名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2017年04月

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【概要】

  GWということで、今週は気楽な一冊をご紹介させていただきます。
これビジネス書なの?とお叱りを受けそうですが、是非お付き合いくださいませ。

  毎週日曜日、夕方5時からTOKYO FM系列で放送されているラジオ番組「NISSAN あ、安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE ~」http://www.tfm.co.jp/abe/index_pc.php
 

 「この物語は、ごくごく普通であくまで平均的な昭和生まれのナイスサラリーマン安部礼司がトレンドの荒波に揉まれる姿と、それでも前向きに生きる姿を描いた勇気と成長のコメディである。日曜の黄昏時、若さと渋さの間で揺れる昭和生まれのアナタに贈る『鼻歌みたいな応援歌』を、ツボな選曲とともにお楽しみ下さい!」

  とのナレーションで始まる人気ラジオ番組。放送開始から12年目を迎えています。

  本書は、そんな番組から生まれたビジネス書。
ジャンル的にはバラエティ番組となるのでしょうが、最新のビジネス雑誌やビジネス書の内容も引き合いにしつつ、とある中堅商社を舞台にドラマ仕立てで構成されている同番組。上手く折々のビジネストレンドを盛り込んでいます。
  主人公である安部礼司が遭遇する様々な事件や騒動。それらをやりくりする中で生まれた処世訓集とでもいうべき体裁でしょうか。ただそこはバラエティ番組発。どこかクスッと笑える内容になっています。

【所感】

  7章から構成される本書。見開き2ページにつき1つずつ、計60のエピソードが掲載されています。
その内容は、部下や上司、同僚とのコミュニケーション法や、仕事のマインドの高め方など。

  「使える後輩には昼めしくらい驕っておく」「マイナスな報告はいい話題でシメる」「女子の言うことには、あまり逆らわない」etc
正直、取るに足らない内容ともいえますし、基本的にその教えは「ゆるい」ものばかり。でもその「ゆるさ」に不思議と納得感を覚えてしまう本書。

  実は今回ご紹介させていただいた理由は、本書云々よりも、この番組そのものが優れたビジネスモデルではないかと常々考えていたからです。

  著名な出演者が毎回登場するわけでもなく、登場人物は全て架空の存在です、演じる声優陣もさほど有名ではないように思います。その一方で、帯にあるように推定リスナーは180万人とも言われ、登場人物の結婚式を模したイベントを開催すれば2,000人ものファンを集めてしまいます。

  その魅力と仕掛けは一体何なのでしょうか。
架空の登場人物や勤務場所ながら、実は緻密な設定をし、しかも劇中には実在の場所やイベントを盛り込むことで、臨場感を持たせています。
  そして肝心要の主役には 安部礼司(AVERAGE 平均)というふざけたネーミングをつけつつも、「あ~ごくごく平均的なサラリーマンってこんな感じだよね~」と多くのリスナーが自分自身を投影しやすい人物像に仕立てていることで、共感を呼ぶのではないかと個人的には考えています。

  またFMラジオ番組ゆえに、多数の曲が流れますが、大半は80年~90年代の邦楽から。
これも想定されるリスナー層が、どこか懐かしくも共感を覚える線を狙ってのこと。当然心くすぐられますよね。

  多くのメディアの中でも斜陽著しいと言われるラジオにあって、なぜ11年間も続く、人気番組となっているのか?その理由に思いを馳せることで、我々の普段のビジネスの参考に出来るところも多いのではないでしょうか。
  とはいえ堅苦しく考えず、そんな番組初めて知ったよという方は、是非一度耳を傾けてみて下さいね。
                     
                                            マガジンハウス 2017年4月20日 第1刷

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 いつもお付き合いいただきありがとうございます。 
4年前に始まった弊法人の公式ブログ。個人的に毎週1冊の新刊ビジネス本をご紹介させていただくこととし、今週で晴れて節目の200回目を迎えることが出来ました。

  200冊目として、今回ご紹介させていただくのは、日本の近未来(2030年)シミュレーションをテーマにした一冊。
  人口減少で、今後確実に労働力を失っていく日本。我々は、その課題にいかに対峙すべきなのか?野村総合研究所在席の著者達がそんなテーマに迫っています。

【概要】

  本書のベースとなっているのは、野村総合研究所内の2030年研究室で取り組んできた未来予想プロジェクトです。
   2030年までに約700万人の労働力人口を失うことが確実視されている日本。不足する労働力の担い手となる可能性があるのは、「外国人労働者」と「デジタル労働力」。

  本書はこの2つの労働力に関する考察を基軸に下記内容の6章で構成されています。

  ①日本の人口減と労働力不足の現状 ②外国人労働者獲得の可能性と現状 ③人工知能技術の概要と既に代替が始まりつつある事例の紹介 ④イギリスのオックスフォード大学と共同で行った、人工知能による日本の職業代替可能性の検証 ⑤小売・物流・医療の3分野における未来シナリオ ⑥デジタル労働力がもたらす個人、組織、社会の変化の方向性

【所感】

  個々の章の内容が比較的独立していることから、関心あるテーマから読み進めることも、著者達は推奨をしています。
興味深い内容が多いのですが、個人的に関心を覚えたのは、外国人労働者獲得の可能性と現状に触れた2章でしょうか。
  例え広く門戸を開き、外国人労働者を受け入れようと思っても、既に日本の給与水準は国際的に高いとは言えなくなっていること、日本でのビジネス慣行、日本語での日常生活を余儀なくされることを勘案すると、日本での労働は諸外国と比較しても非常に魅力が乏しいこと。
   またスイスのとあるビジネススクールの調査では、「労働市場として魅力ある国か」との問いに対し、調査対象の61ケ国中52位という惨憺たる結果となっているそうです。
 著者達は、イギリスやスウェーデンの取組などを紹介しつつ、日本に限らず今や先進国の大半が、今後人口減、労働力不足となることは自明のことであり、いかに自国に来てもらうのか各国がしのぎを削って取り組む現状を明らかにしています。
 
    正直、もはやこの領域で日本がリカバリー出来る可能性はかなり低いとの印象を持たざるを得ませんでした。
著者達も明言はしていませんが、そんな印象なのかもしれません。
事実、最終章で語られる個人、組織、社会の変化の方向性も、デジタル労働力活用を前提としたものと個人的には理解をしました。
 
    社会においては、教育改革は必須とし「レゴ型人材」育成が急務であり、更なる雇用の流動化が必要であること。組織においては業務のデータ化と組織構造の変革が不可欠であるとしています。

  ならば個人はどうあるべきなのでしょうか?
〇日本人は過去と比較して長く生きる 〇労働力減少の日本では、今後ますます一人当たりの負担は重くなる
〇日本が過去に経験した成功体験は繰り返されることはない 〇新しい技術は持たざるものにとってチャンスであり続ける 〇デジタル労働力は登場する

 などのフレーズを掲げた後で、「選択をする力をもつことが生き抜くことである」と結んでいます。

 「選択」とは「痛み」であり、日本はこれまでその「痛み」を避け続けてきた社会であったと。
今までと同じにやればいい。行政や企業、その経営者や上司、OBや株主の言うとおりにやればいいという選択のもたらす結果は相当期待値の低いものになるとしています。
 
  各人が知恵を絞り、自身の意思で「選択」をすること。
それこそが、労働力不足という未曽有の危機に向う日本で、我々がサバイバルする唯一の方法と言えそうです。


                                             東洋経済新報社 2017年4月20日発行

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【概要】

  代表は暴走族の元総長。社員は元ヤンにチーマー。
そんな彼らが従事する千葉県にある農業生産法人 株式会社ベジフルファーム。http://www.vegefru-farm.jp/

   その異色の組み合わせから、これまでも様々なメディアで取り上げられてきており、何かの機会にご覧になったことがある方も多いかもしれません。
  「なぜ、今農業なんですか?」「なぜ、元ヤンが農業なんですか?」
そんな質問を絶えず投げかけられる同社。
   本書は、そんな質問に対する回答書であり、「農業は最高!一緒にやろうぜ!」という提案書でもある。と著者である同社代表が冒頭で語っています。

  4章からなる本書。
元ヤンが農業に向く理由。著者自身の半生と農業生産法人立ち上げから現在までの経緯。自身の仕事術などから構成されています。

【所感】
 
    第1章で語られる元ヤンが農業に向く理由の数々。
元ヤンは負けず嫌いだから、根性が座っているから、仲間を大切にするから. etc
確かにそういった側面はあるかもしれませんが、「元ヤン」をアピールするのは、認知度を高めるための戦略の一環なんでしょうね。
事実、同社が行っているのは不良少年を更生させ、農業に従事させることではなく、あくまで純粋なビジネスとしての農業。

  高校卒業後、家業である青果市場の運営会社に勤めた著者。
30代前半、産直開発で産地を回るようになり、日本の農家の現状を知ります。
このままでは日本の農業は衰退していくという危機感。その一方で長く仲卸に従事した経験から、販路を開く自信はあり、家業の関連で配送やパッケージングを行うノウハウもある。
  自身が生産者になることで、中間マージンを排除した一貫した流れができ、十分に利益をあげることが出来るはず。 成功例をみれば、必ず新規参入が増え、日本の農業は活性化するようになる・・・・・。

  同氏は、徒手空拳で参入したわけではなく、家業のグループ会社の一つとして創業しており、恵まれた環境下にあることは、自身も記しています。とはいえ、そのことが同社の価値を貶めているわけではありません。
 「元ヤン」社員募集。Tシャツの作成。社歌の作成 https://www.youtube.com/watch?v=aa1ITr6hu1E。そんな社歌を聞かせ栽培した「メタル小松菜」の生産。

  一風変わった施策の数々も、自社と自社生産物のブランド化を図ってのことであり、その狙いはスバリ「価格決定権」を農家が取り戻すこと。
  価格決定権を持てないゆえに、産業として希望が持てず、衰退の一途しかなくなるのだという著者の主張は全く同感出来るものでした。
  
 キワモノっぽさを演じつつも秘められたしたたかな計算。それでもあまり嫌味を感じさせないのは、真摯に、そして楽しみつつ生き生きと取り組む様子が、本書から醸し出されてくるからかもしれません。

  いつの時代も、世の中を変えていくのは、「ヨソモノ」「バカモノ」「ワカモノ」。
異端の新規参入者が増えることが、衰退著しい日本の第一次産業を活性化していくのではないか?そんなことを予感させる一冊でした。


                                              宝島社  2017年4月28日 第一刷

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【概要】

   カシオ計算機㈱
若い人なら、腕時計G-SHOCKやデジタルカメラ。年輩の方なら「♬~答え一発~」のCMでお馴染だった電卓のカシオミニ。誰でも一度は同社の製品に触れたことがあるのではないでしょうか。

  戦後、町工場から出発し連結売上3,500億円超の上場企業へ。
同社躍進の原動力となったのは、4人の個性的な兄弟の存在。
本書は同社設立60年にあたる昨年、読売新聞で30回にわたり連載された記事に大幅加筆をしたもの。
  4兄弟のうち、2名はご健在。そのお一人である四男の幸雄氏へのインタビューをベースに構成されています。

  同連載記事と書籍化につき、聞き手の佐々木氏はその理由をこんな風に記しています。
   円高、新興国の追い上げもあり、競争力を失ってしまった日本の製造業。
それでもなお日本の技術水準は高いものがあり、「ものづくりの魂」こそ日本の宝である。
そんな「ものづくり」の原点に迫ることで、ものづくり復活への道を探り、日本経済の次の成長のヒントを探りたい。そのためには一から「ものづくり」企業を育てた創業者の話がどうしても聞きたい。 
  すでに有力な「ものづくり」企業創業者の大半が鬼籍入りをしてしまっている中、健在される数少ない創業者の一人が樫尾幸雄氏。

  小さな金属加工の下請工場からスタートし、数々のユニークな製品を産み出してきた同社の60年間が生き生きと描かれています。
 
【所感】

  金属加工技術で、会社の創成期を支えた長男、天才肌で発明家であった次男、営業や販路拡大に長けた三男。次男のアイディアを図面化し実際に製品化をした四男(本書著者)。

  日本初のリレー(継電器)を用いた計算機で成功を収めるも、技術革新への対応遅れで積み上げた在庫の山。
倒産の危機を救った電卓開発。デジタル技術を用い参入した時計産業では後にG-SHOCKという一大ブランドを生み出します。他にも電子楽器への参入や、日本初の液晶モニター付きデジタルカメラ開発 etc。

  電卓では文具店。時計では家電量販店や百貨店など、従来にない販路を拡大したり、一世を風靡したテレビCMなど、ユニークな販促活動。

  個性の違う4兄弟が反目しあうことなく、互いに協力しあい家業から企業へと成長していく様は、日本いや世界でも類を見ない経営スタイルだったのかもしれませんね。

  華々しさの一方で、多くの失敗も語られます。創業以来の大赤字決算を招く結果となった携帯電話事業。
デジタルカメラの超薄型化に成功した自社のデバイス技術の外部販売を目すも、最終的には撤退。いくつかの工場閉鎖と社員のリストラも余儀なくされています。

  インタビューをベースにしている構成上、どうしても同社を中心とした社史的な色合いが強く、読み物としては大変面白いのですが、なかなか我々が示唆を得る部分は少ないのが実情です。

  それでも先ほどのデバイス事業からの撤退では、かつて電卓戦争をしたシャープの凋落も交え、デバイス販売とデバイスを用いた製品の両方を自社で行うことの弊害や、どんなに優れた単体部品を作ったところで、すぐに価格競争に巻き込まれていくので、複数の技術を取り込んだ模倣されにくい技術の確立が重要である旨を語っています。
  
  また若手社員に向け、同社の社是「創造」を引き合いに、積み重ねの大切さと創造の楽しさも説いています。
日々の「しつこさ」や「こだわり」、何事もトコトン追及する姿勢。「これでいいのか」と常に自分に問いかける姿勢の大切さは、時代や業種を超え共通のものではないでしょうか。
  そして個性と長所を伸ばすことの大切さにも触れていますが、これは4兄弟がお互いに自分にない個性と長所を持ち尊敬しあうことで、成功した経験に裏付けられたものなのでしょうね。

                                              中央公論新社  2017年3月25日 初版

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    先週に引き続き、今週も長~いタイトルの一冊をご紹介させていただきます(^^)

【概要】

 〇親会社で労務執行委員長に推されるも、29歳~30歳で1,000人のリストラに直面
 〇28歳で生後3日の双子を亡くし、以降子宝に恵まれず
 〇米国子会社副支配人就任も2割の社員リストラ断行を余儀なくされる
 〇米国では2度の胃潰瘍と大腸ガンを発症
 〇帰国後、債務超過の子会社へ出向
 〇出向法人ではNO,2の常務が社員と顧客を引き抜いて独立
 〇6億円の個人保証

 そんな過酷な経験を持つ著者が社長を務める日本レーザー社 http://www.japanlaser.co.jp/
 
 元々は、日本電子という東証1部上場企業の子会社でした。
しかし著者は、自身の退路を断ち、社員のモチベーションを高めるために、日本発の「MEBO」(Management and Empioyee Buyout)を敢行。役員、正社員、嘱託社員の皆が株主となり、親会社から独立を果たします。

  紆余曲折を経て著者がたどり着いた結論とは、
「『人を大切にする経営』の実践こそ、会社を再建・成長させるたった一つの方法である」こと。
そして「『社員の雇用』と『社員の成長』こそが会社の目的」ということ。

   そんな著者の思いと実施してきた施策の数々を明かした本書。
23年間、連続黒字、10年以上離職率0、女性管理職が3割を超える、同社の秘密が公開されています。

【所感】

 〇おかねをかけず社員のモチベーションを高めるのは「社長の笑顔」と「社長の声かけ」
 〇「今週の気づき」と「今週の頑張り」を全員で共有
 〇「社長塾」と「覚悟塾」 小さい会社でも英語力を高め、グローバル人材を育てる仕組
 〇70歳まで再雇用
 〇「2-6-2」の、下20%を切らない
 〇病欠しても給料は支給
 〇女性社員は一人一人と「バラバラ」の雇用契約を締結
 〇採用は通年実施   etc
 
   興味深い同社施策の数々。
全ての施策の根底にあるのは、それが下記の「3つ」の条件のいずれかをカバーするものであること。

   社員が絶対にやめない「3つ」の条件とは

 ①「言いたいことが何でも言える明るい風土がある」
 ②「社員が会社から大事にされていると実感している」
 ③「会社は自分のものだという当事者意識を持てる」
 
  明るい組織風土の醸成と社員の帰属意識を高めること。
それは一見簡単なようで、実は一番難しいことかもしれませんね。なぜならそれはコストをかければ解決するものでないから。
手間ひまかけて、社員との約束を守ることの積み重ねでしか実現する術がないからではないでしょうか。

  本書の事例は稀有なものなのでしょうか?自社では実現不可能なものなのでしょうか?
同社は社員数55名。年商40億円程度のレーザー機器専門商社。上場企業の子会社だったというインセンティブはありますが、典型的な中小企業の一つであり、多くの企業でも十二分に取り組める可能性はあるのではないでしょうか。

  示唆に富んだ本書。惜しむらくは、「しっかり利益が出る仕組み」をつくる大切さを説いた節がありつつも、具体的な計数管理方法など、同社の利益管理施策についてはあまり明かされていないこと。
ただ人という観点から、同社経営の秘密を明かすことを本書の目的とするならば、それは欲張りすぎなのかもしれませんが。


                                             ダイヤモンド社  2017年3月16日 第1刷

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