名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2020年07月

2020- 7-26  Vol.370F4E57D8B-E31D-4641-8816-DE1EF595F09D

【概要】
  
 皆さまは ”Knot"
https://knot-designs.com/  いう名の時計ブランドをご存じでしょうか。
   ブランドと同じ社名で、2014年3月4日 東京、吉祥寺で創業。日本国内で腕時計の量産メーカーとしては、およそ80年ぶりに誕生した "Knot”。その最大の特徴は、時計本体とベルトを自由にチョイスして自分自身のオリジナルの腕時計が作れるカスタムオーダー。それでいて価格は1万円台から。かつ時計本体もベルトも Made In Japan。

 本書は、そんな ”Knot" の誕生から現在と、創業者でもある遠藤弘満氏を追った1冊。実店舗もなくクラウドファンディングによる資金調達で始まった同社ですが、今や海外含め17店舗を展開。年商は20億円に迫る勢いだそうです。

 なぜこのようなブランドが生まれたのか。セイコー、シチズン、カシオといった日本メーカー3社のほか海外のラグジュアリーブランドウォッチがひしめき合う日本市場で、なぜ 
”Knot" は受け入れられ、支持されているのか。日本国内で腕時計を製造して、しかもこのような価格帯で採算は合うのか。
 常識を覆したその展開に、興味のつきない一冊となっています。

【構成】

 全9章で構成された本書。エピローグこそ創業前夜の2013年頃を記していますが本文は、1997年頃から現在までが、ほぼ時系列で綴られています。”Knot" 創業前、時計輸入で名を馳せた時代も記されており、”Knot" ブランドもさることながら、創業者である遠藤氏に、よりスポットを当てた構成となっています。

【所感】

 ”Knot" 創業前には、米国ルミノックスやスェーデンのスカーゲンといった日本であまり知られていなかった腕時計ブランドを持ち込み、独自の販売戦略で大きく販売を伸ばしてきた遠藤氏。
 輸入時計業界では、知る人ぞ知る存在だったそうです。これはというブランドを見つけ、代理店契約を結び日本で販路を拡大。特に大成功を収めたのはスカーゲンの販売でしたが、ブランドそのものが他社に買収され、代理店契約はあえなく解消。また腕をふるった販売会社でもオーナーの意向で社長を解任され40歳近くになって無職の身となります。

 自身が掘り起し、手塩に掛けて育てたブランドも、 メーカーや販社の都合で手放さざるを得ないもどかしさ。ブランド発掘で世界をまわる中、小さくとも各地域で確固たる存在感を示すメーカーの数々。
そしてそれは、自身が学生時代を過ごした吉祥寺で、 Made In Japan の時計を生み出し勝負したいとの思いに変わります。

 妥協なきデザインとコンセプト作り、スタートはネット専業としマーケティングにはクラウドファンディングを活用。うまく起業の時流に乗りつつも、生産が追いつかないほど弱体化した日本の時計製造業の限界。欠品から閉店も余儀なくされてしまいます。
 
 それでも、日本の各地域で作られる革やナイロン織物、絹織物をベルトに採用。まさに本書タイトルにある時計を中心に各生産者を「つなぐ」コンセプトは、大きな反響を生み、ユニクロとのコラボ商品企画にまで繋がっていきます。
 ほどなくかかる株式上場の声。体制を整え準備段階に入るも、遠藤氏はそれを取りやめてしまいます。その思いとは・・・・・。

 日本のおける腕時計ブランド流通の仕組み、国内でのモノづくりの現状、独自の戦略で生き残る地場企業の戦略、新たな起業スタイル・・・・・。

 200頁強のボリュームの本書ですが、その内容は多岐に渡り、示唆に富んだ1冊でした。優れた発想力と行動力があれば、まだまだ Made In Japan 製品は作り出せる。規模は小さくともそんな企業群が数多く育つことが間違いなく日本を変えていく。そんな読後感を抱いた1冊でした。お薦めです。

                                                                                             新潮社 発行 2020.7.15

2020- 7-19  Vol.369A7FBEAA0-B69A-4F55-A03C-58B8FB1E7E2A

【概要】
  
「食卓の経営塾」なるタイトルがついていますが、本書は家計について記したものではありません。

 タイトル下に「DEAN&DELUCA」とあります。食に詳しい方はもちろんのこと。同ロゴマークの入った白いトートバッグを目にかけたことがある方も多いのではないでしょうか。

「DEAN&DELUCA」 端的にその業態を説明するのが難しいのですが、食のセレクトショップという表現が一番しっくりくるのかもしれません。店舗の大半は東京都下ですが、ここ名古屋市内でも数店舗が展開されています。

「DEAN&DELUCA」そのものは、1977年、米国はニューヨークのソーホーで誕生。多彩な食材の提供や店構え、まさに「食のセレクトショップ」の走りともいくべき存在でしたが、残念ながら2020年3月に破綻をしています。
 日本展開は2003年から。2016年には同店の運営会社が、日本におけるライセンスの永久使用権を取得しており、本国での破綻の影響はほぼないそうです。
 本書はそんな「DEAN&DELUCA」を日本で展開してきた運営会社ウェルカムグループ代表の横川正紀氏の手によるもの。本国になかった事業も含め、大きく躍進を遂げた同社。その経営に寄せた思いをまとめた1冊となっています。

【構成】
 
 全5章で構成され、概ね時系列で展開されていきます。「philosophy(哲学)」と称し、横川氏の経営に関する考え方を端的に記したページが時おり挿入されています。特に連番はありませんが、全部で20の「philosophy」が記されています。
 
【所感】

 タイトルに「食卓」とあるのは
「DEAN&DELUCA」という業態に通ずることもありますが、そもそもは、同氏がこれまで「(この人と)一緒に仕事をしたい」と思ってきた人は「一緒に食卓を囲みたい(食事をしたい)」と思う人ばかりであったという経験から。
「食べる」という人の根源や本能とも言える部分で共感するような人たちとでなければ、ビジネスも含め、なにごともうまくはいかない。そんな思いが込められているようです。
  
 さて首尾よく
「DEAN&DELUCA」を開店するも、当初はまったく受け入れられず苦戦を強いられたそうです。本国そっくりにおしゃれでカッコイイお店を構えてもまったく流行らない・・・・・。
 思い悩み
「DEAN&DELUCA」の創業者の一人を訪ねた横川氏。そこで言われた「既に成功している現在の『DEAN&DELUCA』を見るのではなく、創業者の我々がどんな思いで店を始めたのか、大切にしてきたものは何なのか、その根っこにあるものを理解しているのか。」との言葉が氏を変えます。

 以降、試行錯誤を重ねつつ、日本の食習慣や日本人の感性にあった店舗作りをすることで、
徐々に消費者の認知度も高まり事業も軌道に乗り始めます。
「ライバルは個人店」という横河氏。「お店の魅力」は結局のところ「個人(オーナーや店長)の魅力」。社員一人一人に責任感と当事者意識を持たせ、魅力ある店舗作りをするにはどうすればよいのか。社員
個々の「やりたい」や「好き」という気持ちが、会社の目する方向と合致しなければどんなビジネスもうまくは行かない。ならばどうすればよいのか。

 後に社員の大量離職を招いてしまった施策の失敗も経て、いつしか船団という運営イメージにたどり着いた同社。仔細は是非本書をお読みいただきたいと思いますが、紆余曲折を経て、日本に「
DEAN&DELUCA」を根付かせた同社の取り組みや考え方は、業種を問わず参考になる点も多いのではないでしょうか。惜しむらくは、開店時のライセンス供与の経緯や資金調達の方法などについては、ほぼ記述がないところでしょうか。

 ちなみに本書著者の横川氏は、すかいらーく創業者一族のご子息。同社のビジネスとはまったく接点はないようですが、「ファミリーレストラン」という新しい業態を日本に根付かせた父親と、その数十年後に「食のセレクトショップ」という業態を根付かせた息子。
 父親の苦労ぶりから、飲食の業界には決して足を踏み入れないと決意していたそうですが、形は違えど、結果として日本に新しい食の在り方を提案することとなった父親と息子。不思議なものですね。

                  ハーパーコリンズ・ジャパン 2020年6月19日 第1刷発行

2020- 7-12  Vol.368CAA75200-6E3A-4B64-938C-9E3938C9FA8A

【概要】
  
 世界の経営思想家トップ50に数えられ、「さぁ、才能に目覚めよう」など、人の強みに着目した著作でも知られるマーカス・バッキンガム氏。本書は、同氏とシスコシステムズでリーダーシップやインテリジェンス担当シニアバイスプレジデントを務めるアシュリー・グッドール氏との共著です。

 本書誕生の発端は、ハーバードビジネスレビュー誌に両氏らが寄稿した人事考課に関する記事から。
 従来の慣行を徹底批判した同記事は反響を呼び、改めて同誌から、今度は仕事全体を取り巻く通説への疑問につき書いてみないかと提案され記したのが本書だそうです。

(明確には記されていませんが)おそらく本書の下地となったのは、
マーカス・バッキンガム氏の所属するADPRIが実施したグローバル・エンゲージメント調査(本書巻末に付録として掲載されています)。 19ケ国、19000人以上を対象を行われた同調査から浮かび上がってきたのは、労働に関する意外な事実でした。
 これまで職場で当たり前に行われてきた慣行や考え方が、いかに的外れで働く人の意欲を阻害するものであったのか。著者たちはそれを9つのテーマに分け解説。真に職場のエンゲージメントを高めるためには、どう考え、どう行動すればよいのか。主として一定の組織を率いるチームリーダーたちのために記された本書ですが、チームリーダーのみならず組織に属する全ての人にとって示唆多き1冊となっています。

【構成】

 全9章と付録の2章で構成された本書。タイトルどおり「仕事に関する噓」を9つのテーマに分け記しいます。主要な部分は太字で記されており、時間のない方は各節の見出しと太字を追い、ランダムに気になるテーマを読み進めてよいかもしれません。

【所感】

 各章のタイトルにもなっている「仕事の9つの噓」とは下記の通りです。

 ①「どの会社」で働くかが大事 
 ②「最高の計画」があれば勝てる 
 ③最高の企業は「目標」を連鎖させる 
 ④最高の人材は「オールラウンダー」である
 ⑤人は「フィードバック」を求めている
 ⑥人は「他人」を正しく評価できる 
 ⑦人には「ポテンシャルがある」 
 ⑧「ワークライフバランス」が何より大切だ
 ⑨「リーダーシップ」というものがある

 なんだか思い当たる点、多いのではないでしょうか。
 なぜこのような常識が、まかり通るようになってきたのでしょうか。著者達はそれは組織の管理上の都合で定着したのだと指摘しています。企業、特に大企業はとかく複雑なため、組織のリーダーは本能として単純さと秩序を求めてしまうそうです。
 そして単純さを求める気持ちはやがて同調を求める気持ちに変わり、この同調圧力が働く人の個性をつぶし、エンゲージメントの低下につながっていく・・・・・。
 冒頭で綴られるこの端的な指摘で一気に本書に引き込まれていきます。ならば本当の常識とはいかなるものなのか。そんな疑問を呈したくなりますよね。そこは巻末にきちんと整理し記されています。

 ①「どのチーム」で働くかが大事 
 ②「最高の情報」があれば勝てる 
 ③最高の企業は「意味」を連鎖させる 
 ④最高の人材は「尖っている」
 ⑤人は「注目」を求めている
 ⑥人は「自分の経験」なら正しく評価できる 
 ⑦人には「モメンタムがある」 
 ⑧「仕事への愛」が一番大切
 ⑨われわれは「尖り」についていく

 その論拠は是非本書をお読みいただきたいのですが、「尖り」という言葉が2回記されていることにお気づきになったかもしれません。④で言う「尖り」とは、とかくリーダーは無難で幅広く相応の能力をもち、自身が理解可能な人を評価、選びがちですが、そんな人材ばかりでは勝てないと説きます。

 一芸に秀でた「尖った」メンバーが集まり、①でいうチームとしてそのメンバーが能力を発揮することが、パフォーマンスもエンゲージメントを高めるとし、⑨でいう「尖り」にはリーダー自身もそうあるべきだという意味が込められています。
 そもそも教科書的な「リーダーシップ」などは存在しない、ただ「フォロワーシップ」なるものは存在すると著者達は説きます。リーダー自らが自身の特異性を、強く伸ばそうとすればするほど、フォロワー(メンバー)は情熱的にリーダーについていくのだと記しています。
平均的な当たり障りのないリーダーにメンバーは鼓舞されることはないということなのでしょうね。

 他のテーマのどれも興味深く、「目標設定・管理」の噓、「メンバーへのフィードバックの大切さ」の噓など、大いに共感させられるものでした。

 思えば、まこと複雑怪奇な人というものに対し、単純化、標準化して向き合おうとするのではなく、あえてその面倒くささに積極的に関わること。その重要さともたらす効果の大きさを理解することこそ、これからのリーダーにとって不可欠な行動ではないか。そんなことを強く感じた1冊でした。

                          サンマーク出版 2020年6月30日 初版発行

2020- 7- 5  Vol.367

【概要】
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 創業から40年を越える作業服専門店「ワークマン」。https://www.workman.co.jp/
 ロードサイドにある店舗を見かけたり、長らくイメージキャラクターを務めた吉幾三さんが歌うCMソングを耳にされた方も少なくないのかもしれません。
 元々、高機能、低価格で知られていた同社の商品ですが、ここ数年、女性や若者に圧倒的な支持を受けはじめ、注目度がどんどん上がっています。
 SNS上では「#ワークマン女子」なる言葉まで飛び出すほど、従来の同店では考え難い客層から強く支持をされています。

 そんな「ワークマン」の転機となったのは、2018年9月東京都立川市の「ららぽーと立川立飛」内にオープンした新業態「ワークマンプラス」。マネキンやポップを多用した明るい店内は、大きな話題となり「作業服専門店が一夜にしてアウトドアショップ」へ変貌を遂げた、アパレル史上に残る革命だったと評されるほどでした。

 驚くべきは、「ワークマンプラス」で販売している商品は、わざわざ同業態のために開発した商品ではなく、従前の「ワークマン」店舗で扱っているものばかりだということ。
 本書タイトルにあるように「売り方を変えた」だけで、新たな購買層を掘り起こすことに成功をしているのです。
 本書はそんな大躍進を遂げた「ワークマン」の経営に迫った一冊。同社躍進のキーマンである土屋哲雄専務への取材を中心に構成されています。

【構成】

 全9章で構成された本書。第1章では土屋哲雄専務の経歴紹介や「ワークマン」の沿革と、土屋氏の取組を紹介。2章から8章までは、データ活用、商品開発、広報、店舗開発、組織づくりと同社の取り組んできた各テーマに沿って構成。「ワークマン」HP上で、同書は「(自社の秘密が全てわかってしまうので)読んでほしくない」と紹介されるほど、丹念な取材内容が光る1冊となっています。

【所感】

 1980年9月、群馬県伊勢崎市で「職人の店・ワークマン」として産声を上げた同社。
今や2020年3月期のチェーン全店(同社はFC展開)売上高は1,220億円。全国で868店舗を展開するなど大躍進を遂げています。

 同社の創業者は土屋嘉雄氏。スーパーのベイシア、ホームセンターのカインズを展開する「ベイシアグループ」を一代で築きあげています。まずはこの嘉雄氏の経営手腕が「ワークマン」発展の礎を作ります。創業間もないうちから、店のサイズ、棚割りまで徹底したマニュアル化。更に3店目以降の出店は全てFC展開。しかも1984年には代表の座をあっさり後進に譲るなど、権限移譲も徹底。同社はバブル崩壊、平成不況も乗り越え、一切の企業再編は行わず全て自前でここまで業容を拡大してきました。
 
 もともと確たる戦略をもち運営してきた同社を、大きく変えたのは、嘉雄氏の甥っ子であり現専務の土屋哲雄の招聘。三井物産を定年退職した哲雄氏を「何もしなくていいから 張り切ってこなくてもいいから」と口説きます。既に優良会社ゆえ、そんな口説き文句だったようですが、さすが先見の明。
 2014年、哲雄氏が中心になってまとめた「中期業態変革ビジョン」が社内外に宣言され、同社躍進のアクションが口火を切ります。

 ①社員一人当たりの時価総額を上場小売業でナンバーワンに
 ②新業態の開発/「客層開発」で新業態へ向かう・「データ経営」で新規業態の運営準備をする
 ③5年で社員年収を100万円ベースアップ。

 また哲雄氏はアパレル市場のセグメント分析を実施。価格を縦に、デザイン性機能性を横軸に4象限でライバルをポジショニングしたところ、低価格かつ高機能というセグメントがすっぽり抜け落ちていることを発見。そこをワークマンの主戦場と位置付けます。その規模4,000億円。

 そんなビジョンを掲げ、社員の意識や行動は変わっていったのか。同社はどう変革していったのか。
仔細は是非本書をお読みいただきたいのですが、全社員をエクセルの達人に育て上げたり、徹底した他社製品のベンチマークと原価率へのこだわり。哲雄氏自らスーツを捨て、24時間365日自社商品を着て過ごし、徹底的にユーザー感覚にこだわった率先垂範の姿勢・・・・・・。

 どのエピソードを読んでも興味深く、勝つべき企業とは、勝つべくして勝つだけの理由があることを改めて感じます。小売、アパレル業。コロナウィルス禍もあり、以前にもまして青色吐息の業界にあっても、ブルーオーシャンを見出した同社。どんな業界にあってもその「同質性」に染まらないこと。それが生き残る企業の必須条件なのかもしれません。そんな感想を抱いた1冊でした。

 ちなみに先ほどあげた「中期業態変革ビジョン」の目標は全て達成されたそうです。
 
                       日経BP 2020年6月29日 第1版第1刷発行


 

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