IMG_7434  近年、経済格差と不平等の是正というのは、経済学における大きなテーマとなっており、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」という著作がベストセラーになったことも記憶に新しいことと思います。

    同テーマを扱った書籍は多々ありますが、本書は、2001年のノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授の手によるもの。
タイトルには「世界経済」とありますが、主としてアメリカ経済を題材に「不平等な経済システム」是正のための提言をまとめたものです。

  経済学において、経済格差と不平等が拡大した真因については、実は経済学者の間でも議論が分かれ、明確な結論は出ていないそうです。
グローバリズムの進展やテクノロジーの発展が、その要因に挙げられることも少なくありませんが、著者は公共政策に着目をしています。 

   さてそんな本書は、二部構成となっており、第一部では、経済格差と不平等を生み出した主要因と考える公共政策の変遷について解説を行い、第二部では、不平等是正のための政策や改革、プログラム案が提言されています。
 
 第一部で著者は、現在の不平等な経済が生みだされた要因をは3つあると語ります。

 ①規制緩和 ②最富裕層の所得税率の大幅引下げ ③社会福祉支出の大幅削減

  まことしやかに信じられてきた、「政府干渉を大幅に減らすことで生まれる市場の創造力が、社会に活気を与える」という考え方の誤りにつき3章にわたり丹念に解説をしています。
   的確な編成に加え「キーワード」という用語解説と、一定の節ごとに設けられた「ポイント」という要点整理が適宜挿入されていることで、非常に分かり易くまとまっており、現在のアメリカ経済の実態がよく見えてきます。
 
  そして第二部の提言では、まず第一ステップとして

 ①レントシーキング(経済的に価値ある活動ではなく、しばしば搾取を通じて他者から利益を引き出すことで富を得る行為)の行動を抑制させる
 ②金融セクター(金融業界とでも訳すべきでしょうか?)に社会的使命を果たさせる
 ③(企業)業績評価に関する短期主義蔓延への対処
 ④公共投資の効率を高める税制改正

 第二ステップとして、中間層のために安定と機会を確保するルールと制度を取り戻すことし
 
 ①完全雇用のためのインフラ整備投資促進
 ②生産性に見合った賃金を確保できるルール化
 ③(女性・非白人・移民)就業参加障害の排除
 ④支払い可能な個人負担で、質の良い教育、医療、保育、金融サービス、退職保障が提供されること

 などを盛り込んでいます。

  残念ながらその提言は、特に目新しいものではなく、最富裕層や世界規模企業への課税強化を通じた財源の確保と再分配の仕組み作り。そして種々の法規制の整備を促したものです。

  財政安定と国民の満足度向上に欠かせない中間層の拡大と安定。
そのための手当を厚くすること。特に経済格差の連鎖により、次世代に経済的地位向上の機会を損なわせないとの主張も、多くの識者によって語られていることではありますが。

  個人的に、本書はタイトルにもある「新しい世界経済」への提言内容よりも、第一章で語られるアメリカ経済の現状分析にこそ、その秀逸さがあると思います。
グローバル経済の先鞭をつけてきたアメリカ経済の現状を知ることで、我々日本の現状も踏まえ示唆を得る点も多いのではないでしょうか。
                                                                                                                                           

                                                                                                                                     2016- 2-27 VOL.140