名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2018年10月

IMG_29992018-10-28 Vol.279

 
【概要】

 
 みなさまは「ほぼ日」https://www.hobonichi.co.jp/ という会社をご存じでしょうか。
 同社で最も有名な商品が「ほぼ日手帳」。2001年発売のベストセラー手帳。2018年版は80万冊以上も売れたそうです。

 ほかにはWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」https://www.1101.com/home.html の企画運営やオリジナル文具、雑貨の開発販売を手掛けています。
 創業から20年あまり、2017年3月には東証ジャスダックへ上場を果たしています。
 そんな同社を主宰するのは、糸井重里氏。多数の名コピーを生み出したコピーライターであり、作詞、ゲームデザインなどマルチな才能を発揮してきたクリエイターです。

 70年代~80年代のコピーライターブームを巻き起こした第一人者から、上場企業の社長に。本書は、そんな「経営者 糸井重里」へのインタビューをまとめた1冊です。

 経営者としては新参者だからと語る糸井重里氏ゆえ、タイトルには(経営について語るなんて、まだまだなんです)「すいません」とちょっと控えめなタイトルがついていますが、なかなかどうして。
「経済人」である前に「生活人」でありたいと語る糸井氏の地に足の着いた経営哲学が、ちりばめられています。

【所感】

「事業」「人」「組織」「上場」「社長」5章に分け5つの切り口から、同社経営の秘密に迫った本書。川島氏からの質問に糸井氏が答える形で構成をされています。

 各章ごとに川島氏が、インタビューの目的を記し、章末では内容のとりまとめをしている丁寧な体裁で、そこだけを読んでも十分内容は理解できるのですが、やはり肝要なのはインタビュー部分。ユニークな経営スタイルが次々と明らかにされていきます。

 〇会議や企画書は不要。自分がお客さんになったら本当に喜ぶかを本気で考える。
 〇2018年春から1日の労働時間は7時間。毎週金曜は自分のため、自由に使える時間に。
 〇人に喜ばれているという実感が人を動かす。
 〇出来る人、経験豊富な人でなく「いい人」を募集、採用する。
 〇評価の一番の基軸はリーダーシップ。
 〇「誠実」と「貢献」が会社の伝家の宝刀。
 〇会社の行動指針は「やさしく」「つよく」「おもしろく」
 〇創造の3つの軸は「動機」「実行」「集合」
 〇組織図は人体模型。人の内臓のように、全てがつながって役割を果たしている。
 〇上場を目指したのは「子どもの自由」からの脱却。
 〇社長がいなくても大丈夫にすることが、社長の役割  etc 

   拾いあげれば、きりがありません。一見非常識に思える施策や発想なれど、そこに込められた強い思いに色々と考えさせられます。

 またコピーライターとして数々の名文句を生み出してきた糸井氏ゆえ、本書には珠玉の言葉も溢れていました。なかでも個人的に気に入っているのは、上場前は「いつかやろう」と先延ばしにする部分があったところが、上場してからは「いつやろうか」と考えるくせがついてきたとのくだりです。

 「いつかやろう」と「いつやろうか」。
 同じ文字を使いつつも、並びを変えたけで自らの心情の変化を端的に表したこのフレーズに、やはりただならぬ糸井氏のセンスを感じ、とても印象に残った箇所でした。

 「ほぼ日」や「糸井重里」氏に関心がなくとも是非読んでいただきたい1冊。
創造とは? 仕事とは? 組織とは? 経営とは? 必ずしや何らかの示唆を受けること間違いなしの内容。超お薦めです。


                   日経BP社 2018年10月22日 第1版第1刷発行


IMG_29902018-10-21 Vol.278

 
【概要】

 
 著作を出されている会計人の方は、決して少なくありませんが、読み易さ分かり易さにおいて、群を抜いていると思われるのが本書著者である田中靖浩氏。
 そんな著者の新作は、会計の本質について世界史(欧米史)を紐解きながら迫った意欲的な一冊。

 一見無味乾燥に見える会計の世界が、その発展を歴史に紐づけることで、ここまで面白く描かれるとは驚きの内容でした。

 イタリア、イギリス、アメリカを舞台に、銀行や簿記の誕生に始まり企業価値評価からファイナンス理論に至るまで、おおよそ500年に渡る会計の発展史をひとまとめ!
 帯にある「会計エンタテインメント爆誕!!」に偽りなしの仕上がりとなっています。 

【所感】

 

 3部9章から構成された本書。
 イタリアからオランダを中心に「簿記と会社」の発展に触れた第1部。イギリスからアメリカを中心に「財務会計」の発展に触れた第2部。そしてアメリカを中心に「管理会計とファイナンス」の発展に触れた第3部。

 各部の内容も、それぞれ「銀行、簿記、会社」「利益、投資家、国際」「標準、管理、価値」に分けて1章ずつを配しており、読み易く構成されています。

 更に画期的なのは、1部には「3枚の絵画(トビアスと天使、最後の晩餐、夜警)」、2部には「3つの発明(蒸気機関車、蒸気船、自動車)」、3部には「3つの音楽(ディキシー、聖者の行進、イエスタディ)」と称したエピソードを盛り込んでおり、経済的な面のみならず文化的な面からもアプローチした立体的な構成となっており、読み飽きることがありません。

 また3部×3章×3つのエピソードと要点を全て3つで整理している点も読み易さの一助となっているのではないでしょうか。

 さてまず冒頭に誕生するのは、著名なレオナルド・ダ・ヴィンチ。ではなく彼の父ピエロ・ダ・ヴィンチ。
 公証人という当時非常に社会的地位の高かった職業についていたピエロ・ダ・ヴィンチ。当時なぜ公証人という仕事が重要であったのか?その理由は記録を残すことの重要性にありました。
記録という行為から銀行、簿記の発展へと話を進めつつ、その一方で父親と同じ公証人の職につけなかったレオナルド・ダ・ヴィンチの辿った生涯にも触れ、一気に本書に引き込まれていきます。

 以降も、メディチ家、東インド会社、チューリップ・バブルといった我々も良く知る史実に沿って、近代、現代へと展開され、最終章ではなんと、マイケル・ジャクソンまで登場。
ビートルズの著作権を購入した彼の行為の意味するところから「価値(企業価値)」という概念に触れ締めくくりとなります。

 いやいや~欧米史500年一気読みの
爽快感と、会計制度発展のターニングポイントを史実とうまく合わせたその構成は、まったく見事としかいいようがありません。
また専門用語の多用を控えながらも、要所を押さえた端的な記述もとても好感を覚えるものでした。
 
 財務や会計知識を身につける重要性については、今更説かれるまでのことはないことかと思いますが、身につけるためには、まずは興味や関心を持つことが第一歩。
 その点、このような体裁で大局を眺める事や、会計というものの発展も所詮人の営みの一つに過ぎなのだと気づくことで親近感を覚え、常に身近なテーマとして考える機会も増えるのではないでしょうか。もちろん一般教養として読むにも十分値する内容だと思います。

 400頁を越えるボリュームですが、経営者のみならず、管理職から一般のビジネスパーソン、学生の方まで、是非読んでいただきたい一冊。超お薦めです。

                   日本経済新聞出版社 2018年9月25日 1版1刷


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2018-10-14 Vol.277

 労働環境改善のため政府が提唱する「働き方改革」
時間外労働の上限規制導入、年次有給休暇の強制取得、不合理待遇の是正など、次年度から順次さまざまな施策が行われようとしています。書店にも関連図書が多く並んでいますので、お気づきになった方も多いかもしれませんね。

 本書もそんなコーナーに平積みされていた1冊。ただ少々、他の書籍とは趣が異なっています・

【概要】

 
 毎月10万人が閲覧する求人サイト「日本仕事百貨」https://shigoto100.com/  本書は同サイトを運営するナカムラケンタ氏の手によるものです。
 
 一般的な求人サイトと言えば、職種、勤務地、業種と言った募集要項の紹介が中心ですが、本サイトは体裁が変わっています。サイトを見ていただくと一目瞭然なのですが、まず飛び込んでくるのは、そこで働く人々の様子。
 職場を訪ね、経営者や従業員の方へのインタビューを元に求人の記事にまとめているそうです。

 なぜこんなに手間のかかることをするのか? 著者はこう語ります。

 仕事する上で当然、給料や福利厚生は大事な要素ですが、本当に大切なことは、その仕事に共感できるかどうかではないのか?と。

 何を思い創業をしたのか? 今はどんな仕事をし、これからどんな仕事をしようとしているのか? この仕事にはどんないいところがあり、どんな大変なことがあるのか。
 そんな思いや事実をきちんと理解できれば、きっと納得して働くことが出来るのではないか?そんな思いから生まれたのが、同サイトだそうです。 

 冒頭に「働き方改革」について触れましたが、その根底にあるのは、生活や働き方は多様化しているのに、そこに労働環境が追い付いていないことにあるというのが通説ですが、仕事と生活はそもそも分離をされなくてはいけないのでしょうか?

 植物にとって生きると働くに区別がないように、人も「生きるように働く」ことが出来るのではないか。そんなことを考えてみたのが本書だそうです。

【所感】

 

 同サイト立上げの経緯に始まり、著者が自身のサイトに掲載するために行ったインタビューの中で、特に印象深い方々を取り上げ構成された本書。

 たくさんの取材をするなかで、いつしか一本の木を眺めているような気分になってきたと著者は語ります。取材で聞いた、たくさんの言葉はあたかも「葉っぱ」の様。
 でもこの「葉っぱ」は実はバラバラのようで、何か一つの枝に、幹に、根っこへと通じているのではないか。そこに何か生き方の根底に繋がるようなものがあるのではないか。

 そんな思いは構成に表れています。植物が成長するためには、まず種を蒔き、水をやらねばなりません。そして発芽へと向かいます。
 その過程を、種を蒔く1章から森になる5章までという流れで構成しています。
 
 登場人物や紹介される業種もバラエティに富んでいます。
硝子店、衣装製作会社、建築事務所、フレンチレストラン、珈琲店 etc みなユニークな経歴を持ちつつも自身の仕事に真剣に向き合う様子が誌面からも伝わってきます。
 
 よく考えれば、日本にはこんなにもたくさんの職種や業種があり、厳しい面もありながら、それなりにみなビジネスとして成り立っていることって、実はすごく恵まれたことではないのか?

 ただ自分自身もそうですが、なかなかそんなところには目が向きませんよね。仕事は生活の糧を得るための手段であり、やりたいことよりやれることが大事。より効率的に願わくば高い給与を得たい。
 そんな凝り固まった常識から解放してくれるのが同サイトと本書と言えるのかもしれません。 

 三度「働き方改革」の話を持ち出して恐縮ですが、働き方改革のゴールは「社員の幸せ・成長と会社としての生産性・創造性の向上」にあるそうです。

 社員の幸せとは何か? 実は本書で言う「生きるように働く」ことにその本質はあるのではないか?そんなことを感じた1冊でした。
 厳密にはビジネス書のカテゴリーからは外れるのかもしれませんが、興味深き内容でした。
 

                   ミシマ社 二〇一八年十月一日 初版第一刷発行

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2018-10- 7 Vol.276

 二週間ぶりの三連休。皆様、どうお過ごしでしょうか? お休みの方も多いかと思いますので、今週は気楽に読める少し毛色の変わった、こんな一冊を紹介させていただきたいと思います。

 地元名古屋の市立大学大学院准教授が筆を取った一冊です。

【概要】

 

 名古屋市立大学大学院経済学研究所で准教授を務める著者。

 日々湧き起こる様々な経済事象。一見すると新しい概念や考え方が誕生したように見えて、実はそんなことは、とうの昔に理解されていたり、対処がされていた......。
そんな事例というのは案外少なくないそうです。

 どう対処しようかと悩む前に、まずはちょっと歴史を紐解く習慣を身に付けてはどうですか?というのが本書の狙いと言ってもいいのかもしれません。

 なぜなら歴史は、考えるヒントの宝庫だからと著者は語ります。
歴史は結果が歴然であり、そこにどんな原因や理由があったのかを理解し、参考にすることは、無駄な思考の時間を節約したり、思わぬ気づきを得るきっかけと成り得るからだと、個人的には理解をしましたが、いかがでしょうか?
 

【所感】

 

 7章で構成された本書。

「貨幣」「インセンティブ」「株式会社」について触れた前半3章が基礎編。「銀行危機」「取引コスト」「プラットフォーム」「教育」について触れた後半4章が応用編となっています。

 歴史に学ぶ経済というと、経済史という学問領域がありますが、本書はそこまで難解なものではありません。
 紐解く事例も、鎌倉・室町時代に流通した中国銭に、ビットコインの原型を見出してみたり、織田信長の施策、加納楽市令に、プラットフォーム戦略を見出すなど、バラエティに富んでいます。

 学生時代の教科書で、読んだことのある事例も多いのですが、当時は史実として読んだり覚えたりしただけのことであり、なかなか経済という目線で見ることは少なかったと思いますので、改めてその背景や意図に気づく事例も少なくありませんでした。

 ちょっと拡大解釈の面がないとは言い切れませんが、いくら歴史は繰り返すとは言え、まったく同じと言うことはないのだから、一見無関係に見える事象の中に、過去にあったエッセンスを見出そうとするのであれば、それも致し方ないのかもしれませんね。

 著者も、ここに挙げた事例が全てというわけでなく、取りあげてない事例も多くあるので、それは読者の手に委ねたい旨の記載があります。
 これは本書にはなく、私の個人的な感想ですが、日々接する様々な経済事象につき、用語+歴史というキーワードで検索する習慣づけが結構有効ではないかと感じた次第です。
 従前であれば、同様の調べをし関連性などを見出すのは、非常に難しく、相応の基礎知識が必要でしたが、今やネット時代。検索の容易さ、関連する事例を紐解くハードルの低さは現在ゆえ。

 本書趣旨とは、異なるのかもしれませんが、そんな示唆を受けた一冊でした。
 
                            東洋経済新報社 2018年10月4日発行

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