名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2018年03月

2018-3-25 VOL.248IMG_2115

【概要】

 基本的に自己啓発の類の本は紹介をしない本ブログですが、たまには例外も。
 年度末でいろいろと変化もあり、仕事を含め様々な思いのよぎる時期。よって今週はこんな1冊をご紹介させていただきます。

 社会主義時代のポーランドに生まれ、1989年の民主化により生活環境は一変。苦学の末大学進学を果たし3つの大学院を経たのち、2000年に来日。
 ベルリッツ、モルガン・スタンレー、グーグルで勤務をした経験を持つ著者。現在は独立し組織開発などのコンサルティング会社を率いています。

 本書はそんな著者の語る仕事論、組織論そして企業論。
 異色の経歴を持つ著者がタイトルに込めた「ニューエリート」とは、どういった人々を指すのか?
そして、これから我々が選択すべき働き方とは、いったい何なのか?
そのあたりに迫った一冊となっています。

【所感】

 6章からなる本書。主たる内容は仕事論ですが、組織論、企業論にはそれぞれ1章を割り当てています。
 そもそも著者のいうニューエリートとはいったいどういった人々、どういった層のことを指すのでしょうか。
 本書冒頭で、従来のエリートを「オールドエコノミー」とした上で下記の様に分かり易く比較をしています。

 ①【性質】強欲/利他主義 ②【要望】ステータス/インパクト・社会貢献 ③【行動】計画主義/学習主義 ④【人間関係】クローズド/オープン ⑤【考え方】ルールを守る/新しい原則を作る ⑥【消費行動】誇示的消費/ミニマリズム 
 前者が「オールドエコニミー」後者が「ニューエコノミー」であることは想像に難くないと思います。
 端的に言えば、これまでの「エリート」とは、優秀な大学を出て、大手企業に勤めたり官僚となり、高い給料を得て安定した職業人生を送る人々との印象が強いかと思いますが、これからの「エリート」とは既存の枠組みに囚われず、自ら新しい価値を生み出すことに情熱を傾ける人々といえそうです。

 勤勉さや服従、知能などの資質が求められた従来の働き方と違い、これから求められるのは、情熱や創造性、率先する気構えをもち、ゼロから新しい価値を生み出すことが出来ること。
 著者はこれを「クリエイティブエコノミー」と呼んでいます。

 どうすればそういった働き方が出来るのか?本書には多くの示唆が含まれますが、要約するなら、常に常に学ぶ姿勢をもつこと。決断は早くし行動を起こすこと。そして決断した瞬間から、自身の決断にに疑問を投げかけ続けること。体調や精神状態のバランスを維持すること。そして何よりも仕事を楽しむことと言えそうです。もちろんきちんと成果や結果を出すことは言うまでもありませんが。

 組織や企業についての言及もありますが、結局これからの組織や企業は、上記の様な働き方を尊重し支援する風土や仕組みを持たなければ、優秀な人材を呼びこむことは出来ず、成長はおろか存続すことすら難しくなっていくということ。

 平易な文書で、さらっと読めてしまいますが、なかなか刺激的な一冊。

    個人的には、「持続的に成長していることこそ成功である」との著者の主張が一番印象に残った1冊でもあります。新スタートの4月。持続的な成長を実現すべく気持ち新たに行きたいですね。

                        大和書房 2018年3月1日 第1刷発行 


2018-3-18 VOL.247IMG_2098

【概要】

 みなさんはAPIという言葉をお聞きになったことがありますか。
 APIとは「Application Programming Interface」の略称のことです。「あ~あのスマホとかにインストールするアプリのこと?」と思われた方は、当たらずも遠からず。
 APIを簡単に言うなら「ソフトウェアの機能を別のソフトウェアやサービスなどと共有する仕組み」だそうです。

 たとえば、私たちがどこかお店を探すときには、しばしばネット検索をします。お目当ての店を見つけ、そこへの行き方を調べるとき、Googleマップが表示されるケースが少なくないですよね。
 これはGoogleがその仕組みをAPIとして公開しており、誰でも自由にそのAPIを利用し自社のサイトで同社の地図サービスの表示をさせることが可能となっているから。

 近年、このように自社が保有する機能や開発したサービスをAPIとして積極的に提供する動きが高まっています。そんな状況はAPIエコノミーと呼ばれ多くの企業から着目を集めています。
 米IBM社の試算によれば、その市場規模は2018年で2兆2,000億ドル。日本円にして約250兆円が見込まれているそうです。

 もはや大半の企業や個人にとって避けることが出来ないAPIへの取組。
本書はそんなAPIの概略からすでに取り組みはじめている企業事例までを紹介した入門書とでも呼ぶべき1冊。今後、大きな潮流となりそうなAPIの世界を分かり易く解説しています。


【所感】

 3章からなる本書。APIの必要性を知ること、APIの活用法を知ること、API市場の役割を知ることといった内容で構成されています。

 APIとは「ソフトウェアの機能を別のソフトウェアやサービスなどと共有する仕組み」と言われてもなかなかIT系の企業以外の方はイメージがつきにくいかもしれません。
 ただどんなビジネスでも、事業を拡大していく際には、優れたパートナー企業と提携
し新しい商品やサービスを創り出すことは往々にして行われています。

 これと同じように自社のもつ機能や仕組みをAPIとして提供をする。逆に他社が提供するAPIを自社のビジネスモデルに取り込み、新しい展開を行うといった動きに変じていくと考えるとよいかもしれません。

 たとえば金融機関がもつ審査機能を利用し、自社の与信管理や決済業務に使用をする。自社の取引履歴をデータとして切り出し会計ソフトに取り組むなど、特に金融機関のもつ機能にはAPIに馴染み易いものが多く、本書でも事例として紹介がされています。

 とはいえ、一般の企業にはなかなかハードルの高いもの。そこで整備が待たれるのは、API取引市場。自社のAPIを販売したり、他社のAPIを比較検討し購入するような市場の存在でした。
 おりしも先週3月15日には、日本初のAPI取引所「APIbank,jp」https://www.apibank.jp/ が開設されており今後の発展が期待されているところです。

 ところでこういったICT技術関連の話になると「また日本は遅れている」との話になるのか?と思われがちですが、実はこのAPIの発想は日本人や日本企業にとっては、とても得手な領域になるのではないかと著者は指摘をしています。

 ごく一握りの天才の発想に頼り、市場支配的にビジネスを進めようとする企業が多い欧米に比べ、協業し課題解決をする姿勢をもつ日本企業は、APIエコノミー的だからだそうです。
 APIエコノミーが進展する中では、多くの技術やサービスが公開されていきます。天才的な発想に頼らずとも、丁寧にそれらを元に組み合わせたり、すり合わせをしていくプロセスが肝要となる点が日本にとっては追い風になるのではないか?との推測がなされています。

 なかなか興味深い一冊。
惜しむらくは、具体的にどういった機能やサービスなら、公開や流通の対象になるのか?コストはどれくらいかかるのか?といったより踏み込んだ実務面での内容については、あまり記述がなかったことでしょうか。


                    日経BP社 2018年2月26日 第1版第1刷発行

2018-3-11 VOL.246IMG_2070

【概要】

 おおよそ人であれ組織であれ、他者からの評価が気にならないという方は皆無ではないでしょうか。

 他者からの評価はときにカネよりも価値があり、たとえそれがゴシップであったとしても、人や組織の目的達成に多大な影響を及ぼすのだと著者たちは主張をします。

 つまり実際にどうであるかよりも、外からどう見えるかが、極めて重要だということです。

 はたして評価とは何なのか? なぜ評価には価値があるのか? それはコントロール可能なものなのか?

 レピュテーション(世評・評判・評価)研究の第一人者たちが、そんな疑問に迫った本書。

 トランプ、クリントン、タイガーウッズ、シャラポワ といった著名人や、排ガス不正を起こしたフォルクスワーゲン社や、メキシコ湾で原油流失事故を起こした英BP社 など、個人や組織(企業)の実例を引き合いにしながら、「評価」を制する方法を解き明かしていきます。

【所感】

 大きく2部からなる本書。評価をつくる戦略と最高の評価をつくる実践法から構成されています。本書の原題は帯にある「The Reputation Game」(評価ゲーム)。

 ゲームであるならば、当然そのルールを知らなければなりません。「評価ゲーム」の覇者となる(高い評価を得る)ためには次の3つの要素について、理解をしておく必要があります。

 それは ①行動 ②ネットワーク ③ナラティブ(物語)の3点。

 ①の「行動」は分かり易いですよね。「行動とは他者の期待に応えられるかどうかを示すメッセージ」であり、評価の中核をなすものです。

 そしてその「行動による評価」も伝わらなければ意味がありません。そこで重要になるのが②の「ネットワーク」。どんなネットワークに属し、どのネットワークにどれだけの時間を費やすのか。そのネットワークはオープンなものなのか、閉じられたものなのか。またどんなキーマンと接点をもつかにより、その影響度合いも大きく異なってきます。

 最後は③のナラティブ(物語)。組織や自身をどのように語るのか。また他者にどのように語ってほしいのかも重要な要素です。特に自身が語ることももちろん重要ですが、往々にして人は他者による評価の方を参考にするケースが多いことを考えれば、いかに伝えたくなる物語を紡ぎだすかということも大事な観点と言えます。

 上記の3点以外の要点として、「評価」には「能力」に対するものと「性格」に対するものの2つがあるとの解説がありました。
「能力」に対する評価は、一旦築いてしまえば、よほどのことがない限りなかなか失墜しないものですが、「性格」に対する評価は、これとは真逆に移ろいやすく不安定なものだそうです。

 重大な航空事故を起こしながらも、同社の製造するエンジン自体の評価は揺るぎなかったボーイング社の事例。優れたパフォーマンスを残しながらも、セックス依存症の露見からあっという間に人気の凋落したタイガーウッズの事例など、この定義も非常に分かり易く納得感のあるものでした。

 1部で上記の様な内容に触れたあと、2部では窮地に陥った際の対処や「評価」の貸し借りなど、より実践的な内容が記されており、1部で定義された「評価」につき、その説得力をより深める内容となっています。

 さて「評価」につき理解を深めることで、我々は完全にそれをコントロールし管理する術を身に着けることが出来るのでしょうか。
 著者たちは評価を与えるのが、他者である以上、それは不可能であり、そもそも他者の自分に対する評価は管理できるものとの思い込みは非常に危険な考え方だとしています。
 ならば何が出来るのか? 自身がどう理解されるのかを管理するのではなく、どう理解されるかに影響を及ぼすことができるよう戦略を立てることが肝要なのだと結んでいます。

 今やSNSなどの普及で、些末な言動すら評価の対象となり、あっという間に伝搬してしまう時代。「評価」とは、たとえ完全には管理できないものだとしても、その構成要素を理解し、適切な準備や対応をしていくことの重要性を教えてくれた1冊でした。



                                                                      日経BP社 2018年2月20日 第1版第1冊発行

2018-3-4 VOL.245IMG_2056

【概要】

 最近話題になることの多い「デジタルレイバー」。
一般的には「仮想知的労働者」と日本語訳されることが多いようですね。
 これまで人の手でしか出来ないと思われていた作業の大半をコンピューター上で処理をするソフトウェアのことを指します。
 このソフトウェアを構築する上で中心技術となるのがRPA(ロボットによる自動化)。こちらの名称の方が耳に馴染があるかもしれません。

 あえて「デジタルレイバー」と擬人化して呼ばれるのはその汎用性の高さかもしれません。
 エクセルなどのデータの入力や複数の業務ソフトからなるデータの整合や精査といった作業。そんな作業を自身に変わって代替してくれ、教えることでその業務範囲を拡大していく様は、あたかも新しい人材を採用したかのような印象を与えるのかもしれませんね。

 少子高齢化、働き方改革が声高々と叫ばれる日本。今後、労働人口が減少し労働時間も厳しく制限される中、働く一人一人が生産性を高めていかなければ、企業は存続もおぼつきません。
 そんな一助となるのが「デジタルレイバー」。
本書はそんな「デジタルレイバー」や「RPA」などについて理解を深めたい方の入門書としてぴったりの一冊。「デジタルレイバー」が求められる背景から、具体的な機能の紹介。導入事例も含め分かり易く解説がなされています。

【所感】

 5章17節からなる本書(4章だけは未来シミュレーションということで体裁がちがい、節はありません)。各節ごとに要点のまとめがついており、まずは手っ取り早く本書の内容を知りたいといことであれば、この要点だけをざっと読み、関心のある節から読み始めてもよいかもしれません。

 なかなか具体的なイメージがつかない方も多いかもしれませんが、「デジタルレイバー」の中心技術である「RPA」がもつ機能を知ると、イメージがつきやすいかもしれません。

「RPA」には7つの中心機能があります。
それは ①項目指定&操作 ②入力 ③コピー&ペースト ④繰り返し ⑤メール ⑥条件分岐 ⑦コマンド実行。

 みなさんが、卓上のパソコン上でやっている作業を思い出してみて下さい。複数のソフトウェアを使いつつ、やっていることは概ね上記の様な作業ではないでしょうか。
 「RPA」はその操作手順を記憶し、我々の代わりに作業を代行をしてくれます。
休むことなく、正確に、文句も言わず・・・・・・。

 本書では上記内容の他、導入時の留意点や必要とされる人材像、組織の在り方も含め、幅広く網羅をしており、非常に参考になる1冊でした。

 本書でも触れられていますが、おそらく多くの企業が「デジタルレイバー」導入をする際に妨げになるのは我々の意識。特に日本人としての労働に対する価値観かもしれません。

 ややもすれば、長い時間をかけ、コツコツと積み上げるような仕事の姿勢が評価され、働く側も自身が提供する時間が労働の対価と考えがちです。しかしもはや「デジタルレイバー」の導入で、ルーティン作業における時間あたりの生産性では敵うべくもありません。
 
 自身の労働時間が直接対価とならなくなった時、我々はどんな働き方をすればよいのか。
人間にしか出来ない創造的な仕事とは何か。改めて考えさせられます。
 
                    日経BP社 2018年2月20日 初版第一刷発行

このページのトップヘ