名南経営 河津勇のツンドク?ヨンドク?

税理士法人名南経営 河津勇 公式ブログ。新刊ビジネス本から、皆様のビジネスに役立ちそうなヒントをあれこれ探ります。毎週日曜日更新中。

2024年03月


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 執筆者、体調不良につき、しばらくの間、本ブログを休載と
 させていただきます。よろしくお願いいたします。 

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【概要】  

 BEV(電気自動車)へのシフトが声高々に喧伝され、100年に一度の大変革の時代を迎えていると言われる自動車業界。

 BEV専業メーカーとして、米国のテスラや、中国のBYDが台頭しその存在感を急速に高めて来ましたが、既存メーカーも続々とBEV市場に参入する中、電気自動車専業という先進的なイメージも徐々に薄まっていくのかもしれません。

 一方、これまで乗り味やエンジン特性などで、個性を発揮してきた既存メーカーは、BEV化により特色を出しにくくなると言われており、これまで以上に、自社のブランドイメージが需要になると追われています。
 
 それでは今世界で主流と言えるメーカーは、果たしてどんなブランドイメージを持ち、どのうようにそれを育んできたのか、そして今後どのような戦略を描こうとしているのかを考察したのが本書。
 今はなき自動車メーカーも含め、32のメーカーが取り上げられています。

【構成】

 全6章で構成されており、ドイツ、フランス、イタリア、日本、アメリカ、イゴリスに各章を充て、2~8のメーカーを紹介。日本車では、6メーカー(ブランド)が掲載されています。

【所感】

 ある商品や製品を購入する際、男性はそれらが誕生したストーリーに惹かれ、気にするのに対し、女性は、その製品や商品を身に着けた自身の様子を気にすると聞いたことがありますが、正に自動車はその典型的な製品なのかもしれませんね。

 生活必需品として、時にこだわりなく選んでいるという方もいらしゃるかもしれませんが、決して安いものではないだけに。多くの方は、そのメーカーの歴史や製品の生い立ちなど、何かご自身の琴線に触れるものがあって、その車を選んでおり、購入後も雄弁にその理由を語れるのではないでしょうか。

 せて本書ですが、メルセデス・ベンツを筆頭に、各メーカーが紹介され、生い立ちから、主要な車種、その特徴、ブランドイメージなどを端的に解説。クルマ好きならずとも、興味を惹かれる内容となっています。

  個人的に印象に残るのは、アメリカ車はGMとテスラの2社のみの紹介であること、イギリス車は8社が紹介されていますが、ロータス、ジャガー、MINIなどと言った著名メーカーやブランドの大半は、他国のメーカーに買収されたり、ブランドそのものが無くなってしまったこと。

 米英メーカーの衰退ぶりを見るに、今後10年、20年を経た時、本書に掲載されたメーカーの内、どれだけのメーカーが存続出来るのか。日本のメーカーはどうなっていくのか、そんな思いを馳せました。
 長らく製品の品質とコストパフォーマンスの高さで戦ってきた日本車ですが、今や欧州メーカーに負けないだけの歴史と実績があるのだから、それをいかにブランド力として高めていくかが課題。著者はそう記し、本書を結んでいます。
                                                                                    三栄 2024年3月13日 初版 第1刷発行

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【概要】  

 つい先日のH3ロケット2号機打ち上げ成功の記憶も新しい日本の宇宙開発。「日本の宇宙開発の父・ロケット開発の父」と呼ばれたのが、ペンシルロケットで知られる糸川英夫氏。
 20年程前、惑星探査機「はやぶさ」がサンプルを持ち帰った小惑星「イトカワ」の名前を憶えていらっしゃる方も多いかもしれませんね。

 本書は、そんな糸川英夫氏の評伝。著者は、55歳で東京大学退官を機に、ロケット開発の一線から退き、組織工学研究所を設立した糸川氏の側近として同研究所の事務方を長く務めた田中猪夫氏です。 
 東京帝国大学工学部航空学科を卒業。戦前は中島飛行機で「九十七式戦闘機」「隼」「鐘馗」などの傑作航空機を設計。戦後は脳波記録装置、麻酔深度計、音響学、バイオリン設計、そしてロケット開発に携わっています。正にイノベーターの名に相応しい糸川氏。没後から四半世紀。そんな糸川氏のイノベーション方法論を紹介したいという目論見で記されたのが、本書です。

【構成】

 全4部、10章で構成されています。基本的に時系列で記され、生い立ち、航空機開発時代、ロケット開発時代、後年時代~総括に各部が振られています。

【所感】
 

 航空機やロケットに留まらず、多様な分野でイノベーションを起こしてきた糸川氏の発想や着想はどこから生まれてきたのか。その方法論は、必ずや現代の諸問題の解決においても一助になるに違いない。そんな思いが、本書を
単なる糸川氏の評伝に留まることなく、より読者の役に立つものであってほしい。そんな思いの溢れた1冊でした。
 
 著者は糸川氏の生涯を通じ、そこには、①手のひらの法則 ②反逆の法則 ③物語共有の法則 3つの法則があったとしています、
 そしてそれぞれの法則の経緯となった、幼少期、初めての航空機設計、ヴァイオリン製作時のエピソードを明かしながら解説を加えています。

 本書帯にあるように、その真骨頂は②
反逆の法則にあり 3法則の中で唯一図解も示しています。世間の通説を鵜呑みにすることなく、時にそれに反することであっても、徹底した検証が新たなイノベーションの道を開く様子は、間違いなく現代にも通ずるものと言えそうです。

  日本は今更ジェット機製造に乗りだすのでなく、超音速、超高速で大陸間を横断する飛翔体を作るべき、敗戦から10年後にそんな発言をしていたという糸川氏。
 現在の日本に必要なのは、そんな荒唐無稽と言える夢を大いに語れることであり、そんな夢を語れる人を応援できる社会的ムードに他ならないのではないでしょうか。

                          日経BP 2024年2月19日 第1版第1刷発行

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