名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2017年12月

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 今回で本年のブログも最後となります。
1年間お付き合いいただきありがとうございました。今回ご紹介させていただくのはこんな一冊です。 

【概要】

 香川県にある勇心酒造 http://www.yushin-brewer.com/ 江戸末期安政元年(1854年)創業の老舗酒造メーカーです。

 戦前、日本全国に7,000蔵以上あったと言われる造り酒屋。年々減少の一途を辿り、今や酒造免許をもち実際に稼働している蔵は1,300前後と言われているそうです。

 そんな中にあって勇心酒造は、五代目当主である徳山孝氏が研究開発に成功した「ライスパワーエキス」の誕生で大変革を遂げます。

 本書はそんな同社の経営に迫った一冊・・・・・。

 といった単純な内容ではありません。
 明治学院大学経済学部教授であり、経営哲学学会の常任理事でもある著者はこう説きます。
「勇心酒造の変革は、同社の技術開発もさることながら、徳山氏の思想である「生かされている」という経営者哲学がその根底にあるのだ。」と。

 そしてそんな「生かされている哲学」という思想を通じ、幅広く企業経営や、我々を取り巻く社会問題の解決につながる一助を得る事が出来るのではないかとの意図をもって本書は記されています。
 
【所感】

 正直申し上げて、読み手の力量不足もあり、非常に理解しづらい内容でした。

  3章の章立てですが、1章ではいきなり微生物の話にはじまり、経営者哲学の概要に踏み込んでいきます。2章でやっと勇心酒造や徳山氏の沿革に触れていますが、日本酒製造工程やライスパワーエキス製造工程や効能などへと話が及びます。
   さらに3章では科学史にはじまり、トランプ政権や日本におけるロースクール閉鎖、企業不祥事問題として今さらながら、オリンパスの話が出てきます。

   おそらく著者ご自身の中では、必要な順番であり、思いを伝えるのに全ての要素が不可欠なのでしょうが、あまりに分かりづらく、正直、同社の沿革や経営に寄せる思いなどは、冒頭に紹介させていただいた同社HPで端的にまとめられていますので、そちらを参照された方がよいかもしれません。

 さて本書タイトルでもある「生かされている哲学」とは、一体なんなのでしょうか。

 酒造メーカーにとって不可欠な発酵というプロセス。それは微生物の働きがもたらすもの。日本という国は微生物に代表されるように、生物の力をうまく活用して今日まできた歴史があります。
 つまり我々はみな微生物の力により生かされている。この東洋的な考え方を根底に、そこに西洋的な科学を合一し、よりよいものにして次代につなぐこと。そんな考え方を世に広めたい。
 同社はそんな経営理念を掲げており、それを具現化したものが同社の「ライスパワーエキス」なのだそうです。 

 この思想には普遍的とも言える真理があるとの著者の主張には、大いに理解も出来ますが、如何せん本書での展開は、個人的には難解すぎました。もやもやとした読後感を覚えた1冊。勇心酒造という極めてユニークな企業を取り上げているだけに残念でした。

                          PHP研究所 2017年12月25日 第1版第1刷

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【概要】

 企業経営者の方なら、一度はその社名を聞いたことがあるのではないでしょうか?
 株式会社武蔵野 www.musashino.co.jp/ ダスキンレンタル商品の取扱いを主事業に、近年では経営サポート事業へも進出し、多数の中小企業の経営支援も行っています。

 同社を牽引するのは、代表取締役である小山昇氏。
15期連続増収の達成や日本経営品質賞を2回受賞するなど、そのユニークな経営手腕はよく知られるところであり、多くの著書も上梓されています。

 そんな小山氏の手による本書は、経営者向けに「数字」の活用方法を説いた1冊。
挑発的なタイトルですが、そこには「社員にとっては、お金を持っている社長、数字に強い社長だけが人格者」であり、それはいざという時に困らないだけのキャッシュをに会社が持っていること、そして経営者は、その作り方を理解していなければならないとの意味が込められています。

 「足し算引き算ができれば専門用語などは知らずとも、要所を押さえるだけで、誰でも数字に強くなれるのだ」と語る著者のノウハウの詰まった1冊となっています。

 
【所感】

 5章からなる本書。1章ではなぜキャッシュが大切なのかを説き、2章では金融機関への対処も含めた借入についての解説を。3章ではB/S(貸借対照表)を見るポイントと活用法について、4章ではP/L(損益計最書)の構成要素である、売上増、粗利増、経費削減のポイントが解説されています。
そして最終章では、数字を使って人材育成や管理をするノウハウで締め括られています。

 個人的に、本書の要諦は1章~3章にあると思います。
 会社が倒産するのは、赤字だからではなく、キャッシュがなくなってしまうからだというのは、よく知られているところであり、本書でも、そのあたりの重要性は繰り返し説かれています。

 ただ守りに徹するために、キャッシュが必要なのではなく、攻めのため機会損失を防ぐためにもキャッシュは必要なのだと著者は説きます。

 それではどこを攻めればいいのか(どこに投資をすればいいのか)?
それは①お客様の数を増やす ②社員教育 ③インフラ整備 の3点だそうです。
そしてその資金調達には銀行借入をすればいい。
  
 端的に言ってしまえば、本書の主題はこれだけです。

「そうか、お金を借りて手持ち資金を増やし積極投資をすればいいのか・・・・・。」
しかしそんな単純な話ですまないのは、皆さまご周知の通りです。そこで問われるのはバランス。

 そのため3書でB/S(貸借対照表)についての解説を加え、上手くキャッシュ管理の重要性をまとめているのはさすがだと思いました。

 身近な増収増益のポイントという点では、ページ数も多く読み応えもある4章が一番関心を引かれることと思いますが、個人的には1~3章の理解だけでも本書は十二分に元の取れる内容と言っても過言ではないと思います。

 ただ同社で経営支援サービスを行っていることもあり、同社の営業ツール的な要素が無きにしも非ずなところや、同社支援先が実名登場するのはどうか?と思う部分もある本書ですが、全般の内容に比せば十分容認できる範囲でしょう。


                         ダイヤモンド社 2017年12月13日 第1冊発行


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【概要】

 サニーサイドアップ www.ssu.co.jp/という会社をご存知でしょうか。1985年創業。東証JQGに上場する企業PRや販促支援、スポーツマネジメント支援を行う企業です。
 
 同社を一躍有名にしたのは、スポーツ選手のマネジメント事業。
 1991年、当時のサッカー日本代表の前園真聖氏のマネジメントを皮切りに、同じくサッカー元日本代表の中田英寿氏、水泳の北島康介氏、陸上の為末大氏、テニスの杉山愛氏などを手掛け、日本のスポーツマネジメントのスタンダードを作った企業とも評されています。
 
 本書は、同社の参謀として永らく同社の発展をささえ、コミュニケーション戦略を得意とするコンサルタントの手によるもの。

 PRの目的とは、「世の中に"楽しいさわぎ"を起こすこと」と語る著者の手による本書は、PR業界本でも、PR手法の教科書でもありません。
 現在はまちがいなく、今までで一番PRが世の中に必要とされる時代であり、企業も人もコミュニケーション巧者にならなければ生き残れません。本書はそんなPR的発想を各人が身に着ける有用性を目し記された一冊となっています。
 
【所感】

 5章からなる本書。1章ではサニーサイドアップの沿革や概要などが記され、2章から4章までは、同社がこれまで手掛けてきた事例などを引き合いにして

 ①PR的発想でコミュニケーション巧者になるためのコツ
 ②たのしいニュースのつくりかた
 ③ムーブメントのつくりかた

 といった章立てで、話題づくり、ニュースづくり、世の中の空気づくりのメカニズムを解説しています。我々がこれまで目にした事例も多く紹介されており、あ~あれってこういう仕組みや背景だったのかと気づかされる点が少なくありませんでした。

 本書で著者が一番伝えたいであろう、個人がPR的発想を生かすポイントについては、5章で端的にまとめられています。

 人に何かを伝え、動かすためには、「大義」と「共感」が必要なこと。いま(すぐ)やる理由をつくらなければ物事は前へは進まないこと。それでも価値観は強要出来ないことなどが記されています。
 また同章後半では、人材成長術と称し更に詳しく解説がなされており、若いビジネスパーソンには共感できる点、参考になる点も多いのではないでしょうか。

 個人のブランディングの必要性が叫ばれて久しく、またSNSの普及などで、我々を取り巻くコミュニケーション環境も大きく変遷を遂げてきました。

 伝える手段が多様で簡易になればなるほど、伝えたいことの本質が何かをよく考え、適切な手段を選ぶことの重要性を改めて気づかせてくれた一冊でした。

 冒頭から読んでも楽しめますが、より実践面に関心のある方は、まずは5章から読み進めるのもお薦めです。


                             東邦出版 2017年12月7日初版第1刷


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【概要】

 長いタイトルの本書は、神奈川県は綾瀬市にある株式会社吉原精工  http://www.w-cut.com/index.htmlの会長の手によるもの。同社の特徴を端的にタイトルにしています。
 同社の事業はワイヤーカット加工機による金属加工。社員数わずか7名という中小企業です。

 同社の存在が一躍知られることとなったのは、2017年2月3日付の日刊工業新聞のこんな記事でした。https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00415929

 社員の平均年収は600万円以上と、日本のサラリーマンの平均給与を優に超え、夏冬の賞与は手取りで100万円を現金で支給。
残業ゼロで週休二日制は当たり前。年に3回は10連休。

 そんな型破りの会社はどうやって生まれたのか?創業会長自身が直接語っています。

【所感】

 1980年創業。金属加工というどこにでもあるありふれた業態。
バブル景気崩壊、ITバブル崩壊、中小企業含め、たくさんの企業が淘汰される中、同社も何度も倒産の危機を迎えます。度重なるリストラを繰り返し最盛期に20名を超えていた社員数も7名まで減少していました。

 そしてリーマンショック。7名にまで減っていた社員。もはやリストラはせず、全員一律月額給与30万円。ボーナスはゼロでこの危機を乗り切ろうとします。
そこで社員に言われた「お金がないなら、時間をください」との一言が吉原会長に大いなる革新を決意させます。

 残業ゼロと言っても、全員が一律定時に帰るわけではありません。
土・日休みのAグループ。日・月休みのBグループ。日・月・火休みの夜間専門社員の組み合わせで、個人の労働時間は1日7.5時間。しかし工場は24時間稼働させることで生産性は上がります。

 さらに残業ゼロ導入に際し、これまで払っていた平均残業手当を基本給に組み込みます。
つまり残業が減っても、給与は変えず社員の生活を守ることから始めます。
 
 そして経営状況の公開。同社は会社に一定の利益があれば、全員一律 夏冬手取り100万円のボーナス支給することを約しています。全員一律ですから、とにかく会社全体の利益が上がりボーナスが出るよう全社員が意識をすることで、さらに生産性や業績は向上するという好循環へ繋がっていきます。

 本書では他にも、朝礼・会議はしない。定年制なし。全社員に部長の肩書をつけた名刺を持たせる。
9つの「ごめんなさい」を記したホームページなど、ユニークな施策が余すところなく紹介されています。

 人材も資金もない。社員数がたった7名の町工場でも、経営者の意識と行動が変われば、ここまで変革出来たという事実は、企業経営者の方のみならず、多くの方に勇気とやる気を与えてくれること間違いなしです。平易な言葉で語られつつも示唆に富んだ1冊。お薦めです。
             
                            ポプラ社 2017年12月4日 第1刷発行


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【概要】

 今週は異色の一冊をご紹介
 260年以上続き安定した社会の中で経済的にもかなり成熟していたとも言われる江戸時代。
 しかしながら大半の武士の生活は貧しく、江戸時代後期には財政破綻の寸前まで追い詰められていた藩も少なくなかったそうです。

 なぜに諸藩の財政はそこまでひっ迫していったのでしょうか?
幕藩体制の下、政権安定をめざし主従関係を固定すべく、幕府は諸藩に継続的な財政負担を強いて弱体化を図ります。

 それがよく知られた「参勤交代」。また築城や治水工事のため行われていた「手伝い普請」。これは諸藩が経費分担して行う大規模な土木工事のことを指します。
 他にも度重なる自然災害も諸藩の財政悪化に拍車をかけたそうです。

    財政健全化を余儀なくされるも、大半の藩は成果を上げられず明治維新を迎えてしまいます。
そんな中にあっても、藩政を改革し財政再建に成功した藩があり、そこには現代でいうCFO(最高額財務責任者)の存在がありました。

 本書は、そんな人物5名の施策に着目をした1冊。
時代背景や社会は違えど、絶望的な財政状況を乗り越えてきた彼らのマネジメントやリーダーシップスタイルに学ぼうというのが本書の目的です。

【所感】

 本書に登場するのは次の5藩と5名。

 〇松代藩真田家の恩田木工 〇米沢藩上杉家の上杉鷹山 〇備中松山藩板倉家の山田方谷 
 〇長州藩毛利家の村田清風 〇薩摩藩島津家の調所広郷

 著名な上杉鷹山を除けば、歴史に明るい方以外、馴染のない名前ばかりなのかもしれませんね。
 
 財政再建となれば、誰もが思いつくのは倹約令と増税ですが、その効果はあまりなく、どの藩も農業などの領内産業の生産性が落ち込み消費は冷え込むという悪循環を招きます。

   閉鎖的な自領域内だけで経済をまわそうとすればひっ迫するのは必須。ならばどうすればよいのか? 先ほど挙げた5名のうち恩田木工以外の4名は、その施策に産業振興を取り入れます。

 輸出立国を目指し、漆や桑、楮を100万本ずつ植樹させた上杉鷹山。
 葉タバコや「備中鍬」と呼ばれる鉄製品を江戸で販売するルートを開いた山田方谷。 
 市場の自由化、水産加工のブランド化を図ったほか、藩営の商社とも言える「越荷方」を設置した村田清風。
  黒糖生産で利益をもたらすも、偽金づくりや密貿易に手を染めたと言われる調所広郷。

 また恩田木工や上杉鷹山は「藩校」を設置し、次代を担う人材の育成にも力をいれていた様子がうかがえます。

 より細かな施策の内容や、各人のパーソナリティについては、是非本書をご参照いただきたいと思いますが、我々は本書から何を学べるのでしょうか。

 当時の藩の数は300前後、現在の市町村の数は1,700前後であり、その大半の財政は厳しい状況下にあります。単純比較は出来ませんが、地域の活性化が不可欠であることは今も昔も変わりません。
 そしていつの世も、漠然とした危機に対して人の対処は遅く、変革に際しては人は誰でも既得権を守り変化を望まないということ。

 本書でも、改革に対する凄まじいまでの抵抗が、どのケースでもみられます。
それでも人を動かすためには、分かり易い成果を少しづつでも見せること。そして施政者の姿勢と腹の座り具合に尽きるのではないか。個人的にはそんな感想を持ちました。

 いかに時代を経ようとも、藩であれ地方公務員法であれ、どんな組織体でも、属する人を動かす部分に変わりはない。

 そんなまとめでは、少々単純すぎますでしょうか?  着目のユニークさが光る一冊でした。

 
                          
日本実業出版社 2017年12月1日 初版発行







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