IMG_7113 今週はこんな一冊をご紹介します。80ページにも満たない薄い書籍で、ビジネス書というジャンルに当てはまるのか、ちょっと微妙なところはありますが。

  さて「システム思考」とは、いったいなんでしょうか。
それは問題となっている対象を点ではなく、全体の構造の中の一つの要素と考え、その構造全体を捉え問題解決を図ろうとする考え方を指します。

  著者のドネラ・H・メドウズ氏は、この「システム思考」の研究者でしたが、後に研究よりも、その考え方を広く伝えるためのコミュニケーターに転じた人物。2001年に亡くなっていますが、コミュニケーターに転じた後、800編ものエッセイを残しています。

 10数年前に話題となった「世界がもし100人の村だったら」という書籍がありますが、同書は彼女の書いた「村の現状報告」という小文が下敷きになっていると言われており、同書を通じて名前を知っている方も多いのかもしれません。
 
  さて本書は、そんな彼女の残したエッセイの中から、特に「システム思考」について書かれたものを、訳者である枝廣氏が選したものです。

  全部で8編となっており、そのタイトルは下記の通りです。

  〇お互いと戦うのはやめて、クマに立ち向かおう
  〇成功者はさらに成功する
  〇問題はつながっている、解決策もつながっている
  〇魅力をコントロールすることが、成長をコントロールする
  〇フィードバックをもう少し
  〇フィードバックがあれば、自分だって世界だって変えられる
  〇個人としては学び、組織としては抵抗する私たち
  〇境界線は、現実の世界ではなく、心の中にある

   近年、経済や資本主義を語る上で、「格差」「富の偏在」「不平等」などを目にすることは少なくありません。
昨年、ピケティの「21世紀の資本主義」が話題となりましたが、その20年も前に「拡大される格差」について警告を発していた「成功者はさらに成功する」。

  寓話を引き合いに、製材業者、 とうもろこし農家、漁師が互いに競い合ううちに、そもそもの資源を損なっていく愚かさを説いた「お互いと戦うのはやめて、クマに立ち向かおう」。

  自身の所有するホンダのハイブリッド車。そのメーターを見ながら運転することで、自身の運転が大きく変わった経験を通じて書かれた「フィードバックがあれば、自分だって世界だって変えられる」。

  全て平易な文書ながら、我々が普段見聞きする何気ない事象につき、その背景にあるものへと考察を促す内容となっています。
 選定基準の曖昧さ、体系立てての整理がされていない、ページ数に比して価格が高い(1,200円)、などと他の書評では酷評をされています。
  確かに本書を読んでいても、「システム思考」の概要や、その考え方を具体的に示唆してくれるわけではありません。入門書にも満たない内容との指摘もありますが、個人的には興味深く読むことが出来ましたし、初めて同氏の文書に触れる方には、丁度いいボリュームではないでしょうか。

  前述の通り、「システム思考」の要諦は、直面する課題の背景に考察を巡らせることにあります。
そして往々にして、その背景には一個人では立ち向かえない課題があるものも少なくないのかもしれません。
  
   それでも思考をやめず真摯に向きあうこと。
それこそがドネラ・H・メドウズ氏が我々に残したかったメッセージなのかもしれませんね。


                                                                                                                                   2015-12-19 VOL.130