弄され、結果としてうまく利用されてしまったこと。
  巻末で著者も「もし野村證券をやめなければ」と考えることは、今でも何度もあると語っており、自身も感ずるところがあるのかもしれません。

   野村證券時代の華々しさと、独立後の暗転。ビジネスマンの栄光と悲哀の両方を味わった著者が、一縷の望みを託している最高裁。果たしてその行方はいかに?
一人のビジネスマンの物語としても、バブル期以降の日本の経済史としても興味深い一冊でした。
 


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【概要】
 
  すべてのモノとコトをインターネットにつなげて社会インフラを変えていく技術革新 IoT(Internet of Things)。第4の産業革命とも言われるIoTにより生み出される新市場は少なく見積もっても全世界で360兆円とも言われているそうです。

  AI、ハイエンドサーバー、ITサービス、自動運転で独走する米国。一般家電、太陽電池、液晶等の電子デバイスで存在感を高めつつある中国。そんな米中のはざまで日本はどう戦っていくのか。

  本書は「半導体産業新聞」編集長にして、長らく半導体業界を見つめてきた著者が読み解くIoT革命の行方。
  
  著者は、IoTには3つのポイントがあると説いています。

 ①人を介在させない ②あらゆるものがネットワークに ③フルカスタムの社会へ 

   ②はイメージしやすいかもしれませんが、①の「人を介在させない」とは、人の手を介さず各種のセンサーが人に代わる役目を果たすようになること ③の「フルカスタムの社会へ」は②と矛盾するように感じますが、実はIoTの肝は自律型かつ分散型であり、今後企業が使用するシステムや生産設備は個別にオーダーメイドで構築されるようになるそうです。

  実はこのセンサーの分野において世界で圧倒的なシェアを抑えているのは日本。また個別のオーダーメイドのモノづくりこそ、日本がもっとも得手にする分野であり、IoT革命は日本のメーカーにとって、国際競争力を取り戻す追い風になると語る著者。

  先端技術に関する取材と長年の記者経験に裏打ちされた洞察と提言をまとめた一冊。ちょっと総花的な面がなきにしもあらずですが、興味深い内容となっています。

【所感】
  
 1990年代前半、DRAMなどの半導体市場で圧倒的なシェアを誇った日本。
またテレビ、ビデオ、オーディオ etc メイドインジャパンを代表する製品として世界を席巻した家電品の数々。
それも今や昔。日本の電機メーカーの凋落ぶりは目を覆うばかり・・・・・。 多くの方が、そんな印象を持たれているのではないでしょうか。

  ところが電子デバイス、特にセンサー分野に目を凝らすとこの認識は大いに変わります。
イメージセンサーで圧倒的なシェアを持つソニー。温度センサーのチノー、振動センサーの日本電産 他にもTDKや村田製作所など。
  センサーではありませんが、サムソンと互してフラッシュメモリーで、トップシェア争いを繰り広げる東芝(分社売却に揺れてはいますが)。世界でトップシェアを誇る日本企業の先端技術が続々と紹介されています。

   また自動運転が着目される自動車市場やロボット市場といった個別の産業分野にも章を割き、IoT革命が日本のメーカーに多大な恩恵をもたらす可能性を著者は指摘しています。

  さて日・米・中国の戦争と銘打った本書。著者は米中についてこんな見方をしています。

  軍需からの技術転向で圧倒的な強みをもつ米国が当面IoT革命を牽引するのは間違いなさそうですが、ファブレス化が進展しており、実際のモノづくりの面では、日本にチャンスがあること。

   中国については、(ちょっと見下した感はありますが)基本は廉価なコピー製品しか作れないし、国内雇用を守るためには製造現場の極度な省力化は進まないのではないかと推測をしています。ただ国家を挙げて巨額な資金投入による企業買収が行われる脅威はありますが、真に高度な技術は軍事、政治的な面から国家レベルで阻止される可能性が高く大事に至ることはないのではないかと記しています。

  IoT革命において、日本の優位性が高いことを知らしめてくれた本書。たしかに勇気づけられる内容ですが、やや楽観主義的すぎる感はあります。日本の抱える課題点など負の要素にも踏み込むことで、日本の進むべき方向性や戦略などをより鮮明にできたのではないかと思うのが、少々残念でした。

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【概要】

    業界屈指の戦略コンサルティングファーム、マッキンゼー。
本書は、同ファーム内の独立シンクタンクであるMGI(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)のディレクターたちによる近未来予測本です。

  本書が凡百の未来予測本と異なるのは、全世界にちらばる同ファームのコンサルタントが、日々クライアント企業や政府機関との議論の中で得たさまざまなミクロの洞察の積み重ねをベースにしていること。
そこへ学術的なデータを重ね合わせることで、より説得力ある内容にまとめあげられています。

  10章から構成される本書。
前半4章は ①経済の重心の移動 ②テクノロジー・インパクト ③地球規模の老化 ④「流れ」の高まり という本書副題ともなっている4つの破壊的な力について取り上げています。

  後半6章では、この4つの破壊的な力の影響から生じる、解決すべき6つの課題として ①巨大な中間層の出現 ②資源価格の変動 ③資本コストの上昇 ④労働力需給のミスマッチ ⑤新たな競合の出現・競争ルールの変化 ⑥国家政策 を掲げています。
 
  なかなかボリュームのある一冊ですが、マクロな具体的事例が多く盛り込まれていることから、比較的読み易い構成となっています。


【所感】

  本書で繰り返し出てくるキーワードは「直感のリセット」。

  現実の変化は、我々の想像や常識を優に追い越してしまっており、我々が過去の経験から蓄積された直感に基づいて意思決定をしてしまうと、かなりの確率で間違う可能性が高いのだと警鐘を鳴らしています。

   本書の目的は、大きな変化の潮流の中で、これからの10年間に求められる経営の要件を明らかにすることにあります。その提示される要件には、しばしば我々の過去の考え方にはそぐわないものも散見します。
 そのそぐわなさの認識こそ、我々の「直感のリセット」を促すものであり、著者たちの意図もそこにあるのではないかと感じました。

  興味深いテーマの多い本書ですが、個人的に期待して読んだのは、後半④の労働力需給のミスマッチについて触れた章でしょうか。

    近年、特に先進国では経済回復が雇用増、給与増に結び付かない現象が顕著に起こり始めています。
それは我が国でも顕著。成熟経済下では、就業機会の増加は、複雑な問題解決型の「インタラクション」業務であり、同じルーチンを繰り返す生産及び定型「トランザクション」業務ではありません。

  問題解決といった高度なスキルを持つ人材が不足する一方、低スキル人材は就業機会が不足する傾向はより高まりますが、かといって身につけたスキルもすぐに陳腐化をしてしまう時代ゆえに、このギャップ解消は非常に困難を極めるように思います。
  事実、本書では新しい人材源の確保、技術の見直し、職務を分解し互いに訓練をすること、教育に積極的に関わることなどを提唱していますが、どれも決定力には欠き、本章末でも結局は不断の教育の継続と各種スキル維持が必要だとまとめているに過ぎませんでした。

  実は他の章において提示された課題についても、本書は明確な解決策をあたえてくれるものではありません。
事実とその解釈を提示する中で、我々自身の考え方を柔軟にし、既存の枠にとらわれない発想や行動の必要性を繰り返し問うているというのは先ほどお伝えしたとおりです。

   とはいえ、それが本書の価値を貶めていることはなく、大いに刺激を受けることは間違いなしの一冊。
今後のビジネス潮流を知る上では、経営者を含めビジネスパーソン必読の書というのも、納得の内容です。
 
  さて本書に登場する、様々な破壊的トレンドを読んでも、悲観することなく、楽観主義でいることが大切だと巻末で著者達は述べています。
(過去の経験則、自身の習慣や価値観が揺らぐ)感情(悲観論になりがち)を乗り越えることこそ「直感のリセット」であり、結局は楽観主義が時代を制するのだからと結ばれています。 

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【概要】
 
 イスラエルと聞いてみなさんどんな印象を持たれるでしょうか。
第二次大戦後にユダヤ人たちが建国。しかしその建国の経緯にゆえに、周辺国家との武力衝突の絶えない中東の国。
  最近では、米国のトランプ大統領が、米国大使館を国際法では正式な首都として認められていないエルサレムに移す計画を打ち出し、物議を醸しだしたことも記憶に新しいところです。

 人口、約860万人(2016年)。四国と同程度の国土しか持たない小国ですが、実は年間800~1,000ものスタートアップ(ベンチャー企業)が設立されているそうです。またグローバル企業のR&D(研究開発)拠点が、300以上も置かれており、欧米諸国からは「中東のシリコンバレー」と呼ばれ、注目を集めています。

  日本からおよそ9,000km。直行便もない同国へ100回以上も足を運んだ著者が、そんな知られざる「イノベーション大国」イスラエルの実像に迫ったのが本書です。
  
 
【所感】

  多数のスタートアップを輩出できるのも、グローバル企業がこぞって同国に進出をするのも、まずは優れた人材がいるからこそ。個人的には、その人材育成の仕組みに一番関心を持ちました。

  不安定な環境にあり、かつて迫害された歴史もあることから、同国は、国境を越え持ち運べる「頭脳=知識」に投資をする教育熱心な国家でもあります。そしてその教育で重視しているのは「現在に適応すること」。
 10歳前後から始まるプログラミング教育。12歳からのソフトウェア開発やサイバーセキリュティ教育を経て、高校卒業時までに、世界で渡り合えるレベルの人材が誕生します。当然幼少期から英語教育が行き届いていることは言うまでもありません。
 
  高校卒業後は、男性3年、女性2年の徴兵があり、軍の先端のノウハウを学ぶとともに、チームで動く重要性も徹底的に叩き込まれます。そして兵役を終える22~23歳頃には、起業可能な世界レベルの技術力とマネジメント力を備えた人材が輩出される仕組みとなっています。
 
  国土の半分は砂漠。中東であって産油国でない同国が外貨獲得のため目指したのは、付加価値の高い産業を生み出すこと。
  1970年代後半以降、同国からシリコンバレーへ行く人材が急増します。1990年代、国の後押しで多数のベンチャーキャピタル産業が立ち上がる中、そんな人材たちが帰国をはじめます。また1991年のソ連崩壊時には、100万人のユダヤ系ロシア人を受け入れます。その内10万人はいわゆる高度技術者。多数の優秀な人材の吸収によって、同国は徐々に「ハイテク立国」というポジションを築いていきます。

  他にも本書では、スタートアップを育むエコシステム(起業家、投資家、自治体、大学、大企業、メンター等のかかわる仕組)、イスラエル起業家の特徴、着目されている現地企業とその技術、グローバル企業や日本企業の進出状況にも触れ、イスラエルビジネスの現状を分かり易く伝えています。

  具体的な法制度や細かな商慣習、生活環境といったところまで、踏み込んいるわけではありませんので、入門書と呼ぶにも少々 物足りない部分はあるかもしれません。

  ただ専門の研究家ではなく、徒手空拳で現地ネットワークを築き、日本企業と現地企業のアライアンス事業を展開するところまでビジネスを拡大してきた著者ゆえに、現場目線で記された本書は、ダイナミズム溢れるイスラエルビジネスの魅力を余すところなく伝えており、一読の価値ある内容となっています。 

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